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“視力4.0”実現するメガネスーパーのスマートグラス「b.g.」。'17年量産へ
2016年12月15日 19:01
メガネスーパーは15日、メガネ型ウェアラブル端末「b.g.(ビージー)」の最新のプロトタイプを発表した。1月18日~20日に東京ビッグサイトで開催される「第3回 ウェアラブルEXPO」に出展される。量産は'17年秋以降に開始、量産納品開始は'18年春を見込んでいる。当初は業務向けで展開するが、コンシューマ向けも視野に入れているという。1台10万円を切る価格を想定している。
同日に行なわれた2017年4月期第2四半期業績の説明会で発表されたもの。2014年から開発を進めているb.g.のプロトタイプ最新版となる。製品名のb.g.は「Beyond Glasses」の略。
左右の目用に、ノンシ―スルー型のディスプレイを2つ搭載。“見え方のクオリティ”の追求や、眼への負担を考慮した結果、「両眼視考慮の2つのディスプレイ採用」と「ノンシースルータイプのディスプレイ」を組み合わせており、「現在発表されている商品の中でオンリーワンのポジショニング」としている。ディスプレイは両目のやや下側に位置するため、実際に目の前にあるものを見たい場合は視線を少し上げるという「遠近両用メガネと同じ見方」を採用している。
メインの入力デバイスはスマートフォンとすることで、スマホに内蔵している無線LANやBluetooth、カメラなどを使って、様々な用途に対応しやすいという。業務用途として、製造、倉庫・物流、医療、農業、畜産、介護、インバウンド、スポーツ、エンターテインメント、教育などでの活用を見込む。
これまで展示会などで披露されていたプロトタイプからの変更として、iPhoneと接続する専用ケースとの別体型とした。試作機のケース部は、iPhone 6sのサイズに合わせたもので、容量1,865mAhのバッテリ(キヤノンのカメラ用LP-E6N)も内蔵。これにより、ディスプレイ側は小型化している。ケース部には2系統のHDMI出力を備え、b.g.と別のディスプレイなどにも同時出力できるようにしている。内蔵バッテリでの連続使用時間は現時点では約2時間だが、量産化に向けて、より長時間駆動できるように改善していくという。
人によって異なる瞳の位置を考慮して、ディスプレイ位置の可変性を追求したり、装着感も重視。専用のメガネフレームを設計し、メガネフレームに「外フレーム」を装着させる形状を採用。ディスプレイを見る必要がないシーンでは、外フレームを持ち上げることでディスプレイを視界から外せる。
専用メガネにレンズを入れることが可能で、視力矯正のメガネをしている人が快適に装着できることを重視しているのも特徴。従来の試作機から、メガネと脱着する機構も変更。従来は磁石で脱着する形だったが、より確実に装着できるようにした。専用メガネのツルの部分に脱着するための機構が必要で、人の顔のサイズなどに合わせて、今後メガネのデザインもバリエーションを増やしていくという。
また、表示するパネルは従来の試作機の液晶から、有機ELに変更。開発当初から、調達などの観点で有機ELの採用を見込んでいたという。1/2型、解像度1,024×768ドットのパネルを採用し、60p入力に対応する。現段階では、1mの場所に15型程度の映像が見えるように設計されている。
現在は量産化に向けた実証実験を進める段階と位置付けており、既に5~10社からの提案を受けているという。'17年秋より量産を開始、'18年春から量産納品を開始し、量産後当初は10億円規模の事業を見込んでおり、さらに市場開拓を進めていくという。
“アイケア”の視点でウェアラブルに参入。“視力4.0”実現も
同日に発表された第2四半期決算では、眼鏡等小売事業ではコンタクトレンズや通販事業の好調などで、売上高は86億4,500万円(前年同期比11.2%増)、営業利益は2億1,100万円(同40.6%減)、四半期純損失は1,000万円(前年同期は純利益1億7,200万円)となった。
特徴として“アイケア”への注力を進めており、通常のメガネ販売よりも細かな検査や、フィッティング、保証システム、出張訪問サービスなど付加価値の高いサービスで差別化を図っている。こうした取り組みで、売上は伸びた一方で、人件費などの増加により減益となった。なお、同日には富山県の「メガネハウス」の子会社化も発表し、アイケアを重視した店舗の増加を進めていくという。
b.g.の開発について説明した束原俊哉取締役は、メガネ型デバイスについて「先行しているところは多いが、我々はメガネ屋。見え方や掛け心地が良く、シンプルなデバイスとすることが重要」とし、メガネ業界のノウハウを活用。メガネ生産地の福井県鯖江市でメガネフレームの企画やデザインなどを手掛けるボストンクラブとも提携し、家電メーカーなどが作るウェアラブル端末との差別化を図る。
束原氏はキーコンセプトとして「視覚拡張」を挙げ、望遠レンズのように「見えるものを拡張する」ことと、AR(拡張現実)のように「見えないものを拡張する」という2つの点に着目。
見えるものを拡張する一例として、“視力4.0”を実現。星崎社長がb.g.を装着し、会場内の遠くにある人形が持っているランドルト環(視力検査で使われるcのような記号)を見て正しい方向を当てるというデモを行なった。
また、工場などでの利用例として、あるパーツをスマホのカメラで撮影すると、ARマーカーの部分を読み取って、画面上で組み立て方をアニメーション表示するという使い方も紹介。両手が自由な形で作業が可能になる。この他にも、農業をしている人が、センサーから送られた土壌のデータをチェックしながら作業できるといった活用もあるという。
同社は、これまでもメガネ販売だけでなく“メガネ屋が作った本気のサプリメント”という「EYEラックW」を23日から発売するなど、アイケアの観点で製品開発を行なっている。今後はVR(仮想現実)やARの普及に伴い、「目の負担も確実に増えていく」としており、メガネスーパーとしては、他社が手がけている没入型のヘッドマウントディスプレイ(HMD)に合わせて、チラツキを抑えたメガネやコーティングを強化したメガネを製品化するといった「アイケアカンパニー」としての事業と、自らメガネ型ウェアラブル端末を製品化するという、2つの側面で商機が拡大していくと見ている。