震災後も“地デジ特需”がデジタル家電を牽引。BCN分析

-5月は前年比プラスに回復。BDレコーダも好調


BCNの道越一郎アナリスト

 BCNは14日、薄型テレビなどのデジタル家電市場とPC市場の調査結果を発表した。このなかで、東日本大震災後のテレビやレコーダ、デジタルカメラなどの販売動向などについて分析と予測を行なった。

 この市場分析は、家電量販店など全国23社、2,341店舗(2011年6月現在)のPOSデータを集計したBCNのデータをもとに行なっている。Amazonなどを中心としたネット店舗のデータも加味した形で前年同月比などを算出。メーカー直販店の売上は含まれない。発表データ内の金額は全て税抜きとなる。

 BCNの道越一郎アナリストは冒頭、「震災以降、消費の冷え込みが心配されているが、PCとデジタル家電は堅調である」と述べ、特に5月にはBCN指数(116品目の実売データから、全商品の平均販売単価と販売金額の前年同月比をまとめたもの)が半年ぶりのプラスになるなど、全体的に好調な点を指摘。地域別の販売台数を見ると、被災地を含む「北海道・東北」エリアも前年並みの水準に回復しつつあり、全国では7%前後の増加となった。

 7月のアナログ放送終了(被災3県除く)を前にした薄型テレビの特需も立ち上がり始めており、それに伴いBDレコーダの売上も4~5月にかけて上昇。5月においてはテレビを上回る勢いで伸び、特に金額の伸びが大きい。

BCN指数は半年ぶりにプラスとなった地域別の販売台数の推移。左は全体、右は薄型テレビ


■ テレビ

薄型テレビの販売台数/金額の推移

 薄型テレビの販売台数/金額を見ると、2010年12月のエコポイント半減による落ち込みから、5月になってようやく台数/金額ともプラスに回復。

 画面サイズ別にみると、特に20型未満と30型台の数量/金額伸び率が4~5月にかけて急回復しており、そのほかのサイズも前年同等からプラスに戻っている。平均単価は、30型台の下落に歯止めがかかる一方、20型未満は5月も落ち込みを続けている。

 地域別では、特に関東で小型モデルの割合が高く、被災地を含む北海道・東北エリアなど、他の地域では大型の需要もまだ残っている。画面サイズの平均は3~4月に下がり始めていたが、5月には30型台に戻っており、平均消費電力も5月には微増した。

 機能面では、録画機能付きテレビ(HDD/BD内蔵モデルや、別売USB HDD録画対応モデル)の割合が5月に47%まで上昇。タイプ別では録画用USB搭載モデルが60.1%で最も多く、次いでHDD/BD搭載(16.8%)、BDドライブのみ(6.5%)、HDDのみ(5.3%)の順となっている。LEDバックライト搭載モデルの割合は62.1%で、「プレミアム感は薄れた」としている。


販売台数/金額指数と平均単価画面サイズ帯別の台数/金額前年同月比画面サイズ帯別の台数構成比と平均単価変動率
地域別で画面サイズごとの販売動向を比較平均画面サイズと平均消費電力の推移録画対応モデルの割合

 3D対応テレビは少しずつ割合を高めており、5月時点では薄型テレビ全体の6.8%(3Dメガネ付属5.2%、メガネ別売が1.6%)となっている。大型サイズに限ると、40型台は30.2%、50型以上は71.2%が3D対応となっている。3D対応と非対応のモデルの価格差は次第に縮まっており、特に大型ではその傾向が顕著に表れている。

 メーカー別の販売台数シェアは、首位のシャープが5月時点で36.8%、続いて東芝が21.3%、パナソニックが16.8%、ソニーが13.3%となった。

3Dテレビの比率大画面モデルに占める3D対応の割合3Dモデルと2Dモデルの価格差


■ レコーダ

レコーダの販売台数/金額の推移

 レコーダの販売台数/金額は、テレビと同様にエコポイント半減で2010年12月に前年比でマイナスとなってから、2月には一旦回復したものの、震災後の3月は再び金額が減少。4~5月に持ち直すという形で推移している。4~5月にかけて単価の下落も止まりつつあり、販売台数も高いまま維持している。

 メーカー別では、製品供給が比較的安定していたというパナソニックが4~5月で大きく伸ばし、5月時点では39.4%でトップ。2位はシャープ(22.9%)、3位はソニー(20.4%)、4位東芝(13.3%)、5位三菱(3.9%)となっている。

 機能面では、マルチチューナ対応が加速しており、ダブルチューナの割合が5月で47.9%、トリプルチューナが7.7%まで上昇している。

 光学メディアの販売数は、枚数で見るとDVDが85.5%、BD(BDXL除く)が14.2%と依然DVDが多いが、総容量に占める枚数比率ではDVDが51.4%、BDが48.6%と半々に近くなっている。BDXLは0.02%。


販売台数/金額指数と平均単価メーカー別シェアチューナ数別の台数比率


■ そのほか

デジタルカメラの販売台数/金額の推移

 テレビ/レコーダに比べて震災後の回復が遅れているのはデジタルカメラ。3月以降は販売台数/金額ともに前年比マイナスの傾向が続いている。背景としては、東北で作られていた部材の供給不足を指摘。特に一眼レフは影響が大きいとみており、道越氏は「夏から秋にかけて正常化し、年末には間に合うだろう」と予測している。

 パソコンは、デスクトップにおける地デジ/ディスプレイ一体型モデルの割合が高まっており、台数ベースでは5月時点で67.7%。価格帯別でみても、比較的低価格なモデルの割合が増えており、最も多いのは8~10万円未満で39.1%。こうした傾向について、森英二アナリストは「デスクトップ市場にも地デジ化による2台目需要が起こっている」とした。


特に一眼レフは震災の影響が大きいというパソコンの販売台数/金額の推移デスクトップPCにおける地デジチューナ搭載/ディスプレイ一体型の割合


森英二アナリスト

 スマートフォンの5月販売台数構成比は、携帯電話全体の43.5%。2010年12月に48.1%に達して以来、伸びは止まっている。キャリア別のスマートフォン販売台数構成比は、ソフトバンクが70.6%、ドコモが40.9%、auが22.4%となっており、こちらも2010年12月以降は大きな変化はない。

 OS別の5月販売台数構成比は、Androidが66.0%、iOSが33.7%となっている。キャリア別の販売台数シェアは、ドコモが41.8%、ソフトバンクが37.3%、auが17.6%となっている。2011年は大きな変動がないことについて森氏は「Android端末の夏モデルが早くも発表されたことで、買い控えが始まっているのでは」としている。

 スレート型端末は、依然としてiPadの割合が高く、メーカー別ではアップルが87.6%、日本エイサーが5.8%、ASUSが2.2%、LGが0.8%、モトローラが0.7%となっている。iPadの売上は、初代モデルの登場時はWi-Fi+3Gの割合がWi-Fiモデルよりやや多く、64GBモデルの割合が36.8%で最も高かったが、iPad 2については、Wi-Fiモデルが7割を占め、最も多いのは16GBモデルと、逆転現象が起きている。これについて森氏は「無線LAN環境の浸透が後押しした」と述べた。


携帯電話に占めるスマートフォンの構成比夏モデルの発表により、買い控えが起きているという初代iPadとiPad 2の種類別販売構成比を比較


(2011年 6月 14日)

[AV Watch編集部 中林暁]