~EDIROL新製品発表会。64bitドライバも順次公開へ~ |
EDIROLブランドの新製品発表会 |
4月25日、Rolandの東京オフィスで、EDIROLブランドの新製品発表会が開催された。今回発表されたものは、主に3月にドイツ・フランクフルトで開催された「Musik Messe」で出品された製品に関する、国内での正式発表で、以前AV Watchでも紹介されたUSB 2.0用のオーディオインターフェイス「UA-101」などのハード3製品および、ソフト2製品、また映像系のハード2製品などだった。
Musik Messeで出品された製品が国内で正式に発表 |
なんといっても今回の目玉はUA-101。以前、Digital Audio Laboratoryでも開発者インタビューなども交えて詳しく紹介したUA-1000以降、約2年ぶりの登場となったUSB 2.0対応のオーディオインターフェイスだ。UA-1000が登場した前後から、各社ではFireWireオーディオインターフェイスの発表ラッシュとなり、さまざまな製品が登場した。EDIROLブランドでもFA-101、さらにはFA-66という製品をリリースしている。
しかし、Windowsユーザーにとっては本命ともいえるUSB 2.0対応のオーディオインターフェイスで、普及価格帯のものがようやく登場した格好となる。
UA-101 | 10IN/10OUTの入出力を装備し、最高24bit/192kHzまで対応するのはFA-101と同じ |
モニタ出力レベルなども設定できる |
Rolandによれば、Windows XP SP2の登場で、ようやくOS側でUSB 2.0オーディオを扱う環境が整ったこと、またハードウェア環境も整ったので一般向けの製品が投入ができたとのことだ。見た目的にはFA-101とそっくりな形の青いボディーだが、仕様もほぼ同等となっている。10IN/10OUTの入出力を装備するとともに最高24bit/192kHzまで対応と、FA-101と同じ。24bit/192kHz動作時は6IN/6OUTまでという制限もFA-101同様だ。
ただし、FA-101との若干の違いも存在し、リアにMONITOR OUTという端子が搭載され、モニタ出力が可能になった。ドライバとして組み込まれるミキサーで、モニタ出力レベルなども設定できるようになっている。また入力端子が+4dBuと-10dBuの切り替え式になり、UA-25、FA-66などで評判のいいリミッタを搭載したことなどもFA-101からの機能強化点だ。ただし、1点不便になったといえるのが、ACアダプタが必要なことだ。これはFireWireと異なりUSB 2.0では供給できる電流容量500mAと小さいためのようだ。
実際の音質や使い勝手など詳細については、また実機を使ってレポートを予定している。なお、UA-101の発売は5月下旬、オープン価格だが、実売で5万円台後半になる見込み。
49鍵のシンプルなPC-50 | 接続端子をサイドパネルに集約 |
もうひとつは、「PC-80」というスピーカーも内蔵した61鍵の製品。これは24bit/96kHzのオーディオインターフェイスとしての機能も兼ねているのだが、最大の特徴はHyperCanvas相当のGM2音源をソフトウェアで装備している点。PC-80上のボタンを押すと、このソフトシンセが自動的に起動し、PC-80を鳴らすことができるのだ。専用に作りこんでいるだけに、レイテンシーもほとんどなく、音源搭載のキーボードと同様の感覚で利用できる。
ただし、このソフトシンセはPC-80が接続していないと動作しない仕様であり、他のオーディオインターフェイスなどでの出力はできない。また、あくまでもスタンドアロンで動作させることが前提となっているため、VSTやDXiまたAudioUnitなどのプラグインとしての利用はできない。
スピーカーも内蔵するPC-80 | HyperCanvas相当のGM2音源をソフトウェアで装備する |
発売時期はPC-50が6月でPC-80が7月。またともにオープン価格だが、実売はPC-50が15,000円前後、PC-80が4万円前後になる見込みだ。
統合型ソフトシンセとなっているため、中にはいろいろな音源が入っているのだが、今回の目玉となるのが、Dimensionというサンプリングシンセサイザで、約3GBのマルチ・ウェーブ・サンプルから成る700音色以上のプリセット・プログラムが収録されている。また数多くのエフェクトとピッチ・カットオフ・レゾナンスなど5種類のパラメータに対して個々のエンベロープを描くことのできるモジュレーターを装備し、音色をいろいろ変えることができる。もちろん、オリジナルのサンプル素材をWAV形式で読み込んで利用することも可能だ。そして、加工した音色は最大4音色までのレイヤーに対応しており、重ねたりスプリットするなどして利用することができる。
Project5 Version 2 | サンプリングシンセサイザ「Dimension」 |
また前バージョンとはユーザーインターフェイスが少し異なり、より使いやすいものへと進化した。一番大きな進化は、各トラックのパラメーターを一括管理できるトラック・インスペクタが採用されたこと。また、表示されたパラメータのうち、ソフトシンセ、オーディオエフェクト、MIDIエフェクト、アルペジエーターまでの設定を1つのセッティングとして保存できるデバイス・チェインという機能も搭載された。ReasonのCombinatorにも近いものといえそうだ。
そのほか、MIDIやオーディオのフレーズを1トラックあたり最大64個のセルにアサインできるグルーブ・マトリックス機能が搭載されたこと、リサンプリングによる過激な音色可能なALIAS FACTORをはじめとする10種類のプラグインエフェクトが搭載されたことなどがあげられる。機会があれば、このProject5 Version 2についても、実際のソフトを使いながら詳しく紹介したいと思う。
ALIAS FACTOR | SONAR LE |
ちなみに、SONAR 4との違いは利用できるトラック数や入出力数、同時利用可能なプラグインの数、また同梱されているプラグインの種類など。とはいえ、オーディオは最大64トラック、MIDIは256トラック、同時入出力はステレオで4チャンネル(モノラルなら8チャンネル)、同時使用可能なソフトシンセが8つで、エフェクトが24というから、そこそこのことはできてしまうだろう。
ただ、このSONAR LEの登場でちょっと気になるのが、HOME STUDIO 2004の存在。同製品はSONARの下位バージョンという位置づけで現在販売されているが、ユーザーインターフェイスはSONAR 1ベースであり、同梱プラグインなど数は多いもののSONAR LEの影に隠れてしまいそうだ。
なお、SONAR LEのバンドルが開始されるのは5月27日予定で、以下の19製品が対象となる。
【SONAR LE 無償バンドル対象製品】
そして、もうひとつインフォメーションがあったのがWindows XP Professional x64 Editonへの対応。すでに4月25日現在でβドライバを公開しており、今後順次対応機種を増やしていくとのこと。現在β版で公開されているのは、UA-1000、UA-25のオーディオインターフェイス、PCR-M80、PCR-M50、PCR-M30、PCR-M1、PCR-80、PCR-50、PCR-30の各キーボード、UM-880、UM-1X、UM-1SXの各MIDIインターフェイスなどだ。
CG-8 |
Digital Audio Laboratoryのテーマからははずれるので詳細は省くが、今回の発表会で一番驚いたのが、EDIROLブランド製品として登場した映像系の機器「CG-8」。これは、静止画素材をテクスチャとして、動きや形、色など、さまざまなパラメータを持つエフェクトで、リアルタイムに映像を生成するというもの。
X-YパッドやDビームコントローラなどを使うことで、本当に3Dの動画をリアルタイムにグルグル動かしてしまう。たとえば、JPEGで取り込んだ写真をテクスチャとして貼り付けたチューブのトンネル内をグネグネ、グイグイと進んでいく画像が、どうしてリアルタイムでできてしまうのかはとっても不思議なほど。
ちょっと前までは、高性能なグラフィックのワークステーションで時間をかけなくては生成できなかったような動画が、リアルタイムで動かせる。Rolandではこの製品については、映像も楽器のように演奏できる装置を作ったと説明していた。
□ローランドのホームページ
http://www.roland.co.jp/
□関連記事
【4月6日】ローランド、24bit/192kHz対応USB 2.0オーディオ
-内部演算40bitのDSPを採用。10ch同録再対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050406/roland.htm
【2月28日】【DAL】第181回:統合型ソフトシンセ「Reason 3.0」を試す
~ 2年半ぶりのバージョンアップで完成度が向上 ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050228/dal181.htm
【2004年11月22日】【DAL】第169回:3大DAWのメジャーバージョンアップを検証 その2
~ マルチチャンネル編集に対応した「SONAR 4」 ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20041122/dal169.htm
(2005年4月26日)
= 藤本健 = | リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。 最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
[Text by 藤本健]
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