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第276回:デジタルミキサー「EDIROL M-16DX」を試す
~ その2:デジタルオーディオ機器やPC連携をチェック ~



 前回に続き、Rolandのデジタルミキサー「M-16DX」について、今回はデジタル機器との連携、そしてPCと接続した場合のオーディオインターフェイスとしての機能について検証した。


■ デジタル入出力もアナログ感覚で利用可能

EDIROL M-16DX

 M-16DXは16chの入力を持ったデジタルミキサーで、アナログミキサー感覚で非常にわかりやすく使えると同時に、エフェクト機能なども装備していることは、前回紹介したとおりだ。しかし、これをデジタルオーディオ機器として見ると、また違った側面がある。

 まず、M-16DXは最高で24bit/96kHzで動作し、ほかに24bit/48kHz、24bit/44.1kHzの計3種類のモードを持っている。現在どのモードで動作しているかは、電源を入れたときに液晶ディスプレイに表示される。サンプリングレートの変更はユーティリティのメニュー表示により簡単に行なえ、デジタル信号の入力がなければ、すぐに切り替えることができる。

起動時に現在選択中のモードが表示される サンプリングレートは、ユーティリティから簡単に切り替え可能

 M-16DXには光デジタルと同軸デジタルの入出力を装備している。入力は先に接続されたものが優先となり、どちらかしか使えない。また、単に接続しただけでは信号は入力されず、「DIGITAL」ボタンを押してオンにする必要がある。するとシンクロしているとの表示がされ、11/12chに立ち上がる。

 シンクロしてしまえば、その先の操作はアナログ信号の入力の場合とまったく同じだ。レベルコントロールやパン、EQの設定はもちろんのこと、センド・エフェクトもかけられるし、ファイナルエフェクトもかけられる。なお、シンクロしている状態で、サンプリングレートの変更をかけると、ロックしているので変更できない旨のメッセージが表示される。

11/12chに備える「DIGITAL」ボタンが押されないと、信号入力を開始しない シンクロ中 シンクロ中はサンプリングレートを変更できないようにロックがかかる



■ 18IN/2OUTのUSBインターフェイスに

 M-16DXが従来のデジタルミキサーと異なりユニークな点は、オーディオインターフェイスとしても機能することだ。PCとの接続はUSBを用いるのだが、USB 1.1ではなく、「UA-1000」や「UA-101」と同様USB 2.0を用いているためマルチチャンネルの入力を可能にしている。

 なお、製品発表当初はWindows XPのみの対応とされており、実際発売された初期ロットにはWindows XPのドライバしか添付されていないが、発売当日にはWindows Vistaにも正式対応するとともに、Mac OS X(Universal Binary)対応となり、現在、Rolandのサポートサイトからドライバをダウンロードできるようになっている。今回はWindows XPを用いてチェックした。

 一般のオーディオインターフェイスは入出力の数が同じか、出力数のほうが多いのが普通だが、M-16DXはミキサーであるという性格上、18IN/2OUTというちょっと変わった仕様となっている。また16IN/2OUTではないの? と疑問に感じるかもしれないが、各チャンネルへの入力される計16chの入力のほかに、最終ミックスのMASTER OUTが17/18chとして入力される。

 この1~16chについては、各チャンネルのフェーダーに入る前の信号、つまりSENSとEQおよびインサーションエフェクトが効いた音がPC側へと入っていく。一方、17/18chはMASTER OUTなので、全チャンネルを調整し、ミックスダウンした最終的なものが入力される。どういう形でレコーディングするかによって使い分けるといいだろう。

 ちなみに、各チャンネルに入力された音は通常はそのままダイレクトモニタリングされてしまうが、ALT OUTに出力するようにしておけば、ダイレクトモニタリングとならず、PCでエフェクト処理などした音をモニタリングできるというわけだ。

 USB接続の場合も、デジタル信号の入力がある場合と同様、サンプリングレートにロックがかかる。使い方としては、あらかじめ44.1kHz、48kHz、96kHzのいずれかを選んで設定した上で、USB接続すると、「USB ONLINE」の表示がされるとともにロックされる。その上で、M-16DX本体の「USB」ボタンをオンにして点灯させると13/14chにPCからの音が立ち上がる。

USB接続時にもメッセージが表示され、ロックがかかる 13/14chにある「USB」ボタンを押すことで、PCからの音が立ち上がる

 この際、USBボタンが13/14chに入力されているアナログ信号を出すか、USBからの信号を出すかの切り替えスイッチになっている。また、この13/14chはレベル設定以外はEQ、パン、AUXセンドなどの設定は用意されていない。

 ただ、最終段にあるグラフィックEQやルーム・アコースティック・コントロール、またファイナライズエフェクトはUSBからの信号に対しても効くようになっている。ただし、96kHzで接続している場合のみは、ファイナライズエフェクトが利用できない仕様となっている。

 このようにUSB接続がされている状態で、サンプリングレートの変更を行なっても、エラー表示はされないが、サンプリングレートの数字の横に「*」印が表示されるだけで切り替わらない。これを切り替えるためには、1回USBコネクタの挿抜をするか、電源の入れなおしが必要となる。すると「*」印が消えて、サンプリングレートが変わるのだ。

USB接続時に24bit/96kHzを利用している場合にのみ、ファイナライズエフェクトが利用できない 数字の横の“*”は、サンプリングレートの変更が反映されていないことを示す。反映するにはUSB接続解除するなどの操作が必要

 ところで、Windowsのコントロールパネルから「サウンドとオーディオデバイス」を見ると、入力がステレオ2ch分しか見えない。ASIOドライバやWDMドライバで使えば、18ch見えるがMMEドライバでは通常はミックスされた2chしか見えないのだ。

 これをMMEドライバからもアクセスするための機能として、「SEPARATEDポートを使う」というスイッチが用意されている。コントロールパネルには、M-16DXのドライバアイコンがあるが、これを起動すると、ドライバの設定画面が現れる。この中の「オーディオ・ポートの設定」にある「SEPARATED ポートを使う」にチェックを入れると、MMEドライバであっても、18chすべてにアクセスできるようになる。

XPのサウンドとオーディオデバイスのプロパティ。ステレオ2ch分しか見えない コントロールパネルの「M-16DX」ドライバ設定を開き、「SEPARATED ポートを使う」にチェック オーディオデバイスのプロパティで18ch全てにアクセスできるようになった

 なお、M-16DXにはCakewalkのDAWソフト、「SONAR LE」がバンドルされている。これはWDMドライバもASIOドライバも扱えるため、とくに「SEPARATEDポートを使う」の設定をしなくても、18chすべてを確認することができる。ただし、SONAR LEの場合、同時入力が4ステレオ(8ch)までという制限があるため、18ch全部を同時に使うことはできないが、通常は8chも同時に録音できれば十分だろう。

 もちろん、上位ソフトである「SONAR 6」やSteinbergの「Cubase 4」をはじめとするソフトを用いれば、18chパラの同時録音が可能となる。

 また、レイテンシを最小に設定した場合、96kHzでの動作時、WDMで2.2msec、ASIOで2.3msecとなった。

バンドルソフトはCakewalkのDAW「SONAR LE」 4ステレオ(8ch)までしか同時入力できないのが残念



■ 硬質でモニター的な音質

 では、ここで恒例の音質テストを行なってみよう。M-16DXにあるTRSフォンの入出力ジャックは、バランス対応となっている。ここでは、端子の位置が近いことから、出力はMAIN OUT、入力は5/6chをバランスケーブルで直結し、「SEPARATEDポートを使う」モードにした上で、例によって「RMAA」を起動してテストを行なった。

 モニタースピーカーで聞いていて非常にいい音だったのに、最初にテストしたところ、非常に悪い結果が出てしまったのたが、なんのことはない、ルーム・アコースティック・コントロールが効いたままになっていたのだ。改めて、これをオフにしたうえで、44.1kHz、48kHz、96kHzの3モードで実験してみたところ、いずれも「Excellent」という優秀な結果となった。

 さらに、USBからの音を聴いてみたが、やはり非常にHi-Fi。オーディオ観賞用とすると、やや硬めな音だが、モニターサウンド的で個人的には好きな音だ。

RMAAループテスト結果。左から24bit/44kHz、24bit/48kHz、24bit/96kHz

 2回にわたって、M-16DXについて見てきたが、非常にコンパクトで、デスクトップにも置いても邪魔にならないこのミキサーは、DTM用途はもちろんのこと、コンピュータ周辺にさまざまなオーディオ機器があって、切り替えて使いたいといった人にもかなり便利に使える機材だ。

 16chの入力とはいえ、同時入力数が16chなのであって、実際につないでおける端子の数はずっと増える。CDデッキにiPod、シンセサイザ、ギター……、さまざまなものをつないで、最適な音質補正で音が出せ、必要があれば、レコーディングもできる。コンパクトなアナログミキサーと比較するとやや割高だが、その価値は十分過ぎるほどあるデジタルミキサーだと思う。


□ローランドのホームページ
http://www.roland.co.jp/
□EDIROLのホームページ
http://www.roland.co.jp/DTMP/index.html
□製品情報
http://www.roland.co.jp/products/jp/M-16DX/index.html
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(2007年4月2日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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