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VR HMDは液晶で高精細、透明ディスプレイはより透明に。JDI技術展

 ジャパンディスプレイ(JDI)は25日、「JDI技術展」を報道向けに開催し、同社の技術戦略について説明した。有賀修二社長は、「ディスプレイ産業は成熟したという声もあるが、まだ変革期。IoT時代にもディスプレイは必要で、ディスプレイの搭載領域はさらに拡大していく。ディスプレイは成長産業」と語り、LTPS技術などの基盤技術を説明。VR向けディスプレイやインセルタッチの進化、落下に強く曲げられる液晶「FULL ACTIVE FLEX」などの最新技術を披露した。FULL ACTIVE FLEXについては別記事で紹介している

ジャパンディスプレイ 有賀修二社長

VR HMDで液晶を。高精細化が強みで、弱点も解消

 AV関連で注目の展示は、HMD型VR用液晶パネル技術。PlayStation VRやOculus Rift、HTC VIVEなど、現在のVR HMDの多くは応答性能の高さによる動画ボケの少なさなどを理由に有機EL(OLED)を採用している。

VR HDM用液晶パネルを搭載した開発機

 今回JDIは、液晶を用いたVR HMDのデモ機を開発。パネルスペックは3.4型で解像度は1,440×1,700ドット、精細度は650ppi。フレームレートは90Hz、応答速度は5.6ms。このパネルを左右の目用に2枚内蔵している。

 高開口率化により、網目感を抑えているほか、液晶自体の応答速度を高速化。さらに、バックライトを点滅させ、動画ボケを抑えるブリンキングバックライトにより、BET(Blurred Edge Time)を1ms以下とした。また、狭額縁化や折り曲げ可能といったFULL ACTIVE FLEXにより、実装面でも利点があるという。

VR HDM用液晶パネルの概要

 有機ELは高解像度化した際の生産効率に課題があるが、液晶は高精細化が容易で、量産性の問題も無い。弱点であった動画ボケへの対応も行なっており、VR HMDでの採用を目指す。実際に複数のメーカーと話を進めており、解像度やフレームレートなどの仕様も、顧客の意見を反映して決定したとのこと。'17年度中の搭載製品の発売が見込まれる。

透明ディスプレイや空中結像などユニークな展示も

 従来の透明ディスプレイの1.5倍以上の透過率80%を謳うディスプレイも開発。4型/300×360ドットで、透過率が高いため、風景にオーバーレイする形で映像を表示できる。ARや車載、ショーケースなどでの応用を想定して開発しているとのこと。実用化時期は未定だが、透過率を高めたことで、ショーウィンドウなどに映える表示が行なえること、カラー表示ができることなどが強みという。

高透過・透明ディスプレイ

 空中結像ディスプレイは、空間に11.6型のフルHD投射を行なうもの。筐体内部に高輝度な11.6型フルHDディスプレイを内蔵しており、ハーフミラーと特殊な再帰反射板を用いて、空間に浮いているように表示できる。

空中結像ディスプレイ

 明るさを保ちながらフォーカスのあった表示を行なうための、筐体内の光学設計の最適化などにノウハウが必要だという。

 また、車載用のハーフミラーディスプレイでは、高透過率ミラーと可変ミラーの開発により、ディスプレイ/ミラーの切替や、眩しさを抑えながらミラー/ディスプレイ切り替えを実現する開発品のデモも行なわれた。

車載用のハーフミラーディスプレイ

 LPTS技術を活用し、薄型化した13.26型のノートPC用4K液晶も展示。薄さや低消費電力が特徴で、精細度は332ppi。放送局向けの8Kディスプレイは、28.7型で323ppi、60Hz駆動や、17.3型/510ppiの120Hzなどを展示機を紹介。今後は広色域化などに取り組むという。

13.3型のノートPC用4Kディスプレイ。LTPS
28.7型の8Kディスプレイ
17.3型の8Kディスプレイ

LTPS技術がコア

 瀧本昭雄CTOは、LTPS(低温ポリシリコン)技術を中心としたJDIの技術戦略について説明。液晶(透過型、反射型)、有機EL、他方式など様々なディスプレイ技術があるが、それらの違いはフロントプレーン部であり、バックプレーン部はLTPSであることから、LTPSがコア技術であり、省電力、高画質、高機能インターフェイス、高デザイン性などの要求に応えていくという。

瀧本昭雄CTO
コア技術はLTPS

 特に力を入れるのがデザイン性で、それを実現する技術が「FULL ACTIVE FLEX」となる。

 省電力については、開口率の向上とともに、低周波駆動(Advanced LTPS)により駆動電力を抑えられることを紹介。会場では60Hzのディスプレイで、静止画表示時には5Hzの低周波駆動に変更しながら、フリッカ(チラツキ)を抑える制御を実行。大幅な駆動電力低減が図れるという。

左がAdvanced LTPS。右の60Hzディスプレイを5Hz駆動するとチラツキが出てしまうが、Advanced LTPSではちらつかず、消費電力を抑えられる
Advanced LTPSの解説

 タッチパネル機能そのものを液晶パネルに一体化する「インセルタッチ」の進化についても説明。現在は、狭額縁や毛筆描画に対応した第2世代だが、第3世代ではフレームレス対応や消費電力低減、ディスプレイエッジのインセル対応などを予定。第4世代は指紋認証などのセンシング対応や、ジェスチャ操作によるホバリングUIなどに対応するという。

インセルタッチの進化
ホバリングUIも

 有賀修二社長は、重点領域として、フルHDスマホ、車載、VR/AR、薄型/2in1ノートPC、サイネージを強化する方針を説明。また、'17年内には中/大型有機ELディスプレイの「JOLED」を連結子会社化し、中型~大型までポートフォリオを拡大。アプリケーションの幅を拡げ、事業拡大を目指すという。

JDIのターゲットセグメント
JOLED子会社化のシナジー