「Inter BEE 2011」でCineAltaデモやEOS CINEMA製品など

-ネット配信向け製品多数。世界最小/150万円の中継車も


18日まで開催する「Inter BEE 2011」

 映像と音響、通信に関する国内最大の放送機器展「Inter BEE 2011」が16日、幕張メッセで開幕した。放送業界向けの展示会となっており、最新ビデオカメラやモニタ、映像配信システム、音響機器などが出展されている。会期は11月18日まで。



■ ソニー

ソニーブースのテーマは「Believe Beyond HD」。HDを超えた技術を提供し続ける、という想いが込められている

 Inter BEE開幕と同日に発表されたポータブルカメラ「HDC-2500」は、新開発の2/3型220万画素プログレッシブCCDや映像処理DSPを搭載し、従来機「HDC-1500R」 に比べ高画質化。2倍速スローモーション撮影も行なえるモデル。3G光ファイバー伝送システムに対応したことも特徴で、1080/60pのデータ伝送が可能となっている。

 2012年1月に発売される「CineAlta F65」(493万5,000円)は、新開発の8K CMOSセンサーを搭載する高画質映像制作向けカメラ。ロータリーシャッターとNDフィルタを内蔵した「F65RS」(598万5,000円)も用意する。

 なお、展示ブースと別の会議棟にデモコーナー「Sony Believe Beyond HDシアター」を設けており、「CineAlta F65」で撮影したサンプル映像を視聴できる。18日まで各日3回(11:00~、13:00~、16:00~)上映される。CineAlta F65に関するセミナー(定員制)も実施する。

HDC-2500CineAlta F65RSF65で撮影した映像を上映するシアターコーナーを会議棟に用意

 3D対応カメラは、4月に発表した2眼3Dの「PMW-TD300」を展示。1/2型1,920×1,080ドットの3板式CMOSセンサーと光学ユニットを2系統搭載したショルダータイプで、MPEG-2 HD映像をSxSメモリーカードに記録。2枚のカードに左右それぞれのレンズからの映像を収録する。そのほか、スーパー35mmセンサーとEマウントを採用した「NXCAM」も出展。ボディ単体の「NEX-FS100J」は62万7,900円、レンズ付属の「NEX-FS100JK」は69万900円。

 モニターは、有機ELマスターモニターのコストパフォーマンスモデルである「BVM-F」シリーズの25型/17型や、デジタルシネマ向けの2K映像入力などにも対応した「BVM-E」シリーズなどを展示。有機ELと、液晶/CRTとの画質比較が可能となっている。

2眼3Dの「PMW-TD300」NEX-FS100J有機ELマスターモニターのコストパフォーマンスモデルである「BVM-F」シリーズ

 放送局などの大容量ストレージとして開発された「次世代アーカイブ・ストレージシステム」も展示。12枚の光ディスクを1つのカートリッジに収め、操作する端末からは1つの大容量ストレージとしてデータを扱えることが特徴。

 ディスク・カートリッジの記録容量は300GB~1.5TBまでのバリエーションを用意。製品化は2012年内を目指しており、会場では試作機で内部メカの動作イメージを見ることができる。

次世代アーカイブ・ストレージシステム試作機の内部構造が見え、実際に近い動作を確認できる


デジタル双眼鏡の業務用モデル「DEV-5K」

 フルHD撮影も可能なデジタル双眼鏡の業務用モデル「DEV-5K」(21万円)も用意され、実際の映像を観ることが可能。民生モデル「DEV-3」(実売13万円前後)との違いとして、デジタルズームにも対応するほか、GPSを搭載。大型アイカップなど付属品も一部異なる。

 ソニーは16日に業務用製品に関する記者説明会も開催。放送局はXDCAM採用が地上波103局、CATV 210局まで拡大したことから、「次のステップはネットワーク」(ソニー業務執行役員SVP ソニービジネスソリューション 代表取締役 花谷慎二氏)とした。プロダクション向けには「4Kフルスイング」、シネマ向けには「4Kカメラでフィルムからファイルへの置き換え」を掲げた。

 なお、タイ洪水被害については業務向け製品も部品メーカーからの供給などで影響を受けているが、代替部品の利用などで「多少の設計変更をしてでも、間に合うようにしていく」とのこと。また、磁気テープなどを生産するソニーケミカル&インフォメーションデバイス 多賀城事務所が震災から復興したと報告。タイの洪水についても、震災の経験を活かして復旧に向けて努力するとしている。

記者向けにコンセプトや製品ラインナップを説明ソニー業務執行役員SVP ソニービジネスソリューション代表取締役の花谷慎二氏Bangkok Post紙に掲載されたタイ工場の写真


■ パナソニック

パナソニックブースのテーマは「Evolving AVC-World」

 パナソニックは、2眼式3Dカムコーダなどのカメラ新製品を展示するほか、新しい映像コーデックの「AVC-ULTRA」などに関する展示を行なっている。

 なお、会期中は、同社カムコーダなどの機器を使ってUstreamライブ配信も実施。60分のプログラムを1日に4回、会期中に全12回生中継する。

 同社は、2012年のロンドンオリンピックで史上初となる3D放送をサポート予定。様々なサイズ/機能の3Dカメラや収録システムなどを展示して、3Dのトータルでの対応をアピールしている。「HDC-Z10000-K」は、3MOSセンサー搭載でAVCHD 3D対応のモデル。セミプロ向けで実売40万円前後。「AG-3DA1」は、高精度のツインHDレンズを搭載。SDHCカード2枚にAVCHDプロ用モードの「PH」でL/R映像をそれぞれ記録する。

 P2ポータブルレコーダを2台同期運転して、ローコストな3D同期収録/再生が可能なシステムや、最大9台までの3Dカメラを接続して、パススイッチでL/R同時に映像を切り替えられるライブスイッチャ―「AV-HS450」なども展示。こういった機器で制作した映像を会場でデモ再生している。

HDC-Z10000-KAG-3DA13D関連機器の展示コーナー

 なお、同社は16日に、AVCCAMハンドヘルドカムコーダ「AG-AC160」(593,250円)が、2012年春に無償アップデートでフルHDのプログレッシブ記録に対応することも発表した。

 11月8日に発表した新映像コーデック「AVC-ULTRA」に関する展示コーナーでは、約200Mbpsの「AVC-Intra class 200」を非圧縮映像と比較。高画質ながら高圧縮を実現した点をアピールしている。

AVCCAMやP2HDの製品群。下から2段目、一番左がアップデートされるAG-AC160AVC-ULTRAの展示


■ キヤノン

キヤノンブース

 キヤノンは、2012年1月下旬発売予定のスーパー35mmCMOSセンサーを搭載したデジタルシネマ対応カメラ「EOS C300」など「EOS CINEMA」製品を展示。同時期に発売される「EFシネマレンズ」を組み合わせた実機を試せるコーナーは、今回のInter BEEの中でも最も人が集まる場所の一つとなっている。

 4K/24p動画撮影対応カメラ「EOS-1D C」の外観デザインも展示。この製品は2012年発売予定のデジタル一眼レフ「EOS-1D X」をベースとして開発しており、35mmのフルサイズセンサーを搭載し、4Kでの映像記録が可能。動画のフォーマットはMotion JPEGで、4K動画の撮像範囲はAPS-Hサイズ相当としている。

 一眼レフのEOSシリーズのコーナーでは、前述のEOS-1D Xの動画撮影を発売前に体験可能。EOS-1D Xは新開発の35mmフルサイズ/1,810万画素CMOSセンサーと、最新の映像エンジン「DIGIC 5+」2基を搭載し、録画後に1フレームごとの編集を可能にする「ALL-I」記録に新たに対応したことなどが特徴。このコーナーにはEOS 5D MarkIIや、EOS 7Dも用意している。

 そのほか、業務用のAVCHDビデオカメラ「XF105」2台を用いたローコストな3D動画撮影のシステムも提案。専用のカメラリグに2台のXF105を装着して、3Dブリッジケーブルで接続。既存のレンズやアクセサリーも使用可能となっている。なお、現時点ではズームした場合に視差調整が同期しないため、位置を固定して撮影する用途を想定している。

EOS C300にEFシネマレンズのCN-E 14.5-60mmを装着EFシネマレンズの新製品さらに広角/望遠に対応するレンズも参考出品した
EOS-1D C来年3月発売予定のEOS-1D X「XF105」2台を用いた3D動画撮影システム


■ インターネットライブ配信関連の展示も充実

ローランドのAVミキサー「VR-3」

 2011年のInter BEEでは、Ustreamやニコニコ動画など、インターネットライブ配信向け機材に関する展示も本格化。徐々に各社が注力し始めていることがうかがえる。

 ローランドのブースでは、12月15日発売のAVミキサー「VR-3」を展示。カメラ/マイクの映像をPC経由でインターネット配信するというもので、従来のVR-5(40万9,500円)からSDカード記録機能などを省いて小型化。A4サイズ/2kgとしており、16万8,000円と大幅に低価格化している。

 VR-3/5は主にノートPCなどを使ってネット配信することを想定しているが、さらに可搬性を高める利用例として、PCレスでUstream配信が可能なCerevoの「Live Shell」と組み合わせて会場でデモ。専用ケーブルを用いてLiveShellの拡張用ポートと接続されたVR-5を、LiveShellをコントロールするWebサイト「Dashboard」からリモート制御して動作させてる。

 AVミキサーから離れた場所からビデオ入力を切り替えることができ、音量調節なども可能。LiveShellは2系統のビデオ入力を備えているが、VR-5と組み合わせるとで5系統まで映像入力が可能となり、それらをトランジションさせながら切り替えられる。「Dashboard」を使って、スマートフォンやPCからの遠隔操作も可能。

 そのほか、小型のVR-3を用いた配信システムとして、キバンインターナショナルが開発した“世界一小さな中継車”という「SmartCasterTRIKE」を展示。ホンダの50㏄トライク(3輪バイク)であるジャイロキャノピーを改造してVR-3やエネループバッテリ、カメラ、モバイルルータなどを搭載したもので、1台で最大3時間のUstream中継が可能。なお、排気量は49㏄だが、登録は普通車扱いとなる。

 イベント会場やスポーツ大会などでの利用を想定。東日本大震災の復興支援プロジェクト「助けあいジャパン」により、被災地からの中継に活用されているという。様々な場所にこの中継車を設置して、イベントなどに貸し出すというサービス形態のほか、カメラなど全て込みで150万円前後で販売することも想定している。

VR-5とCerevo「Live Shell」を組み合わせたデモキバンインターナショナルの“世界一小さな中継車”「SmartCasterTRIKE」トライクの荷台にVR-3やカメラなどを搭載

 エスケイネットは、Ustream/ニコニコ生放送配信向けの動画変換ユニット「MonsterX Live」(SK-MVXL)を展示。こちらはHDMIを備えており、HDMI搭載カメラの映像を最大720pに変換してパソコンからネット配信できるという製品。HD対応により、従来のWebカメラなどを用いた配信ソリューションに比べ高画質化を図れる。

 なお、この製品は現在Windowsのみ対応しているが、同社によれば、アーティストなどが作品のプロモーションでこの製品を使いたいという声も多いことから、Mac対応に向けた開発を開始。数カ月内に予定しているファームアップデートにより、Macでも利用可能になるとしている。

エスケイネットの「MonsterX Live」HDMI搭載カメラの映像を720pでPCからネット配信現在、秋葉原の映像をパナソニック「HDC-TM700」で撮影して、720pでUstreamライブ配信中。ライブ配信ながら高画質で観られることがわかる
各地で実証実験されているエリアワンセグは、年度内の制度化にむけて進んでいる。東芝は被災地や、野球場といった場所での利用を提案。今後はフルセグ高画質や、各セグメント個別のチャンネルを配信する“束セグ”のエリア限定配信も計画されているという停電時も10時間動作するというマスプロのギャップフィラーは約100万円。別売の監視装置(約70万円)と組み合わせると、停電した際に管理者へメール送信するといったことも可能になる
KDDI研究所のブースでは、8K映像の伝送が可能なコーデックをデモ。MPEG-4 AVC/H.264をベースに独自開発したコーデックを採用し、4Kプロジェクタ2台で映像を投写しているほか、鹿島宇宙技術センターから衛星を通じて70Mbit/sで8K動画をライブ送受信している。今回初めてエンコーダ/デコーダ装置が展示されたNECブースでは、MPEG-4 AVC/H.264の後続規格として策定中という「HEVC」をデモ。スーパーハイビジョンや4Kなどでの利用を想定している
JVCケンウッドのブースでは、4Kビデオカメラ試作機で撮影した映像を、東芝の4Kテレビ「55X3」でデモ再生。ビデオカメラの発売時期は未定だが、製品化の際も、HDMI 4本で出力するようになるというゼンハイザーのブースでは、つのだ☆ひろさんが特設ブース内で「メリー・ジェーン」を熱唱。来場者は同社製ヘッドフォンで聴き入っていたティアック/TASCAMブースでは、PCMレコーダ「DR-100 MKII」を展示


(2011年 11月 16日)

[AV Watch編集部 中林暁]