ソニー、09年度連結業績を発表。営業利益318億の黒字化
-液晶TV目標2,500万台。10年度は3期ぶり黒字へ
ソニーは13日、2009年度連結業績を発表した。売上高は、前年度比 6.7%減の7兆2,140億円。営業利益は前年の2,278億円の赤字から、318億円の黒字に転換。税引前利益も、前年の1,750億円の損失から、269億円の黒字化。当期純利益も前年度の989億円の損失から、408億円の損失と改善している。
2009年度連結業績 |
2010年度連結業績見通し |
営業利益の黒字化には、金融分野、および液晶テレビを含むコンスーマープロダクツ&デバイス(CPD)分野における損益改善が寄与した。2月に発表した第3四半期決算発表の際に、通期の営業損益見通を600億円の損失から300億円の損失に上方修正していたが、実績は見通しよりさらに改善し、黒字化を達成したという。
また、赤字が続いている液晶テレビ事業や、ゲーム事業などの黒字化を見込んでおり、2010年度連結業績見通しは、売上高が前年度比5%増の7兆6,000億円、営業利益は404%増の1,600億円、税引前利益は1,400億円、純利益は500億円の黒字と、3期ぶりの黒字になる見通し。
■コンスーマープロダクツ&デバイス分野
コンスーマープロダクツ & デバイス分野 |
営業利益におけるプラス要因は、売上原価率の改善、販売費・一般管理費の減少など。減益要因は、減収による売上総利益の減少、為替の影響、構造改革費用の増加など。構造改革費用を除くベースで損益が改善した製品は、減収の影響を上回るコスト削減を実現した液晶テレビ、コンパクトデジタルカメラ、イメージセンサーなど。一方、ゲーム向けシステムLSIは減収減益となった。
なお、CPD分野では見通しに入っていなかった、液晶テレビ関連資産の現金支出を伴わない約270億円の減損が、ビジネスにおける改善をほぼ相殺している。これは当年第4四半期中に見直された経営計画により、当該資産の見積耐用年数の短縮、およびそれに対応する将来キャッシュ・フローの見込みが減少した結果、減損損失の計上が必要になったためだという。
テレビ事業は減収、損益改善。当年度の販売台数は前年度から40万台増加の1,560万台。売上高は販売台数が微増だったものの、価格下落や為替の影響により、前年度比21%減少の1兆円。営業損益は構造改革費用を除くベースで730億円の損失。ただし、前述の液晶テレビ関連資産の減損約270億円が含まれており、それを除けば460億円の損失となる。
材料費などのコスト削減や事業改革の効果により、前年度と比べ、810億円の損失縮小となった。2010年度は商品力の強いモデルや、地域特性に合わせた戦略的なモデルの拡大により、販売台数を約1,000万台増加の2,500万台に設定。継続的なコスト削減などにより黒字化を目指すと共に、3Dテレビやネットワーク経由で様々なアプリを提供できるテレビの導入も進めていくという。
販売目標の1,000万台増加について、大根田伸行 代表執行役 副社長 CFOは「'09年度のマーケットサイズは1億5,000万台、今年はおそらく1億8,000万台など、かなり伸びると見ている。'09年度、我々は前年からの伸びがあまりなく、前年度比で4%程度マーケットシェアを失い、シェアとしては10%になっている。(目標の販売台数は)そのシェアを'08年度のレベルに戻すという事でもあり、無理な目標ではないと考えている」と説明。
さらに、「今年は3D対応機種も全体の数の10%に持っていきたい。LEDバックライトも20~30%の商品に搭載し、IPTVも増やすなど、商品の競争力もついてきたと考えている。足元を見るとパネルの供給問題もあるが、年間で見た場合は2,500万台くらいはいくんじゃないかと見ている」と予測した。
コンパクトデジタルカメラは減収増益。材料費の削減などで増益を確保したという。広報センター長の神戸司郎氏は11日に発表した、ミラーレス一眼「NEX-5/3」に触れ、「今後この分野で新たな市場創造を目指していく」とした。ビデオカメラは市場縮小や価格下落、為替などの影響で減収減益。しかし、材料費の削減などにより利益率は前年度を上回る水準を確保しているという。
■ネットワークプロダクツ&サービス分野
ネットワークプロダクツ & サービス分野 |
ゲームの売上高は前年度比15%減少の8,410億円。新型を投入したPlayStation 3の普及拡大により、PS3ソフトウェアの売上数量が増加したが、為替の悪影響とプレイステーション・ポータブル(PSP)のハード、プレイステーション 2のソフト売上数量の減少、PS3の価格改定などの影響で減収。営業損益は前年度比220億円悪化の570億円の損失となっている。
しかし、四半期ベースでは第3、第4四半期ともに利益を計上。大根田氏は「3月末時点でPS3ハードウェアの逆ざや(生産コストが販売価格を上回る状態)は改善している。生産コストダウンは'10年度も続くので、販売台数アップと含めて、今年度の利益に貢献してくれるだろう」と説明。2010年度はPS3のさらなる販売の拡大により、ゲーム事業の黒字化を図るという。
売上台数は、新型が好調で、人気ソフトも多数販売されたPS3が、前年度の約1,010万台に対し、当年度は約1,300万台を達成。一方、PSPは上半期の出遅れを年末商戦でカバーしきれず、前年度の約1,410万台に対し、約990万台。PS2は新興国を中心に底堅い需要が続いており、前年度の約790万台に対し、約730万台となっている。
また、3G通信機能を備えたモデルなど、3機種を展開している電子書籍端末については、売上高が前年度と比べ倍以上になったとのことで、「今後も拡大する市場において、引き続きハードウェア・コンテンツの販売を行ない、アジアや欧州の新しい市場でも展開・拡大していく」(神戸氏)とした。
なお、電子書籍端末としての機能も備えるアップルのiPadが話題になっているが、大根田氏は「マーケットとしては300万台、400万台程度だが、来年、再来年ともっと伸びる市場だと考えている。iPadは相当売れていて、品不足とも聞いていますが、eブックリーダーにはeブックリーダーならではの読みやすさ、軽さ、電池の長持ちなどの魅力があり、(iPadとは別に)eブックリーダーなりに支持されていくのではないか」と分析した。
映画分野 |
映画分野の売上高は米ドルに対する円高により、前年度比1.7%減少。7,052億円となった。米ドルベースでは「2012」、「天使と悪魔」、「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」などの興行収入、映像ソフト収入が全世界で好調で、映画作品の売上は増加。一方、前年度に公開された作品の映像ソフトの収入は減少している。営業利益は前年度比43.1%増加した428億円。主にSPEが保有していた中南米のプレミアム有料テレビ事業、売国のケーブルネットワーク会社の持分の一部、そして中欧のプレミアム有料テレビ事業の全持分の売却により、合計303億円の売却益を計上したことによるもの。
構造改革の進捗 |
なお、昨年4月にハワード・ストリンガー会長兼社長CEOを中心とした新た仕入経営体制が作られ、約1年となるが、その成果について、神戸氏は「事業構造の改革、コスト削減、サプライチェーンの強化が著しく進んだと思う。また、新経営陣が掲げていた、テレビ事業、PS3、ソニー・エリクソン事業の損益改善についても、それぞれ黒字化の見通しが立ってきた」と説明。
CFOの後任には現デピュティCFOの加藤優氏が就任予定 |
なお、大根田氏は12日に発表された役員人事の通り、来月の株主総会を経て、定年退職する予定。CFOの後任には現デピュティCFOの加藤優氏が就任予定。
(2010年 5月 13日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]