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パナソニック、液晶とプラズマのサイズ別戦略を撤回

−Xactiは統合へ。電工吸収/TV事業再生など新成長戦略


パナソニックの大坪文雄社長
2012年度は5,000億円の営業利益に挑戦

 パナソニックの大坪文雄社長は28日、大阪・枚方市の人材開発カンパニーにおいて、パナソニック電工、三洋電機との再編を踏まえた新成長戦略と2011年度の事業方針などについて発表した。

 そのなかで大坪社長は、2012年度の売上高として9兆4,000億円、営業利益率5%以上を目標とする計画を明らかにしたほか、パナソニック電工の合併や、三洋電機との白物家電などにおける事業の統廃合、さらには現在、38万5,000人の社員を35万人規模にまで削減する計画などを明らかにした。

 「営業利益に関しては、GT12策定時に比べて、円、ユーロともに10円の円高となっているが、その影響を吸収しても5%以上の営業利益率を達成するとともに、5,000億円の営業利益に挑戦する」と語った。

 また、薄型テレビ事業に関しても事業構造改革に乗り出す姿勢をみせ、「液晶、プラズマといったデバイスごとにインチサイズを決めていたこれまでの戦略を見直し、デバイスにこだわらないインチ戦略を推進する」と、大きな転換を図る姿勢を示した。



■ 被災地復興には本業で貢献する

震災から一カ月半を過ぎた復旧状況

 今回の事業方針の発表は、同社が創業以来続けていた1月10日の事業方針発表を、今年から4月に変更すると発表したことを受けて行なったもの。パナソニック電工、三洋電機を完全子会社化してからは、初めての事業方針説明となる。

 午後5時10分から開始した会見の冒頭に大坪社長は、3月11日に東日本大震災が発生してから1カ月半を経過したことについて触れ、「被災した当社の拠点は着実に復旧が進む一方で、サプライチェーンの混乱による影響は依然として継続しており、これは短期間に戻ることは難しいと考えている。また、海外からは放射線レベルの測定を求められることも、復旧の足かせになることが懸念される。調達戦略の見直しや、売上げの変動に見合った経費の活用、投資削減を進めつつ、本業である商品、事業で復興に貢献していく。本業で貢献することが、業績へのダメージを抑えることにもつながると考えている」とした。

 電力不足や停電対策においては、同社の省エネ機器のほか、創エネ、蓄エネ、エネマネといった新提案につながること、被災地の本格復興に向けては、エネルギー+安心・安全による家、ビル、街の「まるごとソリューション」が展開することで、本格的な復興に向けてリーダーシップを発揮できることを示しながら、「当社が目指す環境革新企業のコンセプトを実践し、その成果を被災地から世界に発信していきたい。これが経営理念の実践にもつながる」などとした。



■ 新興国市場での成果はあがるものの、海外比率はあがらず

3つのパラダイム転換

 2012年度を最終年度として取り組んでいる中期経営計画「GT12」の進捗状況については、Transformation指標とする「新領域」、「グローバル」、「ソリューション・システム」の3つの観点から自己評価した。

 新領域では、6重点事業(ネットワークAV、冷熱コンディショニング、エナジーシステム、セキュリティ、ヘルスケア、LED)が占める売上げ比率が、2012年度には42%という目標に対して、2010年度の進捗実績は35%となった。「ネットワークAV、エナジーシステム事業の売上高が前年実績を下回っているのが原因」と総括。

 グローバルでは、新興国市場の売上高が前年比20%増となり、5,051億円に拡大。2012年度目標の7,700億円に向けて進捗しているものの、海外売上げ比率は48%に留まり、2012年度の55%の目標に対して足踏み状態となったことを示した。「為替の影響や、北米市場の落ち込みが影響している」という。

 また、ソリューション・システムは、2010年度実績で2%増の2兆2,718億円。2012年度の2兆6,000億円に向けて、現時点では目標を達成しているとして、進捗状況を高評価した。


■ ビジネスモデル別の3事業分野に再編

 一方、パソナニック電工および三洋電機の完全子会社後の体制についても言及した。

新グループ体制の枠組み

 これまでにも、従来の共通技術プラットフォームを中心した5セグメント体制から、「コンシューマー」、「デバイス」、「ソリューション」という、顧客ごとに分類したビジネスモデル別の3事業分野へとシフトを図るとともに、その下に9つのドメインと、ひとつのグローバルマーケティング体制を取ることを明らかにしていたが、さらに、各ドメインごとの詳細についても説明した。

 コンシューマー事業分野では、パナソニックのAVC社とHA社を軸に、三洋電機とパナソニック電工の事業を再編。AVCネットワークス、冷熱アプライアンス、グローバルコンシューマーマーケティングを設置。「この事業分野においては、マーケティング力を徹底的に強化し、各地域のニーズを商品につなげ、各地域に最適な商品を最速、最強のコストで供給することを目指す」とした。


コンシューマー事業分野

 「AVCネットワーク事業分野」では、「生活シーンに根ざしたネット接続型商品によって、新規事業を創造、拡大する」とコメント。三洋電機とのシナジー効果によって、常設プロジェクタではナンバーワンを目指すほか、三洋電機がXactiで展開してきた縦型ムービーにおいては、動画+写真のアクティブな撮影スタイルが、新規需要を開拓できるとし、これによりHDグローバルシェアで30%以上を目指す考えを示した。

 また、商品開発の現地化を促進することで、ボリュームゾーン商品を強化。薄型テレビでは、直下型LEDモデルによりコスト競争力を高めた商品をインド市場に投入したのに続き、新興国でニーズが高いUSB動画再生機能の標準搭載なども図っていくという。

 AVCネットワークの2012年度の売上高目標は2兆1,000億円、営業利益率ではさらに3.9%の向上を見込む。

 冷熱アプライアンスでは、海外展開を加速し、2015年度の海外比率を60%に拡大。調理小物などでは統一コンセプトによる「群」展開を進めるほか、三洋電機の強みを生かしたBtoB事業の拡大を図る。2012年度の売上高は1兆2,000億円以上、営業利益率は2.5%向上させるという。


デバイス事業分野

 「デバイス事業分野」では、8ドメインと関連部門を、オートモーティブとデバイス、エナジーデバイスに再編。マーケティングと技術を一体化した体制により、顧客の潜在ニーズを先取り提案し、社内用途に依存しない自立した事業として拡大させる考えを示した。

 エナジーデバイスでは、「リチウムイオン電池での世界ナンバーワンシェアにこだわり、生産の中国シフトなどにより、韓国勢に対する競争優位を再構築。ソーラーでは、2012年度には国内ナンバーワン、2015年度にはグローバルトップ3を目指し、尼崎のP3工場で生産する次世代HIT太陽電池の早期投入と、グローバル供給体制の構築を目指す」とした。2012年度の売上高では7,600億円以上、営業利益率は1.6ポイントの向上を目指す。


ソリューション事業分野

 「ソリューション事業分野」では、10ドイメンと関連部門を再編し、システムコミュニケーションズ、環境・エナジーソリューションズ、ヘルスケアメディカルソリューションズ、ファクトリーソリューションズに分類。「顧客ニーズ、課題を掘り起こし、最適な解決方法を提供することを目指す」とした。

 環境・エナジーソリューションズでは、照明事業におけるLED比率を40%に、また海外比率を40%に高めるほか、2012年度には売上高で1兆6,000億円、営業利益率では1.9%向上させる。

 まるごと事業創出のために、戦略企画やビジネス開発を行なう「まるごと事業推進本部」の設置に加え、ドメインを超えた意思決定、課題解決、戦略投資の審議を行なう「グループまるごと事業推進コミッティー」を設置し、2012年度には1,055億円以上、2015年度には3,000億円以上の売上高を目指す。



■ パナ電工の吸収合併も、三洋電機は法人格を残す

規模が小さなグローバル本社と、「北米」、「中国・北東アジア」、「中南米」、「欧州・CIS」、「アジア・太洋州・中近東・アフリカ」の5つの地域統括を配置

 さらに、同社では、新たな本社の形として、規模が小さなグローバル本社と、「北米」、「中国・北東アジア」、「中南米」、「欧州・CIS」、「アジア・太洋州・中近東・アフリカ」の5つの地域統括を配置し、さらに、現在は、すべて日本に集中している本部機能のうち、調達・ロジスティクスについては、2012年度には、アジア地域に本部機能を移転。生産革新におけるアジアのサテライト拠点を大幅に強化し、強い生産拠点づくり、現地調達の強化、戦略的な外部活用を図ることを明らかにした。

 調達・ロジスティクスの本部機能に関しては、詳細は明らかではないが、今後、シンガポールを拠点として、調達戦略、ロジスティクス戦略を立案していくことになりそうだ。

生産関連職能は本部機能をアジアへシフト

 また、「パナソニック電工は、新ドメインに完全に統合する。当社ともインフラが近いところがあり、パナソニックへの合併の可能性を検討している」として、今後、吸収する方針を示す一方で、「三洋電機は、デジカメなどドメインと競合関係にある商品のOEM事業、海外の合弁事業、収束予定の事業など、新ドメインに統合できない事業をいくつか抱えている。そこで、当面は法人形態を継続し、新たな9つのドメインとは別に、これらの事業の運営と資産の管理を行なう」とした。

 さらにブランドの位置づけについても説明。コーポレートブランドの「パナソニック」については、「一部商品、地域を除いて、全事業分野でパナソニックに一本化する」としたほか、サブブランドについては、「グループ全体で整合性をとりながら、必要あれば継続して活用し、地域展開も図っていく」とした。


三洋電機・パナソニック電工の位置付け ブランドの方向性

 構造改革においては、すでに三洋電機の半導体事業、物流事業、モータ事業を事業譲渡したほか、今後は重複事業として、白物家電、空調機器、カーナビ、プロジェクター、監視カメラなどでの集約、統合を図る考えを示した。また、本社や本社R&D部門、間接部門子会社、営業拠点や販売会社、寮や社宅などの保有施設での整理、統合のほか、個別事業における合理化を推進する考えだ。

 大坪社長によると、「グループとして、現在全世界に350近くの生産拠点がある。これを新たな9つのドメインのなかで、近い拠点は1カ所にするといったことを行なう。確定した数字ではないが、1〜2割の拠点削減はあるだろう」とした。

 現在、日本で15万3,000人、海外で23万2,000人の合計38万5,000人の社員を、「最適な体制の構築が必要である」として、2012年度末までに35万人規模に削減する計画も明らかにした。

 拠点再編、人員再配置などに伴う構造改革費用として、2011年度には1,100億円規模、2012年度は500億円規模を想定しており、「2011年度は、再編に伴い減販の影響が出てくるため、合理化・構造改革効果が限定的となり、60億円の営業利益貢献に留まるが、2012年度は増販効果が加わり、600億円の営業利益貢献が期待できる」と見積もった。

 現在は、コンシューマ事業分野の売上高が3兆2,000億円、デバイス事業分野が2兆9,000億円、ソリューション事業分野が2兆7,000億円となっている構成を、2012年度には、コンシューマー事業分野およびデバイス事業分野がそれぞれに3兆3,000億円、ソリューション事業分野が3兆1,000億円とし、「これまでソリューション事業分野の売上高構成比が低かったが、いずれの事業分野でも3兆円を超える規模を目指す」という。

再編後のグループの姿 構造改革の内容 シナジー効果(営業利益への影響)

■ 2011年度の重点施策は「攻める」、「変える」

 2011年度の重点施策として、大坪社長は、「攻める」と「変える」の2点から言及した。「攻める」としては、新興国市場での事業成長として、重点国として掲げるBRICs、MINTS+Bにおいて、2011年度は前年比27%増の6,150億円を目指す計画を示し、なかでもインド市場においては、インド大増販プロジェクトが2年目に入ったことでパナソニックビューティー製品の展開開始や、白物15商品への拡大、ブランドショップを200店舗に倍増することなどの強化により、2011年度に1,000億円の売上高を必達目標にするとともに、2012年度には2,000億円に拡大させる。

 また、「成長分野を攻める」として、有機EL照明による次世代照明デバイスの開発、環境エンジニアリング事業の拡大を掲げた。

 「変える」では、半導体事業においてはシステムLSIを中心とした事業経営からの脱却に取り組むほか、全社経営体質の強化として、今年4月に新設した経営体質強化部会により、固定費削減と資金捻出に取り組むことで、損益分岐点を2012年度までに4ポイント引き下げ、ネット資金を2012年度までにプラスに良化するという。


■ 「テレビ事業の再生」をかけた1年に

薄型テレビの事業構造改革

 「変える」のなかで注目されるのが、薄型テレビの事業構造改革だ。大坪社長は「薄型テレビは激しいグローバル競争のなか、収益力の回復が急務の課題事業」と位置づけ、液晶パネルについては、新規投資を凍結する一方で、外部調達および提携拡大を模索。また、プラズマディスプレイパネル(PDP)については尼崎のP3生産設備の中国に移管するとともに、同拠点を次世代HIT太陽電池工場に転換。また、PDPのパネル生産についても新規投資を凍結し、「可能な限り資産を軽くする」とした。

 大坪社長は、「テレビ事業が赤字となっているのは、重い固定費の負担があり、これが経営を苦しくしている最大の要因である。PDPの尼崎工場、液晶パネルの姫路工場への立地を決定したときには、為替が1ドル110〜115円であり、残念ながら見通しが極めて甘かったという反省がある。パネルおよびモジュールを海外工場に送り、現地でアセンブリして届ける仕組みが、為替の影響で大きなマイナスとなっている」とした。

 一方で、大坪社長は、「デバイスの違いにこだわらず、薄型パネルとして競争力を発揮できるインチサイズへの集中化を進めり、生産効率の向上を図りたい」とした。

 薄型テレビでは、当初、32型までを液晶テレビ、37型以上をプラズマテレビとしており、現在では液晶テレビのラインアップを42型まで拡大する一方で、プラズマテレビは42型以上のラインアップとしていた。

 今回の発表により、インチサイズによる区分けを排除することになり、言い換えを変えれば大型化した液晶テレビの投入に踏み込むことを宣言したと受け取ってもいいだろう。

 大坪社長も「プラズマテレビから市場参入し、その後液晶テレビをラインアップしてきた経緯から、デバイスによって商品サイズの棲み分けを考えてきたという歴史的な背景があったが、今後は、『ここまでは液晶』、『ここからはプラズマ』という区分けを一切取り払い、素直にマーケットでの売れ筋にあわせて、サイズ展開をしていくことになる」とした。

 また、「新興国攻略、コストダウン、製販連携、新規市場開拓といった点で、まだ出来ていないことが山ほどある。薄型テレビに関しては開発機能を含めて海外シフトを進めながら、フルHD、3D、新興国に焦点を当てながらメリハリの効いた機種展開を進める。2011年度は2,500万台の出荷計画とし、収益改善に集中する。2011年度はテレビの再生をかけて、もう一度挑戦したい。ここで手応えを得られれば、GT12の最終年度となる2012年度に、テレビ事業は赤字から脱却できる可能性がある」とした。



(2011年 4月 28日)

[Reported by 大河原克行]