スマホ所有者の音楽関連支出額は高い傾向に。RIAJ調査

-携帯/PHS保有層の1.8倍。CD購入は微増。


 日本レコード協会(RIAJ)は13日、2011年度の「音楽メディアユーザー実態調査」報告書を公開した。

 同報告書は2011年8月に実施したインターネットアンケート、及び10月に実施したグループインタビューの調査結果をまとめたもの。対象者は全国の12~69歳の男女(中学生は親の代理回答)で、サンプル数は4,960。CD購入や、音楽配信の利用、ポータブルオーディオプレーヤーの保有率などを調査している。


■ CD購入/ネット配信は微増。音楽関係サービス利用ではFMラジオが上位に

有料配信の音楽購入率は前年度比1.4ポイント増。着うたフルは微減だった 出典:一般社団法人 日本レコード協会

 過去半年間(3月~8月)におけるCD購入率は34.9%で、昨年の調査に比べ1.2ポイント増加。購入枚数の平均は4.8枚だった。レンタル率は同1.2ポイント減の23.4%で、CD購入とレンタルの併用比率も同1.7ポイント減の9.6%だった。

 インターネット音楽配信の購入率は前年度比1.4ポイント増の10.7%。昨年度に引き続いてアルバム/シングル共に20代社会人の購入率が最も高く、ネット配信でのシングル購入率は男性が16.1%、女性が16.7%。また着うたフル購入率は、男性は20代社会人(15.0%)と、女性は高校生(19.1%)が最も高い。また着うたフルは同0.7%の微減だった。

 年代別の割合では、「インターネット配信」や「着うたフル」を利用する人が多いのは30~40代で、「CDアルバム・シングル」は中学生~20代社会人が最も多い。またネット配信での若年層と30~40代のシェアが拮抗した。前年の調査では中学生~20代に「着うたフル」を、また30~40代に「CDアルバム・シングル」を利用する人が多かったが、今回はCD(セル)市場と着うたフル市場でシェアの入れ替わりが起きている。

 購入した新品CDアルバムをジャンル別で見ると、最も多いのは「日本のポップス」の50.3%だが、前年度比で6.1ポイント減少。次に「日本のロック」(19.4%)、「海外のポップス」(16.8%)が続いている。今回から項目に追加された「K-POP」は9.5%だった。新品CDシングルについても、「日本のポップス」が52.2%で最も多いが、前年度比で7.9ポイント減少。続いて「日本のアイドルミュージック」が同1.2ポイント増加の25.7%となった。また「K-POP」が13.2%で上位に入っており、新品CDシングルでは幅広い世代に「アイドル」作品が購入されている。

 初めてCDを購入するアーティストの新品CDを認知するきっかけとなった媒体を年代別で見ると、中学生と大学生・専門学生で最も多かったのが「アーティストの公式サイト(ブログ含む)」で、中学生が33.8%、大学生・専門学生は28.4%。高校生はテレビCMが30.8%、20代社会人は「テレビ番組(音楽番組)」が24.4%だった。30代と40代は共に「インターネットショッピングサイト」が最も多く、50代と60代では「テレビCM(楽曲のCM)」や「新聞記事・広告」のほか、「CD販売店」も上位に入っている。CD購入のきっかけとしてテレビの訴求力のほか、アーティストの公式サイトの影響力の高まりがあったと分析している。

 また、インターネット音楽配信において、初めて知ったアーティストの楽曲ファイルを購入するきっかけについては「無料動画配信サイト(14.0%)」、「有料音楽・動画配信サイト(12.9%)」が影響している。

 「音楽を楽しむために利用したサービス」として過去半年間で最も多かったのは、YouTubeで52.0%。2位がFMラジオの32.7%で、昨年度の4位から繰り上がっている。3位がテレビ(30.8%)、4位がカラオケ(30.3%)、5位がニコニコ動画(19.7%)だった。


■ スマホ保有層の音楽への関心は高い傾向。「エルダー層」の音楽購入への無関心化も

スマートフォン保有層の音楽購入やライブ・イベントへの入場料など音楽関連の支出額は多い 出典:一般社団法人 日本レコード協会

 今回の調査ではスマートフォンユーザーの音楽聴取や購入などに焦点を当てている。全対象者の内、スマートフォン保有率は17.8%。年代別では、男女共に20代社会人の保有率が最も高かった。また、30代以上の女性ではスマートフォンを除く携帯電話・PHSを保有する割合が圧倒的に大きい。なお、携帯電話とスマートフォンの「2台持ち」の場合はスマートフォン保有側に分類されている。自宅での音楽視聴機器としてスマートフォンを含む携帯電話の音楽プレイヤー機能を使用するのは27.9%で、外出先では41.5%が使用している。

 音楽購入やライブ・イベントへの入場料など音楽関連の支出額は、携帯・PHSのみの保有層の月平均(1,466円)の1.8倍(2,590円)で、特に有料配信への支出が高かった。各音楽メディアの数量におけるシェアでは、新品CD(アルバム・シングル)が3割で、有料配信は6割弱を占め、複数の音楽メディアを併用する比率は13.2%。スマートフォン保有層の音楽への関心は高い傾向にあると分析している。

 「有料音楽配信の購入が減った理由」についても調査。スマートフォン保有層では「YouTubeなどの無料音楽配信サイトでの聴取を増やした」が18.1%、「スマートフォンへの機種変更で以前使っていた配信サービスが使用出来なくなった」(27.1%)、「動画サイトの視聴アプリなどによる音楽配信使用の減少」(12.5%)、「無料音楽アプリがあるため音楽を購入しなくなった」(8.5%)といった理由が挙がった。

 新たな音楽配信サービスの利用意向については、スマートフォン保有層では「機種変更しても一度購入した楽曲なら無料でダウンロードできるサービス」(25.1%)や「定額制の音楽配信(聴き放題)サービス」(21.7%)、「購入した楽曲をネットワークに保管し、複数端末から聴取できるサービス」(17.9%)などに関心が集まっている。またスマートフォンを保有する無料聴取層では「通常CDよりも高音質な音楽配信への関心」(21.4%)が上位に入った。

 このほか、40代以上の「エルダー層」にも焦点が当てられている。エルダー層の「聞く音楽と購入する音楽の年代」の傾向として、普段聞く音楽は年代的な幅が広く、購入する音楽は2010年代の作品に集中していた。また「音楽を聞くために、音楽商品を購入したり、お金を支払ったりしたことがある」という有料聴取層の構成比は、40代は平均を上回る53%だったが、50代で38%、60代では30%と、年代が上がるにつれて減少。音楽を買うことへの「無関心化」が強まったとしている。調査では、50~60代男性の半数以上がCD販売店での衝動買い経験がある一方で、映像等の特典には反応が弱いため、エルダー層の興味を惹くヒット作品等の提供が必要と分析している。


(2012年 2月 14日)

[AV Watch編集部 庄司亮一]