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パナソニック、「車載事業で'18年度に売上2兆円目指す」。'16年度TV事業は46億円の黒字
2017年5月11日 20:57
パナソニックは11日、事業方針について発表。津賀一宏社長は、「2017年度は、増収増益に強い手応えを感じている。車載を中心とした高成長事業が増収の牽引役になり、また増収による増益への反転を目指すことになる。これをベースに、2018年度の営業利益4,500億円、純利益で2,500億円以上という経営目標は堅持する」と語った。
パナソニックでは、事業区分を3つに分類。売上げ、利益成長の牽引役と位置づけ、大規模投資などの経営リソースを集中する「高成長事業」、競争力を活かして、着実に利益を創出し、高成長事業への投資原資を生み出す「安定成長事業」、事業の転地や固定費削減、合理化などにより徹底的に収益改善に取り組む「収益改善事業」であるが、このほど、対象事業の組み替えを行ない、「高成長事業」には車載二次電池、次世代コックピット、ADAS、エアコン、安定成長事業には白物家電、航空、配線器具、収益安定事業には半導体、液晶パネル、ソーラーを分類した。
「航空は、主力事業であるインフライトエンターテインメントシステムは、すでに市場が成熟していると判断し、昨年度は高成長事業であったが、今年度からは安定成長事業に位置づけている。また、ソーラーは、2016年度は赤字になった。液晶パネル、半導体も赤字であり、ある程度の規模を3つの赤字事業が収益改善事業に含まれている。半導体は車載や産業向けへの転地と徹底した合理化の取り組みを通じて収益改善に取り組み、2019年度には黒字化する」(津賀社長)とした。
テレビ事業も引き続き、収益改善事業に位置づけられている。また、液晶パネルについては、2016年度上期に生産を終息。パナソニックの強みが活かせる車載、産業向けに特化し、2019年度には黒字化させる考えを示した。
車載事業については、2018年度に2兆円の売上げ目標を掲げてみせた。「私がオートモーティブ事業を担当していた10年前に、クルマの電子化、電動化の時代が到来することを見据えて、テレビなどのデジタル家電技術の車載へのシフトを開始した。そののち、三洋電機の買収で得た電池やデバイス技術を集約し、オールパナソニックで車載事業の成長戦略を推進してきた。車載事業は、売上げ、利益が出てくるまでに時間がかかる事業だが、2014年以降、積極的に取り組んできたものが、2017年後半から目に見えた形で成長が見込め、複数の大型案件の納入を開始する」。
「そのひとつが、ジャガーレンジローバー向けのディスプレイやヘッドアップディスプレイの納入である。また、車載電池で伸びしろがあり、2018年度の車載事業の売上高2兆円には手応えを感じている。社内では2020年以降の売上げ目標も設定しているが、右肩上がりの数字となっており、継続的に伸ばすことができると考えている。今後もEVなどの環境対応車や、自動運転技術の進化による電子化、電動化が進むなか、当社の強みが生かせる分野に集中し、さらなる成長を実現する。この分野には戦略投資を行っていく考えだ。利益率は、事業の種類によって異なり、10%のものがあれば、最低で5%のものもある。トータルで5%以上にしていく。インフォテインメントと車載用電池が、車載事業における2本柱になるが、2020年にはADASなど安全系のデバイス、システムの成長が見込まれるほか、自動車向けの新たなデバイスも成長が見込まれ、柱の範囲が広がる」という。
車載用二次電池では、「これまでの電池事業はノートPCや携帯電話向けなどのモバイル向けだったが、このリソースを車載用にシフトしている。現在は、日本と中国で生産しているが、今年はテスラのギガファクトリーでの生産が本格化することで、本数、金額ともに北米が多くなる。現地生産ということを考えれば、欧州でも電池工場が必要だが、信頼できる自動車メーカーと“握る”ことができるかが重要。そうでなければ投資はできない。現在、自動車メーカーの要望を聞いているところであるが、大規模な電池工場に投資をするのであれば、2020年以降のことになる」などと述べた。
テスラとは、蓄電池やソーラーでも提携をしている。
「ソーラーは、テスラとの協業で海外の投資が拡大している。2016年度は海外で100MWを計画していたが、テスラの米バッファロー工場で1GWを目標にしており、パナソニックのキャパシティを超えることになる。ソーラーはテスラ以外からも引き合いがあるが、リソースの問題がある。今年はバッファロー工場の立ち上げにリソースを全面的に割くことになる」などとした。
安定成長事業である家電事業については、「これまでの経営体質強化の取り組みや、選択と集中を進めてきた結果、白物家電を中心とした事業の方向性が確立してきた。テレビ、オーディオなどのAV関連から、白物家電に経営リソースを大幅にシフト。さらに、白物家電の成長戦略として、プレミアムゾーンの拡大戦略を採用し、着実に利益を伸ばしてきた。加えて、スピード感のあるグローバル経営を目指して、開発、製造、販売の一体化、大幅な権限委譲による現地化を進め、アジア、中国では、2016年度に大幅な成長を実現した。今年度は新たにインドの家電事業も新たなフェーズに移行。今年4月に、パナソニックインドアプライアンスカンパニーを設置し、現地化を推進し、伸びしろの大きい地域での成長を実現する」と語る。
また、1兆円の戦略投資については、「現時点で検討案件を含めると、総額は1兆円を超えているが、優先順位をつけて、メリハリのある投資を実行していく。2016年度までに、北米の二次電池やフィコサの買収などで約4,000億円を投資。今後は車載電池工場への投資などを進める。北米や中国の電池工場への大型投資の回収は、一般的な償却期間である7~10年より、前倒しで見込んでいる」とした。なお、「これらの投資が完了したあとに、新たに1兆円の投資枠を設ける余裕はない。非現実的である。いまは投資したものをうまく活用して、キャッシュを回すことが大切である」という。
2017年度の連結業績見通しは、純利益1,600億円
パナソニックが発表した2017年度(2017年4月~2018年3月)の連結業績見通しは、売上高は前年比6.27%増の7兆8,000億円、営業利益は21.0%増の3,350億円、税引前利益は18.2%増の3,250億円、当期純利益は7.1%増の1,600億円とした。
津賀社長は、「すべての事業区分で、為替影響を除く実質ベースで増収を達成する見込みである。2017年度はこれまでの成長に向けた仕込みが大きく実を結び、車載を中心とした高成長事業が成長や増収を牽引する」と意欲をみせる。
セグメント別では、アプライアンスの売上高が前年比2%増の2兆5,500億円、営業利益は12%増の1,110億円。テレビ事業の売上高は22億円減の3,049億円、営業利益は14億円減の32億円とした。
コネクティッドソリューションズの売上高は前年比5%増の1兆1,030億円、営業利益は37%増の690億円。エコソリューションズは、前年比5%増の1兆6,260億円、営業利益は12%増の720億円。オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、売上高が10%減の2兆6,600億円、営業利益は前年並の930億円を見込んでいる。
梅田博和役員(経理・財務担当)は、「車載電池の販売拡大やフィコサの連結など、車載事業が大きく成長する。また、インフォテインメント事業の伸長が見込まれるオートモーティブ、車載電池の販売が拡大するエナジーのほか、白物家電は、日本およびアジアを中心に引き続き堅調に推移し、増収を牽引する。エアコンや冷蔵庫、洗濯機などのメジャー家電は、アジアやインドで高い成長を見込んでいる」という。
また、「BtoB事業の中核を担うコネクティッドソリューションズは、航空機需要の減少に伴い、アビオニクスは減収となるが、 新規連結のゼテスを含むモバイルソリューションズを中心に実質増収を見込む」という。
なお、新設したコネクティッドソリューションズのカンパニー社長には、日本マイクロソフトの会長だった樋口泰行氏が就任しているが、津賀社長は、「引き続き、北米、日本を中心に展開することは変わらない。樋口が自分の目で、欧州、中国を見て、どこを起点にして、顧客との関係を構築するかを判断することになる。海外事業を伸ばすのは変わりない」などとした。
また、「エコソリューションズでは、国内での新築住宅着工数が前年を下回り、ソーラーの国内市場も厳しい状況が続くが、リフォーム市場の緩やかな復調を予想。北米、アジア、インドなどで、住宅市場の成長が続くと想定し、主力の配線器具や照明機器などの電設資材事業において増収を見込む。オートモーティブ&インダストリアルシステムズでは、自動車産業における電動化、電子化の本格化により、車載関連需要の拡大があるほか、製造現場でのIoT活用によるネットワーク化の進展が見込まれる。車載電池や車載情報通信システム(IVI)などの販売が拡大フェーズに入ることも追い風になる」という。
2016年度のテレビ事業は46億円の黒字
2016年度(2016年4月~2017年3月)の連結業績は、売上高は前年比3.7%減の7兆3,437億円、営業利益は20.2%増の2,767億円、税引前利益は20.9%増の2,750億円、当期純利益は9.6%減の1,493億円となった。今回からIFRSを採用している。
梅田役員は、「売上高は車載事業の伸長によって、為替影響を除く実質ベースでは増収を達成。調整後営業利益は先行投資や為替の影響で減益になったが、堅調な白物家電事業や、車載向けおよび産業向けの比率が拡大したインダストリアル事業などで増益となった」と総括。「車載や家電事業等が成長し、新規連結したハスマンを除いても増収となった。調整後営業利益は、将来成長に向けた先行投資の影響で減益となった。2016年度のROEは9.9%であり、今後も、10%以上の水準を目指す」とした。
ソーラーが悪化したエナジーシステム、市場が縮小したコミュニケーション、震災影響を受けた映像・イメージングは減収となったが、新規連結した食品流通、エナジー、オートモーティブ、エアコンが成長し、全体では実質増収になったという。
セグメント別では、アプライアンスの売上高が前年比2%増の2兆3,245億円、営業利益は75%増の1,043億円となった。
なお、テレビ事業およびホームエンターテイメント事業で構成されるAV事業の売上高は前年比9%減の4,414億円となった。そのうち、テレビ事業は売上高が437億円減の3,071億円、営業利益が133億円増の46億円の黒字となった。
「日本、アジアの家電事業が堅調に推移。とくに日本では、過去最高のシェアを獲得した。また、白物家電のプレミアム戦略により収益が良化したほか、拠点再編費用の減少などにより増益となった」という。
AVCネットワークスの売上高は、前年比11%減の1兆407億円、営業利益は57%減の296億円。エコソリューションズは、前年比3%減の1兆5,457億円、営業利益は18%減の625億円。オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、売上高が5%減の2兆5,612億円、営業利益は118%増の1,093億円となった。
「AVCネットワークスは、為替や熊本地震の影響を受け、大きく減収減益となった。土地売却益があったが、構造改革費用やアビオニクス事業に対する米国政府当局調査関連の引当金などが減益要因。エコソリューションズは、為替影響に加えて、国内住宅用ソーラー市場の縮小が影響。オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、為替影響が大きく響き減収となったが、実質ベースでは増収。車載および産業向けの売上げが成長した。だが、先行投資により減益となっている」とした。
津賀社長は、「2015年までは、事業売却や既存事業の縮小による減益を、合理化や固定費削減でカバーして増益を達成した。これからの取り組みと並行して、事業の転地や成長事業へのリソースシフトなど、将来の成長に向けた仕込みも行ってきた。2016年度は、高成長事業への先行投資を行ったことから減益となったが、実質的には増加。2017年度の増収増益に向けた足場ができたと考えている」と述べた。