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3Dで「スーパープレミアム」を加速するIMAXの劇場展開

−ハリー・ポッター新作を皮切りに3D展開。全編3D作品も計画



 東急レクリエーションが展開するシネマコンプレックス「109シネマズ」の川崎、菖蒲、箕面の3館で6月20日から「IMAXデジタルシアター」がオープンした。

IMAX シアター開発担当エグゼクティブ バイスプレジデント ラリー・オライリー氏(左)、アジア太平洋地域 マネージングディレクター ドン・サヴァン氏(右)

 IMAXは、通常の映画の35mmフィルムの10倍以上、70mmフィルムの3倍以上のサイズを持つ大型フィルムを用いて撮影。16×22m(縦×横)の大型スクリーンに映写し、臨場感のある高画質映像を提供するシステム。さらに、2008年6月からはIMAXシアターにおけるデジタルプロジェクションシステムを導入。これにより、IMAX 3D上映時に4万ドルもの経費がかかっていたフィルムのプリントが不要となったことで柔軟な上映プログラム構成が可能となったという。このIMAXデジタルシアターを日本で初導入したのが上記の「109シネマズ」3館だ。

 6月20日からは、「トランスフォーマー/リベンジ」を上映。チケット代は、一般/大学生/高校生で2,000円と、通常の映画よりはやや高めの設定にも関わらず、オープニング3日間(6月19日〜21日)の1スクリーン当たりの興行収入は、川崎のIMAXシアターが全国1位になったという(箕面は6位、菖蒲15位)。

 また、7月15日からは3D上映も開始される。日本におけるIMAXの3D上映第1弾作品となるのが「ハリー・ポッターと謎のプリンス」で、冒頭の12分間が3D上映される。

 日本での取り組みを強化するIMAX。その狙いや、今後の展開について、シアター開発担当 エグゼクティブバイスプレジデントのラリー・オライリー氏に聞いた。

 


■ 臨場感が魅力の「IMAX」が3D化を推進

109シネマズ川崎

 IMAXデジタルシアターでは、IMAXの大型フィルムで撮影した映像データを全てデジタル化。独自のデジタルマスタリング技術「IMAX DMR」により、フィルムグレインの低減やノイズやゴミなどのアーティファクツの削除、輝度や色の最適化などの処理を行ないながら、8K(水平解像度8,000ドット)デジタルデータ処理を行ない、デジタルパッケージ化する。

 プロジェクションシステムについても、2D/3D上映ともに、2つのプロジェクタを利用。3D上映時には片方のプロジェクタで左目用、もう片方で右目用の映像を出力し、その映像を液晶シャッター付きの3Dメガネで視聴することで、立体視を実現しているという。

 また、IMAXのスクリーンは、通常の劇場よりも縦方向が高く、観客はよりスクリーンに近接して視聴することになるため、臨場感や作品への没入感も向上する。サウンドシステムも、劇場にあわせて最適化されるほか、IMAX専用のリミックスが行なわれる。これらのシステムからなるシアターが6月にオープンした3館だ。

109シネマズ川崎のIMAXデジタルシアター 2台のプロジェクタで、2D/3D上映

 IMAXデジタルシアターの日本導入について、オライリー氏は「手ごたえを感じています。川崎のシアターは、『トランスフォーマー/リベンジ』上映館で興行収入日本一になりました。チケットは通常の映画館に比べて数10%高価にも関わらず、支持を得ています」と自信のほどを見せる。

 そして15日から上映開始されるのが、ハリー・ポッターシリーズの最新作「ハリー・ポッターと謎のプリンス」。冒頭12分間が日本初のIMAX 3D上映となるのが最大のトピックといえる。

 オライリー氏は、「ハリー・ポッターの前作では最後のシーンで3D化して上映しましたが、米国でのIMAX上映時に、ハリーポッターシリーズで最高の興行成績を上げました。3Dの“プレミアム”が受け入れられた結果だと考えています」と3D上映への期待を語る。料金も一般2,200円と2Dのトランスフォーマーより200円高価に設定されているのも、IMAXが考える“プレミアム”ということだ。

 現在、デジタルシネマ(DCI)上映館でも、3D対応が進みつつある。しかし、IMAXアジア太平洋地域 マネージングディレクター ドン・サヴァン氏は、IMAXデジタルシアターの画質/サウンドクオリティについて「Real DやDolbyのようにシステムに“何かを加える”ものではありません。IMAXは、元々の解像度の高さに加え、プロジェクションシステム、サウンドデザイン、シアターの設計、コンテンツの全てを集めたデザインなど様々な要素を複合的に組み合わせ、“スーパープレミアム体験”を創出するものです」と“体験”の違いを訴える。

 ところで、今回の上映作「謎のプリンス」は冒頭の12分が3D、前作は最終シーンが3Dになっているなど、3D利用にばらつきがある。これはなぜだろうか?

 オライリー氏によれば、「基本的に、どの部分を3Dにするかは監督や制作者が決めること。我々はそれの意図に基づき、3Dのシーンを製作し、制作者が確認したものを上映します。例えば“トランスフォーマー/リベンジ”のマイケル・ベイ監督は、IMAXカメラでメインの格闘シーンを撮影しています。しかし、(3Dの)立体感よりもその広大さの表現を選択したという演出上の意図だと思います。それぞれに適した表現を制作者が選択しています」という。

 なお、全編3DのIMAX上映については、「DMRの処理で全て3D化することも可能だが、撮影から全て3Dで行なうことが一番いい手段だと思います。年末に上映されるジェームズ・キャメロンの『アバター』は、その一例ですね」とのこと。今後の3D比率については、「全編3Dに限定しなければ、半分以上が3D映画になると考えています」とのことで、IMAXシアターにおける3D展開が加速しそうだ。

 


■ 年末の大作が3Dの価値を浸透させる

 もちろん、「プレミアム体験」を狙ったIMAXのシステム構成は、当然通常のデジタルシネマよりも高価となる。「2D/3Dの共用システムで約5倍(サヴァン氏)」とのことで、IMAXデジタルシアターで約150万ドル、デジタルシネマは30万ドル程度とする。

 また、IMAXの現在の上映作を見ているとハリウッドの大作映画が多い。今後の旧作/ライブラリ作品の展開については、オライリー氏は「過去の作品では宣伝費用が少ない場合が多く、DMR処理の採算が取れないというのが課題。ただし、旧作の大規模リメイクにより大幅なプロモーション費用などが投じられる場合は、それにあわせた対応は行なえると思います。とはいえ、我々のコアビジネスは、“次の”ハリウッド映画です。やはり新作映画には巨額の宣伝費用がかかるためその相乗効果で展開したい。また“IMAX”があるということを、他の同時期に公開される映画との差別として訴求していただけるという点もあります。こうした関係を築けることが重要です」とする。

 日本の劇場では、3Dの導入が米国ほど進んでいない。その点に不安はないのだろうか?

 オライリー氏は、「世界2位の大きな映画市場を持つ日本は我々にとっても重要です。また、3Dだけでなく、2Dも双方が展開でき、いずれも通常のチケットより40%高価でも来場いただける。過去の3Dでは技術や話題先行の作品もあった。しかし、我々の信念は良質な映画を展開することで、ギミックではなく、キャラクターやストーリー描写が重要と考えている。2Dも上映すれば、3Dも上映する。映画として上質な作品を、さらにアップグレードするものとして3Dを考えている」と語る。

 加えて、「来場者は、それほど2D/3Dを意識していないですね。例えば、年末公開予定の3D映画『Alice In Wonderland(不思議の国のアリス)』でいえば、観客は“ティム・バートンが監督したジョニー・デップの作品を見に行く”わけですよね? 2D/3Dだからではない。また、年末から年始にかけて3Dの大作が3作品公開されます。これにより人々の3Dに対する観念がかなり変わると思います。1つはディズニー/ロバート・ゼメキス監督の『クリスマスキャロル』、次はキャメロン監督の『アバター』、そしてティム・バートン監督の『不思議の国のアリス』です。この3人の監督は、実績、実力があるだけでなく、3Dの経験もあり、脚本/演出も3Dを考えて計画されており、素晴らしい作品になると思います。日本のIMAXでも全編3Dで公開します」と説明。日本での展開にも不安はないという。

 なお、今後の日本でのIMAXデジタルシアター計画については、「理想としては25〜35スクリーンを日本で展開したい。具体的な計画は明かせませんが、米国と同じように地区でナンバーワンの都市、トップクラスのシネコンにはIMAXがあるようにしたいと考えています」とした。


(2009年 7月 14日)

[ AV Watch編集部 臼田勤哉]