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ドイツ発、導体に純銀使った平面駆動型ヘッドフォン「AB 92」

「AB 92」

飯田ピアノは、ドイツのハイエンドオーディオブランド「ArcTec Berlin」製品の日本国内取り扱いを開始し、フラッグシップモデルとなる平面磁界型ヘッドフォン「AB 92」を3月20日より受注開始する。納品開始は4月中旬予定(初回受注分は約1カ月)。価格はオープンで、市場想定価格は495,000円前後。

「ArcTec Berlin」ブランドロゴ

ArcTec Berlinは、2025年にベルリンで誕生したブランドで、創業者は2000年にADAM Audio、2015年にHEDD Audioを立ち上げたクラウス・ハインツ氏。ハインツ氏は、ADAM AudioではコンパクトAMT(Air Motion Transformer)ツイーターを初めて市場に投入。HEDD Audioでは世界初のAMT型ヘッドフォン「HEDDphone ONE」を開発している。

そんなハインツ氏が「引退ではなく、新たな挑戦」として立ち上げたのが、今回のArcTec Berlin(AT-B Audio GmbH)で、スピーカー設計の世界で磨き抜いてきた音響設計の思想を、ヘッドフォンカテゴリにも適用。

「スタジオモニターの中立性と、最も要求の厳しいハイエンドユーザーの求める音楽性・情感の両立」というビジョンのもと、フラッグシップモデルのAB 92を2025年6月に「High End Munich 2025」でワールドプレミアした。

クラウス・ハインツ氏

ハインツ氏は、ノーベル物理学賞を受賞しているエルンスト・ルスカ氏の子息で、自身も物理学者として素材特性や音響工学に精通。ArcTec Berlinでは導体材料に純銀を使った平面磁界型ヘッドフォンに挑戦しており、導体材料の選定では周期表から導電率と比重のバランスを検証して最適解を導くなど、経験則ではなく物理的根拠に基づいた開発が、ArcTec Berlin製品の土台となっている。

またArcTec Berlinの製品は「使い続ける」ことを前提に設計されており、すべての部品が個別に識別・交換可能な構造を採用。ベルリンの工房、またはそのほかの修理拠点で分解・修理ができる。

同ブランドが追求するのは、「過剰な演出を排し、長時間のリスニングに耐える自然なサウンド」で、スタジオモニターのような正確さと、ハイエンドユーザーが求める音楽的な豊かさ・情感を、同じ製品の中で両立させるという明確なビジョンがブランドの核とのこと。

この方向性は、ハインツ氏がスピーカー設計の世界で半世紀に渡って向き合ってきた「いかに忠実に、いかに自然に音楽を再現するか」という問いを、そのままヘッドフォンに持ち込んだものだという。

AB 92

2月の「冬のヘッドフォン祭 mini 2026」でも展示されていた、平面磁界型ドライバーを採用した背面開放型の有線ヘッドフォン。製品名の「AB」は、「AirBorne=空気に浮かぶ」という意味を持つといい、開放型の設計により、「振動板の背面から放射される音を一切遮ることなく自由に解放。反射や共振から解き放たれた、純粋で自然な音の再現を追求したヘッドフォン」だという。

心臓部の平面磁界型ドライバーには、導体トレースを含めて1.5マイクロメートル未満という極薄の振動板を採用。導体材料には、周期表上の全金属のなかで、導電率と比重の比率でもっとも優れる銀を採用している。

純度99.99%の銀を電気化学的蒸着(エレクトロプレーティング)により振動板に載せる工程は極めて高い技術が必要で、高い精度で安定した品質を実現できる専門パートナーを見出すまでに、長期にわたる探索が必要だったという。

ドライバーサイズは92mmで、多数の高出力ネオジム磁石を搭載。高い効率と穏やかなインピーダンス特性を両立し、インピーダンスは33Ω、感度は90 dB SPL/mW(105 dB/1V)で、高品質なポータブル機器でも駆動できる。再生周波数帯域は5Hz~46kHz。

このドライバーは、アルミニウムを精密に削り出したリングに格納。リンギングや共振を排除するために入念なダンピング処理も施されており、ブラックアノダイズとガラスビーズブラスト仕上げにより、高級感ある外観と長期的な構造的健全性を両立した。

完全開放型の背面設計を採用。背面からの反射が振動板に戻ることによる音の濁りを排除し、自然な3次元の音場を再現している。ケーブルは着脱式で、ヘッドフォン側コネクタは3.5mm×2、プラグは6.3mmステレオ標準。長さは1.5m。