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音楽ファイルから譜面を自動作成、“音ゲー”風に演奏を補佐するヤマハ新電子ピアノ
2017年9月26日 16:08
ヤマハは、88鍵の電子ピアノ「Clavinova(クラビノーバ)」の新製品として、音楽のファイルから曲のコード進行を読み取り、ピアノ用の譜面(伴奏譜)を自動生成する世界初の「オーディオ トゥー スコア」機能を備えた「CSP」シリーズ2機種を10月24日に発売する。価格はホワイトウッド調仕上げ(WH)と、ブラックウッド調仕上げ(B)の「CSP-170」が各28万8,000円、「CSP-150」が各22万円。黒鏡面艶出し仕上げ(PE)の「CSP-170」が32万8,000円、「CSP-150」が26万円。
電子ピアノは、子供が家庭でピアノを練習するために購入する事が多い製品だが、CSPシリーズは趣味としてピアノを弾きたいという大人もターゲットとした製品。ピアノから離れていた人や、ピアノに触ったことがない人を、光を使ってサポートする機能や、お気に入りの楽曲の演奏に自分が参加しているような気分が味わえる機能などを備えている。
「CSP-170」と「CSP-150」のどちらも、電子ピアノとしてはボタンやツマミの少ない、シンプルなデザインを採用。無線LANとUSB端子を備えており(USB無線LANアダプタ付属)、ワイヤレス、もしくは有線でiPadやiPhoneと接続可能。アプリの「スマートピアニスト」を使い、様々な機能を活用できる。なお、Android版のアプリは2018年春にリリース予定。
アプリでは、ヤマハ最高峰のグランドピアノ「CFX」や、ベーゼンドルファーの「インペリアル」などを含む様々なピアノの音や、オルガン、ギター、ベース、ストリングス、コーラス、ブラス、パーカッション、ドラム、シンセサイザーなど、合計692音色をアプリをタッチする事で切り替えられる。
アプリの画面を、楽器のイラストを見ながら、直感的にタッチ操作可能。グランドピアノでは、屋根の部分をタッチして開閉させる事で、ピアノの音の変化も調整できる。
音楽ファイルからピアノ用の譜面を自動作成
アプリには「ブルグミュラー」などの教本の楽譜を表示する事も可能。また、音楽ファイルから楽譜を作成する「オーディオ トゥー スコア」機能も用意する。
音楽ファイルは、iTunesで購入した曲など、タブレット/スマートフォン内の楽曲が利用でき、「スマートピアニスト」アプリ内で音楽を選択すると、2~3秒でコード進行などを解析。それをもとに、ピアノ用の譜面(伴奏譜)を自動で作成する。譜面はスタンダードなものに加え、16ビート、ポップロック、ディスコ、ツイスト、スカなど、40種類のアレンジした譜面も同時に作られる。そこから、曲調や演奏のレベルに合わせて譜面を自由に選び、ピアノのスピーカーから音楽ファイルの音を流しながら、弾ける。そのため、バンドの演奏に自分が参加しているような気分が楽しめる。
音楽ファイルの、ボーカル帯域をカットしながら再生する機能も搭載。その代わりにユーザーが歌い、“弾き語り”気分を味わう事もできる。
解析の精度は「Jポップやポピュラーロックであれば、ほぼ間違いのない精度に至っていると自負している。人間が“耳コピ”しやすい曲であれば、自動解析も容易だが、耳コピしにくい曲でもかなり高い解析精度は持っている。また、クラシックのオーケストラなどでは解析精度は(ポップスやロックと比べると)落ちるが、リズムに依存する部分も大きいので、パッヘルベルのカノンなど、リズムがある程度ハッキリした曲であれば解析精度は高い」という。
なお、MP3などで歌詞データが含まれているファイルであれば、その歌詞を同時に表示させる事も可能。ただし、カラオケのように進行に同期して文字を強調するような機能は搭載されていない。
また、連携しているタブレットやスマートフォンへの録音機能も搭載。オーディオデータとして録音するだけでなく、MIDI録音も可能。
ピアノが弾けない人を光でサポートする「ストリームライツ」
鍵盤の上部に、縦に4つのライトを搭載し、弾く鍵盤と、そのタイミングをガイドする「ストリームライツ」機能を搭載。ライトは、上から流れ星のように順番に光り、一番下に来た時に鍵盤を弾く。流れとしては“音ゲー”にも似ている。これから先に弾く鍵盤が前もってわかるため、弾きやすく、また白鍵を弾く指示は赤いライト、黒鍵は青と色も分けられているため、迷いにくいという。
403曲の内蔵曲に加え、前述の「オーディオ トゥー スコア」で生成したピアノ譜、ヤマハミュージックデータショップから購入できる、曲のMIDIデータにも対応しており、それらの曲を「ストリームライツ」のサポートを受けながら演奏できる。
ヤマハの電子楽器事業推進部 電子楽器商品企画グループの柳川貴央氏は、「ピアノが弾けない人に試してもらい、その声を繁栄しつつ、改良を重ねた。1つの鍵盤に4つというライトの数も、多ければ多いほどいいのではないかと最初は考えていたが、あまり先まで表示されると演奏する人が混乱してしまう事がわかった。白鍵と黒鍵で色を変えたのも、とっさの時に間違える事が多かったため。3回ほどやっていただくと、コツをつかんで、弾いた事のない人にも楽しんでいただけるはず」だという。
CSP-170とCSP-150の違い
どちらのモデルも88鍵盤で、アプリとの連携など、機能面はほぼ同じ。違いは鍵盤の種類と、スピーカー・出力の仕様。
CSP-170は、鍵盤にナチュラルウッドエックスを使い、象牙調・黒檀調の仕上げを採用。エスケープメントを備える。CSP-150は、グレードハンマー3エックスを採用。象牙調・黒檀調の仕上げを採用。エスケープメントを備える。
CSP-170のスピーカーは16cm径と8cm径で、底部にスピーカーボックス(エンクロージャ)も採用。出力は45W×2ch。CSP-150は、16cm径ユニットを採用。出力は30W×2ch。
ステレオミニのヘッドフォン出力×2系統や、マイク/ライン入力も装備。MIDI端子や、AUX入力なども備えている。
外形寸法は1,412×465×1,040mm(幅×奥行き×高さ)で、黒鏡面艶出しモデルは1,418×466×1,040mm(同)。重量はCSP-170が67kg(黒鏡面艶出しモデルは69kg)、CSP-150が58kg(同62kg)。椅子とヘッドフォンも付属する。
1人でも多くの人に、“ピアノを弾く楽しさ”を
ヤマハミュージックジャパン 鍵盤・管弦打営業部の山本信人副部長は、30年以上にわたって電子ピアノ市場を牽引し、国内で累計100万台以上販売しているクラビノーバの歴史を振り返った上で、「電子ピアノ市場は18万台~20万台で毎年推移している安定した市場。子供が家庭で練習するために購入されるケースが多いが、ピアノを趣味としている人、まったく未経験だけれど挑戦してみようという大人のユーザーも増えている」という。
そこで、「ストリームライツ」や「オーディオ トゥー スコア」機能を搭載する事で、ピアノに触れたことがない人でも、好きな音楽やバンドの中に、自分が参加し、演奏している気分が味わえる事を追求したという。
柳川氏は「オーディオ トゥー スコア」機能について、「技術的には曲のデータからコード進行を解析し、そこからピアノ演奏パターンを作るという2つの技術を組み合わせているが、そうした裏側の技術が表に出ないよう、お客様の体験として、好きな曲を選ぶだけですぐに譜面が出て楽しめるよう、あえて技術を表に出さないようにこだわった」という。
さらに柳川氏は、「“練習”や“がんばって弾く”という感じではなく、いかに楽しく牽いていただけるかを念頭に開発してきた。1人でも多くの人に、“ピアノを弾く楽しさ”を伝えたい」と締めくくった。
CSPシリーズのイメージキャラクターには、ダンサーとして活躍しているSam D.B.氏を起用。イメージビデオなどに出演しているほか、発表会にも登壇。ピアノの経験は無いとのことだが、「ビデオ撮影の際に触る時間があり、これだったら弾けるかなと思った」と笑う。発表会ではストリームライツ機能のサポートを受けながら、演奏も披露した。
CSPシリーズ発売を記念し、モニターキャンペーンも9月26日~10月31日まで実施。応募者の中から抽選で3人に、CSP-170Bが1カ月無料で貸し出される。運送費はヤマハミュージックジャパンが負担。国内在住で、使用後、製品を使っている写真と感想を提出できる人が対象となる。詳細はヤマハのWebサイトを参照のこと。9月30日~10月9日の期間中は、ヤマハ銀座ビル1階のイベントスペースで展示も行う。