小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」

本稿はメールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」からの転載です。金曜ランチビュッフェの購読はこちら(協力:夜間飛行)

PlayStation VRを買ったら買うべきコンテンツ10選

メルマガは今回で100号だが、記念的なものはイベントで行なうこととして、コラムは淡々と進めたいと思う。

本メルマガが配信される前日は10月13日。すなわちPlayStation VR(PSVR)の発売日だった。検討してはいたものの、貸し出し機材を使ったレビューを急遽やることになったため、発売日前の数日はかなりバタバタな日々を過ごした。レビュー記事については、リンクを「今週のおしごと」に貼ってあるので、そちらをまずご覧いただきたい。ハードウエアの出来としては、正直満点に近い。一般家庭向けの「本格的VR機器」としては、現在もっともおすすめできる製品だ。まあ、最大の問題は「売れすぎて買えない」ことだが。

レビューではハードウエアを中心に話したので、ここでは、PSVRで体験すべきコンテンツを10個選び、ショートコメントとともにご紹介したい。そのうち、PCにも同じソフトがあるものはその旨記載しているので、PC派の人も参考にしていただだければ、と思う。ちなみに、「いわゆるコンシューマゲームらしいもの」は積極的に外しているので、そのつもりで。

・VR≠リアル、VR=プレゼンス
Rez Infinite
https://www.playstation.com/en-us/games/rez-infinite-ps4/

PS2時代に生まれた音楽×シューティングの名作がVR化。サイバーな(死語)空間に浮かんでいる映像で、リアルとは程遠いのに、プレイをし始めると「その空間にいる」感覚になる。人間が「現実感を感じる」とはなにか、を問いかけるようなところも。まあ、そんな高尚なことはほっといて、単に「面白い」のが素晴らしいのだが。

・「現実感」とはなめらかさ
Battle Zone
http://www.battlezone.com/en

「VR≠リアル」の代表選手その2。昔懐かしい戦車バトルなのだが、操作性が良く、映像が圧倒的になめらかさであり、そのことが没入感に直結している。水平移動と回転を同時に行なうと、慣れないうちは「ウッ」と来るのでご注意を。こちらはPC版もあり。

・「存在感」こそがVR
サマーレッスン
http://summer-lesson.bn-ent.net

バンダイナムコエンタテインメントがプロトタイプを発表後、PSVRへの注目が一気に高まった、ある種、PSVRの象徴ともいえる存在感。ギャルゲー、と敬遠するなかれ。VR空間で「自分のパーソナルスペースに他人がいる」感覚を楽しめるソフトとしては、最高の出来である。自分の行動とキャラクターを紐づける作りは、ちょっとした職人芸であり、そこに涙するのも乙なものだ。

・ゴジラってやっぱ怖いっすよ
『シン・ゴジラ』スペシャルデモコンテンツ for PlayStation?VR
http://www.jp.playstation.com/info/release/nr-20160614-sg-psvr.html

夏のヒット映画となった「シン・ゴジラ」。そのVRコンテンツだが、出来はなかなか。何回も体験する「ゲーム的」なコンテンツではなく、一発芸的なところがあるが、なにも考えないでとりあえずやってみる価値はある。無料だし。映画やキャラクターのプロモーションとして、こういうコンテンツ展開もアリだ。特に、今後スマホVRのクオリティが上がれば、「無料」のプロモVRは増えていくだろう。

・そういえば積み木ってVRっぽいね
つみきBLOQ VR
https://www.jp.playstation.com/blog/detail/3796/20161004-psvr.html

ブロックを積み上げるシンプルなパズル。シンプルなのだが、「空間の中にブロックがあり、それを手でいじる」ことに強い意味がある。これをVRでやらないと、そこまで面白くないだろう。実はこの作品、2010年末にハンドコントローラ「PlayStation Move」が出た時、それを生かすゲームとして登場したものの進化版である。「手を画面の中に入れる」発想で作られたものなので、VRへ広がるのは必然だったのだ。

・無免許でもなりきりドライバー
DRIVECLUB VR
http://www.jp.playstation.com/software/title/pcjs50014.html

PS4用ドライブゲームのひとつ「DRIVECLUB」のVR版。それ自体は、そんなに驚くようなゲームではない。しかし、VRに合わせて開発され、ドライバー視点でのプレイになったことで、まるで別のゲームのように変化した。自然と、バックミラーや先のカーブに視線を動かしながら走ることになるので、より「リアル」で「走りやすい」と感じるのだ。免許のない私だってそう思うのだから、免許持ちならなおさらだ。また奇妙なことに、普通のゲームパッドでプレイすると時に酔うが、ハンドコントローラでは酔いづらい。人間の「認知」は不思議なものだ。

・映画でも舞台でもないストーリーテリング
Allumette
http://www.penrosestudios.com

VR空間を生かしてストーリーを見せる、という試みは多数ある。現状、筆者が体験した中でもっとも優れているのは「Allumette」だ。この作品については、あまり多くを語りたくない。「立体空間を舞台として展開される人形劇」というのが一番近い説明なのだが、展開される演出そのものに驚きがあり、楽しい。同じようなものをいくつも体験する気になれない、という問題点はあり、そこは、20世紀に入り、映画がストーリー性を持った時と同じようなジレンマが存在する。だが、そういう試行錯誤の「最初の一歩」が楽しめる作品だ。これはPC版も用意されている。

・目を閉じるほど怖い……VRなのに
KITCHEN
http://www.capcom.co.jp/kitchen/

2017年1月に「バイオハザード7」の発売を予定しているカプコンが、VR向けホラーのテストコンテンツとして制作したもの。ゲーム性も薄い、非常に短いものだが、本気で怖がらせに来る作品なので、心臓の弱い方はご注意を。知り合いの女性はプレイ中、あまりの怖さに目をつぶり、コンテンツが終わるまで身じろぎもしなかった。VRでは、目をつぶったらせっかくのコンテンツが台無しなのに。VRでのホラーは、そのくらい怖い……というお話でもあるのだが。

・究極の「ひとりカラオケ」
JOYSOUND VR
http://living.joysound.com/ps4/

VRでは、自分の周囲の空間を別のものに置き換えられる。それをシンプルに生かしたのが、ひとりカラオケ用サービスでもある「JOYSOUND VR」。周囲の映像や、一緒に歌うアーティストをダウンロードコンテンツにするビジネスモデルにも注目。現在、VRを「みんなで楽しむ」ために、カラオケボックスや漫画喫茶への導入が始まっている。その真逆も存在するわけで、これはなかなか味わい深い。

・VRにはバカゲーが良く似合う
HEADMASTER
http://headmastergame.com

ヘディングする。以上。でも、HMDによる正確なヘッドトラッキングがなければ、ヘディングしたボールをきちんと狙ったところにボールは飛ばない。VRにはぴったりで、VRでなければ実現できないゲームでもある。なのに、プレイしている人を周りで見ると爆笑しかでてこないステキな体験ができる。VRは、プレイする人自身だけでなく、プレイしている人を見るのも楽しい。そんな体験にはバカになれるゲームが最高である。パーティーグッズのつもりで購入をお勧め。

小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」

本稿はメールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」からの転載です。

コラムニスト小寺信良と、ジャーナリスト西田宗千佳がお送りする、業界俯瞰型メールマガジン。

家電、ガジェット、通信、放送、映像、オーディオ、IT教育など、2人が興味関心のおもむくまま縦横無尽に駆け巡り、「普通そんなこと知らないよね」という情報をお届けします。毎週金曜日12時丁度にお届け。1週ごとにメインパーソナリティを交代。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
 メールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」を小寺信良氏と共同で配信中。 Twitterは@mnishi41