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AKG、初のハイレゾ&ケーブル交換対応で音のカスタマイズも可能なイヤフォン「N40」

 ハーマンインターナショナルは、AKGのイヤフォン新モデルとして、フィルタ交換による音質のカスタマイズや、ケーブル交換も可能な「N40」を8月上旬に発売する。価格はオープンプライス。直販サイトでの価格は45,880円。同社イヤフォンとして初のハイレゾ対応となる。

AKGのイヤフォン「N40」

 AKGのイヤフォンラインナップには現在、1万円台に「N20」(直販14,880円)などがあり、最上位モデルとしては3ウェイハイブリッドの「K3003」(同148,000円)が存在する。しかし、その間の2万円、5万円などの価格帯に製品ラインナップが無く、間が空いた状態になっていた。そこに登場するのが「N40」となる。直販45,880円だが、最上位K3003の技術をふんだんに取り入れているのが特徴。

 ドライバは中高音向けにバランスド・アーマチュア(BA)を1基、低域用に8mm径のダイナミック型を1基搭載した2ウェイハイブリッド構成。全体の再生周波数特性は10Hz~40kHzで、ハイレゾ再生に対応する。感度は109dB/mW。インピーダンスは20Ω。

 2ウェイ構成だが電気的なネットワークは搭載しておらず、アコースティックに2つのユニットの音を調整。自然な音のつながりを可能にしたという。

 さらに、振動板の振幅時に発生する背圧を最適化する「ベンチレーションシステム」も搭載。広い空間表現も実現したとする。

 音が出るノズルの先端にフィルタを搭載しており、ユーザーが交換する事も可能。出荷時に取り付けられている「リファレンス」に加え、「ハイ・ブースト」、「バス・ブースト」のフィルタも同梱。ハイ・ブーストでは、シンバルやピアノなどの高音をよりクリアに表現、バス・ブーストではベースやドラムの低域を増強する。電気信号を使わないフィルタであるため、「電気的なロスが無く、音源をありのままに再生する」としている。

フィルタの交換が可能

 AKGのイヤフォンでは初となるケーブル着脱対応で、MMCX端子を採用。耳掛け式の装着が可能で、これもAKG初。ケーブルはストレートケーブルとリモコン付きケーブルの2本を同梱。リモコン付きケーブルはAndroid、iOSのスマートフォンと連携でき、リモコン部分にマイクも備えている。ケーブルを除く重量は22g。

ケーブル着脱にも対応する

 ケーブルの長さは1.2m。シースはハイブリッド・シース。Yコネクタから下の部分は柔軟性が高く断線しにくい布製被覆を、上の部分には衣類などとの摩擦ノイズを抑えるラバー被覆を施している。

 イヤーピースはXS/S/M/Lで、フライトアダプタやクリーニングツール、キャリングケースを同梱する。

音を聴いてみる

 ハイレゾプレーヤーのAK300とステレオミニのアンバランス接続で試聴した。

 まず、出荷時に装着されているリファレンスのフィルタで聴いてみる。「茅原実里 /この世界は僕らを待っていた」(96kHz/24bit)を再生すると、AKGらしい、非常にクリアで繊細な高域が耳に入ってくる。

 ヴォーカルのサ行などは鋭く、だが「耳が痛い」と感じる一歩手前で踏みとどまっている。シャープかつソリッドな、切れ込むような描写が心地良い。

 低域は量感があり、ダイナミック型らしい厚みを感じさせるが、同時にキチッと締まりがあり、ボワボワと膨らんだ印象は一切ない。鋭い高域とマッチしており、全体的にハイスピードなサウンド。低音の迫力がありつつ、AKGのヘッドフォンに見られる軽快さも感じられるのが面白い。

 高域と低域だけが持ち上がって目立つようなバランスではなく、間の帯域の馴染みの良さも感じる。電気的なネットワークは搭載せず、アコースティックな手法で2つのユニットの音を調整する事での、自然な繋がりを感じる。

3種類のフィルタが選べる

 上位モデル譲りのユニークな機能であるフィルタ交換も試してみよう。「バス・ブースト」に取り替えると、確かに「藤田恵美/Best OF My Love」のアコースティックベースの低音がより深く沈み込む。電気的なバスブーストで連想しがちな「ボンボン」、「ボコボコ」と無理やり膨らませたような低音ではないので好感がもてる。

 「ハイ・ブースト」では、その名の通り、高域のシャープさにより磨きがかかる。ヴォーカルなどが、リファレンスと比べてもさらにむき出しになったような描写で、楽曲によっては耳がちょっと痛いようなギリギリの描写にゾクゾクする。かといって、高域寄りの描写になるのではなく、もともと量感豊かな低域を持っているので、低域のパワーに“負けない高域”になるという感じもする。ある意味ではハイ・ブーストの方が、高域と低域のパワーに釣り合いがとれているようにも感じる。

 描写のニュートラルさというか、優等生的な意味ではリファレンスが良いが、個人的には「ハイ・ブースト」の突き抜けた感じが魅力的だと感じる。音がより細かくなるケーブルに交換したらどんな音になるのだろう? などと、妄想も膨らむ。直販45,880円のイヤフォンならば、これくらい個性があった方がむしろ好ましい。ベースとしての再生能力の高さと共に、一石三鳥的な個性もカスタマイズで楽しめるのが「N40」の特徴と言えるだろう。