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進化を続けるメガネが「ウェアラブルEXPO」に。ピアノ演奏を可視化するグローブも

 「第2回 ウェアラブルEXPO」が、東京ビッグサイトで1月13日に開幕した。スマートグラスを使ったAR(拡張現実)/VR(仮想現実)技術や、パワードスーツ、センサーを内蔵した繊維といった新素材まで、様々な最新技術が展示されている。期間は1月15日まで。なお、このイベントは業界関係者向けで、一般入場はできない。同時開催の展示会として「第45回 ネプコン ジャパン」や、「第8回 オートモーティブ ワールド」、「第8回 ライティング ジャパン」も行なわれている。

ウェアラブルEXPO 2016

東芝、メガネスーパーなどが様々なスマートグラス

 東芝は、「Wearvue(ウェアビュー) TG-1」を製品化。企業向けに受注活動を開始している。出荷開始は2月29日の予定。BtoB向けだが、Amazonでは、216,000円で予約開始している。

「Wearvue TG-1」の装着例

 インフラの保守整理や倉庫内の作業などで、手順やチェックリストをレンズ越しに表示させ、ハンズフリーでの作業を可能にするメガネ型ウェアラブル端末。メガネのレンズ部分にハーフミラーを備え、内蔵のLCOS(反射型液晶)プロジェクタからの投写映像で情報を表示させる光学シースルー型バーチャルイメージ方式で、表示は右側固定。入力解像度は最大1,280×720ドット、画角は水平約9度×垂直約9度、シースルー透過率は70%、表示色は約26万色。投写部の出力輝度は最大500nit。

 これまで、CEATEC JAPANなどでも展示されていたが、製品として発売するにあたり様々な変更が行なわれている。1つは「パーソナルアジャスター(PA)」機能で、ダイヤルを回して表示部の角度を調整可能。これにより、個人の顔の形や左右の眼間距離に合わせて、表示欠けすることなく投写できるようになった。「日本人成人の98%をカバーできる」としている。

Wearvue TG-1
ハーフミラーにプロジェクタで投写してカラー表示

 重量は50g。メガネのデザイン開発は、SWANSブランドなどで知られる山本光学と協力。長時間作業でもストレスなく利用できるよう、軽さと快適な装着性や、メガネとして自然なデザインを追求したという。

 今回のデモでは、指示書を見ながらハンズフリーで作業するというデモを体験可能。「Wearvue TG-1」に接続したWindows端末やマイクを介して、音声でページ送りや作業完了のチェック入れが行なえるため、手を作業だけに集中できるメリットを紹介していた。

 作業用以外にも、劇場やスポーツ観戦といったエンターテインメント用途もイメージ。初心者向けにガイドを表示したり、訪日外国人向けに他言語を表示するといったこともできるという。

指示書をディスプレイで見ながらハンズフリーで作業

 シャープは、レーザーMEMSプロジェクタやLCOSプロジェクタのモジュールを展示。メガネ型のウェアラブル端末などへの応用を紹介している。LCOSプロジェクタの主な利用例としては、テレビを観ながらチャンネル切り替えや録画操作を行なったり、空気清浄機のON/OFFや湿度情報表示といった利用を紹介している。

LCOSプロジェクタを活用したウェアラブル端末

 また、高コントラスト/広色域でフォーカスフリーのレーザーMEMSプロジェクタは、小型/軽量で低消費電力という特徴を活かし、モバイルプロジェクタなどでの利用を紹介。

 一例として、セキュリティ用途のデモを行なっており、胸ポケット部のプロジェクタから手の平や壁などに投写して、アラートなどを確認可能。フォーカスフリーのため、手のひらに投写してもボケずにすぐ映像をチェック可能。凹凸や丸みのある壁などにも投写可能となっている。

ディスプレイとヘッドフォンが一体となっている
MEMSプロジェクタモジュール
レーザーMEMSプロジェクタモジュールの活用例
セキュリティ用の提案。スーツにプロジェクタを内蔵
手の平に映像を投写
フォーカスフリーのため、離れた壁などにもボケずに投写

 ブラザー工業は、現在展開している業務用ヘッドマウントディスプレイ(HMD)の「AiRScouter(エアスカウター)」の新しいコンセプトモデルとして、防塵・防水・耐衝撃性能を強化した「AiRScouter タフコンセプト」を展示。今回が初披露で、製品化は'16年度中をメドとしている。

AiRScouter タフコンセプト
防水防塵構造を実現

 円筒構造による耐衝撃性やIP65相当の防塵/防水性能が特徴。使用後は水洗いもできる。主にヘルメットへの装着を想定しているが、アタッチメント部を着脱可能なため、様々な形状のヘルメットや、ヘルメット以外への装着も可能としている。グローブをしたままでも操作しやすい大型のダイヤルやボタンを採用する。

 既存モデルの「AiRScouter WD-200A」の様々な応用例も紹介。ハンディスキャナを使って物体を3Dスキャンする場合に、読み取り状況を視界に表示しつつ、対象物から目を離さずに作業でき、スキャン漏れの発見がしやすいという。

AiRScouter WD-200Aを使った3Dスキャンのデモ

 CEATEC JAPANでも展示していた村田製作所の「Cool Design Smart Glass」は、今回の展示では新たにスマートフォンアプリとの連携を実現している。

村田製作所の「Cool Design Smart Glass」

 このスマートグラスは、ディスプレイにソニー「SmartEyeglass」の技術を採用し、フレーム部は、メガネ生産地の鯖江市が行なったもので、コンパクトなデザインや、装着時のフィット感なども追求しているのが特徴。本体に、村田製作所のスイッチモジュールのmicro PS(SVM3シリーズ)が内蔵されている。

 今回展示されたアプリ連携では、天気やニュース、電車の運行情報、株価などのメニューからダイヤルを回して見たい情報を選ぶと、スマホアプリ側の動作で、メガネのディスプレイ部に簡単な情報を表示。より詳しく知りたい場合はスマホ画面を見るという使い方ができる。例えば、「あめ予報」を選ぶと、その時点で傘が必要か不要かだけをメガネに表示し、スマホを見るとより詳しい天気の情報を知ることができる。スマホとメガネの通信はBluetoothで行なう。

メガネ部の表示
スマホでより詳細な情報を確認できる
村田製作所のスイッチモジュールのmicro PS(SVM3シリーズ)

 メガネスーパーは、「b.g.(ビージー)」のプロトタイプなどを展示。左右の目用に、ノンシ―スルー型のディスプレイを2つ搭載したスマートグラス。メガネ部からデバイスを着脱でき、磁石を使って簡単に装着できるのが特徴。度付きのメガネにも装着可能で、「見え心地やかけ心地にこだわった。メガネを知り尽くしたメガネスーパーにしかできないウェアラブル」としている。

メガネスーパーの「b.g.」プロトタイプ
メガネとユニットの装着は磁石を使用
ディスプレイ部
QDレーザは、RGBのレーザー光をMEMSミラーに照射し、網膜で直接映像を感じられる「レーザアイウエア」を紹介。カメラで捉えた映像をリアルタイムでディスプレイに表示するもので、視覚に問題を抱える人向けの補助端末として提案している
鯖江でメガネフレームの企画やデザインなどを手掛けるボストンクラブは、スマートグラス向けフレームのデザインコンセプトを展示。ツルの部分を曲げるとディスプレイユニットを着脱できるデザインなどを紹介している

ピアノを弾く指の動きをグローブとARで可視化、プロのマネも可能に?

 ヤマハは、伸縮する繊維とセンサーを組み合わせ、衣服のように装着することで身体の動きをリアルタイムでモニタリングできる「薄型ストレッチャブル変位センサー」を紹介。活用例として、「指の動きを可視化するグローブシステム」を紹介し、ブース内でピアノ演奏デモを行なっている。

薄型ストレッチャブル変位センサーのデモ

 センサー内蔵のグローブを着けた人がピアノを弾くと、その指の動きのデータをBluetooth SPPモードのワイヤレスまたはUSBでPCに伝送。同時にモーションキャプチャカメラでも撮影し、その映像に、センサーからの動きデータを重ねてAR映像として表示する。指を大きく曲げると、その関節部分にある球状のマークが大きく、小さく曲げると球も小さくなり、どの部分をどの程度曲げたかが可視化される。AR技術には、CRESCENTが協力している。

「指の動きを可視化するグローブシステム」の演奏

 このデータの一つの活用案としては、ヤマハのピアノ教室で手本となる演奏を共有することで、演奏時に悪い癖が身に付かないようにするといった用途を検討。今後、技術の進化により手本の動きを他のグローブなどで再現できるようになれば、上手な人と自分の指の動きがどう違うかを、感覚で分かりやすく学ぶという利用も考えられるという。

薄型ストレッチャブル変位センサー
グローブにセンサーを内蔵
NTTアドバンステクノロジは、100dBの騒音下でもクリアな音声を伝えるというヘッドセットマイク「R-Talk HS310」をデモ
繊維会社のウラセは、800N以上の高強度と、金属単線の10倍以上という屈曲耐久性、1Ω/m以下という低抵抗の「フレキシブル導電糸」を展示。ウェアラブル用の糸として提案している

(中林暁)