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4K/8K試験放送の再送信など、“家でも8K”に向けたCATVの取り組み
2016年7月28日 17:08
ケーブルテレビ(CATV)関連の新製品や技術、サービスなどを紹介する「ケーブル技術ショー 2016」が東京国際フォーラムにて7月28日から29日まで開催。STBや送信機器などのハードウェアメーカーや、CATVサービス関連の事業者らが出展しており、入場は無料(登録制)。展示の中から、8月より順次開始される4K/8K試験放送の再送信など、CATVでの4K/8K放送の動向をレポートする。
JDSやJCC、J:COMなどが共同でBS 17試験放送再送信へ
既報の通り、BSを使った4K/8K試験放送は、NHKとA-PAB(NexTV-FとDpaが合併した団体)が実施。NHKが8月1日、A-PABが12月1日より衛星のBS 17ch(12.03436GHz)を利用して時分割で実施することが決まっている。2018年には実用放送も予定。その先には、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでの本格普及を見据えた研究開発が進められている。
この試験放送に対応したディスプレイやチューナは、現時点では家庭向けのものが存在しないため、BS 17chをそのまま視聴できる環境は各地のNHK放送局などに限られているが、これをCATVで再送信することにより、一般家庭を含む様々な場所で観られるようにするための取り組みが始まっている。
日本デジタル配信(JDS)のブースでは、ジャパンケーブルキャスト(JCC)やジュピターテレコム(J:COM)らと共同で進めている、BS 17ch試験放送の再送信(再放送)システムを紹介。
BS 17chでは、8Kと4Kの番組が時間を区切って交互に放送されるが、このうち4K番組はそのままの画質で、8K番組はJDSが4Kにダウンコンバートして各プラットフォームから配信局を通じて家庭に届けられる。視聴は、現在提供している「ケーブル4K」対応STBと4K対応テレビで行なえる。
大きな課題の一つはNHKやA-PABとの間での再放送の同意がまだ無いという点。現時点で開始時期は未定だが、'17年4月ごろには本格的な展開を目指しているという。なお、このシステムは試験放送の再送信に限ったもので、'18年開始予定の4K/8K実用放送には対応しない。
パナソニックが8K CATV伝送ソリューション
パナソニックは、BS 17ch再送信の視聴方法として、4K番組のみを観る仕組みを提案。現行の4K対応STB「TZ-HXT700PW」を今後アップデートすることで受信可能になる見込みだという。
また、将来の8K実用放送も含めた取り組みの一つとして「8Kケーブル伝送ソリューション」を参考展示している。8K映像を伝送する場合100Mbps程度の伝送帯域を要するのに対し、現状では1chで38~40Mbpsが上限となるため、送信側で8K映像を3分割して変調し、受信側のSTBなどで復調。結合してデコードすることで家庭でも観られる様になるという。
256QAM/64QAM伝送設備を使った複数搬送波伝送方式で8K放送を実現するというもので、多重化方式のMMTや、IPパケットを放送で効率的に伝送するTLVもサポート。
今回展示されたのは、送信側の機器としてBS左旋8K用や、BS 17ch用、BS右旋用のトランスモジュレーション装置。いずれも商品化を検討中。いずれもオールインワンの筐体で16APSK復調からQAM変調まで行なえるのが特徴で、8Kを3分割することにより、既存設備に大きな投資を必要とせず実現可能とすることも特徴の一つ。
対応する受信機もプロトタイプを開発し、展示会場でデモ送受信を行なっている。今後は家庭での導入に向けて小型化などを進める。
既存の伝送路で、実用放送に向けた4K/8K再送信
NHKとKDDI、J:COM、JDSは共同で、既存のCATV伝送路を使った4K/8K放送の再配信システムを展示。
既に5月には実施設を使った8K衛星放送の再放送実験も行なっており、B-SAT(放送衛星システム)との協力によりBS 17chを使ってMMT/TLV方式に対応した映像を、複数チャンネルに分割し、光ケーブル(約20km)と同軸ケーブル(約1km)の伝送路からNHK放送技術研究所(NHK技研)の受信機から8Kディスプレイに表示するという内容。
会場の展示では、JDSの配信センターで8K衛星放送を受信し、復調したMMT/TLV形式の8K信号を専用回線を通じて伝送。その8K信号を複数搬送波伝送方式により、再放送システムを紹介している。複数搬送波伝送方式は、'15年に日本CATV技術協会が国内標準規格を発行。国内標準規格に適合した仕様は、ITU-T(国際電気通信連合 電気通信標準化部門)でも国際勧告化されている。