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Astell&Kern、「楽しみ方を広げる」新ハイレゾプレーヤー「KANN」。実売12万円台

 アユートは13日、iriver Astell&Kernブランドの新ハイレゾプレーヤー「KANN」(カン)を国内発表した。価格と発売日は未定だが、発売日はAstro Silverが5月中旬、Eos Blueは6月頃のイメージ。価格は米国で999ドルとアナウンスされており、日本では12万円台を想定。旭化成エレクトロニクスのDAC「AK4490」をシングルで搭載。microSDに加えSDカードが利用でき、ヘッドフォン出力とは別に、2.5mmのバランス出力や、3.5mmステレオミニのライン出力を備えるなど多機能なのが特徴。強力なヘッドフォンアンプも搭載する。

Astell&Kernブランドの新ハイレゾプレーヤー「KANN」のEos Blue

 既報の通り、米国で概要が発表されていたが、国内でも製品を披露した。AK70やAK300シリーズといった従来の型番とは異なり、「KANN」という名前が与えられている。コンセプトは「ONE PLAYER TO RULE THEM ALL(1台のプレーヤーで全てを支配する)」で、豊富な機能を備えているのが特徴。名前の由来は「ドイツ語でKANNは、英語で“可能”を意味する助動詞の“Can”に相当する。……そしてジンギスカンも(笑)」(iriverのJames Lee CEO)という。

「AK4490」をシングルで搭載

 800×480ドット、4型でタッチパネルタイプの液晶ディスプレイを装備。内蔵メモリは64GBで、256GBまでのmicroSDカード用スロットと、512GBまで対応するSDカード用スロットも装備。

256GBまでのmicroSDカード用スロットと、512GBまで対応するSDカード用スロットも装備

 DSD 11.2MHzまでのネイティブ再生が可能。PCMは382kHz/32bitまでサポートする(AK300のDSD再生はPCM変換再生)。

 KANNの大きな特徴は、強力なヘッドフォンアンプを搭載している事。ヘッドフォン出力は3.5mmのアンバランスと、2.5mmのバランスを用意。3.5mmが0.65Ω、2.5mmが1.3Ωと低インピーダンス仕様になっており、ノーマル/ハイゲインの切り替えも可能。ハイゲイン設定時は、アンバランスで4Vrms、バランスで7Vrmsと、AK300シリーズに取り付ける別売アンプ「AK380AMP」に迫る駆動力を持つ。これにより、能率の低いヘッドフォンもドライブできるとしている。

  • KANN
     ノーマル:アンバランス 2Vrms/バランス 2Vrms
    ハイゲイン:アンバランス 4Vrms/バランス 7Vrms
  • AK300+AMP
     ノーマル:アンバランス 1.88Vrms/バランス 1.88Vrms
    ハイゲイン:アンバランス 3.85Vrms/バランス 7.66Vrms
  • AK300
     アンバランス 1.98Vrms/バランス 1.98Vrms
出力の比較表

 また、ヘッドフォン出力とは別に、専用のライン出力として3.5mmアンバランスと2.5mmのバランス出力を各1系統搭載。ライン出力信号の経路はヘッドフォン出力の経路から独立しているので、「従来製品と比べても、純度の高いライン信号伝送が可能」という。これにおり、据置きプレーヤーとしてホームオーディオと接続して楽しむ使い方も想定している。

 アンバランスのライン出力は、0.7V、1V、1.25V、2Vrmsの4段階で出力を設定でき、接続する機器にあわせてセッティングできる。バランス伝送によるコモンモードノイズのキャンセルにより、ハイエンドなスピーカー再生ができるという。

ヘッドフォン出力は3.5mmのアンバランスと、2.5mmのバランスを用意。これと別に、ライン出力も備えている

 その他の機能面では、AK300シリーズと同様に、外部DACなどに向けてUSBオーディオ出力が可能。PCと接続してUSB DACとして使う事もでき、その場合はPCMで384kHz/32bit、DSDは5.6MHzまで対応。DoPでの伝送となる。端子はマイクロUSB。

 これに加えて、充電とデータ転送用にUSB Type-C端子を別に搭載。デジタルトランスポートやUSB DACとしてKANNを使いながら、別のUSB端子から給電し、バッテリ残量を気にせず利用できる。

左からAK300+AMP、KANN、AK300、AK380
左からKANN、AK380
左からAK300+AMPとAK

 高精度かつ、200Femto秒という超低ジッタを実現する電圧制御水晶も採用。DLNAに対応する「AK Connect」機能も備えており、Wi-Fiを通じて同一LAN内のパソコンやNASなどに保存した音楽をストリーミング再生したり、KANNのストレージにダウンロードする事も可能。AK Connect Appをダウンロードしたスマートフォンやタブレットから、KANNのワイヤレス操作も可能。DMP、DMC、DMS、DMRをサポートする。

 Bluetoothにも対応し、aptX HDコーデックをサポート。対応するヘッドフォンなどと組み合わせ、高音質なワイヤレス再生が可能。プロファイルはA2DP、AVRCPに対応。

 6,200mAhのリチウムポリマーバッテリを搭載。最大14時間の再生が可能。9V 1.67Aの急速充電にも対応。対応する市販のUSB ACアダプタを使用すれば、1時間の充電で、約6.5時間の再生が可能。

Eos Blueの背面
側面のボリューム部分
Astro Silver

 筐体の素材はアルミニウム。外形寸法は約115.8×71.23×25.6mm(縦×横×厚さ)で、重量は約278g。

 Astell&Kernの他のラインアップとは異なる、新しいコンセプトでデザインされており、側面には多数の“ひだ”を用意。これは、雄大な氷壁をモチーフとしており、ウェーブによって様々な角度から光が入り、表情や色味が変化。そして、「その規則性とリズムは音楽にも似ている」という。

 側面のボリュームは、横方向に回転するタイプで、操作性や耐久性にこだわって開発したという。Astro SilverとEos Blueの2カラーは、「KANNのパワフルでありソフィストケイトされた機能を具現化した」ものだという。

「日本からの意見を取り入れて開発したプレーヤー」

 James Lee CEOはKANN開発の経緯について、「日本の友人、そしてカスタマーの皆様からの意見を取り入れて開発した。もともと日本市場向けに作っていたのだが、皆が気に入り“他の地域にも届けたい”という事になり、他の国でも販売する事になった」と説明。

James Lee CEO

 ライン出力をイヤフォン出力と個別に備え、USB DACとして動作する際もUSB給電ができるなど、据置機としても使いやすい事や、外部アンプを接続しなくても高い駆動力を持つヘッドフォンアンプを搭載している事、それらを備えながらサイズや重量を抑えている事を説明。「パワフルだけれど、高音質で、なおかる軽量。様々な用途に応えられ、アクティブに楽しめるプレーヤー」とアピールした。

 また、これまでの数字を使った型番のシリーズとはまったく違うモデルとしてラインナップしていく事を説明。ドイツのミュンヘンで5月に開催されるオーディオ・ショーでも「新たな情報を出せるかもしれない」とした。

音を聴いてみる

 “据置プレーヤーとしても使えるポータブル”というメッセージは、AK380など、これまでのAKシリーズでも提案されていたが、それをさらに一歩進めた製品だ。

 据置きプレーヤーとして使わない場合でも、ポータブルプレーヤーとしては非常に強力なヘッドフォンアンプを搭載しているのが特徴となり、例えば平面駆動タイプのヘッドフォンなど、ドライブしにくいヘッドフォンでもリッチに音楽が楽しめるプレーヤーとしても注目度が高い。例えばジャケット型アンプの「AK380 AMP」は、アンプのみで直販99,800円(税込)するので、それに近い駆動力を持つKANNは、リーズナブルなプレーヤーと見る事もできる。

 試しにbeyerdynamicのヘッドフォン「T1」をハイゲインモードで接続すると、ボリューム値120を越えたあたりで十分と感じる音量になり、最大の150では音が出すぎてヘッドフォンをつけていられないほどだった。

KANNとT1

 手にすると、サイズ感はAK380よりも一回り大きく、特に厚みがある。AK380+AMPよりは小さいが、ポータブルプレーヤーとしてはかなり大きな筐体だ。ただ、プレーヤーに外部アンプをゴムバンドで固定しているようなシステムと比べると、可搬性は高いだろう。

 重量はAK380の230g、AK380+AMPの395gと比べ、KANNは278.7gと大きな違いはない。筐体が大きいので、むしろ数字ほど重くは感じない。

 音の傾向は、同じ「AK4490」DACをシングルで搭載したAK300と似てはいるが、バランスの面でAK240に似た、低域のパワフルさを感じる。より音楽をアグレッシブに、元気よく楽しませてくれそうなサウンドだ。

 ただ、ドンシャリな音ではなく、あくまで低域の音圧がやや強めに感じるだけで、全体のバランスは良好。空間の広さもAKプレーヤーならではのクオリティで、据置機として訴求するのも頷かせる、素性の良い音だ。

 発表会ではマークレビンソンのアンプや、JBLのスピーカーと組み合わせた試聴も行なわれた。

発表会ではマークレビンソンのアンプや、JBLのスピーカーと組み合わせた試聴も
ロックバンド「サニーデイ・サービス」の曽我部恵一氏と、音楽評論家の小野島大氏もゲストとして登壇。曽我部氏はKANNのサウンドについて、「スタジオで聴いていた事を思い出すようなサウンド。変な色付けも無く、良い意味で“音が素晴らしく普通”。こうじゃなきゃね、と思える音が出る」と気に入った様子だった
左からJames Lee CEO、曽我部恵一氏、小野島大氏