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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第367回:あのEverioがAVCHDに参入、MPEG-2でも撮れる「GZ-HD40」
~ 撮像素子も初のCMOS化、新DVDライターも登場 ~



■ 記録コーデックがハイブリッド?


6月9日に発表された、MPEG-4 AVCとMPEG-2両対応の1チップLSI

 6月9日にビクターから発表された「MPEG-4 AVCとMPEG-2のハイビジョン解像度の映像に両対応できる1チップLSIを開発」のニュースは、次世代EverioもいよいよAVCHDに対応することを知らせる「のろし」のようなものだったと思う。そしてほどなく両フォーマット対応のEverioの夏モデル、「GZ-HD40」と「GZ-HD30」が発表された。

 現在ハイビジョンカメラの記録フォーマットは、ソニー、パナソニック、キヤノンの3大メーカーがAVCHDを採用しており、間違いなく市場の過半数を占める。それ以外のメーカーは、記録フォーマットがバラバラという状況だ。ここにビクターが参入することで、いよいよAVCHDへの求心力が高まったと言えるだろう。

 今回はEverio GZ-HD40(以下HD40)と、新しくAVCHDにも対応したDVDライター「CU-VD50」をお借りすることができた。HD40は店頭予想価格15万円前後、CU-VD50は5万円前後となっている。

 またこの夏モデルから、いよいよCCD時代の終焉が確定的となったようだ。以前レビューした三洋Xacti「DMX-HD1010」や今回のEverioもCMOSを採用、そして3CCDにこだわっていたパナソニックも、Live MOSを3つ使った3MOSカメラを投入する。

 ビデオカメラは、この夏もまだまだ進化が止まらないようだ。では早速新しいEverioの実力を試してみよう。


■ 外観はさらにシンプルに

 ではいつものようにスペックから見ていこう。HD40のカラーはクリアブラックのみで、全体的に光沢感のあるパール地の黒となっている。カメラデザインとしてはオーソドックスで、前作の「GZ-HD6」に近い。ただHD40のHDDは2プラッタで厚くなったため、グリップ部も若干厚みがある。


デザイン的にはオーソドックスだが、よりシンプルになった HDD2つ分で、ややグリップ部は厚みがある

 前面にはLEDビデオライトがあり、手動で点灯させることができる。またレンズカバーも手動で開閉する。レンズはJVC HDレンズで、F1.8~2.2、画角は35mm換算で動画50~500mm、静止画39.5~395mm。HD6では動画も静止画も39.5~395mmだったのに比べると、動画の画角がかなり狭くなったのは残念だ。おそらく手ぶれ補正が電子式になったので、その領域を確保するためだろう。


前面にLEDビデオライトとUSB端子 レンズカバーは手動で開閉

 撮像素子は1/3型 268万画素のCMOSセンサーで、有効画素数は動画135万画素、静止画166万画素。元々の画素数はかなり大きい割に、有効画素数が少ないのが勿体ないような気がする。画素配列としては一般的なベイヤー配列だが、45度回転させ、斜め画素ずらしを行なっている。原理的にはソニーのクリアビッドと似ているが、画素配列が大きく違っている。

 内蔵HDDは120GBで、HD6と同等。AVCHD対応により、動画モードがかなり変わった。録画時間は下記のようになっている。

動画サンプル
モード 解像度 ビットレート HDD記録時間 サンプル
AVCHD
XP 1,920×1,080 VBR 平均約17Mbps/
最高約18Mbps
15時間
ezsm525.mts (21.4MB)
SP VBR 平均約12Mbps/
最高約18Mbps
21時間
ezsm526.mts (22.4MB)
EP VBR 平均約5Mbps/
最高約18Mbps
50時間
ezsm527.mts (13.9MB)
MPEG-2
FHD 1,920×1,080 VBR 平均約26.6Mbps/
最高約30Mbps
10時間
ezsm017.tod (33.3MB)
1440CBR 1,440×1,080 CBR 約27Mbps 10時間
ezsm001.tod (33.3MB)
編集部注:再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

 液晶モニタは2.8型ワイドで、20.7万画素。液晶内側のボタン配列は、結構変わっている。まず電源ボタンを設けて、以前のようなモード切替え兼用のロータリースイッチを無くした。基本的には液晶の開閉でON/スタンバイが切り替わるので、積極的に利用するケースは少ないと思われる。


液晶内側のボタン類は若干変更された 液晶横のボタンは操作方法が変更された

 メニューボタンは液晶側に移動して、かつてメニューボタンがあったところは削除ボタンになっている。液晶脇のボタン類は、数としては変わらないが、以前「Function」ボタンだったものがメニューボタンになった。これにより、メニューのGUIもかなり変わっている。このあたりは実写のところで解説しよう。

 背面は、バッテリ上部にあった端子がなくなり、また電源スイッチもなくなったことで、ずいぶんすっきりした。背面端子はアナログAV/アナログコンポーネント、HDMI、電源となっている。マイク入力とイヤホン出力は、前のほうにまとめられている。


背面は見た目がかなりすっきりした イヤホンとマイクは前方に移動


メモリーカードは底部にMicroSDカードを差し込む方式

 動画モードと静止画モードの切り替えは、小さなスライドスイッチになった。ステータスを示すLEDは、無くなっている。ズームレバーはかなり幅が狭く、指の大きな人は使いづらいだろう。

 また本体にはi.LINK端子がないが、その代わりにクレードルが付属している。充電もクレードルにセットするだけでOKだ。ただしHDMI端子は本体側にしかない。この辺は規格のしがらみで、現状はいかんともしがたい部分のようだ。


今回はクレードルが付属 背面端子。i.LINK端子があるが、HDMIはない



■ 良好なAVCHDの画質

 では早速撮影してみよう。一番気になるのは、AVCHDとMPEG-2の撮りわけである。この切り替えは、「基本設定」の「ストリーム形式」で選択する。切り替えは瞬時で、待たされることはない。


ストリーム形式は基本設定で切り替える

 この切り替えは、再生モードとも連動する。つまり再生時には、現在のストリーム形式の動画サムネイルしか表示されないのだ。あるイベントはどっちで撮るかを決めたら、普通はそのまましばらく撮るだろうから、それほど気にする必要もないかもしれないが、ストリーム形式が違っただけで以前撮ったはずの映像が探せなくなるのは、ドキッとする人も出るのではないだろうか。

 今回は同じカットを、ストリーム形式を変えて2度撮影している。どちらも最高画質だが、双方のサンプルを比較しても、明確な差は見られない。ただMPEG-2のほうは、静止していて動き始めるような時に、荒れが目立つようだ。

動画サンプル

avcsp.mpg (173MB)

mpg2sp.mpg (173MB)
AVCHDのXPモードで撮影 MPEG-2のFHDモードで撮影
編集部注:動画サンプルは、編集にCanopus EDIUS Neoを使用、AVCHDはCanopusHQコーデックに変換し、MPEG-2はダイレクト編集、FHDモード相当のMPEG-2で出力しています。再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

 フォーカスの追従性は、かなり速い。オートのままでも、歩いてくる被写体にうまく追従できる。ただ、少しフォーカスがずれていても、液晶モニタの解像度が低いために、現場では確認できない。一応フォーカスアシストもあるが、反応範囲が広く、輪郭が検出できればエッジに色が付くような具合なので、フォーカスの芯がどこにあるのかわからない。もう少し反応のスレッショルドを下げた方が良かっただろう。
動画サンプル

focus.mpg (21.8MB)
少しフォーカスがずれていても、撮影時にはわからなかった
歩いてくる被写体でもAFで問題なく追従する
再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

 今回はあいにくの曇天ではあったが、発色に関してはx.v.Color対応の割には、ややおとなしめだ。ただわざとらしい感じはなく、自然な感じがする。それよりも、若干低コントラストな感じがするほうが気になった。特に、被写体のコントラストが高い場合に、明るい方が飛んでしまうケースがある。


肌色の発色などはかなりナチュラル コントラストの高いシーンでは明るい方が白飛び傾向になる

 この現象はCMOSになったばかりのソニーやキヤノンでも見られた傾向で、世代を追うごとに改善されてきている。CMOSがCCDとは違ったラティチュードを持つせいだろうが、そこは絵作りのノウハウでカバーできる部分のようだ。


メニューのGUIはフラットなタイプに変更された

 今回から、メニューのGUIも変更されている。以前はグルグルとロール状に回転するメニューだったが、今回は4項目のスクロール型になった。また最下部に簡単な説明が表示されるため、わかりやすくなった。一番下まで来たら、自動的に一番上に戻る自動回帰型なのも使いやすい。

 今回からFunctionボタンがなくなったわけだが、メニューボタンを押すと、従来Functionで表示されていたパラメータが並ぶ。以前の「メニュー」で表示されていた基本設定は、今回のメニュー内のサブメニューとしてまとめられた。

 ただ、基本設定がメニューの真ん中ぐらいにあるのは、どうにも使いづらい。ここは頻繁に使う人と使わない人が極端に別れる部分である。むしろメニューの並び順としては一番最後にして、よく使う人は上方向に1つ移動することですぐにアクセスできるようにしたほうが良かったかもしれない。

 「プログラムAE」のGUIは相変わらず円形だが、今回から最後の設定から最初に直接戻れるようになった。以前のGUIは、最後まで回していったら、OFFにする際はまた逆回しに回していかなければならなかったのである。このあたりの使い勝手はかなり改善された。

 マニュアル撮影も一応可能だが、絞り優先などで一度絞りを決定してしまうと、もう一度変更する時がめんどくさい。もう一度「マニュアル設定」からモード選択までやり直さなければならないのである。これでは常時マニュアルモードで使うのは厳しい。ワンポイントでマニュアルにもなる、という程度に考えておいた方がいいだろう。


プログラムAEも全回転するようになった マニュアル撮影も可能だが、設定は面倒だ


AVCHDでの室内撮影サンプル

ro_norm.mpg (32.3MB)

ro_on.mpg (32.4MB)
室内ノーマル AGC+スローシャッタ

ro_agc.mpg (32.4MB)

ro_off.mpg (29.5MB)
AGCのみ 感度アップなし
編集部注:再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。



■ なかなか見せる静止画

 これまでEverioはCCDだったため、動画を撮影しながら静止画を撮ることができなかった。昨今のビデオカメラでは同時撮影が当たり前になってきているが、ようやくEverioにもこの機能が搭載された。

 同時記録の静止画は、ビデオ解像度と同じ1,920×1,080ピクセルである。一方静止画モードに切り替えた場合は、最大2,432×1,368ピクセルとなる。


ビデオ撮影したものを編集ソフトでキャプチャ 動画同時撮影の静止画 静止画モードで撮影

 絵作りを比較してみると、同時撮影のほうはビデオガンマよりも若干静止画寄りに変えてあるようだ。だがコントラストや発色は、静止画モードのほうが優れている。

 動画と静止画のモード切替えはかなり高速で、ストレスはない。マニュアル設定のうち、両モードに共通なのはホワイトバランスぐらいで、優先モードや明るさ補正などは、動画と静止画別々に設定できる。


しっとりした質感が楽しめる 発色やディテールも十分 光量の少ない場所ではもう少しS/Nが欲しい


絞り開放で撮影すると、シャッタースピードが追いつかない

 難点は、シャッタースピードが最高で1/500までしかないことだ。晴天下で絞り解放で撮ろうと思ったら、これでは追いつかないだろう。実はEverio初のハイビジョン機「GZ-HD7」でも同じ問題があった。レンズの明るさからすれば、せめて1/2,000ぐらいまでは欲しいところだ。


■ 質感が上がった新DVDライター


撮影条件を元にグループ分けしてくれる「オートグルーピング」

 再生環境を見てみよう。今回はあらたに、「オートグルーピング」機能が搭載された。これは撮影時間帯や撮影感覚などをベースに、撮影クリップをグループ分けしてくれる機能である。最初に少しテスト撮影した限りに於いては、あまりうまく切り分けできなかったが、撮影を追加するほど条件が整ってくるのか、意味のあるカテゴリ分けになるようだ。

 ただ、グループにどんなクリップが入っているのかは、再生してみないとわからない。したがってどういう意味で分けられたのかを、俯瞰的に把握する術がない。面白い機能ではあるが、もう少し見せ方に工夫が必要だろう。

 次にDVDライターの「CU-VD50」を試してみよう。前モデル「CU-VD40」に比べてDVDドライブをノートPC等で使われるスリムタイプに変更したため、全体的にかなり小型化した。


スリムになった新DVDライター「CU-VD50」 ボタンの質感などもかなり上がっている 背面に映像出力を備えるところがポイント

 デザインはまったく一新され、シルバーを基調として天板にはアクリルを配し、見た目もすっきりした感じだ。操作ボタンは上部に並び、正面はイジェクトボタンがあるのみ。また縦置き用のスタンド、リモコンも付属する。


バックアップ作業はEverioの画面を見ながら操作

 書き込みの段取りとしては以前からと違いはないが、書き込みウィザードはカメラ側で持っているので、メニューのデザインなどは新しいGUIになっている。MPEG-2とAVCHDは、1枚のディスクに共存できないので、別々にライティングする必要がある。

 これも、あらかじめ「ストリーム設定」でどちらかを選んでおいてから、DVDライターを接続する必要がある。一度DVDライターを接続してしまうと、カメラ本体のメニューに戻れないので、ストリームを切り替えることができないからである。このあたりは、使い勝手として余計な面倒が増えた感じがする。


■ 総論

 MPEG-2とAVCHDの切り替え、すなわち記録コーデックが切り替えできるというカメラは珍しいが、正直言って一般コンシューマがそれを使い分けてどうこうするレベルのものではないように思う。おそらくこの機能が生かされるのは、「GZ-HD7」以上のカメラだろう。編集のしやすさ以外に、MPEG-2であるメリットはあまり見あたらないのだ。編集を意識しない一般家庭向きとしては、AVCHD一本に割り切った方が、混乱がないだろう。

 カメラ機能では低ビットレートまでフルHDにこだわったが、結果としては画質にあまり貢献できていない。他社がメモリ搭載で数GBと言っている時代にこれだけ大容量のHDDを積むのだから、ビットレートを節約する方ではなく、AVCHDの規格上の限界である24Mbps方向に伸ばしていくべきだったのではないかと感じる。実際に初めてAVCHDに挑んだにしては、高ビットレートでかなり満足いく画質を出している。

 新搭載のCMOSに関しては、発色がナチュラルでカラーバランスもいい。新しい撮像素子を使ったにしては、良くまとまっている。明るい方のクリップ感が気になるが、これは絵作りで解決できる部分だろう。今回は手ぶれ補正の関係からか、画角が狭くなってしまったのは残念だ。

 目立つ特殊機能はないが、新世代へのステップアップとしては無難にまとまったモデルだと言えるだろう。ただ問題は価格で、ライバル機が軒並み10万円を切る現状で、15万前後は厳しいのではないかと思う。またそんなにでっかいHDDが必要か、という疑問もある。10時間とか50時間とか、撮れすぎだ。それが一杯になるまでほっておいて、壊れたときのショックを考えれば、もっと早めにバックアップに回す仕掛けがあったほうが、最終的にはユーザーのためになる。

 HDDビデオカメラで名をはせたEverioなだけに、当分はHDDから離れないだろうが、時代の趨勢はもはやメモリ記録である。HDDならではの明確なアドバンテージが欲しいところだ。

□ビクターのホームページ
http://www.victor.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.victor.co.jp/press/2008/gz-hd40.html
□製品情報
http://www.victor.co.jp/dvmain/gz-hd40/index.html
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(2008年7月2日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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