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CEATEC会期4日目となる6日、Blu-ray Disc Association(BDA)による基調講演が開催された。講演タイトルは、「大飛躍!! Blu-ray Disc」。AV評論家で「ハイビジョンラバー」の麻倉怜士氏を司会に、ハードウェア、ソフトメーカーなどの代表が、パネルディスカッション形式でBlu-rayの魅力をアピールした。 出席者は、ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 ディレクター、オペレーションズ・テクニカルサービス 藤井隆之氏、ワーナー・ホーム・ビデオ 長谷亙二シニア・バイスプレジデント、松下電器産業株式会社 本社蓄積デバイス事業戦略室 小塚雅之室長、ソニー株式会社 VAIO事業部門3部 森辰夫統括部長、TDK株式会社 レコーディングメディア ビジネスグループ オプティカル商品部 田中敏文部長。
■ 11月以降のビデオソフト投入をアピール
ウォルト・ディズニー・ジャパンの藤井氏は、Blu-rayの特徴として拡張性、容量、画質などを挙げ、11月に発売する「ダイナソー」、「ホーンテッドマンション」を皮切りに、年内に7~8タイトルを投入することを紹介。 当初年内発売を予定していたが、2007年春に発売延期となった「パイレーツ・オブ・カリビアン」や、「チキンリトル」については、「画質へのこだわりや、様々なコンテンツを盛り込みたいということもあり、延期しました」とコメント。 まずは、ハイビジョン画質を訴えていくが、将来的にはインタラクティブ機能を活かしたディスクを投入も予定しており、「ネットワークを使って、視聴中に“ライブ映像”のポップアップを表示。選択すると、ディズニーランドでライブで行なわれているショウが見られる」などのアイデアを披露した。
DVDの事業立ち上げの推進も手がけた、ワーナー・ホーム・ビデオの長谷氏は、「あれほど事業計画どおりにいったのは初めて」とDVDの事業を振り返り、Blu-rayでは「新しいハイビジョンの画質をまずは訴えたい」という。 ワーナーでは年内に15本のディスク投入を予定。「基本的にはアメリカで制作し、データはほとんどそのまま日本へ輸入する。ローカライズが必要な部分もあるが、まずはきちんとマスターをつくる。オーサリングツール、量産体制をととのえて市場を作っていきたい」とした。 麻倉氏の「勝負タイトルは? 」との問いには「一発の大ヒットよりは、“続々出てくるぞ”ということをきちんと伝えることが重要と考えている。来年には100本くらいはそろえたい」という。また、大画面テレビの構成比率の伸びが、同社の予測より数カ月以上早いことから、「37型以上のテレビではデジタル放送の画質にDVDが負けてしまう。だから、大至急次世代に飛ばなければいけない」と次世代ディスクへの急速な移行を訴えた。 同時にHD DVDも推進しているワーナーだが、Blu-rayの魅力については、「ユニークなインタラクティブ機能があるほか、“大看板のブランド”がひしめいている。ソフトが無ければハードはタダの箱とはいうが、同時に再生システムがなければ、ソフトも単なるプラスチックの板。その辺りも注目しながら経営判断している」とし、「やるからには真っ正面で突破。しっかりした事業を必ず立ち上げますので。乞うご期待」とアピールした。 ■ 「フォーマット戦争は終わった」
また、松下電器の小塚氏は、ハードウェア製品だけでなく、エンコーダから製造設備までBlu-rayを統合的に手がける同社の戦略を説明。国内レコーダ市場の動向を「アテネ五輪、ドイツW杯、北京五輪など、ビッグイベントごとに主要録画メディアの交代が起こる」とし、「テレビもレコーダも半分以上ハイデフとなった。Blu-rayの立ち上げにちょうどいい時期」と同社のBlu-ray DIGAをアピールした。 また、HD DVDの競合関係については「“Blu-rayのメディアが高い”というのは誤解」とし、HD DVDとBlu-rayの記録メディアの店頭販売調査結果を披露。「録画時間当たりの単価はBlu-rayの方が安い。HD DVDは書換型の規格が無い」とコメント。さらに、1970年から2006年までのアカデミー賞受賞作品の上映時間の例を挙げ、「6割が150分以上。HD DVDでは2層でも6割の映画しか残せないが、Blu-rayは4時間11分のロード・オブ・ザ・リング 3ディレクターズエディションも録画できる」と容量面での優位性をアピールした。
また、各地域ごとのハードウェア製品の優位性についても言及。「Blu-rayは日、米、欧の各地域で大きなプレゼンスがある。HD DVDは東芝とXbox 360のみ。豪州にいたっては競合がいない」とし、「実質的にフォーマット戦争は終わった」と宣言した。 また、インタラクティブ機能を実現する「BD-JAVA」については、FOXが近日発売する「リーグ・オブ・レジェンド」にシューティングゲームを実装した例などを紹介。同タイトルを既に視聴したという麻倉氏は「度肝を抜かれる画質で、WOWOWの2倍ぐらい高画質」とコメント。 また、同社が提案したMPEG-4 AVC(H.264)のHigh Profileについては、「コア部はVC-1と同じだが、原理的にはHigh Profileのほうがきれい(小塚氏)」と訴えた。 ■ VAIOの2層記録は「PC業界のもたらすマジック」
ソニーからは、VAIO事業部門の森氏が登壇。「パソコンはかつては嗜好品だった。しかし、今では日常に必要不可欠な、“なんでもできるもの”になっている。だから、出来ないことを無くしていく」とBlu-ray対応について説明。 民生向けレコーダ「BDZ-V9/V7」と同時にCEATECの開幕にあわせて発表したVAIOフラッグシップモデル「Type R master」についてもBlu-rayの2層対応を強調し、「(BDZ-V9/V7では1層記録のみ対応のため)日経新聞で指摘されていましたが、VAIOは大丈夫です。レコーダもきちんと時間をかけて仕上げて行くと思います」とコメント。 Blu-rayの市場動向については、「2007年の春。そして、2008年の北京オリンピックには本格的に普及が期待できる」と予測。ビデオ再生はもちろんのこと、子供のサッカー大会撮影や、自身のバンド活動などの例を引き、「身近なビデオ撮影でもハイビジョン化が進んでいる。高画質で格好いいディスクをなるべく簡単に残したいという需要は大きい。VAIOは作り手側がこういうモノを作りたいという意志のもと、作っている」と訴えた。 また、「VAIOは6月から2層記録に対応していたが。なぜできたのか?」との麻倉氏の質問に、「レコーダ部門からも必ず凄いモノが出てくると思いますが…… VAIOで2層記録ができたのはPC業界のもたらす、(ドライブの外部調達という)マジックです」とコメント。さらに、「(民生機器とのビジネスモデルが違うが)フォーマットをまず立ち上げるという観点からは、これはいいことだと思います。あちら(HD DVD陣営)には出来ないことですから」と、ドライブの供給メーカーの多さも訴えた。
TDKの田中氏は、初代のカートリッジ付きBD-REディスクを振り返り、「記録メディアの事業では材料費の割合が非常に高い。カートリッジ付きだと、消費者にも高い代価を払っていただくことになってしまう」とし、同社のハードコート技術によるベアディスクの事例を紹介。 さらに、CEATEC会場でデモを行なっている6層ディスクや、高速化技術についても言及し、Blu-rayの拡張性をアピール。高速化については、「開発レベルでは6倍速/216Mbpsを学会発表している。カムコーダ用の8cmディスクなどの用途も考えられる」とBlu-ray対応機器の拡大をアピールした。 なお、6層ディスクにおいては、1層25GBの6層150GBディスクに加え、変調方式にPRMLを用いることで、1層33GB/6層200GBも実現可能という。ただし、松下電器の小塚氏は、「25GBで録再完全互換がBlu-ray Discのコンセプト。できれば25GBの8層で200GBのほうが望ましい」とコメント。 田中氏も、「Blu-rayはパッケージメディアですから、一社ができればいいわけではない。どこまで可能性があるか、フォーマットの可能性を探っている」と説明した。 ■ PLAYSTATION 3にも期待 「PLAYSTATION 3」への期待については、ディズニー藤井氏が「11月にソフトを出すのはPS3が出るから、というのが非常に大きい。PS2で飛躍的にDVDが伸びたという成功体験がある。あやかろうというわけではないが、やはりハードの普及には期待している」と説明。 また、ワーナーの長谷氏は、「日本とアメリカ、ヨーロッパの各地域を対象に、社内で徹底的にPS3の用途を調査している。PS3の購入者の何%がゲーム、何%がビデオを求めているのか、その結果を見て考えたい。現在のDVDではアメリカの平均購入枚数が約24枚、日本では約6枚。やはりアメリカ並みの水準を目指したいし、それぐらい売れる魅力があるディスクを開発していきたい」とした。 □CEATECのホームページ ( 2006年10月6日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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