■ 新進気鋭の企業が集まるサウスホール
本日からNAB 2008の一般展示がスタートした。今年は事前にAppleとAvidという二大ノンリニア企業が出展しないというニュースが飛び込んできたが、それでも出展企業は1,600を超え、来場者も例年通り11万人を超えると予想されている。 会場となっているLVCCは、オーディオ系がノースホール、収録・配信系がセントラルホールとサウスホールの2階、ポストプロダクション・ディスプレイシステムがサウスホール1階という配置になっている。本日はサウスホール1階の模様を中心にお送りする。 一応上記のように区分けがされているとは言うものの、一社でトータルソリューションを展開する企業も多い。したがってなかなかカテゴリ通りにはなっていないところが、見る側も苦労する点だ。
■ FOCUSのフィールドレコーダ新製品
プロ用カムコーダも次第にノンリニア化が進んできてはいるが、HDVなどテープベースのものもまだまだ映像的に問題があるわけではなく、現場には多く残っている。これらはテープ収録のままではなかなかノンリニアベースのワークフローに乗せられないわけだが、それを解決するのがカムコーダ用のポータブルHDDレコーダである。 この分野では老舗となるFOCUS社は、今年の新製品となる「FS-5」を出展した。まだプロトタイプではあるが、すでに実働モデルも展示されている。 本体に2.5インチカラーディスプレイを備え、メニュー操作やメタデータの確認などを行なうことができる。100GBのHDDを搭載し、DV/HDV 1080iでは約7.5時間、HDV 720pでは約10時間の撮影が可能。ディスクフォーマットにUDFを採用しているため、長時間の撮影でも2GBや4GBごとにファイルが分かれず、1ファイルで収録できる。これは過去モデルのユーザーからのニーズが強かったのだという。 バッテリは本体に格納できる、小型のものとなっている。ボディの下1/3ぐらいがバッテリ格納スペースだ。通常この手のレコーダは、MPEG-2 TSの生データをそのまま記録するだけだが、FS-5ではレコーダ内部でQuickTimeやMXFなど、指定したファイル(ラッパー)フォーマットで記録することができる。そのため、ノンリニアシステムへファイルを持ち込む際にフォーマット変換作業が不要で、そのまますぐに作業にかかれるのが特徴だ。 本体上部にUSBポートを備えており、ここに無線LANのUSBアダプタを付けると、PCやPDAなどからFS-5にアクセスできる。FS-5内にはHTMLのサービスが動いており、WEBブラウザを使ってメタデータの入力が可能。デモでは、iPod touchを使ってメタデータの入力を行なっていた。発売時期は夏頃を予定しており、価格は未定。
現在の製品は、収録がFireWire接続だが、将来的にはカメラとの接続にUWBの採用も検討しているという。そうなればカメラ側にUWBアダプタを付けるだけで、ワイヤレス収録が可能になる。 HDVはもはやテープフォーマットではなく、互換性に優れたノンリニアファイルフォーマットとなりつつあると言っていいかもしれない。
■ EDIROLがフィールドレコーダに参入
ローランドの映像機器ブランドであるEDIROLのブースでは、カメラ用フィールドレコーダとして新商品となる「F-1」を出品した。同社としては初の映像収録用製品となる。
通常のレコーダと大きく異なる点は、カメラからの2ch音声以外に、別途アナログ2chをリニアPCM記録でき、合わせて4chの収録ができるところ。サラウンド収録はもちろん、従来のHDVフォーマットでは音が悪いという悩みにも応える製品となる。 HDDはリムーバブルパッケージに入った120GBの2.5インチドライブとなっており、HDV 1080iで約10時間の収録が可能。HDDドライブパッケージ単体にもUSB端子を装備し、PCに直結すればバスパワーだけで外付けHDDとして動作できる。 内部バッテリは単三電池8本を入れるバッテリユニットとなっており、外部バッテリからの電源供給も可能。外部バッテリが切れても、自動的に内部バッテリに切り替わるため、長時間の連続撮影が可能。こちらもHDDフォーマットはUDFで、2GBや4GBごとにファイルが分かれることはない。 本体横にはD-subのアナログRGB出力端子があり、PC用モニタの接続ができる。F-1内部ではエンベデッドのWindows XPが動いており、専用プログラムによるGUIで内部のファイル管理が可能。マウスはF-1のUSBポートに接続する。 またF-1用の映像管理ソフト「F-1 Utility」を無料配布する予定。素材管理や4chプレビューを行なうブラウザモード、簡易編集が可能なエディットモードを備える。 またF-1はEthernet端子も備えており、ファイル転送もネットワーク経由で可能。ネットワーク経由でPCから最大4台までのF-1を一元的にコントロール可能で、4台同時収録開始といったコマンドを送ることもできるなど、かなりユニークな使い方ができる。発売予定時期および、価格は未定。
■ 今度は入力も、MatroxがMXO2を展示
MacのDVI出力を最適化するボックスとして好評だったMXOに、今度は入力にも対応した後継モデルMXO2が登場した。サイズはB5タイプのノートPCぐらいに大きくなり、左右に入出力端子が分かれている。 映像入力はHD/SD SDI、HD/SDアナログコンポーネント、Y/C、コンポジットで、音声入力はXLR 2ch、RCA 2ch、AES/EBU 2ch。SDIエンベデッドオーディオは8chまでサポートしている。またHDMIの入力端子も備え、こちらもエンベデッドオーディオは8chまで対応。 Macへの入力は、Express Cardスロット経由で行ない、AppleのProRes 422での直接取り込みが可能となっている。 映像出力は、HD/SD SDI、アナログコンポーネント、Y/C、コンポジットで、音声出力はXLRが4ch(ステレオペア×2)、RCA 6ch(サラウンドモニタ用)、AES/EBU 2ch。SDIエンベデッドオーディオは8chで、HDMIの出力端子も備え、こちらのオーディオも8chまで対応。
特筆すべきは、HDMI出力ではBlue Onlyが出せること。民生用のテレビでもカラーバーを使ったモニタのキャリブレーションが可能になるのは、大きな意義がある。また出力時はSD to HDのリアルタイムアップコンバートや、HD to SDのリアルタイムダウンコンバートも可能。 電源はACアダプタが必要だが、カメラ用アントンバウアータイプのバッテリが接続できるアダプタも参考出品していた。MacBook Proと組み合わせれば、フィールド編集も可能になるだろう。 アプリケーションは従来のMXOと同じく、Final Cut Studio 2やAdobe CS3 Production Premiumなど、QuickTimeアプリケーションなら使用できる。 発売時期は7月の予定で、予価1,595ドルとなっている。これまでProRes 422に対応した入出力ユニットはAjaの「I/O HD」ぐらいしかなかったが、MXO2の方がサイズも小さくバッテリ駆動可能、さらに価格が約1/3と、かなり強力だ。しかもモニタの補正なども可能なため、Macを編集スタジオ化するにはベストチョイスと言えるだろう。
□NAB 2008のホームページ (2008年4月15日)
[Reported by 小寺信良]
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