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“音質”最優先のHDDオーディオプレーヤー
デジタルアンプ搭載。シンプルな操作性が魅力
ケンウッド「HD20GA7」

発売日:6月下旬発売
標準価格:オープンプライス
実売価格:45,000円


■ 初のデジタルアンプ搭載HDDオーディオプレーヤー

 国内メーカーの進出相次ぐデジタルオーディオプレーヤー市場。1月以降、ケンウッド、松下電器、ソニー、ビクター、シャープなどが新製品を続々投入し、海外メーカーが主役だった市場の勢力図も徐々に変わりつつある。

 そんな中、ケンウッドは1.8インチの20GB HDDを搭載したポータブルオーディオプレーヤー「HD20GA7」を6月下旬より発売する。2月に発売した、フラッシュプレーヤーの「M256A3/512A3」は、高音質をウリにしたシンプルなオーディオプレーヤーだったが、そちらはCreativeとの共同開発製品で、ボディデザインにも新鮮味があまり無かった。

 「HD20GA7」は、新デザインの筐体に、1.8インチ20GB HDDを内蔵。2.2型、解像度320×240ドットのカラーTFT液晶ディスプレイを搭載する。シンプルながらデザインと作りの良さはいかにも日本メーカー製。

20GB HDDプレーヤーの実売価格
ケンウッド HD20GA744,800円
アップル iPod32,800円
東芝 gigabeat F2136,800円
ソニー NW-HD534,800円
Creative Zen 20GB29,800円
iriver H32034,800円
iAUDIO M329,800円
iAUDIO X539,800円
iPod Photo 30GB(参考)38,800円
*6月10日編集部調査

 動画再生やフォトビューワ機能、ボイスレコーダなどの付加機能のない純粋なオーディオプレーヤーだが、価格は実売で45,000円と20GB HDDオーディオプレーヤーの相場から考えるとやや高め。同サイズのカラー液晶とHDDを搭載した東芝「gigabeat F21(実売37,000円)よりもさらに8,000円ほど高い。

 では、「HD20GA7」のセールスポイントとは何か? ケンウッドの答えは明確で「音質」だ。HDDオーディオプレーヤーでは初となるデジタルアンプを搭載。独自の「NEWクリアデジタルアンプ」により、HDDからの信号伝送をフルデジタル化することでクリアな再生を実現しているという。

 また、電源回路にセンシングアンプを搭載し、デジタルアンプのD/A変換時にローパスフィルタ部の逆起電流から発生するノイズを解消。クリーンで安定した電源供給を行なうことで、歪みの発生を抑え、S/N比を改善しているという。さらに同社製品ではおなじみだが、音質に関しては、音質最高責任者である“音質マイスター”が全面的にプロデュースしてクオリティ向上を図っているとのこと。発表会では社長自ら「音質へのこだわり」を語ったことからも、ケンウッドの“音”への執着が伺える。


 しかし、各社ともに音質へのこだわりを強めている昨今、そこまで差別化できるのだろうか? とりあえず聞いてみないことには始まらないので早速試用してみた。ボディカラーは、ホワイト(W)とブラック(B)の2色が用意されており、今回はホワイトを試用した。


■ 大型カラー液晶を装備

同梱品

 本体のほか、同梱品はイヤフォンとACアダプタ、USBケーブル、キャリングポーチなど。転送ソフト用のCD-ROMを探してしまったが、「HD20GA7」では、転送ソフト「Kenwood Media Application」や製品マニュアルを本体内に内蔵し、最初にHD20GA7を認識した際にインストールを行なうので、CD-ROMは付属品しない。

 ディスプレイは、2.2型、解像度320×240ドットのカラーTFT液晶を搭載。一見してデザイン的には東芝のgigabeat Fシリーズを思わせるが、実際にソフトウェアは東芝と協力て開発したものとのことで、UIの操作画面や液晶上に表示される操作ガイドなど、非常によく似ている。

 液晶には、楽曲のジャケットデータやID3タグの日本語表示などが行なえる。操作ボタンは液晶下部に「電源/メニューキー」と「マルチコントロールキー」、「ボリュームコントロールキー」を装備。主な操作を行なうマルチコントロールキーは、上下左右に押し込めるボタン式となっており、上下のボタンのみ2段階の押し込みが可能となっている。

 上面にはPCとの連携用のUSB端子や、ヘッドフォン出力端子、DC入力端子を装備。左側面にBATT ONスイッチ(長期間利用しない際にバッテリをOFFにする機能)、右側面にHOLDスイッチを装備。接続用の専用ドックなどは備えていない。

 再生対応フォーマットはMP3/WMA/WAVで、WMAのDRMもサポート。対応ビットレートはMP3が32~320kbps、WMAが48~192kbps。

 イヤフォンは15mm経由ユニットを搭載した独自開発のもの。リモコンなどは備えていない。ACアダプタは比較的小型のもので持ち運びにもさほど苦にはならないが、USBでの充電機能も搭載しているので、PCを伴う出張時などにはUSBケーブルだけ持って行けばいい。

2.2型の240×320ドットの大型カラー液晶を搭載 左側面にBATT ONスイッチとストラップホールを装備 右側面にHOLDボタンを備えている
シンプルな背面 上面にUSB端子やDC入力、ヘッドフォン出力を装備する 底面。専用のドック端子などは特に用意していない

gigabeat F(左)とiPod 20GB(右)との比較



■ WMPからも転送可能に。ジャケット表示が魅力

PCに接続するとプログラムが呼び出される

 まずは転送ソフト「Kenwood Media Application(以下KMA)」をインストールする。最初にPCに接続した際に、インストーラが立ち上がり、ウィザードに従って操作するだけでインストールが完了する。

 KMAはシンプルな転送ソフトで、リッピングやエンコードの機能は備えていない。起動や動作も高速で、簡単なプレイリスト作成機能のほかは、プレーヤーとの同期、転送のみというソフト。アルバムジャケットの転送機能も備えているが、DRM付きのWMAファイルの転送はできないなどの制限もある。

 約8GBのライブラリを登録したところ、毎回起動時に「ライブラリ更新処理中」という表示が出て1分ほど待たされるのも気になる。通常自動更新をOFFにしておくといいかもしれない。

 一方、Windows Media Player(以下WMP)からの転送にも対応。ライブラリやプレイリストの同期/転送が行なえるほか、WMA DRMファイルの転送にも対応する。しかし、ジャケットの転送機能は備えていない。


Kenwood Media Application Windows Media Playerからもデータ転送が可能

KMAでジャケット写真を設定

 KMAで残念なのは、プレイリスト作成機能。リスト登録は簡単なのだが、作成したリストがアルバムの楽曲順になってしまう。つまり、ID3Tagなどの曲情報で[アルバムの1曲目]という情報が登録されていると、プレイリストでも1曲目になってしまい、実際の再生順の編集が行なえないのだ。この点は要改善と感じるが、WMPでは普通にリストの曲順も自由に設定できるのでプレイリストを活用したい場合はWMPを利用するべきだろう。

 せっかく大型液晶を搭載しているので、ぜひKMAでジャケットの登録を行ないたいところだが、この登録方法が少しやっかい。KMAのライブラリ上では、ジャケット追加できず、プレーヤーを接続して、[PD]と表示されるプレーヤーを選択。プレーヤー内のファイルに直接画像を設定する。また、アルバム単位でのジャケット一括設定も行なえる。

 要するにgigabeat Fの付属ソフトgigabeat roomと同じなのだが、もう少しシンプルな登録方法が欲しかったところではある。

 もっとも、WMPだけで音楽転送が可能になったのは、2月に発売されたフラッシュメモリプレーヤーから比較すると大きな進歩。ジャケット写真を利用しないのであればWMPだけ利用してもいいのだろう。ただ、ジャケット表示に見慣れると、ジャケットが無いアルバムは非常に寂しく感じてしまうのだが……。



■ 操作性が向上した「gigabeat F」?

電源を入れると操作ボタン部が青く点灯する

 マルチコントローラ左の電源ボタンの長押しで電源ON。本体は曲面を生かしたデザインで、なかなか高級感がある。電源を投入すると操作ボタン部が青く点灯するのも雰囲気があっていい。外形寸法は104×61×17mm(縦×横×厚さ)、バッテリを含む重量は140gで、若干大きく重く感じるが、手になじむ感覚で持ちやすい。

 UI的には、gigabeat Fによく似た縦スクロール式で、アーティスト/アルバム/ジャンル/フォルダ/お好みごとの検索メニューが用意される。検索メニュー下には、操作ガイドが表示される。壁紙は「白(HAKU)」、「墨(BOKU)」、「闇(YAMI)」の3種類から選択できる。着物の柄などをイメージし、「国産プレーヤーとして、和を意識したデザインを採用した」という。


楽曲検索のメインメニュー
白(HAKU) 墨(BOKU) 闇(YAMI)

 ここでマルチコントローラの上下で、メニューを選択し、コントローラ右で一段下の階層に移動する。[アーティスト]の場合は、アーティストを選択した後、アルバムを選択し、コントローラの中央を押し込むと再生が始まる。便利なのは検索中の上下スクロール時に1段押し込むとゆっくりスクロールし、さらにもう1段まで押し込むとスクロールスピードが高速化すること。レスポンスがいいこともあり、検索中にストレスを感じることはほとんど無かった。

操作ガイドが便利

 再生画面ではコントローラの左で上階層への移動。上を押すと曲送り、下で曲戻し。上下の長押しで早送り/戻しとなる。普通に考えると、左右が曲戻し/送りなので戸惑うかと思ったが、操作ガイドが表示されることもあり、ほとんど間違えることはなかった。右を押すと音楽検索画面となる。

 再生画面はノーマル/蝶(CHOU)/鼓動(KODO)/楽画(GAKUGA)の4モードが用意される。せっかくの大型液晶を生かすには、ジャケット写真が大写しになるGAKUGAを使いたいところだ。


再生画面
楽画(GAKUGA) 鼓動(KODO) 蝶(CHOU) ノーマル

 gigabeat Fでかなり戸惑った記憶があるのだが、思いの外操作は直感的に行なえる。インターフェイス的にはあまり変わらないが、個人的にはgigabeat Fのクロスパッドを「なぞる」操作になじめなかった。「HD20GA7」ではボタン操作時にしっかりとしたクリック感があるので、そこで直感的にわかるのだろう。gigabeat Fでも慣れれば直感的に使えるということかもしれない。

MENUボタンでメニュー画面を立ち上げ

 ボリュームの操作はマルチコントローラの右脇にあるボリュームボタンの上下で行なう。また、再生中に電源/MENUボタンを押すとMENU画面が立ち上がる。ここでは、通常再生/フォルダ再生/一曲リピート/フォルダリピート/フォルダランダム/全曲ランダムの再生モードが選択できる。

 また、イコライザやユーザーEQ「ユーザーカスタム」の設定や、イントロ再生、お気に入り登録なども行なえる。イントロ再生時間は、10秒/60秒が選択できる。

 お気に入りは、本体のみでプレイリストを作成する機能で、楽曲を選択して、MENUからお気に入りに登録を呼び出して曲を登録する。最大50曲までの登録が可能で、KMAとの連携時に[ファイル]-[お気に入りをプレイリストに変換]で作成したお気に入りをプレイリストとして登録できる。

 iPodのOn-the-Go機能のように本体で簡単にリストを作成して、PC上で再編集してお気に入りのリストを作成できる……はずなのだが、前述のようにKMAでプレイリストの曲順が変更できないので、活用シーンが限定されてしまうのが残念だ。

登録した楽曲をお気に入りから再生できる 登録した楽曲をお気に入りから再生できる



■ 癖のない素直な音質

 最大のセールスポイントである「音質」をチェック。とりあえず付属のイヤフォンを利用して、イコライザをノーマルにして聞いてみたところ、、すぐにわかるのがセパレーションの良さ。楽音の一つ一つがきっちりと際だって聞こえるのだ。

付属のヘッドフォン

 楽器やボーカルの抑揚もしっかり再生でき、メリハリある音が印象的。低域の量感はそれほどでもないが、スピード感や制動力で聞かせるタイプの低域で、バスドラムの硬さやウッドベースの微妙なニュアンスがきっちり聞き取れる。中低域はそれほど厚くなく、iAUDIOシリーズのような高域の艶やかさや情報量など、特徴ある音を聞かせるタイプではないので、地味と感じるかもしれないが、個人的には非常に好きな音だ。MP3のビットレートを上げれば、その情報量の差分をしっかり伝えてくれる非常に使いやすいプレーヤーと感じた。

 ヘッドフォンは15mm径のユニットを搭載した独自のもの。フラッシュメモリ型の「M256A3」に付属のものと同等と思われるが、ナチュラルな音作りで、2~3,000円の市販のイヤフォンと比べてもクオリティは高い。ただし、遮蔽性はさほど高くないので、通勤/通学電車、特に地下鉄での利用時にはイヤーパッドの追加などの対策は必要だ。

 ヘッドフォンをShure E2cやSennheiser PX200などに変更してみても音の傾向は変わらず、ヘッドフォンなりの個性をしっかり生かした再生ができる。なお、ライブ盤などの曲間ギャップを詰めて再生する、いわゆる「ギャップレス再生」にも対応しているようで、テストした限りではほとんど曲間を意識させられることは無かった。

 イコライザは、NORMAL(OFF)/BASS1/BASS2/LOUDNESS/POPS/ROCK/JAZZ/DANCE/VOICE/NOISE CUT/CUSTOMが用意される。いずれもわざとらしい効果ではなく、ソースに合わせてしっかり適用できるように作られている。カスタムEQの画面もユニークで、低域と高域をそれぞれ好みに合わせて設定できる。なお、NOISE CUTはFMトランスミッタなどとの併用時に発生しがちなノイズを低減するモードとなっている。

EQ選択画面 カスタムEQの画面

 電源は内蔵のリチウムイオン充電池で、取り外しはできない。連続再生時間は約24時間。USB端子からの充電もサポートしており、充電所要時間はUSBが約5時間、ACアダプタが約2.5時間。


■ 音質重視派は要チェック

 ハードウェアの仕上げを含め、国産メーカーらしい作りの良さを随所に感じさせるプレーヤーだ。カラー液晶の表示品質の高さや、わかりやすい操作体系など安心感のあるプレーヤーといえそうだ。

MD/CDミニコンポ「ES-A5MD」と、専用ケーブルを介して接続できる

 最大のセールスポイントである音質も、確かに納得できる品質。好みには個人差があるとはいえ、ナチュラルな再生性能は誰が聞いても満足いくクオリティだろう。音質に興味を持って購入を検討している人は、是非とも他のプレーヤーとの比較視聴を行なうことをおすすめする。

 iPod 20GBに比べて12,000円、gigabeat Fに比べて、8,000円高価な価格設定分の価値として音質のみというのはやや厳しいところもある。しかし、同時発表のミニコンポ「ES-A5MD」との連係機能を搭載し、専用ケーブルを介して「HD20GA7」の音声をコンポに再生できるなど、HDDオーディオを中心としたホーム/カーソリューションも考えているという。「音質」を中心としながらも、音の世界を外に広げていく次なる一手にも期待したい。


□ケンウッドのホームページ
http://www.kenwood.co.jp/jhome.html
□ニュースリリース
http://www.kenwood.co.jp/j/press/press20050606_2.html
□製品情報
http://www.kenwood.co.jp/j/products/home_audio/personal/hd20ga7/index.html
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(2005年6月10日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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