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パナソニック、'16年第3四半期は純利益1,753億円。TV増益、「トランプ発言は気にしている」
2017年2月2日 19:31
パナソニックは2日、2016年度第3四半期(2016年4月~12月)の連結業績を発表した。売上高は前年同期比5.7%減の5兆3,500億円、営業利益は24.9%減の2,405億円、税引前利益は8.9%減の2,318億円、当期純利益は9.5%増の1,753億円となった。
また、非監査のIFRSでは、売上高は前年同期比5%減の5兆4,224億円、調整後営業利益は19%減の2,716億円、営業利益は1%減の2,757億円、税引前利益は1%増の2,785億円、当期純利益は19%増の1,975億円。
河井英明代表取締役専務は、「為替影響が大きく減収となったが、為替を除く実質ベースでは、車載電池の伸張などにより増収。ハスマンの新規連結影響のプラスを除いても増収となっている。また、調整後営業利益は、為替影響で減益。ソーラー事業も減販となっている。だが、車載・産業向け売り上げが伸張したインダストリアル事業が増益。AV事業やモビリティ事業が収益性を改善して増益になった。取り組みの成果が着実に出てきている」と総括した。
また、第3四半期については、「為替影響を除く実質ベースでは、新規連結による食品流通、車載事業の伸長によるエナジー、オートモーティブのほか、洗濯機などの白物家電が堅調に推移したメジャーが増収を牽引。一方で、欧州でテレビ事業が苦戦したAV事業は減収となった。また、調整後営業利益では、新規連結の影響に加えて、実質ベースでの増販や材料合理化などが増益に貢献」。
「しかし、将来成長に向けた先行投資を含む固定費の増加や為替影響によって全体では減益になった。さらに、車載・産業向けの売り上げが伸びたインダストリアル、収益性が改善しているAV事業、北米で販売体制強化に取り組んだモビリティなどが増益に貢献。エナジーシステムやインバウンド需要減速の影響を受けたスモールビルトインアプライアンスなどでは減益になった」という。
「テレビの収益性は改善している」
セグメント別では、アプライアンスの売上高が前年同期比1%増の1兆8,052億円、セグメント利益は51%増の1,025億円となった。為替を除く実質ベースでは売上高は前年同期比4%増となった。
なお、テレビ事業の第3四半期売上高は、前年同期比186億円減の960億円となったものの、事業部利益は43億円増の23億円となった。AV事業は、4Kテレビが日本では好調だったが、欧州市場での苦戦が影響して全体では減収になったという。だが、4Kテレビなどの高付加価値商品シフトが進み収益性は改善していることを強調した。
「テレビは前年から増益となっており、着実に経営体質が強化されている。また、国内家電は堅調に推移し、業界水準以上の実需を刈り取ることができ、国内シェアは前年同期比で約1ポイント上昇。だが、欧州では苦戦した」としている。
また、エアコンは、国内販売が伸張したが、アジアや欧州で苦戦して減収。メジャーアプライアンス事業は、日本およびアジアで、洗濯機や冷蔵庫が堅調に推移。白物家電は高付加価値商品へのシフトが進んだという。
AVCネットワークスの売上高は、前年同期比13%減の7,515億円、営業利益は23%減の415億円。エコソリューションズは、前年同期比4%減の1兆1,187億円、営業利益は22%減の461億円。オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、売上高が8%減の1兆9,029億円、営業利益は4%減の855億円となった。
AVCネットワークスは、モビリティに含まれるITプロダクツ事業が、日米大型案件の納入などにより増収になったが、ストレージ事業の既存商品が減販となり、モビリティ全体では減収。映像・イメージングは、高輝度プロジェクタや、ミラーレス一眼をはじめとするデジタルカメラの新製品が牽引し実質増収となったが、熊本地震の影響が残って前年並みになった。
セグメント利益は、国内ソリューションでの増販やモビリティ領域における高付加価値商品のシフトによって収益性が改善したことで増益になったが、為替影響のマイナスをカバーできなかったという。
エコソリューションズは、ソーラーが国内住宅向け市場の縮小によって、厳しい状況が継続している。今後ソーラー事業は、国内市場での取り組みに加え、米テスラモーターズとの協業など、海外事業を加速させることで、グローバルでの事業拡大を目指す姿勢を明らかにした。
オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、為替を除く実質ベースで5%増。すべての開示事業で増収だったという。車載カメラ、センサー、スイッチなどの電装品が好調に推移。また、車載向けリチウムイオン電池が大幅に伸長した。一方で、インダストリアル分野は、テレビ向け液晶パネルの撤退などの事業縮小や終息影響があったものの、車載リレー、電子材料などの車載・産業向け事業が伸長したという。
ちなみに、大規模6事業部の実績については、二次電池事業部が増収になったことに触れ、「成長領域として車載事業に取り組んできた成果の現れ」としたほか、「インフォテインメント、二次電池、 パナホームは、将来成長に向けた 先行投資のフェーズにあり、前年から減益となっている」とした。
また、同社では、2016年度の業績見通しを上方修正した。売上高は10月公表値に比べて1,500億円増の7兆3,500億円、調整後営業利益は200億円増の3,400億円、営業利益は200億円増の2,650億円、税引前利益は200億円増の2,600億円、当期純利益は100億円増の1,300億円とした。
「これらの修正はすべて為替の影響によるもの。10月時点では一度下方修正をしたが、それは1ドル100円としたことでの修正。第3四半期には、円安に戻り、今回は1ドル110円としたことで修正。1ドルあたり1円動くと、売上高では年間350億円、利益では32億円の変動がある」と説明した。
セグメント別の修正後見通しは、アプライアンスの売上高が200億円増の2兆3,000億円、調整後営業利益は据え置き1,100億円。また、AVCネットワークスの売上高は300億円増の1兆750億円、調整後営業利益は50億円増の650億円。エコソリューションズは、売上高が100億円増の1兆5,800億円、調整後営業利益が据え置き840億円。オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、売上高が500億円増の2兆5,200億円、調整後営業利益は120億円増の880億円とした。
一方、スタートしているテスラとのギガファクトリーの共同事業に関しては、「具体的な需要が見えているので、できるだけ前倒しで進めているが、追加の投資が決まっているわけではないが必要に応じた投資をしていく。北米の自動車関連事業の発展はかなり見込めると考えている」としたほか、「二次電池は売り上げは相当伸びているが、ギガファクトリーの立ち上げ費用などの先行投資があり赤字である。だが、テスラとの事業そのものは赤字ではない。来年は投資が圧縮でき、ボリュームが出てくるので、利益に貢献できると考えている。二次電池を取り巻く環境は悪くはない」とした。
トランプ政権の影響については、「パナソニックは、北米において、約5,000億円の事業規模があり、約2万人が勤務している。テスラとの協業もあり、二次電池や太陽光電池の生産も行なうことになる。パナソニックは、グローバルに事業を行なっている。各国の経済が密接に結びついており、グローバル経済が発展する方向で政策を展開してもらいたいと考えている。トランプ大統領の発言で為替が動くので、その点は、気にしておく必要がある。NAFTAの影響はないが、マキラドーラについては、間接的には納入しているところが多いので懸念はしている」とした。
なお、米国子会社であるパナソニックアビオニクスのアビオニクス事業に関して、米国司法省および米国証券取引委員会から、連邦海外腐敗行為防止法および米国証券関連法に基づく調査を受けていることを明らかにした。
河井代表取締役専務は、「調査中であり、説明のしようがない。どのようなところが調査の対象になるのかということも含めて開示を控える。どんな内容に抵触するのか精査しているところであり、真摯に受け止めて、調査にはしっかり協力する。追求すべきところは追求する。今年度末の業績への影響など、開示すべき事項があれば、速やかに開示する。現時点で具体的な業績影響額を合理的に見積もることはできない」などとした。
会見ではこの件について、何度も質問が飛んだが、「これ以上のことはコメントできない」として具体的な内容については明言を避けた。