小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第1236回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

シンセサイザー熱、再燃。小さくてもたっぷり遊べる、KORG「Volca」シリーズの魅力

シンセサイザー熱の再燃

筆者は若い頃にバンド活動をしており、担当は鍵盤楽器だった。その関係で色々なシンセサイザーを購入しては売却してまた別のシンセサイザーを買うみたいなことを繰り返しており、おそらく10数台は買い替えたように思う。しかし本業であるテレビ編集の仕事が忙しくなり始め、音楽活動との両立が難しくなったことから、次第に楽器演奏からは遠ざかっていった。

そんなおり、古くからの音楽仲間がやっているバンドが、今年結成40周年でライブをやるという。筆者もゲストで4曲ほど参加することになり、久しぶりにシンセサイザーをいじりだしたのだが、それが楽しくなってしまった。

とはいえ、既に音楽活動から遠ざかって35年ぐらい経つ。シンセサイザーを買おうにも、何がなんだかさっぱりわからなくなっている。演奏したい・曲を作りたいというよりも、シンセサイザーいじりがしたいだけなのである。

そんな時に見つけたのが、KORGの「volca」という小型シンセサイザーのシリーズだった。片手で軽く持てるサイズで、乾電池で動くが、意外といい音が出る。

シリーズの展開が始まったのはもう13年以上前で、既にシリーズとしての製品開発は終了していると思われるが、かなりの量が流通しており、入手は難しくない。こうした古い電気製品もちゃんと売る店があり買う人がいるというのが、電子楽器業界のいいところである。

筆者も調子に乗って3台ほど購入してみたので、今回はvolcaシリーズの魅力についてお伝えしたい。

volcaシリーズの系譜

volcaシリーズは、2013年4月のMusikmesseで発表された、小型グルーヴ・ボックスのシリーズである。それ以前にもmonotron、monotribeといった小型製品が存在したが、volcaシリーズは1つ1つが単機能というか、1つの方向性に絞られているのが特徴だ。複数台をSYNCケーブルで接続すれば、同期してシーケンスが走るため、いわゆる「合奏」ができる。

外形はどれも同じぐらいの大きさで、フットプリントは実測193×115mm。高さはツマミなどの形が違うため、バラバラである。音源の各機は単3電池6本、またはACアダプターで駆動する。小型の内蔵スピーカーもあるので、本体だけで音が鳴る。だが出力端子にヘッドフォンを繋いだり、ラインで出力すれば、かなり迫力のある音が出せる。

2013年当初に発売されたのは、リズムマシンのvolca beats、ベースシンセサイザーのvolca bass、3音ポリフォニックのアナログシンセサイザーvolca keysの3種類である。一応このセットで音楽が作れるわけだ。

以降のモデルと特徴は表組みにまとめておく。

  • 2014年10月「volca sample」(サンプル・シーケンサー)
  • 2016年3月「volca fm」(FMシンセサイザー)
  • 2016年10月「volca kick」(キックジェネレーター)
  • 2018年2月「volca mix」(ミキサー)
  • 2019年2月「volca modular」(セミモジュラーシンセサイザー)
  • 2019年2月「volca drum」(デジタルパーカッションシンセサイザー)
  • 2019年7月「volca nubass」(真空管ベースシンセサイザー)
  • 2020年8月「volca sample2」(サンプル・シーケンサー。volca sample後継機)
  • 2022年4月「volca fm2」(FMシンセサイザー。volca fm後継機)

アナログ回路とデジタル回路を組み合わせて、小型ながら変なことが色々できるように工夫されている。

筆者が最初に購入したのは、volca keysである。アナログシンセでポリフォニック、さらにはシーケンサーも付いているということで、これだけでも音楽になる。最初期の製品であるが、まだ未開封品も手に入る。筆者は中古で少し安く手に入れた。

最初に購入した「volca keys」
単三電池6本で動く

VCO(オシレーター)で発生する倍音を多数含む音をVCF(フィルター)で整音し、VCA(アンプ)で鳴り方を決めるという、アナログシンセのお手本通りの回路である。それにLFOやEG(エンベロープ)が加わる。

通常アナログシンセでは、VCO波形として鋸歯状波や矩形波などが選択できるものだが、本機は波形がボイスのモードに連動しており、通常は鋸歯状波、リングモジュレーション時は矩形波になる。波形を自由に選べるわけではないので、音のバリエーションは若干限られる。

ただしフィルターが強烈で、ハイカットフィルターのカットオフ部分にアクセントがつけられるレゾナンス(PEAK)は、自己発振してしまうほど効きがいいため、パンチのある音が作れるのが魅力である。このフィルターは、1974年のminiKORG 700Sの回路を参照したそうだ。

同時発音数としては3音あるわけだが、これをユニゾンにしたり、オクターブ違いにしたり、5度違いにしたり、リングモジュレーションしたりといった使い方もできる。

普通のアナログシンセにはない機能としては、ディレイが内蔵されている。これがあることで、発振音だけでなく、ディレイを使ったポリリズム的な表現もできるようになっている。

シーケンサーとしては16ステップのものが8つある。つまり8パターン分はメモリーが可能。音色も一部のパラメータの動きはシーケンス内に覚えさせることはできるが、全パラメータが記憶できるわけではないので、音色が記憶できるわけではない。基本的にはパネル面で作ってある音の状態で鳴るというのが基本である。

volca keysのサウンド例

演奏するというよりは、単純なシーケンスを作ってループで鳴らしながら、音をグリグリいじって変えていくみたいな使い方である。取材などに出かける時は、電車で座れた場合のみこれを取り出して、イヤフォンで聴きながら新しいパターンを作ってはツマミをグリグリしている。スマホをいじっている人やそれで音楽を聞いている人はいくらでもいるが、アナログシンセをいじっている人はまずいないだろう。

念願のモジュラーシンセを手に入れる

シンセサイザーは鍵盤楽器として独立した形状を持つものが主流だが、これは音作りの方向性をある程度固めた状態で、どちらかと言えば演奏のしやすさに注力したものである。

一方でシンセサイザーにはモジュラーシンセサイザーという系譜もある。これは音作りに関連する回路をそれぞれ独立させておき、必要に応じてケーブルで接続(パッチ)して音を作るというスタイルだ。著名なところでは冨田勲の一連のクラシックアルバムや、YMOなどがステージに持ち出したMOOG IIIがある。

ただこれはかなり場所も取るし大掛かりなので、普通の家庭内にあっていいものではない。だがvolcaシリーズなら一般家庭におけるサイズに収まるということで、次に購入したのがvolca modularである。

こちらはコルグ公式アウトレットのOUTLET MUSIC SHOPで、未開封だが箱が潰れているという理由で安く売られていたものを購入した。

購入2台目、 volca modular

モジュールとしては8つだが、すべてがバラバラにあるのではなく、基本ラインは内部で結線されているので、何も結線しない状態でも音は出る。音源としては三角波によるアナログFM音源で、そこからローパスゲート(フィルター兼アンプ)につながる。エンベロープはそのゲートを開閉する制御信号になっている。もちろんモジュラー型なので、こうした回路の接続順も自由に変えられる。

パッチングには針金のような細いケーブルを使う

アナログらしい回路としては、サンプル&ホールドという機構がある。これは入力された信号を一時的にサンプリングして、一定時間保持するという機能だ。トリガーのたびにその瞬間の電圧を保持するので、出力は階段状になる。

もう一つの出力は、段のあいだを滑らかにつなぐ。初期状態ではピンクノイズをサンプルしているのでランダムな電圧になり、音程へ渡せばランダムな音階のシーケンスが作れる。

サンプル&ホールド機能を使ったパッチング例

モジュールでユニークなのは、「UTILITY」という回路だ。これは複数の信号を掛け合わせるリングモジュレータとして使える。これが種類違いで2系統あり、ひとつはa+b×c、もうひとつはa-b×cだ。

シーケンス機能もあるが、入力した音階をペンタトニックにしたり、和音階にしたりといった変な機能がたくさんある。もうちゃんとした曲とか演奏させる気はないだろうというような設計で、筆者もまだ全容が掴みきれない。

volca modularのサウンド例

やっぱりリズムが欲しいよな、というわけでvolca beats

volcaシリーズが2台あることで、同期してシーケンスを走らせることはできたのだが、やっぱりリズムを刻むものがないと楽しくない。というわけで3台目のvolcaとして、volca beatsを購入した。

こちらは未開封の新品ではあるのだが、長く流通在庫として倉庫に眠っていた品のようで、有名楽器店の通販サイトでかなり安く売られていた。開けてみたら確かに未開封品ではあったが、ネジ部分に少し錆があったりして、長期間放置されていた様子がうかがえる。

リズムを担当する volca beats

こちらもvolca Keysと同期の最初期のリズムマシンで、いわゆるアナログ音源時代の懐かしい音がする。ただしアナログで再現が難しいクラップやクラベスといった音はPCM音源となっており、アナログとデジタルのハイブリッドである。

アナログ音源はピッチとディケイが変えられる。PCMの方は読み出し速度が変えられるので、やはり結果的にピッチが変えられる。

こちらのユニークな機能としては、STUTTERがある。これはディレイのような効果だが、音声信号そのものをディレイさせるのではなく、音を出すためのトリガーをディレイさせるというものだ。したがって特定の音源だけをディレイに突っ込んだような効果が出せる。

ただし実際にはディレイトリガー信号により、実際にその音源を複数回叩いているわけだ。メロディ楽器音源じゃないからできる技であろう。

左上にあるツマミ2つが STUTTER

音色としては、キック音はパンチがあるが、スネアの音が若干ショボい。昔のままと言えばそうなのだが、ハンドクラップを足してちょうどいいぐらいだ。

3台を同期して走らせたサウンド例

総論

今でもシンセサイザーは、バンド音楽には欠かせない鍵盤楽器として存在している。デジタル化も極限まで進んだあとは、アナログの見直しも進んでおり、アナログとデジタルのハイブリッドだったり、中身はデジタルだがアナログ的なアプローチが可能なものなど、多様化が進んでいる。

一方でコンピュータ用でも多種多様な音源ソフトやDAW用プラグインが存在し、鍵盤楽器にこだわらない音楽制作が可能になっている。またアンプシミュレータなども豊富に揃っており、ハモンドオルガンの音源にレスリー・スピーカーを通した本物の音が簡単に得られる。音楽を作るのも演奏するのも、昔ほどコストがかからなくなってきた。

その一方で、ツマミをグリグリいじって音を変えていくという、ライブパフォーマンスも存在する。曲を作るというよりは、一定のシーケンスを流しながらどんどん音色を変えていくという、DJパフォーマンスに近い楽しみ方である。

バンドの中で演奏するのもスリリングで刺激的だが、自分の中だけで完結するものとして、完成形を持たない音楽パフォーマンスも楽しんでいきたい。こうした用途に、volcaシリーズは低価格で邪魔にならず、幅広い音が楽しめるマシンとして、大事にしていきたい。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。