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NICT、8K非圧縮映像/ハイレゾ16ch音声の分割・複数回線伝送に成功

 国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)は3日、「さっぽろ雪まつり」で収録した8K非圧縮映像と16chのハイレゾ音声を、複数回線に分割し、札幌~大阪間でリアルタイム伝送して大阪の施設で同期・復元することに成功したと発表した。大容量回線が整わない環境でも8K配信可能な技術につながるという。

実験構成図

 NICTでは新世代ネットワーク技術の研究開発を行なっており、研究開発用に構築・運用されているテストベッドネットワーク「JGN」を整備。2014年からNICT主催の実験により、「さっぽろ雪まつり」の8K非圧縮映像の伝送に成功している。今回の実験は神奈川工科大学など産官学48団体と共同で実施した。

 実験では、2台のカメラを用いて札幌で8K撮影を実施。従来よりも1秒当たりのフレーム(コマ)数を2倍に増やして滑らかな動きを表現でき、画角もより広くなった。これにより、8K非圧縮映像は従来の約25Gbpsから、4倍超の109Gbpsに増加。さらに立体音響再現のため、192kHz/24bitで16chのハイレゾ音声も同時収録している。

 ネットワーク1回線の最大帯域は100Gbpsで、そのままではオーバーするため、映像ストリームをリアルタイムで分割し、距離や遅延時間が異なる複数回線を使って伝送、経路制御による遅延時間調整を行なって大阪で再構成。音声データと合わせて復元することに成功した。

 映像のライブ配信と同時に、NICTが運用する多数のPCサーバーを用いた検証用環境「StarBED」を利用し、高臨場感環境の収録、再生を実施。

 国立情報学研究所(NII)が構築・運用するネットワーク「SINET5」も利用。SINET5上で実験的に提供する「L2オンデマンドサービス」と、JGN上で運用中のネットワーク仮想化技術を利用し、途中の中継経路を細やかに設定して遅延時間のコントロールを可能とした。L2オンデマンドサービスは任意の2地点について、任意の時間に専用線と同等の品質保証パスを確立するサービス。

 今回の実験の成功により、十分な帯域の確保が不可能な映像撮影・中継環境においても、より高画質な映像配信が実現できることを確認。実証された各種技術は、2020年 東京オリンピック・パラリンピックにおける、ライブ中継会場とメディアセンター間の8K/4K映像伝送などでの活用を想定している。

 なお、6日と7日の17時から、グランフロント大阪にて、実証実験の一般公開も行なう。表示にはシャープの85型8Kディスプレイを使用し、8K/60pで表示する。