“動画のシーン検索”を可能にする配信サービスが始動

-Long Tail Live Stationが6月実用化へ。3D映像も


動画検索ページのイメージ

1月25日発表


 Long Tail Live Station(ロングテイルライブステーション/LTLS)は25日、シーンや音声でも検索可能なインターネット動画配信サービスの立ち上げを発表。6月前後に行なわれるスポーツなどのライブ映像配信サービスにおいて、同社技術が採用されることなどを明らかにいた。

山科誠社長

 同社は2003年に設立され、フィルムなどアナログ動画コンテンツのデジタル化による再価値化や、動画配信サービス向けの技術開発などを主な事業としている。代表取締役社長は、かつてバンダイや日本BS放送(BS11)の社長を務めた山科誠氏。

 同社は、今回の発表会で、2つの事業を発表。1つは、スポーツや音楽などの映像を有料でライブストリーミング配信するサービスで、もう1つは、フィルムなどで保管されている過去のアナログ映像をデジタル化/再価値化するというサービス。

 従来の配信技術との違いは、動画内の特定のシーンやセリフなどから検索できるようにすること。現在この動画検索エンジンを開発中で、作品名やドラマの話数などが分からなくても、手持ちの静止画を使った検索や、音声検索などで目的の映像が探し出せるようになるという。

 2つの事業のうち、ライブストリーミングサービスについては、6月前後に他社が立ち上げるインターネット動画配信において、LTLSの技術が採用予定。ライブ映像にタグ検索エンジンを適用することで、見たいシーンをすぐに検索できるようになるという。このサービスはブラウザで視聴する方法で、PCやスマートフォンから視聴できるとしている。視聴できるコンテンツの本数は明らかにしていないが、トータルの長さは600時間前後としている。

 また、アナログ映像のデジタル化と配信については、コンシューマ向けサービスの開始時期は未定だが、当初は、「戦前や戦後すぐといった時代の、30代以下の人はあまり知らない映像」などのデジタル化を進めているという。今後、ユーザーが動画検索を行なえるポータルサイトを自社で立ち上げ予定としている。

 一定のコストと時間を必要とするアナログ原版からのデジタル化を、LTLSがコンテンツホルダーから原版を預かって無償で実施。デジタル化に際し、修復や、モノクロからのカラー化、最大4Kまでの高解像度化、3Dへの対応などで高付加価値化し、有料配信を行なう予定。さらに、映像を直接Blu-ray/DVDに保存できる“トースター”方式のダウンロードサービスも計画している。各サービスの決済には、他社との提携により他のサービスで貯めたポイントを使えるようにすることも目指す。

 各サービスのコアとなる動画検索技術の詳細は明らかにされていないが、コンピュータによる高度な自動画像解析技術を使用し、動画全体から、ある画像に合致するものを探し出すという。また、各シーンの特徴をタグとして記録し、元の動画と組み合わせて独自のデータベースを構築する。なお、検索には画像や音声だけでなく、テキストによる絞込みも併用するとしている。

 山科誠氏はバンダイ社長時代、おもちゃの「たまごっち」や、ゲーム機「ピピンアットマーク」などが話題になった。また、BS11では、世界初となる3D放送を開始。3Dについて「当時は社内外から疑問はあったが、技術、番組とも可能な時代が来た。今年は映画などでも話題となって、3Dには新しい時代が開かれている」と振り返る。インターネット分野についても、「まだ完成されたわけではなく、私から言うとほんの序の口。これから大きく変わる」と新しい事業について理解を求めた。

映像の「ロングテール」の価値を高めることで、収益化を目指す

 山科氏は、テレビ局などコンテンツを持つ会社でも、過去のアナログフィルムのデジタル化がそれほど進んでいないことを挙げ、フィルムの劣化などにより、この数年で見られなくコンテンツが出てくる恐れがあると指摘。

 社名にも使われている「ロングテール」という言葉は、単体ではあまり売れないニッチな商品が、全体のうち多くの割合を占めるため、これらを効率良く販売することで利益が生まれることを指すが、山科氏は「映像分野において、“価値は無くなっていないがあまり普及していない、なかなか探し出せないもの”をかさ上げしていく」と説明。3D化など付加価値を持たせることができるため、「デジタル化は、再価値化するのに有効な方法」としている。

 一方、動画配信で懸念される違法アップロードについても、シーン検索技術を活用することで動画を特定でき、コンテンツホルダーも安心して作品を提供できるとアピール。そのほか、配信技術においても、ユーザーの回線速度に応じたビットレートを自動で選ぶといった機能を実装。さらに、技術的には1,000万人の同時アクセスにも耐えられるとしている。

 現在、アナログ→デジタル変換の自動化なども進めており、山科氏は、「今後は、“文字検索”から“動画検索”の時代に間違いなく入っていく。我々は、Googleの次の世代を目指す」と述べた。

映画やドラマ、スポーツ、ニュース、アニメなど様々なジャンルの動画を配信予定。まずは実写作品から進めるという従来のテキストベースの検索(左)から、シーンや音声を元にした検索エンジンを開発中


(2010年 1月 25日)

[AV Watch編集部 中林暁]