パナソニック、2010年度のテレビ事業は赤字。震災も影響

2011年度に薄型テレビで2,500万台の出荷を目指す


パナソニックの上野山実常務取締役

 パナソニックは、2010年度(2010年4月~2011年3月)の連結決算を発表した。

 連結売上高は17%増の8兆6,927億円、営業利益は60%増の3,053億円、税引前純利益は293億円の赤字から1,788億円の黒字に、当期純利益は1,035億円の赤字から740億円に黒字転換した。最終黒字転換は、2007年度以来となる。

 三洋電機を除いたパナソニックグループとしての連結売上高では、前年同期比2%増の7兆1,669億円、営業利益は1,221億円増の3,133億円、税引前利益は2,672億円増の2,613億円、当期純利益は2,207億円増の1,239億円となった。

 

2010年度第4四半期の連結業績
2010年度の年間連結決算概要
2010年度の経営実績
 パナソニックの上野山実常務取締役は、「売上高はアジア、中国などの新興国が牽引し、2桁の増収を実現。さらに、営業利益は前年比1.6倍の増益となり、構造改革や材料合理化の影響もあり、税引前利益、純利益とも大幅な増益となり、黒字転換した。また、グループ再編に向けて事業構造改革を前倒しで推進。事業構造改革費用は、計画に比べて404億円増加し、804億円になった」とした。

 また、東日本大震災の影響についても言及し、「売上高で700億円、営業利益で210億円、税引前利益で302億円、当期純利益で190億円の影響があった。東日本大震災の影響を差し引けば、営業利益と当期純利益は、公表値を上回る結果になっている」としたほか、「今後も、直接被災したデジタルカメラなどの販売減、サプライチェーンにおける部品調達の遅れによる影響、B to Bにおける顧客先の生産停止による出荷減などが見込まれるほか、第2四半期以降の電力供給制限や購入意欲の抑制、輸出製品に関しては放射線チェックといった要請もあるだろう。だがその一方で、今後の復興需要といった要素もある。乾電池は依然として足りない状況が続いており、パナホームにおける仮説住宅需要の増加、LED照明や太陽電池の需要増とあわせて、蓄電池に対する需要も増加している。家庭用蓄電池は7月にも市場投入していくことになる」などとした。

 地域別では、国内が13%増の4兆5,143億円、米州が17%増の1兆708億円、欧州が11%増の8,572億円、中国が30%増の1兆1,780億円、アジアが29%増の1兆724億円となった。売上げ構成比では日本が51%となった。中期経営計画の重点地域としている新興国(BRICs、MINTS+B)ビジネスでは、前年比20%増となっている。

 

グローバルの地域別販売概況
海外では、新興国の売上が牽引



■ 薄型テレビは2,100万台の計画には未達

 

デジタルAVCネットワークの業績
 セグメント別では、デジタルAVCネットワークが前年比3%減の3兆3,040億円、営業利益が32%増の1,149億円。

 「ブルーレイディスクレコーダーなどは好調に推移したものの、携帯電話やデジタルカメラなどの売り上げが減少した。だが、売上の減少を固定費削減や合理化努力などによりカバーし、営業利益は増益になった」という。

 薄型テレビの販売台数は前年比28%増の2,035万台。そのうち、プラズマテレビは10%増の752万台、液晶テレビは45%増の1,272万台となった。

 「薄型テレビの出荷台数は、年間目標の2,100万台には到達しなかった。また、第4四半期にはテレビ事業の黒字転換を目指していたが、東日本大震災の影響が大きかったこと、エコポイント制度終了前の駆け込み需要が盛り上がらずに、期待していたほどの数字にならなかったのが要因で、第4四半期および通期とも赤字となった」という。

 2011年度は、薄型テレビ全体で2,500万台の出荷を計画。プラズマテレビでは750万台と横ばいを見込んでいるほか、液晶テレビでは38%増の1,750万台を計画している。

 テレビ事業の収益改善に向けては、「尼崎、姫路への4,450億円の投資が2010年度でほぼ終わっていること、日本の生産拠点の見直しとともに海外拠点を強化すること、さらに赤字となっている製品が各地域ごとにあり、これらの製品を絞り込み、黒字機種を重点的に販売するといった大胆なシフトを行なう。黒字機種に絞るということは、高インチ(大型)製品の販売、生産を強化していくことであり、低インチ(中小型)の製品は外部を活用するなど、ダイナミックな転換を図ることを考えている」とした。

テレビなどのAVC社の赤字は、震災の影響が大きいという

 なお、2010年度のテレビの売上高は1%減の9,979億円、そのうちプラズマテレビが13%減の4,794億円、液晶テレビが16%増の4,434億円。デジタルカメラは10%減の1,837億円。、BD/DVDレコーダーは1%増の1,389億円、そのうちBDレコーダーおよびプレーヤーが13%増の1,167億円。ビデオムービーが2%減の604億円となった。

 同ドメインにおける主要会社の業績では、薄型テレビなどを担当するAVC社の売上高が前年並の1兆7,006億円、営業損失が60億円改善したものの281億円の赤字。「震災の影響が大きい。AVC社では震災の影響として、売上高で300億円、営業利益で100億円の影響がある。引き続き収益改善を図る」とした。

 携帯電話を担当するパナソニックモバイルコミュニケーションズ(PMC)の売上高は21%減の2,434億円、営業利益は54億円減の55億円となった。「国内のスマートフォンの構成比が6%から24%に増加するなかで、既存携帯電話の販売が減少したことが影響した」という。

 アプライアンスの売上高は前年比6%増の1兆2,759億円、営業利益は40%増の923億円。「エアコン、冷蔵庫、コンプレッサーの売上げ増加し、とくに国内はエコポイント制度の影響を受けたエアコンの好調ぶりもあり、国内家電事業部門としては過去最高の売上高になった」という。エアコンの売上高は18%増の2,731億円、冷蔵庫は8%増の1,294億円。

 電工・パナホームは、売上高が6%増の1兆7,350億円、営業利益が110%増の730億円となった。デバイスの売上高が1%減の9,263億円、営業利益は10%減の330億円。三洋電機は、売上高が286%増の1兆5,619億円、営業損失が73億円悪化のマイナス80億円(比較する2009年度実績は2010年1~3月の業績)。その他事業では、売上高が18%増の1兆1,977億円、営業利益が168%増の529億円となった。

 

AVCとPMCの概況
デバイス
三洋電気



■ 2011年度見通しは参考情報として開示

 

2011年度連結業績見通し
 2011年度の業績見通しは、「現時点では、東日本大震災の影響を見極めることが困難であるため、参考情報として提示する」として、連結売上高が前年比1%増の8兆8,000億円、営業利益は2%増の3,100億円、税引前純利益は22%減の1,400億円、当期純利益は32%減の500億円とした。

 国内は前年比3%減の4兆4,000億円、海外が5%増の4兆4,000億円。「国内では、エコポイント制度の反動がある」とした。

 また上野山常務取締役は、「東日本大震災の影響がわかり次第、2011年度業績見通しを速やかに公表する。最低でも第1四半期の決算を発表する7月末には開示したい」とした。



■ 茂原工場の全生産ラインが28日から稼働

 一方、同社では、4月28日付けで、液晶パネル生産を行なう千葉県茂原市の茂原工場において、すべてのラインが稼働したことを明らかにした。

 同工場は、3月11日の東日本大震災で被災し、3月22日から一部モジュールに関して生産を再開していた。

 上野山常務取締役は、「クリーンルームが壊れたこと、露光機が一部修理を伴う状態となっており、フル稼働といえる状況に回復するのは夏頃になるだろう」とした。



(2011年 4月 28日)

[ Reported by 大河原克行]