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マクセル、2層空間構造とハイブリッドボディのイヤフォン

ワイドな音場のRFシリーズ上位「MXH-RF800」。実売2万円

 日立マクセルは、2層空間(デュアルチャンバー)設計と、アルミニウム&ABS樹脂のハイブリッドハウジングを採用した、カナル型(耳栓型)イヤフォン「MXH-RF800」を10月25日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は2万円前後。カラーはブラック/パープル(BP)。

MXH-RF800

 10mm径のダイナミック型ドライバ1基を備えたカナル型イヤフォンで、同社オーディオ製品のシンボルマーク「m」を冠したモデル。'13年に発売した「MXH-RF500」と同じRFシリーズの上位に位置づけられる。

ブラックとパープルを組み合わせている。中央に「m」のロゴ
「デュアルチャンバー設計」と、「ハイブリッドハウジング」が大きな特徴

 ドライバの振動を効率よく緻密にコントロールするため、ドライバ背面の空間を2つ設けたデュアルチャンバーを新設計。ドライバ背面の空間設計と音響抵抗の最適化により、フラットな特性となる帯域を広げているほか、6kHz付近の高域ピークを抑制することにより、刺さりの無い伸びのある高音を実現。高域ピークにマスキングされがちなシンバルの余韻などを楽しめるという。また、等ラウドネス曲線を考慮した低音特性により、高揚感にあふれた元気なサウンドを実現したという。

デュアルチャンバー構造
一般的なイヤフォンの構造
2層の空間により、空間容積や音響抵抗などの緻密な制御を可能にしたという
高域のピークを抑えながら、延びのある高音を実現
低音特性もコントロール

 ハウジングには、高剛性アルミニウム合金とABS樹脂を組み合わせたハイブリッドボディを採用。ABS樹脂をアルミのポート部とキャップで挟み込む形で、ポートでの不要共振を抑え、固有振動を低減。ボディの共振抑制能力を高め、臨場感のあるクリアな再生を可能にしたという。

アルミ合金とABS樹脂のハイブリッドハウジング
アルミで樹脂を挟み込む構造

 再生周波数帯域は20Hz~22kHz、音圧感度は105dB/mW、インピーダンスは16Ω。ケーブルはY型で、長さは1.2m。プラグは金メッキのステレオミニ/L型。ケーブルを含む重量は約17g。

 イヤーピースは、抗菌仕様のシリコンイヤーピースに加え、遮音性などに優れたポリウレタンの低反発イヤーピースも付属。サイズは、シリコンがS/M/Lの3種類、低反発がS/Mの2種類。

イヤーピースを外したところ
ステレオミニプラグ
ケーブルはY型
低反発イヤーピースも同梱
パッケージ

“空間の使い方”を追求。ハイブリッドのDBAとRFを比較試聴してみた

 同社イヤフォンでは、今回のMXH-RF800などのRFシリーズのほかに、ダイナミック型とバランスド・アーマチュア(BA)型のユニットを組み合わせた「MXH-DBA900」('13年10月発売)などデュアルドライバの製品を展開している。DBA900などが“原音再生”を追求しているのに対し、今回の新モデルであるRF800は、「よりワイドな音場感の創出」をキーコンセプトとしているのが大きな違い。

 高い評価を受けたという現行モデル「MXH-RF500」に搭載されているデュアルチャンバー設計に、DBA900などにも搭載されているハイブリッドハウジングを組み合わせ、これらを最適化することで、RFシリーズの上位モデルとして展開。RF500は比較的素直な音の出方だったのに対し、RF800は低域の豊かさなども加わっている。

日立マクセル コンシューマ&ソリューション事業本部 事業企画部の小林是人主管

 同社のコンシューマ&ソリューション事業本部 事業企画部の小林是人主管は、「新しい高級ヘッドフォンを始めてから約2年になるが、当時話していた内容は“より良い音で音楽を聴く人がこれから増えていきそう”というものだった。LPからCD、MD、半導体ときて、その先にハイレゾのようないい音で聴くマーケットがありそうだと話していた。『m』というマークは、より原音に近い音を皆さんに届けたいという思いを込めてつけている。(DBA900などの)ハイブリッド型が1つの柱であり、もう1つが、空間をうまく使って上手に音を出していこうというRFシリーズ。(現行モデルの)RF500は、“優しい音”、“透明”、“居心地のいい音”といった評判をいただいた。これをさらに突き詰めて作ったのがRF800」と述べた。

 なお、小林氏に「今回のRFの特徴と、ハイブリッド型の両方を組み合わせた究極モデルの予定はあるのか?」について尋ねてみたが、あくまでこれらは個別のシリーズとして、それぞれ異なるターゲットで展開していく方針とのことだ。

 発表会場で、BA+ダイナミックの上位モデル「MXH-DBA900」と、新モデルの「MXH-RF800」を、ウォークマンNW-F887で比較試聴した。DBA900は楽器それぞれの描写が克明でありながら、自然なつながりを実現しているのが印象的。一方で、RF800は楽器の組み合わせで生まれる空間を表現する力に長けていると感じる。ハクエイ・キムのピアノトリオ「トライソニーク」では、ピアノの力強さとシンバルのかすかな響きをDBA900が精細に描き分けているのがハッキリわかるのに対し、RF800は音場の広がり感が増すことで演奏全体としてのライブ感がグッと向上。もちろん、個々の描写が粗いのではなく、躍動的な低域の響きと高域の伸びがしっかりある上で、耳に刺さるような高域の不快感を抑制されている。「DBA900とRF800でどちらが上位」ということではなく、同じ「m」のイヤフォンでもキャラクターが大きく異なり、好みによって選べるラインナップが増えたと言えそうだ。

(中林暁)