トピック

Technics磁性流体ヘッドフォンから、MOONDROP「星野 III」、Octa DACのAK「PD5」まで。“ポタフェス大阪”レポ

ポタフェス 2026 大阪の会場

e☆イヤホンによる、イヤフォン・ヘッドフォンの試聴&体験イベント「ポタフェス 2026 大阪」が10月3日大阪市北区中之島のグランキューブ大阪 3Fにて開催。出展ブランド総数は133、好天に恵まれ来場者も多く、見どころ・聴きどころに溢れるイベントとなった。ここでは、国内初展示の製品を中心に、試聴した感想も交えながらレポートする。

水月雨(MOONDROP)

水月雨(MOONDROP)ブースでは、有線イヤフォン「Starfield」シリーズの第3世代となる「星野 III - Starfield 3」を国内初展示。

7.8mm径のDLC振動板と、ウッド素材の10mm径振動板を組み合わせた、異素材型ハイブリッドの「D.W.T.デュアルダイナミックシステム」に注目が集まる。

星野 III - Starfield 3

付属のケーブルは、ロック機構付き交換式プラグを採用。入力プラグは3.5mmシングルエンドと4.4mmバランス、DAC内蔵USB-Cの3種類を交換でき、いろいろな状況/デバイスで利用できることも特長となっている。

高周波頭部・胴体シミュレーター「B&K 5128」で綿密なシミュレーションを行なうなど、定量的アプローチを駆使した開発手法はMOONDROPならではだ。

試聴した印象は、ダイナミックドライバーらしからぬ緻密さ。DD+BAのハイブリッドでは? と訝しむほど中高域が繊細に描かれ、シンバルアタックの余韻が爽やかに抜けていく。それでいて低域はダイナミック型らしく、しっかりと沈み込む。交換式プラグも考慮に入れれば、オールラウンドで活用できそうなイヤフォンといえる。

MUSIN

ONIXのコンパクトDAP「Tocata XM2 Copper」

MUSINブースでは、ONIXのコンパクトDAP「Tocata XM2 Copper」を初展示。名前のとおり、銅を用いたボディ(合金)はCNC一体加工により成形されているそうで、ボリュームノブ付近にこだわりの片鱗が見受けられる。高級感というよりは質実剛健さが漂う佇まいだ。

試聴を始めると、SN比のよさに感心する。DACチップはCirrus Logicの「CS4308P」、アンプ回路はSGM8262-2のデュアル構成など、回路構成はTocata XM2を踏襲しているとのことだが、重量が60g以上増したこともあるのか、サウンドは引き締まった印象が強い。

隣のテーブルでは、MUSINが新たに国内総代理店となった「OASEAR(オースイヤー)」の製品群を初展示。1DD + 4BA + 4ESTの「MIZAR」、1DD + 4BA + 4Planarの「ALIOTH」、1DD + 4BAの「MERCURY」、8BAの「ALKAID」など、いずれもマルチドライバー/ハイブリッド。

ALIOTHを例にすると、9ドライバー構成に低域用音響導管と高域用ダイレクト音響導管を組み合わせることで、3chの4wayクロスオーバーを構成、各ドライバーをスムーズにつなぎひとつの音響システムに仕上げているのだそう。今後の展開に注目だ。

OASEAR MIZAR

エミライ

NEXIEM Liear(開発途上版)

エミライブースでは、自社ブランド「em」から発売予定の有線イヤフォン「NEXIEM Linear」を初展示。フルレンジMEMSドライバーのシングル構成という尖った仕様で大いに注目を集めているモデルで、まだ試作段階だというが、試聴できた。

まずは標準構成のUSB-Cケーブルを使い、手持ちのスマートフォンで試聴。ケーブル中ほどにあるリモコン部にPCM 384kHz/32bit対応のDACが内蔵されており、そこでDA変換/増幅するスタイルだ。MEMSらしい、というより生々しい、開発途上版だからか名前のとおり直線的なサウンドを聴かせてくれる。

一方、エミライが総代理店を務めるiFi audioからは、xMEMS専用モードを搭載したDACデバイスを展開しており(2026年10月現在、iDSD ValkyrieとZEN CAN 3、Diabloの3モデル)、NEXIEM Liearを一般的な2pinケーブルに換装することで、xMEMS専用モードを試すことができる。ブースにはiDSD Valkyrieも展示してあり、ノートPCの音源で試聴してみた。

こちらも、MEMSドライバーらしい俊敏なレスポンスが印象に強いが、DAC内蔵USB-Cケーブルのときよりだいぶ聴きやすい。NEXIEM Liearはかなり尖った、言い換えれば実験的なプロダクトだが、MEMSドライバーの可能性を探るという点でも大いに期待したいところだ。

xMEMS専用モードを持つiDSD Valkyrieとの組み合わせでも試聴した

Astell&Kern

アユートブースでは、8月に海外で発表されていたAstell&Kern「PD5」が登場。マニアックだが実用的なフィーチャーが光るこのDAP、他国のオーディオショーでの評判で話題を集めたからか、試聴予約が多数申し込まれていた。

Octa DAC搭載のAstell&Kern「PD5」

PD5の目玉は、なんといっても「Octa(8基)DAC」。Cirrus Logic CS43198を8基搭載、しかも4基と8基でモード切り替えできるのだ。Quad(4基)モードはバッテリー持続を優先し、音質を追求するときはOctaモードでということだったが、Octaモードでも15時間再生が可能ということで、Quadモード(最大28時間再生)はバッテリー残量が厳しいときの応急対応という扱いになりそう。

対応フォーマットは、最大384kHz/32bitとDSD256。Bluetoothにも対応、LDACやaptX HDなどの高音質コーデックもサポートする。Astell&Kernとしてはコンパクト(といっても200g近い重量だが)なこともあり、オールマイティに活躍しそうな1台だ。

Technics

Technics「EAH-A1000」

Technicsは、ワイヤレスタイプのヘッドフォン「EAH-A1000」を国内初展示。ドライバーは磁性流体。

Technicsの磁性流体ドライバーといえば、有線イヤフォン「EAH-TZ700」や、完全ワイヤレスイヤフォン「EAH-AZ100」に搭載されたものは10mm径だったが、このEAH-A1000は40mm径。Technicsのヘッドフォンで磁性流体は初、エッジ部分にストロークの制御を正確にするSSTエッジ(スピーカーに採用実績があるTechnicsの独自技術)を採用したことも、胸を高鳴らせてくれる。

手にするとワイヤレスヘッドフォンとしてはやや重め(306g)だが、イヤーパッドの柔らかさと側圧が適度で装着感は良好。ヘッドバンドを覆う部分が樹脂製なことは気になるが、サーキュラー加工が施されたイヤーカップ、金属素材を用いたアーム部分などこだわりが随所に感じられ、全体的には好印象だ。

そのサウンドは、精妙にして巧緻。いわゆる“歪みっぽさ”はほとんど感じられず、シンバルロールも至ってスムーズ。音の輪郭は明瞭、ギターの高速カッティングも団子状にならずキレがいい。人気のワイヤレス&ANCという構成ゆえに密閉型だが、もし開放型だったら……と今後の展開にも期待せずにはいられないサウンドだ。

final

ZE3000 ASMR for TINGLE

finalブースでは、2台の完全ワイヤレスイヤフォン「ZE3000 ASMR for TINGLE」と「VR3000 PRO for Gaming」を世界初展示。前者は2021年発売のZE3000および2025年発売のZE3000 for ASMRをベースとするが、ユニット形状を一新したほかチューニングをやり直しており、サウンドは別物だという。後者は文字どおりゲーミング用途が主体であり、低遅延を強く意識した設計が特長だ。

VR3000 PRO for Gaming

個人的に興味を覚えたのは、VR3000 PRO for Gaming。30ms以下という低遅延通信を実現するUSB-Cトランシーバーと、充電やボリューム調整に対応したクレードルが付属していること。ポイントはクレードル後部のUSB-Cポート。これが、PCゲーマーにとって効果的だという。

というのも、USB-Cトランシーバーが使用する2.4GHz帯はUSB(3.0)のノイズ干渉を受けやすく、PCに直結すると通信途絶などの悪影響を受けかねない。しかし、クレードルに挿しPCから離して設置すれば、ノイズの影響を受けにくくなるというわけだ。遅延と接続の安定を追求するVRシリーズらしい工夫といえるだろう。

伊藤屋国際

伊藤屋国際ブースでは、新しい自社ブランド・SGENE(シーン)から「Kaimei SE」が初公開。7月の発売以降しばらく品薄状態が続いていたKaimeiのプレミアムデザイン版で、トライブリッド構成(1DD + 2BA)などドライバーユニットの変更はないものの、フェイスプレートに真珠貝と乳白色の高品質樹脂を奢るなどデザインを一新している。ケーブルは、7月発売の4.4mmリケーブル:Ameの別カラー「Shirasame(白雨)」を同梱するそうだ。

SGENE Kaimei SE

同じくSGENEブランドから、こちらも本邦初公開のリケーブル「Kaze(風)」が展示されていた。使用されている線材は金メッキ単結晶銅+単結晶銅、展示品は2ピン/CIEM-4.4mm。タイミング的には、ポタフェス2026夏 秋葉原で参考展示されていたリケーブル「Yuzu」の完成版と思われたが、並行して開発を進めていたもので別仕様だという。Kaimei SEともども、11月発売予定とのこと。

ブース係員にイヤフォン製品第三弾について尋ねてみると、「企画開発は順調に進行中です。ちょっと珍しい仕様ですよ」との返事が。次のポタフェス(東京)を待ちたい。

SGENE Kaze(風)

オーディオテクニカ

オーディオテクニカ「ATH-AL5NC」

オーディオテクニカブースでは、9月発売の開放型ワイヤレスヘッドフォン「ATH-AL5NC」が展示されていた。開放型ながらANCに対応する点が特長で、有線接続時やヘッドフォン単体でもANCを作動できるのだそう。ANCを試せる状態での展示は、本邦初だという。ドライバーは新規設計の53mm径ダイナミック型、1.2m長のリモコン付き3.5mmステレオミニケーブルが付属する。

240gという軽量設計にファブリック製イヤーパッドを採用しただけあって、装着感は良好。側圧も穏やかで、ふんわり、という言葉がしっくりくる。サウンドも開放型らしい空気感、ピアノの軽いタッチも繊細に描く。53mm径だけあって、低域の量感もまずまずだ。

ANCの効果は、まずまず。パッシブNC効果を期待できない開放型だけあって、周囲のざわめきを完全に防ぐことはできないが、2つのANCモード(HomeとAirplane)を行き来すると、Airplaneモードのほうがノイズ低減効果が大きいことがわかる。構造上音漏れはあるが(音漏れ抑制モードは未検証)、密閉型の蒸れと閉塞感がどうにも苦手、それでもANCは欲しい、という向きには数少ない選択肢となるはずだ。

4leaf

LOOB AUDIO「Grace」と「Cascade」

4leafブースでは、新しく取り扱いを開始するLOOB AUDIOの「Grace」と「Cascade」の2製品を国内初展示。両モデルとも、11mm径PUセラミック複合振動板を1基積むシングルドライバーモデルだが、ダイナミック型の自然な響きを残しつつ超高域の解像度を飛躍的に高めたという。少し高めに価格設定された前者は高域をよりクリアに、後者はバランスと聞き心地を重視したチューニングを施したとのこと。

Graceを試聴した印象は、シングルDDらしからぬ高域方向の情報量。BAとは異なる煌めき感、ツヤ感があり、聴き心地がいい。それでいてDDらしい低域の量感があり、わかりやすい。付属のケーブルは3.5mmシングルエンドとのことだが、4.4mmバランスに換装するとまた新しい可能性を発見できそうだ。

TANCHJIM KASIER

同じく4leafが代理店を務める隣りのTANCHJIMブースにも、国内初展示の新製品「KASIER」を発見。1DD + 4BAのハイブリッドタイプで、新設計の3ウェイ・アナログ・クロスオーバーを採用したという。基板の一部が透けて見える高透明度レジンシェルも相まって、話題となりそうなモデルだ。

海上 忍

IT/AVコラムニスト。UNIX系OSやスマートフォンに関する連載・著作多数。テクニカルな記事を手がける一方、エントリ層向けの柔らかいコラムも好み執筆する。オーディオ&ビジュアル方面では、OSおよびWeb開発方面の情報収集力を活かした製品プラットフォームの動向分析や、BluetoothやDLNAといったワイヤレス分野の取材が得意。2012年よりAV機器アワード「VGP」審査員。