■ Blu-rayビデオもBD-Liveで多機能化
“インタラクティブ機能”としては、フォーマット戦争に敗れたHD DVDの方が先行しており、HDiを用いて、アニメ「FREEDOM」(北米版)でネットワークからの動画ダウンロードを実現。BDに対するアドバンテージとして大きくアピールされたことも記憶に新しい。 BDビデオも遅れながらも機能強化を行なっており、2007年11月以後に発売されたBDプレーヤーにはJavaインタラクティブ機能が義務付けられた。 3月に発売された「バイオハザード トリロジーBOX」(BP-429/12,800円)など、PinP(子画面表示)で特典コンテンツを収録するタイトルも登場している。 そんなBDの機能面で大きな進化と呼べそうなのが、6月25日にソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(SPE)から発売される「メン・イン・ブラック」(以下MIB/BRS-24510/4,980円)で、国内向けソフトとしては初めて対応している「BD-Live」である。 BD-Live(Blu-ray Disc Profile 2.0)は、現在のBDビデオにネットワーク機能などを追加する新規格で、DVDビデオの次代では実現できなかったような多機能な特典コンテンツ、ゲームなどが実現可能になるという。一方で、対応プレーヤーには1GB以上のストレージ容量とネットワーク接続が必須とされるなど、従来のBDプレーヤー/レコーダでは対応できない互換性の問題にも注意する必要がある。ちなみに、現時点で国内で対応している据え置き型プレーヤーはPLAYSTATION 3(PS3)のみで、現行のBDレコーダは対応していない。 今回はそんなBD版「メン・イン・ブラック」を、BD-Live機能に絞って紹介してみたい。
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■ BD-Live用専用メニューを用意 BD-Liveを使ってみる前に、「メン・イン・ブラック」の内容を簡単におさらいしよう。ウィル・スミスとトミー・リー・ジョーンズが共演したSFアクションで、同名のコミックを原作としている。ひょんなことから、地球に多数のエイリアンが住みついていることを知ってしまった警官ジェームズ(ウィル・スミス)。エイリアン達を監督する秘密組織MIB(メン・イン・ブラック)のエージェントにスカウトされた彼は、先輩エージェントの“ K”(トミー・リー・ジョーンズ)に連れられ、今までの常識が根底から覆されるような、エイリアンにまみれた生活をスタートさせる。だがそんなある日、“バグ”と呼ばれる凶悪なエイリアンが地球に飛来。MIBの2人は、銀河系の存亡を賭けた戦いに挑んでいく……。 まさに“ハリウッド娯楽作”。独創的なエイリアン達と、ウィル・スミス&トミー・リー・ジョーンズの笑いの絶えない会話。宇宙人の技術を駆使した奇想天外な武器の数々。そしてサングラス&黒いスーツでキメた2人の、スタイリッシュかつおバカなアクションシーンと、とにかくボリューム満点。公開は'97年だが、今なお人気の高い作品だ。 映像はMPEG-4 AVC収録。夕暮れや深夜のシーンなどでは、最新の作品と比べると若干ノイジーだが、画質は概ね良好。CGと実写の融合部分も違和感が少なく、不満の少ない仕上がりだ。音声仕様は比較的シンプルだが、英語/日本語ともにロスレスのドルビーTrueHD 5.1chで収録している。詳しくは後述するが、BD-Live以外の特典も充実したBDビデオである。
BD-Liveのテスト用プレーヤーにはPS3を使用。BD-Live対応ソフトと言っても、通常のBDビデオと大きな違いは無く、本編/特典を再生する操作は従来のソフトと同じ。ただし、PS3の「BD/DVD設定」で「BDインターネット接続」の項目を「確認する」にしていたところ、MIBの再生前に「BDによるインターネット接続を許可しますか?」という確認メッセージが表示された。 BD-Liveの機能は、特典メニューの中にある「BD-Live」のロゴマークから起動する。ちなみに、BD-Live非対応のソニー製BDレコーダ「BDZ-X90」で再生したところ、本来ロゴの青色の部分が白一色で表示され、決定ボタンを押すと「このブルーレイディスクプレーヤーではこの機能はサポートされておりません」というアラートが表示された。
PS3ではロゴマークの選択から、実際のメニューが表示されるまでに若干時間がかかる。1分35秒後にMIBの映像が消え、黒画面に赤と青のプログレスバーが表示。バーの表示が終わり、BD-Live画面になるまでさらに約1分。トータルで2分33秒かかる。
一度XMBメニューに抜け、再度MIBのBD-Liveを呼び出すと、今度はBD-Liveボタンを押してすぐにプログレスバー表示となり、トータル1分2秒でBD-Liveメニューが表示された。おそらくPS3のHDDにメニュー用ファイルがインストール、もしくはキャッシュされるのだろう。1分2秒もメニュー表示までのラグとしては短いとは言いにくいが、我慢できないほどではない。 BD-Liveのメニューには「スポットライト」、「予告編集」、「MYダウンロード」、「MYプロフィール」、「FAQ」、「ディスクのメニューに戻る」の6項目が用意。メインは「スポットライト」で、中には、「SNEAK PEEK OF HANCOCK」、「INTERACT WITH BD-LIVE」、「TAKE OUR SUMMER SURVEY」と「トリビアゲームのマルチプレーヤー版」が用意されている。
「SNEAK PEEK OF HANCOCK」は、ウィル・スミスの最新映画のトレーラーがダウンロードできるコーナーで、HDとSD解像度の2種類が選択できる。選択するとダウンロード状況がプログレスバーで表示される。ダウンロードはマルチタスク対応で、ダウンロード中に他のコンテンツを楽しんだり、他の映像ダウンロードを開始することも可能。HDは1080p、SDは480iが多いようだ。
なお、一端XMBメニューに戻り、PS3の「ダウンロード管理」を表示させても、BD-Liveでダウンロード指定した映像は登録されていない。BD-Liveのダウンロードは、PS3のダウンロード機能とは独立したものとして扱われているようで、ダウンロードしたコンテンツもXMBメニューには表示されない。 そのため、ダウンロードが進行するのは「BD-Liveのメニュー画面にいる時だけ」となる。つまり本編の再生に戻ったり、MIBのソフト以外をPS3で遊んでいる間にダウンロードを済ませることはできない。回線速度にもよるが、現在のところコンテンツ数が少ないBD-Liveの画面で、ダウンロードが完了するまでじっと待っていなければならないのはちょっと退屈である。 ダウンロードが完了した動画は「MYダウンロード」に保存される。特典映像と予告編集は分かれて登録され、「SNEAK PEEK OF HANCOCK」のトレーラーは特典映像枠に入る。予告編集は「007 カジノロワイヤル」など、SPEのBDビデオタイトルのトレーラーだ。国内ではまだ発売が未定の作品も多い。 「INTERACT WITH BD-LIVE」は、BD-Liveの概要を文章で説明したもの。「TAKE OUR SUMMER SURVEY」はユーザーアンケートのようなもので、「BDビデオを何枚持っていますか?」、「ゲームを何本持っていますか?」などの質問に答えるものだ。 そして目玉のマルチプレイ対応のトリビアゲーム。だが、選ぶと「ディスクのメインメニューに戻って、トリビアトラックのゲームを始め、そこからマルチプレイを選択しろ」という説明が出て、BD-Liveのメニューから直接機動することはできない。つまり、BD-Liveのメニューで現時点でできることは、トレーラームービーのダウンロードだけということになる。マルチプレイについては後述しよう。 「MYプロフィール」は、「ユーザープロフィール」と「ディスク登録」の2つの機能を持っているようだが、残念ながら2つとも「COMING SOON」と表示されるのみ。「ディスク登録」はそのまま、持っているSPEのBDビデオを登録する機能だろうか? 「沢山持っているお得意様には特別な特典が!!」というような展開も期待したいところだ。 一通りBD-Liveメニューを操作して気になったのは、左側のメニューは日本語表示なのだが、右側のコンテンツ説明がいずれも英語で書かれていること。さらに、ダウンロードした特典動画や予告編にも字幕が付いていない。おそらく、日本版向けに作り替えられているのは左側のメニュー画面のみで、その後に表示されるコンテンツは米国向けと同じものをオンライン経由で取得/表示しているのだろう。BD-Liveの使い方を説明している「FAQ」も全て英語なので、「BD-Liveの新機能を体験してみたい」と考えるユーザーに若干ハードルが高くなる印象はぬぐえない。 そこでパッケージを見返すと、FAQの一部を日本語で表記した紙が同梱されていた。さらに、SPEのBlu-ray紹介ページには、FAQの全文を日本語化したページも用意されている。ほとんどの疑問はこのページを見れば解決するだろう。ちなみに、この点についてSPEに聞いてみたところ、「発売日の段階では英語表示のみの設定になっているが、日本語サービスも今後順次提供して行く予定」だという。
■ マルチプレイ対戦を体験
ディスクのメインメニューに戻り「トリビアゲーム」を選択すると、シングルプレイとマルチプレイが選択できる。シングルプレイはオフラインでユーザー1人で楽しむもので、質問数を決めてチャレンジ。解答の正誤や回答スピードに合わせて得点が加算されるという仕組みだ。 マルチプレイを選択すると、自分の名前を入力する画面が表示。入力後は「クイックプレイ」と「対戦型クイズを主催する」、「対戦型クイズに参加する」の3つが選べる。「クイックプレイ」は他人が主催したゲームにとりあえず参加し、すぐに遊べるモード。「対戦型クイズに参加する」は、主催されているゲームを選んで参加するモード。「主催する」は、自分がゲームマスターとなり、参加人数や質問数を自分で決めゲームを主催。他ユーザーの参加を待ち、入ってきたプレーヤー達と対戦するというモードだ。 ルールはシングルプレイと同じ。映像や文章で出される問題に回答していくシンプルなものだが、「この画面にエイリアンは何人いた?」とか「今のシーンの中で郵便ポストは何個あった?」といった映画に関係する問題はもちろん、「ニューヨークにあるタクシーの総数は?」、「ウィル・スミスがエネミー・オブ・アメリカで演じている職業は?」など、MIBに直接関係ない質問もある。難易度が高めで、間違えても正解が表示されないので、ついつい何度もチャレンジしてしまう。問題動画の解像度も高いので、“次世代ゲーム感”はたっぷりと味わえる。
ゲームのホストを検索してみたところ、4人がゲームを開いているのが確認できた。名前から察すると外国のユーザーだろうか? 世界中のユーザーとBDビデオで対戦するというのも妙な気分だ。開かれているゲームは、主催者の名前での検索、参加プレーヤー数/設定されたクイズの質問数での並び替え表示も可能。事前にプレーヤー名などを知らせておけば、友人同士で対戦することも可能だが、開いたホストにパスワードロックをかけられないので、特定のユーザーのみが入れるゲームを主催することはできない。 クイズが終わると得点の結果に合わせて「成績優秀 MIB捜査官も夢じゃない!」などのメッセージが画面に表示される。今後「取得したポイントに合わせて特典映像が見られる」とか「プレゼントが当たる」などの展開が用意されるとやりがいも出そうだ。 一方で、現時点でのマルチプレイには残念な点がある。それは、参加しているプレーヤーとのコミュニケーション手段が無いこと。ボイスチャットも文字のチャットもできないため、ひたすらクイズ対決をするのみで、相手が勝ち誇っているのか、悔しがっているのかもわからない。相手が日本人なのか外国人なのかも確認できない。もう少し“マルチプレイである醍醐味”を感じさせてくれると嬉しいのだが……。また、プレイの最初で入力したユーザー名が、ゲームを一度終了させるとクリアされてしまう。将来「ユーザープロフィール」が実装されれば、ユーザー名や獲得ポイントの保存も可能になるのだろうか?
■ BD-Liveのデータは2つのファイルで管理 BD-Liveの機能を利用すると、PS3の「ビデオ」項目にある「BDビデオデータ管理」内に「共通キャッシュ」と「MIB」という2種類のファイルが作られる。「MIB」は6MB程度のファイルで、これを削除すると、BD-Liveのメニュー呼び出しにまた時間がかかるようになる。おそらくメニュー用ファイルをインストールしたものだろう。「共通キャッシュ」は、予告や特典トレーラー映像をダウンロードすると100MB以上のファイルサイズが増えていくため、ダウンロードした映像などを保存する領域と考えられる。「SPE」という名前も付けられているため、将来SPEのBD-Live対応ソフトにはMIBと同じようなトレーラーダウンロードコーナーが設けられ、別の作品でダウンロードしているトレーラーは共通情報として他のソフトのBD-Live画面にも反映されるようになるのかもしれない。
■ 可能性の片鱗は体験できるが、今後に期待 トリビアゲームでのマルチプレイは、従来のDVDビデオの特典とはレベルの違うインタラクティブ機能を実現しており、不満な点はあるものの、BD-Liveの持つポテンシャルを感じさせてくれる。個人的には「ニコニコ動画」のように同じソフトを持っている人同士が、映像を見ながら感想を書き込んだり、作品の謎を話し合う掲示板のような機能が実現してくれると面白そうだなと考えている。一方で、今回のMIBに限って言えばトリビアゲーム以外のBD-Live機能がトレーラーぐらいしかないため、“BD-Liveの機能を体験する”という意味では若干肩すかし感がある。だが、これは“BDビデオとして特典にボリュームが無い”という意味ではなく、むしろMIBは他のソフトと比べて“特典が豊富なソフト”と言える。 映像系では未公開シーン、メイキング、視聴効果シーンの解説、エイリアンの製作過程、絵コンテとの本編の比較、ミュージックビデオと盛り沢山。さらに「シーン編集工房」は用意されたシーンを自由につなぎ合わせて連続再生し、自分だけのシーンを作れるというもので、非常にインタラクティブな動作が楽しめる。 また、BD-Liveに関して言えば、現時点で対応しているプレーヤーがPS3のみである事がマイナスであるとも感じる。BDレコーダでマルチプレイゲームができれば新鮮味があるが、PS3はそのものが超高機能なゲーム機であるため、BD-Liveのゲーム機能である程度のことを実現してもPS3用ゲームと比較してしまうと、どうしても見劣りする。 ただ、こうした評価もあくまで“現時点でのもの”。なにせBD-Liveはメニュー画面以降のコンテンツはほぼオンラインで供給されているため、今後のバージョンアップにより内容が激変する可能性は高い。 CESなどの展示会ではBD-Liveの機能例として、映像のダウンロードだけでなく、字幕などのコンテンツ追加や、着信音のダウンロードサービス、果てはPS3用ゲームにも負けない一人称視点のシューティングゲームなども展示されており、可能性は未知数だ。いずれにせよ、“観るだけ”で終わっていた映像ソフトに“参加して遊ぶ”という新たな魅力を加える第1歩として、歓迎したいソフトである。
http://www.sonypictures.jp/ □関連記事 【Blu-ray/HD DVD発売日一覧】 http://av.watch.impress.co.jp/docs/bdhdship/ 【4月24日】Blu-ray「メン・イン・ブラック」は日本初のBD-Live対応ソフト -SPE発表。トリビアクイズで他のユーザーと対決 http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080424/spe.htm 【4月3日】SPE、「メン・イン・ブラック」など6月にBlu-ray 3タイトルを発売 -「ボーン・コレクター」、「ザ・シークレット・サービス」も http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080403/spe.htm 【1月9日】【CES】【BD/HD DVD編】「BD-Live」対応やBDからのPSP出力など -付加価値向上を図るBD。HD DVDはストリーム映像配信 http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080109/ces14.htm 【3月25日】SCE、BD-Live対応のPS3用最新ファーム「2.20」を公開 -LTHタイプのBD-Rも再生可能に。レジューム再生強化 http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080325/sce.htm (2008年6月25日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
AV Watch編集部 av-watch@impress.co.jp Copyright (c)2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
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