樋口真嗣の地獄の怪光線

第40回

ネトフリ映画『新幹線大爆破』大盛り上がりに感謝だよ!そしてAirPods MAX凄え!

皆様が見ていただき喜んでいただけてこその大盛り上がりには感謝しかありません!
Netflix映画『新幹線大爆破』メイキングより

いやー。

常日頃平常心を保つべしと心掛けていましたがあんなお祭りになってしまったらもういけません。

心の底から喜んで浮かれてるのが文字間から滲み出してあまりにも恥ずかしいので書いては消し、書いては消し、ではや2カ月。やっと落ち着いた文章が書けるようになってきましたが、兎にも角にも皆様が見ていただき喜んでいただけてこその大盛り上がりには感謝しかありません。

しかしわかったフリして書いた文章はバレちまいますねぇ。

前回のドルビーアトモス配信を何で楽しむべきかのトップバッター、アップルコンピュータ社製のiPodシリーズ、iOSであればNetflixアプリ上で空間オーディオに対応できる数少ない携行デバイスである旨を紹介しました。

すると差出人不明のメッセージが。

「あんたともあろうお方がネットの情報を鵜呑みにしただけで記事を書くとはなムハハハハハ(意訳)」

だ、誰だッ!?

むむう、なんたる不覚。

精神的コピペの記事で埋めていることがお見通しとは!

かくなる上は実機を試してみなければ示しがつかない。

AirPods MAX 第二世代

という事でアップルコンピュータが満を持して放った密閉型ヘッドフォン「AirPods MAX 第二世代」を早速ですが試してみましたが、うわすげえ!とりあえず耳に当てただけで、異界へ誘われたのかというぐらいのノイズキャンセラーの威力。

それまであまりノイズキャンセルを使う習慣も欲しがる理由もないから出始めの時に試したっきり使ってなかったんだよね。だからこんなに進化してることすら知らんかった!

そして発表当時に試してもらって衝撃を受けたVRデバイス「Apple Vision Pro」に盛り込まれていたインターフェイスの考え方が転用されているのか、ノイズキャンセルの逆で内蔵マイクで拾った周囲の音を流す事もできるし、音を流す本体の位置を把握して装着した首の位置がズレるとそれに合わせて音源の中心もズレる……うまく説明ができないけどiPadやiPhoneの位置から音が出ているように錯覚しちゃうんですよ。だから電車の中で時々Bluetoothの接続が外れて本体から音がダダ漏れになっているかのように聞こえてちょっとビビります。

なるほど道ゆくヤングがこれで耳を覆ったり首から下げたりしてる理由が分かろうってもんだ。

ヒェーってなった勢いでNetflixのアプリを立ち上げてこの時のためにダウンロードしておいた拙作『新幹線大爆破』を流してみると―――凄え!

外界から遮断された分だけその閉塞感がはやぶさ60号に乗り合わせているかのような……狙い通りだ!

いや、ここまできたらせっかくだから最高の状態で試して見たくなりますよ。折しも明日は仕事で新幹線に乗って前乗り。

西へと向かいます。ならば!

残念ながらE5系じゃないけどiPadとAirPods MAXの組み合わせで新幹線車内で独り上映会やっちゃいますか?

新横浜駅で乗り込むのであれば旅のお供は地ビールと崎陽軒のポケッツシウマイ!仕事は明日からだから問題ナッシングね!

地ビールと崎陽軒のポケッツシウマイ!
仕事は明日からだから問題ナッシング!
新幹線車内で独り上映会!

気圧が制御されたキャビンとノイズキャンセルされたケミカルな音場が組み合わされ、それに加えて新横浜名古屋間337キロをノンストップです。ホントは走行速度が全然違うけど、その加速感に振動、本来の映画鑑賞環境からすると邪魔なノイズ要素がすべて味方になる奇跡よ!

こうすることを見越して作っていたのであれば俺もなかなかの天才だがそんなことは微塵もない!残念ッ!

ところが新幹線のぞみは予想外に早かった!1時間過ぎたぐらいで三河安城を通過、名古屋駅に向けて減速を始めます。

だめだ!松本くん!爆弾が爆発するぞ!

というかiPadの中でははやぶさ60号は救出号と泣き別れ,残された9人の乗客乗員はどうなるッ?

ってところで中断ではありませんか。

流石のぞみ。1時間20分弱で名古屋に着いちゃうのか―――早い、早いよ!

ここまででも十分満足できるけど、やはり全編通しをノンストップで観るには、純正の東北新幹線に乗車するしかないのか?

独り上映会アゲイン!

折しも『新幹線大爆破』の配信記念イベントが仙台で開催されたので下りのはやぶさに乗車する機会があったのですが仙台まであっという間です。

仙台駅が『新幹線大爆破』一色に!
仙台の皆様、ご協力ありがとうございました!

便利ではあるんですが映画を見るには短すぎます。大宮~仙台でも1時間ちょい、仙台~盛岡は39分、盛岡~新青森も最速で1時間弱。さすが最高時速320キロは伊達じゃないですなあ。新青森発東京行きで途中の停車駅の減速を我慢すれば何とか大宮の手前で映画が終了しそうです。

どなたか試してみてください。

樋口真嗣

1965年生まれ、東京都出身。特技監督・映画監督。'84年「ゴジラ」で映画界入り。平成ガメラシリーズでは特技監督を務める。監督作品は「ローレライ」、「日本沈没」、「のぼうの城」、実写版「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」など。2016年公開の「シン・ゴジラ」では監督と特技監督を務め、第40回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞。