シャープ、'09年度第2四半期決算は全部門営業黒字

-大型の液晶パネルは中国中心に需要旺盛


濱野稔重副社長

10月29日発表

 

  シャープは29日、2009年度第2四半期連結決算を発表した。第2四半期の売上高は前年同期比15.4%増の6,903億円、営業利益は536億円増加の276億円と黒字転換。経常利益は484億円増加の182億円、当期純利益は326億円増加の74億円となった。

 都内で会見した濱野稔重副社長は、「営業利益、経常利益、四半期純利益ともに第1四半期の赤字から黒字転換。全部門において営業利益が黒字となった。特徴のある商品の創出と販売強化のほか、人員体制の見直し、液晶工場の再編、総経費として年間2,000億円の削減を目指した取り組みなどの緊急業績改善対策の推進による成果が表れた」とした。

 上期累計の売上高は17.5%減の1兆2,886億円、営業利益は3.1%増の15億円。前年度下期が1兆2,848億円という同水準の売上高に対して、マイナス1,062億円の営業赤字であったことに比べても、大きく改善していることがわかる。

 シャープでは、2,000億円の年間経費削減目標のうち、第2四半期までに、進捗率で60%となる1,191億円の経費を削減。そのうち、人件費の450億円の年間目標に対しては226億円(進捗率50%)、減価償却費では350億円に対して265億円(進捗率76%)を達成しているという。


■ セグメント別の業績

 セグメント別の業績では、エレクトロニクス機器の売上高が2.6%増の4,487億円、営業利益が212億円増加の126億円。そのうち、AV・通信機器の売上高が2.2%増の3,185億円、営業利益が172億円増加の39億円。

 液晶テレビは、第2四半期実績で前年同期比12.3%減の239万台。金額では17.4%減の1,669億円。上期実績では8.1%減の439万9,000台、19.1%減の3,061億円となった。

 497万9,000台のうち、日本は23%増の231万1,000台となったが、海外は28.4%減の208万8,000台。約90万台を出荷した米国、および52万台を出荷した欧州は、前年実績に比べて3~4割の減少、中国は40万台弱の出荷実績だが、前年同期比10%強の減少となり、海外における低迷が際立った。第1四半期における在庫調整などが影響しているという。

 濱野副社長は、「第2四半期は黒字化した。大きなサイズが売れるなどモデルミックスの変化が黒字化に寄与している。このままでいけば、第3四半期、第4四半期も黒字を維持できるだろうが、第1四半期の赤字を吸収できず、通期では赤字脱却はならない」とした。

 上期における40型以上の構成比は3割強になっており、前年同期の約2割に比べてと大画面シフトが進展していることがわかる。40型の比重は下期も5ポイント程度上昇すると見ており、これが液晶テレビの収益改善に影響することになりそうだ。

 なお、国内における液晶テレビ事業の台数成長率は、第1四半期が18.2%増、第2四半期が28.7%増となった。下期は前年同期比7.3%増となる560万台、3.7%増の3638億円を目指し、通期では前年並みとなる1000万台、金額ベースでは8.1%減となる6,700億円を計画している。

 「60型以上の大型モデルや、BD内蔵テレビなど、独自の技術を活用して差別化を図る。地産地消を推進する上で、ローカルにフィットした製品の市場投入を図ることも必要だ」などとした。

 健康・環境機器の売上高は4.4%増の602億円、営業利益は118.4%増の43億円。プラズマクラスターイオンを搭載した冷蔵庫や空気清浄機の販売増加が影響。情報機器は、企業における投資抑制が影響したが、第2四半期は若干改善しており、売上高は3.2%増の698億円、営業利益は61.3%増の43億円となった。

 電子部品などは売上高が31.2%増の3,559億円、営業利益が373億円増加の187億円。そのうち、液晶の売上高は26.2%増の2,223億円、営業利益は303億円増加の155億円。

 テレビ用の液晶パネルに対する需要が旺盛で、8月からの亀山第2工場での生産増強、パネル価格の改善などがプラスとなった。「大型の液晶パネルは中国を中心に需要が旺盛で、年末までは良好な状況が続くと見ている。堺の生産設備の稼動により、外販を拡大でき、2010年度に向けて堅調な引き合いがある。堺はAQUOS向けに加えて、外販による世界戦略のパネル工場でもあり、亀山工場とはすみわけができる」と語った。

 またその一方で、「液晶パネルの生産においては、ガラスが足りなくなる可能性があり、それが懸念材料。中国の需要については、仮に崩れたとしてもそれほど大きくは崩れないと読んでいる」などとした。

 太陽電池の売上高は47.8%増の514億円、営業利益は29億円増加の11億円。 太陽電池は、国内においては政府の補助金制度などもあり、好調に推移したが、欧州で厳しい状況が続いている。上期は国内の構成比が28%、下期は26%と想定。また、薄膜太陽電池は、上期の16%の構成比が、下期は25%にまで拡大すると見ている。

 その他電子デバイスは売上高が36.5%増の821億円、営業利益は40億円増加の20億円となった。

 なお、2009年度の通期見通しについては、営業黒字への転換を果たし、計画通りの進捗。だが、世界経済の先行きの不透明感があり、期初の数値を据え置いた」とした。


(2009年 10月 29日)

[Reported by 大河原克行]