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“黒”にこだわる超本格画質プロジェクターに手が届く。XGIMI「TITAN Noir Max」の実力に迫る

TITAN Noir Max

映画館の巨大なスクリーンを代表として、シアターといえばやはり大画面だ。大画面の迫力や存在感が非日常の体験をよりリアルなものにしてくれる。現在でも液晶ディスプレイなどでも100インチ超の製品が登場してきているが、価格や搬入・設置などを考えるとまだ現実的とは言いにくい。プロジェクターならば家庭の環境でも100インチを超える大画面が可能だ。自宅のリビングなどで映画館のような大画面を簡単に実現できるのだ。

現在のプロジェクターで話題なのが、DLP方式。片手で持てるようなコンパクトサイズで、寝室などどこでも大画面を実現できるモバイルタイプが人気だ。自動図形歪み補正やオートフォーカスなど、設置時の面倒な調整が自動になり、誰でも簡単に使えるようになった。

一方で、バッテリーを内蔵しない、より本格的なホーム用プロジェクターにも進化。4K解像度、レーザー光源の採用で明るく、しかも色再現範囲も広い。それでいて、設置時の自動調整など使い勝手の良さはモバイルタイプと同様だ。「モバイルプロジェクターを使っているが、そろそろ本格的な据え置きプロジェクターが欲しい」と考えている人も多いだろう。

このようなプロジェクター市場において、世界トップシェアを誇るXGIMIから、さらに実力を高めた本格的シアター向けシリーズ「XGIMI TITAN Noir」が登場した。

TITAN Noirシリーズ

「Noir(ノワール)」とはフランス語で「黒」を意味する言葉。黒の再現や暗部の階調表現にこだわったモデルだとわかる。これはなかなか気になるところだ。そこで、すでにVictorの「DLA-V90R」を使って家庭でのホームシアターを実践している筆者が、その実力を確かめてみることにした。

筆者は大型のプロジェクターを使ってホームシアターを構築している

「TITAN Noir」シリーズのMakuakeプロジェクトページ

家庭用プロジェクター世界出荷台数No.1の実績を持つXGIMIの「TITAN Noir」

XGIMIの名前を知っているという人もかなり増えてきたと思う。DLP方式を使ったプロジェクターを数多くラインアップしているブランドのひとつであり、グローバルホームプロジェクター市場で3年連続出荷量第1位のメーカーだ。

コンパクトなモバイルタイプから、設置性や持ち運びのしやすさを意識したタイプ、画質を重視したタイプと数多くの製品を展開。より高性能で使いやすく、多機能なプロジェクターのための研究開発に大きな投資を実施しており、特許も多数保持するテクノロジーカンパニーだ。自社で光学レンズまで設計・生産できるなど、高い技術で画質の追求やコストパフォーマンスに優れたモデルを開発している。

研究開発や製造を行なうXGIMI R&D Industrial Park

スタートこそ、手軽に使えるモバイルプロジェクターのような製品が多かったが、プロジェクターとしての画質・音質の実力を高めたことで、より本格的なホームシアター市場においても注目を集めるようになった。そしてそのXGIMIが満を持して発表したのが、最上位モデルの「TITAN Noir」シリーズというわけだ。

まずは「TITAN Noir」シリーズの特長から紹介していこう。

表示デバイスはSSTアーキテクチャを採用した最新世代のDMDチップを採用したDLP方式。0.47インチDMDでありながら、コントラストを40%向上したほか、最大輝度や放射性能、長期信頼性を高めている。そして光源は日亜化学工業の最新世代のRGBレーザーだ。これに加えて、映像の明るさに合わせて光を絞るアイリスを2つ搭載したデュアルアイリスが大きな特長。これにより、明るいシーンだけでなく、暗いシーン再現性を高めている。

右奥にある、光を反射しているのがDMDチップ。絞り羽根を備えた2つのリング状のパーツが見えるが、これがデュアルアイリス。明るいシーンだけでなく、暗いシーン再現性を高めた

これらを制御するのがX-Vision画質処理チップ。デュアルアイリスとRGBレーザー光源、DMDチップを緻密に連携させて映像を制御する。最後に投射レンズは非球面ガラスレンズ製で15枚のレンズで構成されたAグレード光学システム「X-Master レッドリングレンズ Pro」としている(Max、Proのみ)。

TITAN Noir Maxの光学エンジンの設計・開発から組み立てまで全て自社で実施

内蔵するスピーカーはharman/karadon製のスピーカーを内蔵している。12Wのスピーカー×2の構成で、ドルビーオーディオとdts Virtual Xに対応している。プロジェクターとして、表示素子や光源、制御系はもちろん、2つのアイリス制御やレンズまでかなりこだわっているのがわかるだろう。

harman/karadon製スピーカーも内蔵している

なお、「TITAN Noir」には3つのモデルがある。それぞれの違いは主に最大輝度。最上位のTITAN Noir Maxはレーザーチップ数が50個で、最大輝度は7,000ISOルーメン。Proは40個/6,000ISOルーメン。無印は30個/4,8000ルーメンとなる。

また、前述した「X-Master レッドリングレンズ Pro」を採用するのはMaxとProのみとなる。トータルでも性能にも違いがあり、ネイティブコントラストはMaxが最大10,000:1、Proが最大8,000:1、無印が最大7,000:1となる。

こうした性能以外にも付属するケースが異なるほか、本体の表示色などに違いがある。価格はMaxが99万9800円、Proが84万9800円、無印が69万9800円となるが、現在Makuakeでのクラウンドファンディングを実施中で、すでに1億円を突破している(9月25日現在)。早期購入では割引価格での購入できる。プロジェクト終了日は2026年12月17日だが、早めに応援購入をした方が割引率は高くなるので、購入を考えている人は早めに決断するといいだろう。

  • 「TITAN Noir Max」999,800円(割引価格最大50%OFFの499,800円から)
  • 「TITAN Noir Pro」849,800円(同最大45%OFFの469,800円から)
  • 「TITAN Noir」699,800円(同最大46%OFFの379,800円から)

また、安くはない製品なので、購入前に実機を見たいという人も多いはず。そんな人はAV専門店の「アバック」全国12店舗で実機の展示が行なわれる事が決定したそうなので、お店で体験するのも良いだろう。

3モデルのスペックが異なるポイント

自宅で実際にTITAN Noir Maxの実力をチェック

では、いよいよ、実際にお借りしたTITAN Noir Maxの実力をチェックしてみよう。到着した実機は、レザー調の収納ケース(Pro、無印はフォーム収納ケース)に収められており、なかなかの高級感だ。

TITAN Noir Max

まずはさっそく、設置。今回は投写距離に合わせてスピーカー用の背の高いスタンドを用意し、その上に設置した。設置位置はスクリーンの正面のセンター付近。レンズシフトや図形歪み補正をなるべく使わずに、画質への影響がもっとも少ない位置に置いた。

本格的なプロジェクターだが、サイズはコンパクトだ
脚部のデザインも凝っている

また、本機はGoogle OSのような動画配信サービス用のOSを内蔵しないので、HDMI入力へApple TV 4Kをつないでいる。なお、11月のソフトウェアアップデートにより、本体のみでは内蔵するギガビットLAN経由でNASなどに保存した動画などにアクセスできるようになる予定だ。接続端子としては、HDMI入力が3系統(HDMI1はeARC対応)、USB2.0入力、USB3.0入力、オーディオ入出力(ステレオミニ)、光デジタル入出力などがある。

背面の端子部

製品のサイズは横幅379mm、奥行き288mm、高さ231mmで、重量も8.1kg。モバイルのように片手で持ち運べるサイズではないが、ちょっとした棚やテーブルなどに置くとすれば、十分にコンパクトだ。

投写は自宅のスクリーンに映したが、投写サイズは120インチ、投写距離は3mほど(最短2.6m/最長5.3m)。数値上ではあるが、長辺方向なら6畳間でも投写できる。なお、最大投写サイズは300インチ(最短6.5m/最長13.3m)。光学ズームなので、画質劣化を最小に抑えたまま設置位置の微調整ができるのは便利だ。

リモコンも付属。自照式で高級感がある

実際に映像を映してみる

まずはApple TV 4Kの映像を入力して、よく見る映画などを見てみた。画質モードは「映画」。

明るく発色のよい映像だ。このあたりはRGBレーザー光源のDLPプロジェクターも同様だが、感心したのは、多くのモデルで不自然だと感じることが多かった赤色の表現。NETFLIXのロゴの「N」のマークの赤がピンク色というか蛍光色を帯びた色あいになってしまうことが少なくなかった。このせいで、特に朱色が不自然な赤色になってしまうことがあったが、その不自然さはきちんと解消されていた。純度の高い緑や青といった原色も見た目の不自然さはない。これは、RGBレーザーのクセでプロジェクター側でもなかなか改善が難しいとも感じていたが、最新型RGBレーザーの改善も進んだのであろう。見た目の違和感もなく、しかも鮮やかで自然な色再現だ。

次は黒。まったくの非表示の黒をプロジェクターで再現するのは難しい。液晶テレビならばバックライトの分割駆動で黒の部分のバックライトを光らせないなどができるが、プロジェクターでは不可能だ。TITAN Noir Maxで、例えば黒画面に映画会社のロゴマークなどが浮かぶシーンを見ると、背景の黒はわずかに光ってしまう。だが、その非表示の黒がほんのわずかに光る部でもかなりしっかりと黒が再現できていた。

これまでのDLPプロジェクターを見た経験からすると、なかなかしっかりとした黒になっている。常用するD-ILAのプロジェクター(DLA-V90R)と比べても、これまでのDLPプロジェクターに感じていたような大きな差はない。

そのため、これまでのDLPプロジェクターは部屋をやや明るくして(200ルクス以下の薄暗い環境)見ていたのだが、TITAN Noir Maxではその必要はなく、完全な暗室環境で視聴している。

鳥居氏が、自宅でクオリティを細かくチェックした

見慣れたテレビドラマなどを見てみたが、平均輝度の高い明る画面の映像ならば黒浮きや黒の締まりに不満を感じることはないだろう。コントラスト感のある優れた映像だと感じた。DLP単板方式特有のカラーブレイキングも、Anti-RBEテクノロジーを使って低減できる。これを活用すると、頭を故意に強く振ったり、字幕を見たときに目に付くことがある程度で、ほとんど気にならないとレベルになった。

Anti-RBEテクノロジー効果のイメージ。右のように、輪郭などに虹色のノイズが出るDLP特有のカラーブレイキングを、左のように低減できる

ここで画質モードをひととおり見てみた。

画面の下部メニューから、画質モードを切り替えられる

「映画」モードは一般的なテレビ番組の画面と比べると色温度が低い(6500K前後)だが、これは画質調整で変更可能。色温度が低いままで見ていても大きな不満を感じることは少なく、派手な色彩も不自然にならず、鮮やかな色と光を楽しめる。基本的にはどんなコンテンツでも安定して楽しめる。

「標準」はやや明るい。テレビ的な画作りだ。鮮やかな原色で少し蛍光色を感じるが、不自然というほどではない。「スポーツ」もほぼ同様だが、動きのある映像を滑らかに表示するための動画補完が強めで、ヌルヌルと動く。ただ、テロップ文字が表示される周囲で補完エラーも少し目に付いた。

「FILMMAKER MODE」は、「映画」よりもやや色を抑えたモニター的な画作り。映画作品はこちらが良さそうだが、せっかくのRGBレーザーの鮮やかさはもう少しあってもいいかと思った。

「ISF Day」と「ISF Dark」はさらにモニターに寄せた正確な表現をするようだが、やや地味に感じてしまうこともある。その時は、詳細な画質設定で、好みの色にするといいだろう。「Day」と「Dark」の違いは映像の明るさが異なる。明るめの部屋なら「Day」、暗い部屋なら「Dark」を選ぶ。

ひととおり見たところ、映画を中心に試聴するならば、画質モードは「映画」が良さそうだと感じた。ふだんの生活に支障がない範囲の部屋の明るさならば「標準」がいい。あとは詳細設定で好みの明るさや色再現に調整すればいいだろう。

TITAN Noir Maxは黒の締まりやコントラストも十分で、なかなか実力の高いモデルだと感じた。色の再現も不自然な派手な色になることもなく、映画らしいトーンがしっかりと再現できる。肌の質感など、階調性も大きな不満はない。これならば、大好きな映画などをじっくりと見るような使い方でも満足できるはずだ。

今度は、UHD BDプレーヤー(パナソニックのDP-UB9000)に接続を変え、映画ソフトをじっくりと見てみることにする。作品は「プロジェクト・ヘイル・メアリー」(輸入盤)。本作はDolby Vision収録なので、画質モードも「ドルビービジョン:ブラック」を選択した。

画質は十分に優秀なレベルだ。ペトヴァスコープの赤一色の世界でみる星々の輝きも自然な再現だし、タウ・セチeという星の複雑な色合いもしっかりと再現した。宇宙空間の深い暗闇などで、もう少し暗部の再現性がほしくなるくらいだ。

なお、アイリス機構は手動制御に切り替えることもできる。通常はダイナミックだが、f/2.0、f/3.0、f/4.0、f/5.5、f/7.0に切り替えることも可能。f/7.0がもっとも暗くなり、黒も締まるが、全体的な光を絞るので最大輝度も抑えられてしまうので、映像はやや暗くなる。もともとが暗いシーンが多い映画などで選ぶ使い方が良さそうだ。ふだんはダイナミック(映像に合わせて最適に絞りを調整)のままでよい。

アイリス機構は手動制御に切り替えも可能だ

また、入力された映像を解析して、自動で最適な暗部の階調を再現するDBLE(Dynamic Black Level Enhancement)も有効だ。DBLE有効時は暗いシーンで赤みがかったり、緑に寄るような場合に調整することもできる。「FILMMAKER MODE」などではDBLEがOFFとなっている場合があるので、必要に応じて使い分けるといいだろう。

独自開発の画質アルゴリズムを搭載したX-Vision画質処理チップで、Dynamic Black Level Enhancement(DBLE)の精度がより高まった

本格的な画質で、より快適に、気軽に使える。プロジェクターの新しいスタイル

数日ではあったが、TITAN Noir Maxはふだん使っている大型プロジェクターの代わりに日常的に使っていろいろと試していたが、画質で大きな不満を感じないことはもちろん、その他の部分では大きな魅力を感じることが多かった。

例えば、動作時のノイズ。視聴中は、自分の頭のすぐうしろにプロジェクターがあったのだが、ファンノイズは静かで映画を見ていてもほとんど気にならなかった。無音ではないが、エアコンよりもずっと静かだし、映画の音を出していたら、ほとんど気にならないレベル。

冷却用に、筐体の天面や背面には細かな放熱孔が設けられているが、ファンノイズは静かだ

内蔵するスピーカーも、流石にAVアンプを使った普段の9.4.4chサラウンドのシステムには及ばないが、2チャンネルのスピーカーの音質はセリフも聴きやすく、コンパクトな筐体にも関わらず、低音も思ったよりも出る。バーチャルによるサラウンド再生も、広がりはほどほどに感じられた。

ただ、画質的にかなりの実力があるので、AVアンプとスピーカーという本格的なサラウンドシステムとも組み合わせて欲しい。逆に、寝室などでシンプルかつ贅沢に使うなら、内蔵スピーカーも十分実用になる。

筆者は大画面でゲームも楽しむが、1080P@240Hzで1ms(ゲームモード)の低遅延もありがたい。ALLM(自動低遅延モード)やVRR(可変リフレッシュレート)に対応するなど、ゲーミング性能が優れていることも紹介しておきたい。大画面で楽しむゲームの面白さをぜひ体感してほしい。

TITAN Noir Maxを自宅で使い、DLPプロジェクターもずいぶんと進歩したことがよく実感できた。

このサイズで、ここまでの画質を実現できているのはちょっと驚く。数百万円する、大型プロジェクターは高価で手が届かないと感じていた人にはまさにおすすめの製品だ。

最上位のTITAN Noir Maxで、100万円近い価格ではあるいが、Makuakeの応援購入で割引価格で入手できる。筆者の素直な感覚として、60~70万円くらいの価格でTITAN Noir Maxが手に入るならば、かなりお買い得なモデルと言っていいと思う。

画質的にしっかりと映画を満喫できる実力を備えたプロジェクターでありつつ、このコンパクトなサイズは使いやすい。ちょっとした棚や置き台に設置できるので、工事が必要な天吊りをしなくても、容易に使い始められる。メニューなどの操作もサクサクしており、この使い勝手の良さは誰にとってもありがたい。もはや、これからの本格ホームシアター用プロジェクターは、TITAN Noir Maxのようなモデルが主流になっていくとさえ感じた。

鳥居一豊

1968年東京生まれの千葉育ち。AV系の専門誌で編集スタッフとして勤務後、フリーのAVライターとして独立。薄型テレビやHiFiオーディオ、ヘッドフォンなどのポータブル機まで、AV系のジャンル全般をカバーする。AV専門誌「HiVi」(ステレオサウンド社)のほか、さまざまな媒体、メディアで製品紹介記事や取材記事を執筆。かつてはB&W MATRIX801 S3を中心とした大型スピーカーでサラウンド再生システムを構築していたが、現在は、BWV H-1という小型スピーカーによるシステムへ移行中。映画はもちろん、アニメやゲームも愛好する。