ヤマハ、ハイクラスAVアンプ「AVENTAGE」3機種

-「Z11」と同じDAC/シネマDSP採用。5番目の脚装備


上が「RX-A1010」、下段右が「RX-A3010」、左が「RX-A2010」

 ヤマハは、AVアンプの新モデル3機種を9月上旬より順次発売する。各モデルの価格と発売日は、7.1chタイプの「RX-A1010」が9月上旬発売で、126,000円。9.2chの「RX-A2010」が9月中旬発売で199,500円。9.2chアンプで11.2chまで拡張できる「RX-A3010」が9月下旬発売で260,400円。

 同社はこの3モデルから、AVアンプのシリーズ名として「AVENTAGE」(アベンタージュ)を導入。従来シリーズのカスタムチューンモデルという位置付けで、「AV Entertainment for New Age」から作られた造語。「次世代のAVエンターテイメントマシン」という意味が含まれているという。


 AVENTAGE 3機種共通の特長として、筐体に5番目の脚「A.R.T. Wedge(アートウェッジ)」を搭載している。従来の4つのインシュレータに加え、筐体底面の中央に追加されたインシュレータの事で、A.R.T.は「Anti Resonance Technology」の略。電源トランスの微細な振動を抑制する効果があり、5番目の脚はあえて樹脂製のものを採用。振動を低減すると共に、共振周波数も変化させており、適度な内部損失がある樹脂製が選ばれた。再生音に対して、SNが改善され、再生音の重心が下がる効果があるという。なお、上位モデルの「RX-A3010」では、底板を二重にしたダブルボトム構造を採用、4つの脚を鋳鉄製とし、さらなる音質チューニングを行なっている。

 また、AVENTAGEでは、製品の保証期間がこれまでの1年ではなく、標準で5年間となる。


「AVENTAGE」のコンセプトビジュアル筐体に5番目の脚「A.R.T. Wedge」を搭載


■RX-A3010

RX-A3010

「DSP-Z11」で培われた技術を投入したというモデル。カラーはブラック(B)とゴールド(N)。

 従来モデルの「RX-V3067」は7.1chだったが、「RX-A3010」は9.2chモデルになっている。主要7ch分のDACに「Z11」と同じ、バーブラウン「DSD1796」を採用。DSDダイレクト入力にも対応したDACで、SACDのマルチチャンネル音声をD/A変換する事も可能。アンプ部の最大出力は230W×9ch(6Ω)。

 「Z11」で搭載された、同社DSPの最高峰である「シネマDSP HD3」(HDキュービック)に対応。「Z11」の時は、DSPを4基使って処理を行なっていたが、RX-A3010では2基のDSPで同程度の処理が行なえるようになり、入力された音声データが24bit/96kHzまでであれば、ダウンサンプリングせずにシネマDSP処理がかけられる。Blu-rayソフトなどのHDオーディオにもシネマDSPがかけられる。

AVENTAGEのロゴマーク
側面。スリットの無いシンプルなデザインになった

 内蔵アンプは9chだが、2chのアンプを別途追加する事で11chまで拡張が可能。パワーアンプのアサイン方法は14種類のメニューから選べる。VPS(バーチャルプレゼンススピーカー)機能も備えており、装備。前方上方に設置するプレゼンス・スピーカー(フロントハイ)を仮想的に創成。シネマDSP <3Dモード>をフロントプレゼンススピーカー無しで実現できる。シネマDSP プログラム数は23。

 視聴環境最適化システムの「YPAO」は、部屋の初期反射音を厳密に制御する高精度な「YPAO-R.S.C.」(Reflected Sound Control)を採用。部屋の壁や床から発生する不規則な初期反射音を、デジタル音場処理技術で補正するもので、「RX-V3067」でも採用されているが、「RX-A3010」では初期反射音の制御精度をさらに向上させたという。

 視聴位置とスピーカーの位置関係を把握する「スピーカー角度計測」、最大8カ所までの計測ポイントからデータを総合的に判断し、精度を高める「マルチポイント計測」、室内の音響特性に合わせてシネマDSPの効果を最適化する「DSPエフェクトレベルノーマライズ」機能も備えている。

 PCなどに蓄積した楽曲を、DLNA(1.5準拠)で再生するネットワークオーディオ機能も搭載。MP3/WAV/FLAC/WMA/AAC(MPEG-4)フォーマットをサポートし、FLACは24bit/96kHzまで対応する。Windows 7にも準拠。USB端子も備えており、USBメモリ内の楽曲再生も可能。USB接続したiPodのデジタル再生も可能。インターネットラジオも聴取できる。

 さらに、iOS 4.0以上をインストールしたiPod touch(第3世代以降)、iPhone 3GS以降、iPadに対応したコントロールアプリ「AV CONTROLLER」もApp Storeで無償公開。同じLAN内にあるAVアンプをコントロールできるもので、電源ON/OFF、ボリューム調整、ミュートなどの基本操作に加え、ネットラジオの選局やPC内のファイル再生、入力ソース切り換え、再生中の曲のタイトル名/アルバム名/アーティスト名表示なども可能。DSPモードの切り換え、SCENEモードの切り換えもでき、スマートフォンやタブレットをリモコンのように使える。

 また、アプリを使わずPCなどからAVアンプにWebブラウザでアクセスし、制御できる「ウェブコントロールセンター」機能も備えている。

 映像処理回路として、IDT HQV Vidaビデオプロセッサ「VHD1900」を搭載。6項目の映像補正パラメーターを自動調整する機能を備え、ユーザー自身での微調整にも対応する。1080p対応のアップスケール機能も利用できる。

 筐体には、H型クロスフレーム、リジッドボトムフレーム、ダブルボトム構造などのノウハウを投入。機械的強度と重量バランスを発揮する、左右対称コンストラクションの制振・高剛性シャーシを採用している。

 オーディオ回路部には、高速熱帰還型パワートランジスタと、大容量制振ヒートシンク使い、左右対称設計を採用。オーディオ入力部とDACの電位差を解消し、微小信号の再生品位を高める「D.O.P.Gコンセプト」も投入している。

 電源部には、単体質量約6.5kgの大型電源トランスと、特製カーボンシース・ブロックケミコン(容量18,000μF×2)を使った、オーディオ専用電源を採用。映像・制御系などのデジタル回路用とFLディスプレイ回路用をそれぞれ独立させ、全動作モードでのSNも高めている。

RX-A3010の背面端子

 AM/FMチューナも搭載。入力端子はHDMI×8、D端子×1、コンポーネント×4、コンポジット/S映像×5、アナログ音声×11、Phono入力×1、7.1chアナログ入力×1、光デジタル入力×3、同軸デジタル入力×4を装備。

 出力端子は、HDMI×2(同時出力可)、コンポーネント×1、コンポジット×2、S映像×2、アナログ音声×1、光デジタル音声×1、11.2chプリアウト×1。RS-232CやIR端子、トリガー出力も備えている。マルチルーム(ZONE)機能にも対応。

 外形寸法は435×467×192mm(幅×奥行き×高さ)。重量は19.9kg。電源ケーブルは着脱可能で、極太なOFCケーブルを使っている。消費電力は280W。待機時消費電力は、HDMIコントロールON・スタンバイスルーON時で約2.7W以下。両方OFF時で0.25W以下。


付属リモコン


■RX-A2010

RX-A2010
左がRX-A2010、右がRX-A3010

 9.2chアンプで、最大出力は220W×9ch(6Ω時)。カラーはブラックのみ。なお、11.2chへの拡張には対応しない。

 シネマDSPは、「シネマDSP <3Dモード>」に対応。音楽再生プログラムでは天井や床の反響音まで計算することで、ホールの空間を再生可能。映画用プログラムでは、映像とサラウンド音場の一体感を高め、「画面に引き込まれるような立体的な表現」を実現するという。なお、192、96kHzなどのデータが入力された場合は48kHzにダウンサンプリングして処理する。DACはバーブラウンのPCM1789と1781を採用。VPSにも対応する。シネマDSP プログラム数は23。

 筐体にはクロスフレームや左右対象コンストラクション、リジッドボトムフレームなどを採用。パワーアンプ部には高速熱帰還型パワートランジスタと大容量制振ヒートシンクも採用し、左右分離構造となっている。電源用カーボンシース・ブロックケミコン容量は、12,000μF。

 視聴環境最適化システムは「YPAO-R.S.C.」で、再生環境の残響特性に応じてシネマDSP効果を最適化するDSPエフェクトノーマライズも装備。最大8カ所のマルチポイント計測にも対応する。ただし、スピーカー角度計測は「RX-A3010」のみの対応となる。

 ネットワークオーディオ機能や、iPhone/PCなどからの操作にも対応。映像処理回路はIDT HQV Vidaビデオプロセッサ「VHD1900」。RX-A2010では、自動調整機能のみ使用できる。

RX-A2010の背面

 AM/FMチューナ搭載。電源ケーブルは着脱式。入出力端子はRX-A3010とほぼ同じだが、プリアウトが7.2chとなるほか、11.2chへの拡張用プリアウトは備えていない。

 外形寸法は435×467×192mm(幅×奥行き×高さ)。重量は17.1kg。消費電力は最大で280W。待機時消費電力は、HDMIコントロールON・スタンバイスルーON時で約2W。待機時消費電力は、HDMIコントロールON・スタンバイスルーON時で約2.7W以下。両方OFF時で0.25W以下。




■RX-A1010

RX-A1010

 7.1chアンプで、最大出力は170W×7ch(6Ω時)。カラーはブラックのみ。なお、9.2chなどへの拡張には対応しない。

 シネマDSPは、「シネマDSP <3Dモード>」に対応。フロントプレゼンススピーカーなしでも、シネマDSP <3Dモード>を手軽に再生できるVPSに対応する。シネマDSP プログラム数は17。

 最大8カ所のマルチポイント計測に対応した視聴環境最適化システム「YPAO」に対応するほか、映像面ではHQV Vidaとは異なるが、1080p対応のアップスケーラも搭載する。


RX-A1010の背面

 オーディオ回路のD.O.P.G.コンセプトや、リジッドボトムフレームを備えた制振・高剛性シャーシ、3回路分離型パワーサプライなどの設計は上位モデルから継承。ネットワークオーディオ機能や、iPhone/PCなどからの操作にも対応する。

 AM/FMチューナ搭載。マルチルーム(ZONE)機能も備える。入出力端子はRX-A2010とほぼ同じ。消費電力は275W。待機時消費電力は、HDMIコントロールON・スタンバイスルーON時で約2W以下。両方OFF時で0.25W以下。外形寸法は435×432×182mm(幅×奥行き×高さ)。重量は15.1kg。



(2011年 8月 25日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]