シャープ、「下期に競争力持った液晶テレビを投入する」
-片山社長が言及。第115期定時株主総会を開催
シャープ株式会社は23日、大阪・中之島のグランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)で、第115期定時株主総会を開催した。
インターネットなどによる議決権行使を含めた出席株主数は3万6,785人、議決権行使個数は81万3,879個。また、会場への出席株主数は1,664人となり、昨年の1,538人に引き続き、過去最高を更新した。
午前10時からスタートした株主総会では、片山幹雄社長が議長を務め、冒頭に「株主のみなさんにお詫びしなくてはならないことがある。1950年以来の赤字という厳しい業績となったこと、また今回の株主総会で減配のご提案をさせていただいていること、TFT液晶に関して米国司法省に罰金を支払うなど、ご心配、ご迷惑をおかけした」とし、登壇した役員全員を起立させ、「業績の回復に向けて努力していく」と株主に対して、頭を下げた。
■ 「下期には競争力を持った液晶テレビを投入」
2008年度の事業報告はビデオを使って説明。その後、片山社長自らが対処すべき課題について言及した。
「液晶工場の再編、重点事業分野へのシフトによる人員体制の見直し、さらには総経費削減などの緊急業績改善対策に加え、太陽電池の前半工程現地化の展開などにより、収益力の向上とキャッシュフローの改善を図る新たなビジネスモデルの導入を推進し、企業価値の増大に努めていく」とし、「液晶カラーテレビは、2009年度は前年並の1,000万台の出荷を目指す。まだしばらくは厳しい環境が続くと見ているが、下期には高画質、薄型、軽量化を図り、競争力を持った製品を投入できる。これにより、40型以上の構成比がさらに高まることになり、下期には販売台数の大幅な増加が見込まれる。日本では、エコポイント制度も貢献し、需要が増大している。中国をはじめとする新興国市場の拡大も見込まれる。日本、中国といった強みが生かせるマーケットに経営資源を投入し、これらの市場では、2桁の販売台数成長を目標とする」と語った。
液晶カラーテレビでは、競争力強化を目指し、部材の現地調達の拡大による為替リスクの低減や、海外生産拠点におけるオペレーションの一層の効率化、独自技術や特長デバイスの開発により、さらなる低消費電力、高表示性能を実現した新商品開発にも取り組んでいく考えを示した。
また、携帯電話については、国内では市場ニーズを捉えた高付加価値端末を積極的に投入し、一段とシェアを拡大させるとともに、中国では高付加価値端末に加えて、普及価格帯の端末を投入し、販売拡大を進めていくとした。
今年10月に稼働する予定の堺の液晶パネル新工場については、「国内外の戦略的パートナーを中心に、堅調な受注増が見込まれている。外販事業の強化、堺工場のスムーズな立ち上げによって、安定した事業展開を行なっていく。堺工場の立ち上げによって液晶パネルのコストダウンを図り、お客様の価格期待にも応えたい。きっちりと立ち上げ、世界に勝てる工場にしたい」と語り、世界最先端の商品開発力と生産技術力を結集し、液晶パネルの一層の性能向上と、コスト競争力強化を図っていく姿勢を見せた。
■ ソニーとの合弁会社は「設立に向けて契約する方向で変わっていない」
会場からの質疑応答では、9人が質問。中長期的な液晶テレビ事業への取り組みについては、町田勝彦会長が回答した。
町田会長は、「堺工場の稼働が、今後の液晶テレビ事業に大きく貢献すると思っている」と前置きし、「液晶を一括に捉えるのではなく、オンリーワンはなにかということが大切である。堺の第10世代工場は、世界にない工場であり、大きなテレビを生産するという点ではコスト競争力がある。堺をいち早く立ち上げることが、逆にシャープの優位的な立場を作ることになる。パネルが供給過剰になるという指摘もあるが、他社にないパネルを作れば需要はある。実際に、世界のテレビメーカーから沢山の注文がきており、堺のパネルが早く欲しいという声が出ている。一方で、古くなった液晶パネル生産施設は、日本においてはコスト競争力がないが、海外に持っていけばその力を発揮できる場所がある。日本では、電気、ガス、水道、人件費といったインフラが高いが、これが安くなる地域もある。為替の影響もなくなる。世界のテレビ需要は年間2億5,000万台であり、そのうち液晶が1億2,000万台。残りはブラウン管テレビであり、まだまだ液晶テレビの広がる余地がある。液晶テレビが伸びる市場は、中南米やアフリカなどの新興国が見込まれ、これらの地域において、地産地消の体制を作ることで、台湾、韓国のパネルメーカーに対抗する」とした。
また、ソニーとの液晶パネル生産に関する合弁会社の設立が遅れていることについては、濱野稔重副社長執行役員が回答。「6月末までに合弁会社の設立に向けて契約するという方向は変わっていない。細部に詰めている段階であり、出資比率については当初の計画から変更はない。これだけ何度も遅れているのは、両社とも、経験がない経済環境の悪化なかで、赤字脱却を目指している状況にあるため。そうしたなかで、どのタイミングが適切なのかを考えている。中身の詰めに時間がかかっている」とした。
蓄電事業への取り組みについても濱野副社長が回答。「蓄電池においては主要材料の独自開発を進めており、また、2008年4月にエリーパワー社に資本参加し、早期事業化に向けて取り組んでいる段階にある。アウトドアやスモールホーム向けに早期に製品化を実現し、太陽電池の事業拡大につなげたい」とした。
また、濱野副社長は、為替への対応について、「為替の変動に左右されない体制を作りたい。最適生産や海外現地調達の推進、国内、海外の構成比を50%ずつにするなどの取り組みを行なってきた。今後も為替変動に対して、影響を受けない体制を維持したい」と回答。
さらに、株主優待制度に、太陽電池やLED照明などを活用してはどうかとの提案については、「今後検討したい。当社の製品を適切に見ていただく、適切に評価していただく場を作ることは必要。来年3月に堺工場内に見学できるようなルートができる。株主様にはよく知っていただけるようにしたい」と回答した。
営業体制の強化については、松本雅史副社長執行役員が回答し、「営業強化、人員強化を図っている。ATOM隊によって、切り込んでいけるような体制も作っている。昨年10月には法人ビジネスを強化するために、東京・市ヶ谷に法人ビジネス営業本部を設置するといったことも行なっている。引き続き販売拡大に邁進したい」とした。
中国市場への展開については、片山社長が回答し、「中国では、液晶テレビの拡販に努め、沿岸部から内陸部の中小都市にまで販路を広げてきた。携帯電話事業では、昨年からハイエンドモデルを投入していたが、これをミドルレンジから普及帯にまでいく。現在、中国人によって、新商品を作るためのマーケティングセンターとして、上海に生活ソフトセンターを設置した。設計においても、中国市場にあった製品開発を目的に、現地設計開発を進めている。中国に根ざしたマーケットイン型の展開を図りたい」と語った。
2年連続で独禁法違反行為が問題となったことへの対策については、中川敬取締役常務執行役員が回答。「従業員の声が反映されるようなホットラインの設置、コンプライアンス規定の強化、チーフ・コンプライアンス・オフィサーの設置、競争法に関しての専用ホットラインの設置などを行なってきた。当該部門である液晶関連部門には、研修の実施や、主旨の理解、徹底を求めた」とし、再発防止に取り組んでいることを示した。
質問した株主からは、「いろはカルテル」という名称の「いろはカルタ」を作成して、意識を社員に徹底させ、それが徹底しているかどうかのテストを行なうべきだとの提案が行なわれ、片山社長は「前向きに検討したい」と回答した。
■ 「2009年度を黒字にすることが経営責任の取り方」
減配については、濱野副社長が説明。「配当性向については30%を目指してきたが、今期は7円の減配となり、大きく割り込んだことは申し訳ない。昨年9月には緊急業績改善対策を行なったほか、役員および執行役員は、報酬の一部削減、賞与の全額返上とし、年収で50~30%の減額とした。管理職での賞与の減額により、年収は20~10%の削減、一般社員も定期昇給を半年間先送りにしている。1,500人の非正規社員に契約延長を行なわないということも含めて、人件費だけで450億円相当を圧縮し、約2,000億円の経費削減を行なっている」と説明した。
また、片山社長は、「ブランド価値、会社の価値を高めていくこと、そして、2009年度を黒字にすることが経営責任の取り方である」とした。
なお、「剰余金処分の件」、「定款一部変更」、「取締役11人選任」、「株主の大量買付行為に関する対応プラン(買収防衛策)の継続」の第1号議案から第4号議案については可決。12時22分に閉会した。
(2009年 6月 23日)
[Reported by 大河原克行]