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第72回:【CEATEC JAPAN 2006 プロジェクタ編】
プロジェクタの戦場はついにフルHDへ
~ ビクターLCOS、三菱低価格3LCD、シャープDLPが激突 ~


 2006年秋はプロジェクタの豊作の年だ。特にフルHD(解像度1,920×1,080ドット)対応の製品群が相次いで登場しており、先行して1080pリアル対応製品を投入していたメーカーも第二世代機以降の投入を果たしている。

 これをうけてCEATEC JAPAN 2006でも、プロジェクタ製品群の展示が、かなり熱いものになっている。



■ ビクター「DLA-HD NEW」(仮称)を投入

 反射型液晶素子(LCOS)を採用したプロジェクション技術で名を馳せる日本ビクター。同社のD-ILA(Direct-Drive Image Light Amplifier)技術はLCOS技術としては先駆的存在なのだが、近年はソニーの「SXRD」技術と熾烈な戦いを展開。「LCOSはD-ILAの一人勝ち」とは言えない状況が続いている。

 LCOS本家としてはそろそろ何かカウンターパンチが欲しいところだが、今年のCEATEC JAPAN 2006では、反撃ののろしとも言えそうな製品「DLA-HD NEW(仮)」を展示していた。
民生向け新D-ILAプロジェクタ「DLA-HD NEW(仮称)」

 この製品については「まだ話せないことだらけ」(日本ビクター広報)とのことであったが、半ば無理矢理に話を聞いた。

 今回の新製品開発にあたっては、フルHDのD-ILA素子に二世代目が登場したことが大きなきっかけとなっている。「DLA-HD10K/11K/12k」(以下DLA-HD1xK)では0.8型だったパネルは、今回新開発されたものでは0.7型へとシュリンクしている。製造プロセスは0.35μmのままだが、パネルサイズが小さくなったことで歩留まりの向上と製造コストの削減を達成した。

 DLA-HD1xKの0.8型パネルでは開口率が92%であったが、パネルが小型化したことで、0.7型では89%に低下している。ただ、透過型のフルHD液晶パネルが開口率50%前後であることを考えれば、LCOSの優位性は崩れない。

右側下から二番目が「DLA HD NEW」に採用されているD-ILAパネル DLA-HD NEWに搭載されている1枚の0.7型にモノクロ映像を表示させたデモ。実機ではパネル3枚にRGB各色の映像を映し出して合成している

 なお、DLA-HD NEWでは動的アイリスを使わない生投射でネイティブコントラスト10,000:1を達成している。

 「この10,000:1は掛け値無しの値です。新開発の0.7型パネルと、専用設計した新光学系との相乗効果によって実現したものですが、パネル側に施した工夫の効果も大きいんです」(日本ビクターILA事業グループ ILAセンター事業企画グループ長 大橋真人氏)。

日本ビクターILA事業グループ ILAセンター事業企画グループ長 大橋真人氏

 残念ながら「工夫」の詳細は秘密とのことだが「液晶素子側の工夫」というヒントは頂けた。LCOSには垂直配向液晶素子が使われているが、一口に垂直配向液晶といっても各社独自のレシピ(どんな素材同士を組み合わせるか)を持っている。そこにブレークスルーがあったということなのだろう。

 DLA-HD NEWの使用ランプはDLA-HD1xKと同じ超高圧水銀系200Wだが、新ランプの採用で光利用率を向上させ、DLA-HD1xKから200ルーメンの向上した800ルーメンを達成している。また、独自のランプ光学系「Optimum Color Illumination」もDLA-HD NEW用にリファインされているという。

 映像パネルがシュリンクしたことで、投射レンズも新規に設計開発されている。HD1xKで特徴的だったズーム倍率に依存しない一定したコントラスト比を確保する矩形絞りは、DLA-HD NEWでは搭載されていない。「新開発の光学系と0.7型素子で、十分なコントラストが得られたため」だという。「単一フレーム内のハイコントラスト性能」を引き続き追求しているため、動的アイリスは搭載していない。

 投射距離は「より身近な民生機らしいレンジに振った」とのこと。DLA-HD1xKでは投射レンズのバリエーションが選べたが、DLA-HD NEWでは単一設計。「身近な民生機らしい」という表現から、おそらくDLA-HD1xKのスタンダードレンズ搭載機に近い投射環境が実現されているものと推測される。

 「DLA-HD NEWではレンズシフトは上下だけでなく、左右方向のシフトにも対応します。しかも身近な民生機らしく、業界最高水準のレンズシフト量を搭載してしまいました(笑)」(大橋氏)。

レンズ下左右にあるツマミがレンズシフト操作用。ズームとフォーカスは手動調整式になってしまった

 レンズシフトをやりすぎると、フォーカス斑や色収差を増長させてしまう危険性がある。シフト量にこだわって画質が犠牲になるのは避けて欲しいところだが、「そこは問題ないと自負しています。DLA-HD1xKと同等の投射性能を維持できているとお考え下さい」(大橋氏)という。

 コスト削減のために妥協した部分もある。電動式だったフォーカス/ズーム調整機能が手動となった。「社内でも大変熱い議論が交わされた部分。DLA-HD NEWのユーザーとなる方はおそらく常設が基本だろう、フォーカス/ズーム/レンズシフトは導入時に設定すれば使用頻度は少ないだろう、という考察の結果、手動としました」(大橋氏)という。

 また、リモコンも気になるところ。そろそろ他社製と同デザインの安っぽいリモコンはなんとかして欲しいと思っていたのだが、「自照式の新デザインにリファインしました。使いやすさに配慮した設計になります」(大橋氏)とのこと。こちらにも期待したいところだ。

 DLA-HD1xKではアルミ押し出し工法を採用してボディに高級感を演出したが、DLA-HD NEWでは、コスト削減で樹脂製ボディに戻されている。静粛性は新筐体設計でさらにリファインされ、DLA-HD1xK(27dB)と同等以下になっているという。

 映像エンジン(ビデオプロセッサ)はDLA-HD NEWでは本体内蔵式を採用。新ジェネッサなのかどうか聞いてみたが「詳細については非公開」。接続端子はHDMI×2、コンポーネントビデオ×1、コンポジットビデオ×1、Sビデオ×1というシンプル構成。PC接続には非対応だが、HDMI経由でPCが接続できるようにするかどうかは検討中だという。

□関連記事
【9月3日】ビクター、フルHD D-ILAプロジェクタの低価格機を出展
-コントラスト10,000:1を実現。プロセッサ本体内蔵
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060904/ifa06.htm



■ さらに極まったD-ILA画質

 DLA-HD NEWの投射映像は、ブース内に設営された2つのシアターで見ることができる。1つのシアターではその映像ポテンシャルを楽しむためのプログラムで、もう一つのシアターでは1世代前の720pモデル「DLA-HX1」との投射比較を行なっている。

ブース内シアターに設置されたDLA-HD NEW 2つのシアターでは異なるDLA-HD NEWのデモを実施

 画質はかなり良好だ。発色の傾向はDLA-HD1xK譲りで、ナチュラル志向。純色発色もよく、色ダイナミックレンジもかなり高い。「Optimum Color Illumination機構」の効果があってか、赤の発色もかなり頑張っていると思う。

左がDLA-HX1、右がDLA-HD NEW。DLA-HD NEWの発色の素性の良さは写真でも分かる

 視聴位置がやや遠かったのでレンズ性能に関しては詳細なコメントは差し控えておくが、目立ったエッジぼけは見受けられなかった。決して記憶色に振りすぎた画作りではないのに、なぜか見た目に鮮烈な印象があるのは、コントラスト性能が高いため。10,000:1が本当かどうかは肉眼では判別のしようがないが、輝度ダイナミックレンジと色ダイナミックレンジが各段に向上していることだけは一目見てわかる。

 特にDLA-HD1xKから革新的に進歩しているのは、暗部の描写力。暗部の色ディテールの表現が向上しており、焦げ茶色の石畳のエンボスに立体感が知覚できるほど。

 黒の沈み込みも見事で、DLP方式に負けていない。映画「アポロ13」では宇宙に、そして「ジャズイベント」のシーンではバックステージの暗がりに、空間の広がりを感じる。人間は黒浮きを感じると「いかにも映像」と知覚してしまうが、DLA-HD NEWの「映像への没入感」の高さは、黒の表示能力の高さによるものだろう。

 発売時期は未定とされるているが、近々正式製品名とともに明らかになるという。1年後……とかそういうことではなく、短期的に製品化されることは間違いないそうだ。

 価格も未定だが、「ソニー、三菱、松下、シャープがああいう出方をしてきた以上、競争力のある価格を考えています。住宅ローンなどを考えなければ、ボーナス一回で買えるくらいというイメージ。車でいえば、ベンツではなくて、クラウンでもなく……マークIIみたいな感じです(笑)」(大橋氏)という。

 なお、先代DLA-HD1xKは引き続き併売される。これは長短の焦点距離バリエーションで投射レンズが選択できて、さらにビデオプロセッサを用途に応じて選べるセパレートシステムは今でもプロフェッショナル用途を中心に特定の客層から引き合いがあるからだそうだ。

 明言はしなかったが、ソニーの低価格版SXRDフルHDプロジェクタ「VPL-VW50」は、かなりライバル視しているようだ。「なるべく早く発表しますので、まだ決めずにもうちょっと待ってください」(大橋氏)。


■ 単板式DLPプロジェクタの画質を追求したシャープ

ブース内で行なわれているトークショーでは麻倉氏が選んだ「XV-Z21000で見るとより楽しくなるコンテンツ」が視聴できる。その画質を玄人指向な解説付きで楽しみたい人は参加してみるといい

 シャープは10月1日から発売されたばかりのフルHD単板式DLPプロジェクタ「XV-Z21000」を展示。シアターではその映像をじっくりと楽しめる鑑賞イベントを開催していた。なお、1日に数回、デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏のトークショーも行なわれている。

 フルHD対応1080p解像度の単板式DLPプロジェクタといえば、すでに本連載でも取りあげた、マランツ「VP-11S1」が先行して発売されている。XV-Z21000はライバル機ということになる。

 VP-11S1は189万円で、XV-Z21000は131万2,500円と約60万円近く安価であることがXV-Z21000の最大の武器だ。60万円安いとはいえ、XV-Z21000はシャープのプロジェクタ製品としてはハイエンドに位置している製品であり、スペック面での妥協はない。

 パリっとした「映える」画作りを好むシャープらしく、輝度性能はVP-11S1の700ルーメンを上回る1,000ルーメンを達成。光源ランプは超高圧水銀系のSHPランプで、タイプとしてはVP-11S1と同じ。ただし、XV-Z21000では、VP-11S1よりも高出力な220Wタイプを採用している。これが高輝度スペックに大きく貢献していることは間違いない。


シャープのブース内シアター ブース内シアターに天吊り設置されたXV-Z21000

 最大公称コントラスト性能は、VP-11S1の6,500:1を上回る、約2倍の12,000:1。これは光源アイリスと投射アイリスを最適化し、光の直進性を整えて迷光を徹底低減したことによって実現されている。「絞り」といっても動的制御は行なわない、ネイティブコントラストで12,000:1は凄い。インプレッションは後述するが、コントラスト性能は実際凄い。

 カラーホイールは、RGBをそれぞれ2セグメントずつに暗部階調再現と暗緑色再現に特化したND+DGのセグメントを加えた7セグメントタイプ。カラーホイールはVP-11S1と同じ。回転速度はXV-Z21000が5倍速に対して、VP-11S1は業界最高速の6倍速。スペック的にはこの数値だけはVP-11S1の方が上を行く。階調表現はカラーホイールの速度が速いほど優秀になるのでこの部分ではVP-11S1が優位性を誇れることになる。

 ただXV-Z21000では、カラーホイール上の各色のカラーフィルタに光を透過させるタイミングに同期させて、光源ランプの出力をパルス駆動する技術を洗練させたとしている。これにより、さらなる色階調の分解能を上げることと、色バランスの平均化を実現できており、5倍速と6倍速の差はほとんど無く、映し出す映像のタイプによってXV-Z21000の方が優位となるかも知れない。

 実際にデモ投影を見たが、DLPらしい黒の沈み込みが凄い。極端な明部と暗部が同居する宇宙や音楽ライブ映像などにおいても、黒が明部に引っ張られずに黒でいられるという様子に驚かされる。これは投射系の黒表現としては最高レベルに近い。

 7セグメントと特殊なカラーホイール同期ランプ駆動による階調表現も優秀だ。単板式DLPの映像では苦手なはずの暗部発色がしっかりしているのは少々驚かされた。

 この時も比較的後部席の方からの視聴となったが、エッジがクリアで髪の毛の先端までがキッチリ描かれている感じは伝わってきた。投射レンズ性能もかなり高いとみてよさそうだ。なお、XV-Z21000は近々、大画面☆マニア本編で取り上げる予定だ。

□関連記事
【8月7】シャープ、フルHD DLPプロジェクタ「XV-Z21000」
-ネイティブコントラスト12,000:1を実現
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060807/sharp.htm



■ フルHD対応の価格破壊は三菱から

フルHDスペックの3LCDプロジェクタ、三菱「LVP-HC5000」

 三菱の「LVP-HC5000」は、実売約40万円。探せば38万円台の店舗も出てきているほど。フルHDプロジェクタが、まさか2006年にこの値段で出来るとは……。今年は60~70万円台、店頭最安値で50万円台という予想を立てていたが、良い意味で三菱が裏切ってくれた。

 かつて720p解像度のフロントプロジェクタの価格破壊を起こしたのは三洋と松下だった。1080p解像度では三菱という歴史が刻まれたわけだが、前回と共通しているのは、価格破壊を行なったのが「3板式透過型液晶(3LCD)」システムだったという事実。三菱の「LVP-HC5000」は、意表をついて透過型液晶プロジェクタなのだ。

 三菱といえば720pリアル対応モデル「LVP-HC3000」が好評を博した事が記憶に新しいが、このLVP-HC3000は単板式DLPプロジェクタであった。突然、DLPから3LCDに乗り換えたのはなぜなのだろう?

 「我々は1つの方式に固執するつもりは無いんです。ホームシアタープロジェクタの製品を考えたときに、最良の方式をその都度選んでいるという感じです。今回、商品企画にあたってフルHD対応でフロントプロジェクタを考えたときに、一番売れそうな製品を作り上げていくのに3LCDが適していたと言うだけなんです」(三菱電機AV営業統括部 ホームシアター営業課 高田和喜氏)。

1,920×1,080ドット解像度をもつ0.74型「D6-C2FINE」パネル

 採用液晶パネルはエプソン製の最新D6パネル。D6パネルは「クリスタルクリアファイン(C2FINE)」と呼ばれ、「無機配向膜」と「垂直配向液晶素子」を組み合わせたことが特徴。これまでのプロジェクタ用透過型液晶パネルは「有機配向膜」と「水平配向液晶素子」を組み合わせていたので、同じ3LCDでも従来パネルとC2FINEパネルとでは基本構造が全く異なるのだ。詳しいC2FINEパネルの解説については第52回を参照して欲しい。

 画の特徴は一言で言うと「透過型液晶なのに黒浮きが少ない」ということ。ネイティブコントラストは非公開だが、LVP-HC5000では入力映像の平均輝度に応じて動的な光源を絞る動的アイリス機構を組み合わせたときには10,000:1のコントラスト性能が発揮できるとしている。

 今までも三菱というブランドに対して「ハイテク全部入り」、「それでいてお買い得」というイメージを抱いているが、LVP-HC5000もかなり機能を欲張った製品になっている。

 投射レンズは100インチ(16:9)を最短3.1mで投射できる短焦点性能に加え、電動ズーム/フォーカス、電動レンズシフトまで搭載する。レンズシフトは左右±5%だが、上下は±75%にまで対応。左右±5%というシフト量は、本体をおよそスクリーンの中央付近に設置した後に微調整するのに必要な量…ということで仕様決定されたのだという。天吊り前提の設置で考えれば、確かに左右±5%のシフト量に不満を覚える人は少ないだろう。

L字形の光学エンジン。フォーカス、ズーム、シフトが全部電動式 Silicon-Optix製「Reon-VX」。映像エンジンも「全部入り」だ 背面の接続端子パネル。HDMIはもちろん、D-Sub15ピン、DVI-D端子といったパソコン入力にも徹底した対応力を見せつけている

 映像プロセッサとしては、Silicon-Optixの「Reon-VX」を採用。Reon-VXはIP変換、3-2プルダウン、解像度変換、モスキートノイズ低減、ブロックノイズ低減など。デジタル映像コンテンツを表示するのに必要な高画質化プロセスの全てを1チップでこなすものだ。

 本体は334×352×125mm(幅×奥行き×高さ)と意外にコンパクト。重量も5.6kgとエントリークラス並に軽量。光源ランプは160Wと標準的だが、輝度性能は1,000ルーメンを実現している。筐体が小さく高輝度スペックの割には動作ノイズは業界最高レベルの19dB。これは吸排気のエアーフローを最適化し、低騒音ファンを採用したことで実現したという。

三菱ブース内特設シアターではLVP-HC5000の映像が楽しめる

 実際の映像は三菱ブース内に設置されたシアター内で視聴可能で、その映像を見ることができた。しかし、内部は一切の撮影禁止ということで実射写真がない点はご容赦いただきたい。

 透過型液晶液晶らしいアナログ感溢れた階調性は、C2FINEパネルでも健在。色深度が非常に深く、色分解能も高い。細かな色ディテールの描写力に優れており、フレーム毎の情報量が多く手応えがある。顔のアップになると人肌の凹凸が感じられるほど。シャープネスを強めにしているわけでもないのにこの色ディテール感は素晴らしい。

 C2FINEパネルのノーマリーブラック特性のおかげで、透過型液晶とは思えないほど黒浮きが低減されているが、最新のDLPやLCOSと比較すると「透過型液晶っぽい」という感じはまだ残っている。なお、CEATECに行くのであれば、LCOSやDLPを見る前に三菱シアターを見た方が感動は大きいはずだ。

 スクリーンの中央と周辺の画素をスクリーンに近寄って観察したが、色収差は若干ある感じで、フォーカス斑もちょっと出ていた。映像全体として見た場合も、もうちょっとレンズに解像力が欲しい気がした。ブース内シアターは投射画面がかなり大きく、見せていた映像ソースもあまり解像感をアピールする内容ではなかったため、その辺りが影響した可能性がある。一般的なホームシアターサイズの画面で別な映像ソースを投射すれば、もうちょっとしっかりと見えたかも知れない。この辺りは、実際に実機を借りて100インチ前後で見て改めて確認したいと思う。

□関連記事
【8月22日】三菱、フルHD解像度の液晶プロジェクタ「LVP-HC5000」
-実売45万円で10月発売。D6/C2FINEパネルを搭載
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060822/mitsu1.htm



■ 松下「TH-AE1000」は展示のみ

 民生向けプロジェクタの人気シリーズといえば、松下電器「TH-AE」シリーズを忘れることはできない。三菱には大部遅れることになるが、3LCD方式のフルハイビジョンスペック対応のフロントプロジェクタを11月中旬より発売する。昨年の「TH-AE900」に対して、型番が100増えた「TH-AE1000」。スペックは三菱LVP-HC5000を意識した構成になっているが、後出しじゃんけんの法則に従い、LVP-HC5000を上回るスペックが乱舞する。

松下電器の「TH-AE1000」。1080pリアル対応透過型液晶プロジェクタの風雲児となるか 上面の円盤状の回転式スイッチでレンズシフト操作を行う。微妙なシフト操作ができる上、ロック性も高い

 コントラストは動的アイリス制御付きで11,000:1でLVP-HC5000を1,000上回る。レンズシフトは上下±100%、左右±40%でこちらもLVP-HC5000より上。投射レンズはズームとフォーカス調整は電動に対応。LVP-HC5000と異なり、レンズシフトでは手動になる。

 投射レンズはLUMIXと同じ山形工場で製造する自信作とのこと。担当者によれば「投射レンズはLVP-HC5000よりもレンズ枚数を少なくしたことで、色収差性能はTH-AE1000の方が優れている」という。店頭予想価格は45万円前後。LVP-HC5000を意識したぎりぎりの線のようだ。

 画質面においてTH-AEシリーズ最大の特徴であった「スムーススクリーン」はTH-AE1000にも継承されている。1,920×1,080ドットの透過型液晶パネルは画素開口率が50%前後であり、画素面積に対する画素格子の太さの割合が大きくなってしまう。光の複屈折現象を応用した微細光学系技術を用い、この透過光が格子側に広げて擬似的に開口率を広げるのが「スムーススクリーン」技術だ。TH-AEシリーズの粒状感の少ない画作りが好きな人にとってはこれが決め手となることだろう。

 こちらは、残念ながら実機展示を行なっていただけで、投射デモは行われていなかった。TH-AE1000の画質評価については、改めて実機を借りて行なってみたい。

背面端子類。HDMI×2にコンポーネントビデオ端子、そしてD5入力端子を設けているあたりが松下らしい パナソニックブースの裏手にひっそりと展示されているTH-AE1000。今年のCEATECの主役はBDとはいえ、この扱いはさびしい……

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【9月21日】松下、電動2倍ズーム搭載フルHD液晶プロジェクタ
-「フルハイビジョンハリウッド画質」。実売45万円
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060921/pana.htm


□CEATEC JAPAN 2006のホームページ
http://www.ceatec.com/2006/ja/visitor/

(2006年10月5日)

[Reported by トライゼット西川善司]


西川善司  大画面映像機器評論家兼テクニカルライター。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。渡米のたびに米国盤DVDを大量に買い込むことが習慣化しており、映画DVDのタイトル所持数は1000を超える。

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