ソニー、定時株主総会を開催。「3Dの普及につとめる」

-役員報酬も公表。ストリンガー会長は4億1千万円


ソニーの株主総会が開かれた東京・品川のグランドプリンスホテル新高輪

6月18日開催


 ソニーは6月18日午前10時から、東京・品川のグランドプリンスホテル新高輪において、第93回定時株主総会を開催した。総会では株主の質問で、ハワード・ストリンガー取締役代表執行役会長兼社長兼CEOの報酬総額が4億1,000万円であることなどが明らかにされた。

 インターネットなどによる議決権行使を含めた議決権行使個数は66万3,520個。また、会場への出席株主数は7,827人となった。株主総会は、議案を満場一致で議決し、12時18分に終了した。



■ ソニーのDNAであるイノベーション精神で、新たな顧客体験を創造

 ストリンガー氏は、2009年度業績が、売上高が前年比8%減の7兆2,140億円となったものの、営業利益は318億円の黒字に転換し、当初予想の赤字から黒字展開したことなどに触れながら、「ソニーのDNAであるイノベーション精神を今後も継承していくことで、今後もソニーは魅力ある消費と幅広い事業領域という、他社にない事業体である強みを生かして、新たな顧客体験を創造していきたい」などと語った。

 コンスーマプロダクツについて吉岡浩執行役副社長が説明。「3Dテレビはソニーが持つLED制御技術、4倍速表示といった3Dに最適化した技術によって構成されており、画面のちらつきを抑えた、家庭で快適に3Dを楽しめるものになっている。8機種をラインアップしており、シェア拡大に取り組んでいく」と説明。

 さらに、「いかに3Dの楽しさと感動を提供できるかにかかっている。PlayStation 3で楽しめる3Dゲームの提供、6月19日からスカパー!と一緒に3Dの専門チャンネルを立ち上げることで、日本対オランダ戦をはじめとして、FIFAワールドカップの25試合を3Dで中継。ソニー・ピクチャーズでは3D映画『バイオハザード4』、BDによる3Dコンテンツ『くもりときどきミートボール』、ソニー・ミュージックではワールドカップ公式ソングの3Dミュージックビデオ、3Dライブイベントなどを展開する。業務用システムでも3Dをリードし、上映システムでソニーの3Dシステムが米国をはじめ3,000以上の劇場に導入されている。今年秋に投入予定の3Dレコーダ、VAIOなども3D対応を図る。さらに3Dを見て楽しむだけでなく、撮影して、編集して楽しめるように準備を図っていく。ハード、コンテンツを持つ強みを生かすことで、3Dの普及につとめ、グループ全体のの成長につなげていきたい」とした。



■ 「我々が最もAndoroidの重要性を認識している」ストリンガーCEO

 また、「Google TVは、従来のテレビの枠を越えたものであり、GoogleのAndroid技術と、ソニーのオーディオ・ビデオの技術が融合することで誕生する製品。今年秋には米国市場に投入し、その後全世界に展開していく。こうしたテレビの新たな提案を含め、2009年度の1,560万台の出荷計画を、2010年度は2,500万台にまで拡大する」としたほか、「新興国市場に対しても顧客ごとに最適化した製品を投入していく。中国市場に2月に投入した32型の戦略製品であるBX205は、32型テレビ市場で1位を獲得した。事業構造改革には継続的に取り組み、テレビ事業の収益性の改善に取り組む」と語った。

 Google TVについては、石田佳久SVPが質疑応答のなかでも説明し、「発売前の製品であり詳細は語れないが、オープンであるAndoroidプラットフォームの上にネットワークサービスを乗せて、コンテンツ配信を実現していくものになる。昨年の事業方針説明会で、進化するテレビを開発するとしたが、Google TVでこれを実現することになる。将来はほかの商品との接続、連携を強化して、楽しんでもらえる商品をつくりあげたい」と回答。ストリンガー氏も、「我々が最もAndoroidの重要性を認識している。最初にこれに取り組んだことを見てほしい」とした。



■ PlayStationの逆ざや解消。今後中期的に収益に貢献する

 一方、ネットワークプロダクツ、ネットワークサービス事業担当の平井一夫執行役EVPは、「ゲーム事業の収益性の改善と、革新的なネットワークの拡大の2つの大きな課題に取り組む」と前置きし、「ゲームビジネス全体で2010年度は黒字を目指す。コストダウンが実り、ハードの逆ざやも解消した。今後中期的に収益に貢献することになる」と見通しを語った。

 さらに、「昨年9月に発売した新型PlayStation 3は、年末の5週間で380万台を販売した。さらにtorneもテレビ視聴の新たな提案を行ない、在庫が無くなる店舗が続出した。モーションコントローラも今年9月には欧米で、10月には日本で発売する計画で、直感的に操作によって、多様なプレイステーションの世界を、幅広いユーザーに提供する。ネットワークサービスの拡大では、2006年11月に日本でPlayStation Networkのサービスを開始してから3年半を経過し、6月時点で全世界5,000万を超えるアカウントに達しており、2009年度実績で360億円の売上高となっている」と現状を紹介。

 今後の展開として、「今はゲーム中心だが、今後はゲームの追加アイテムのビジネスや、ゲーム以外のコンテンツ販売も開始する。映画はすでに3,400本、テレビは2万話が用意され、日本、英国、ドイツ、フランスなどに展開。今後は地域を拡大する。3Dゲームではグランツーリスモ5のほか、ソフトメーカー各社からも6タイトルが発売される。3Dコンテンツのラインアップを拡大し、ソニー全体の3D事業の拡大につなげたい。2009年度までは構造改革のフェーズだが、2010年度は成長戦略フェーズ。着実に、スピーディーに成長戦略を実行する。各事業体のさらなる収益改善、ネットワークサービスビジネスの強化、新たな商品やよりよいサービスの開発に取り組む」とした。



■ 「サムスンは我々が編み出した設計、デザインを利用している」

 質疑応答では、今回選任される14人の取締役のうち、12人が社外取締役である点に関して質問が飛び、「ソニーは委員会設置方式をとっており、欧米で広く採用されている方式。多数の社外の独立した取締役を採用することができ、高度に洗練され、経営経験が豊かで、成功を収めた人たちの英知をあわせることができるという利点がある」と、ストリンガー氏が回答した。

 また、サムスンに比べて、ブランド価値が落ちているのではないかとの質問に対しては、「サムスンは、我々が編み出した設計、デザインを利用している。ソニーのイノベーションは早いが、デジタルの世界では真似ることが簡単に早くできる。どこをとってもナンバーワンであり続けることはできない。だが3Dでは、ソニーは自らの技術を活用して、最善のものを提供できる。Googleとのインターネットテレビも、今後の復活、上昇の基礎を作ることができる。なかでも3Dはあらゆる施策をグループに展開でき、大きな利益確保に向けて飛躍できる」と回答した。

 本業であるエレクトロニクス事業が赤字が続いていることについては、大根田伸行取締役代表執行役副社長が回答。「確かに赤字で2年間は苦しんだが、基調としてはいい方向に向かっている。来期はエレクトロニクスについては利益が出る。また、ゲームも下期は黒字になっており、2010年度は黒字化する。為替の影響、価格下落の影響が大きく、テレビ事業では1兆円のうち、2千数百億円が価格下落の影響となっており、1,500万台規模であることから逆算しても、1台あたりのインパクトは大きい。これが大きなマイナスとなり、苦しんでいる。価格下落とコストダウンのつばぜり合いであり、この2年間は価格下落にコストダウンがついていかなかった。今年は競争力があるテレビを投入できることなどから、コンスーマ事業は間違いなく黒字になる。2010年度の収益の多くは、エレクトロニクス事業のハードウェアからくることになる」とした。



■ 今年のソニー製品は、ものづくりに対する情熱を受け継いでいる製品ばかり

 ソニー・ピクチャーズやソニー・ミュージックなどのコンテンツ子会社を統合してはどうかという提案に対しては、ストリンガーCEOが回答。「10年間に渡って口にしてきたことである。コンテンツはハードのビジネスに大きく貢献し、3Dテレビでもインターネットテレビでもその成果が発揮される」としながらも、「これまでの成果をみても、実質的に統合された形でやっている。盛田昭夫氏は、コンテンツとハードは車の両輪のようなものと表現し、大賀典雄氏は音楽会社、映画会社を買収した。当時はアナログの時代でそのビジョンは早すぎたかもしれないが、デジタルの時代になり、ビジョンが実現されてきた。ソニーは、コンテンツとハードの両方を持っているのが強み」などとした。

 また、「iTunesはアップルのものに対応しているだけだが、ソニーのオンラインサービスは広く展開している」としたほか、「今年打ち出しているソニーの製品ラインアップを見てもわかるように、ものづくりの精神や、クリエイティビティが表れているものが多い。ものづくりに対する情熱を受け継いでいる製品ばかりである」などとした。

 一方で、代表執行役の2009年度の報酬についても報告した。ストリンガー氏は、基本報酬が約3億1,000万円、業績連動報酬が約1億円、合計で約4億1,000万円。ストックオプションとして50万株。中鉢良治取締役代表執行役副会長が基本報酬が約8,000万円、業績連動報酬が約7,000万円、合計1億5,000万円、ストックオプションが8万株。大根田氏が基本報酬が約5,000万円、業績連動報酬が約4,000万円、退職金が約5,000万円で、約1億4,000万円。ストックオプションが3万株だった。詳細については、有価証券報告書に記載するとしている。



(2010年 6月 18日)

[Reported by 大河原克行]