クリプトン、アクティブスピーカー「KS-1HQM」特別モデル

-MAYAモデル。CDと24bit/96kHz楽曲セットで聴き比べ


カナリヤイエローの「KS-1HQM(M)」。サイン入りアルバムやハイレゾ音源ダウンロードチケットがセットになっている

 クリプトンは、DAC内蔵アクティブスピーカー「KS-1HQM」の特別モデルとして、ジャズ&ラテン・ボーカリストのMAYAさんとコラボレーションした、カナリヤイエローの「KS-1HQM(M)」を6月15日に発売する。直販価格は59,800円。スピーカーだけでなく、サイン入りCDアルバムと、同じアルバムの24bit/96kHz音楽ファイルを無料ダウンロードできるチケットもセットになっている。

 100台限定販売となっており、クリプトンの直販サイト限定の販売となる。


手前から従来モデルのブラック、中央が2月から発売されているホワイト。奥がカナリヤイエロー

 「KS-1HQM」は2010年から直販49,800円で発売されており、今年の2月にはMacやホワイト系PCとマッチするホワイトモデル「KS-1HQM(W)」も発売されている。

 “MAYAバージョン”は通常モデルと比べ、1万円高価だが、スピーカーのカラーがカナリヤイエローになっているだけでなく、MAYAさんの新しいアルバム「BLUESY MAYA in Hi-Fi」のサイン入りCDと、クリプトンのハイレゾ音楽ファイル配信サービス「HQM Store」において、同アルバムの24bit/96kHzデータを無料ダウンロードできるチケットも同梱。購入したユーザーは「KS-1HQM(M)」を使い、CDの音と24bit/96kHzの音を、同じ曲で聴き比べる事ができる。なお、CDは既に発売されているが、HQM Storeでのアルバム配信は6月15日からとなる(FLACの24bit/96kHzで3,150円)。


「KS-1HQM(M)」を手にしたMAYAさん

 スピーカーの仕様は、カラー以外は従来モデルと同じ。Tymphany製の6.35cm径フルレンジユニットを採用しており、25W×2chのデジタルアンプを内蔵。24bit/96kHz対応のDACも備え、光デジタル、アナログ音声(ステレオミニ)と、USB入力も装備。USBオーディオとしても動作し、PCでダウンロードしたハイレゾ音源を気軽に再生できるのが特徴。

 さらに、スピーカーの下に設置して振動を吸収する専用オーディオボードと、ボードとスピーカーの設置に利用するハイカーボンスチール製インシュレータ(6個)も付属する。

 外形寸法は、スピーカー部が86×105×170mm(幅×奥行き×高さ)、オーディオボード部が100×120×50mm(同)。重量は全体で3.6kg、オーディオボードのみが1.6kg。


横から見たところネジ穴もカナリヤイエローのゴムで蓋がされている正面から見たところ
オーディオボード部分も同じ色になっている背面の端子部。USB入力にも対応している


■「スタジオマスターの音を家庭で手軽に聴いて欲しい」

技術開発室の渡邊勝室長

 技術開発室の渡邊勝室長によれば、コラボモデル開発のキッカケは、「HQM Store」でMAYAさんの楽曲を配信しようという話の中で、MAYAさんが「KS-1HQM」の音を試聴。その音質に感動した事で、コラボスピーカーの話へと発展していったという。

 女性向けのオーディオ試聴会「女子オーディオ」の副会長も務めるMAYAさんから出されたカラーの要望は「男性向けの黒などが多い従来のオーディオとは正反対の、爽やかなカナリヤイエロー」というもの。カナリヤイエローは、通常の黄色と比べてやや薄めの明るいカラーだが、「実際に作ってみると、独特の色味を出す事や、下部のオーディオボードとスピーカーの色を合わせるのが大変だった」(渡邊氏)という。


「スタジオマスターの音を家庭で手軽に聴いて欲しい」と語るMAYAさん

 しかし、女性だけに向けたモデルというわけではなく「男性でも女性でも部屋に置いて、オシャレ馴染む、中性的なカラーを意識した」(MAYAさん)という。なお、通常の「KS-1HQM」は、側面にネジの頭が見えているデザインだが、MAYAモデルでは全体の色味を考慮し、同じカナリヤイエローのゴムでネジの上に蓋をしているなど、細かい部分にもこだわっている。

 音質についてMAYAさんは、「いつも聴く人の耳元でささやくような、ぬくもりを感じてもらえるように歌いたいと心がけています。レコーディングスタジオの機材で聴くスタジオマスターの音は、私がそこで歌っているかのように素晴らしいものですが、それがCDになると変わってしまい、残念だと思っていました。しかし、KS-1HQMを聴かせていただいたところ、こんなに小さなスピーカーなのに、ぬくもりや気配といったものが、しっかり伝わって来て、とにかく驚きました」と振り返った。


オーディオ評論家の林正儀氏

 なお、CD/ハイレゾ配信で提供されるアルバム「BLUESY MAYA in Hi-Fi」は、ジャズ評論家でオーディオ雑誌でも活躍している寺島靖国氏がプロデュースする寺島レコードから4月25日に発売されている(CD/TYR-1029/2,940円※LP版も発売中)が、このレコーディング現場には、オーディオ評論家の林正儀氏がオーディオプロデュースとして参加している。

 録音は横浜のLANDMARK STUDIOで実施。林氏によれば「録音エンジニアの佐藤宏章氏は、様々なケーブルを試すなど、音質にこだわり、追求している方。そこにオーディオファンの感性を持ち込みたいと参加したが、快く受け入れていただいた」という。

 林氏がスタジオに持ち込んだのは、クリプトンの「HR(High Resolution)」シリーズである電源ボックス「PB-HR1000」と電源ケーブル。既報の通り、電波を吸い取るようなノイズ抑制効果がある「バスタレイド」や、共振を抑える「ネオフェード」などの新素材を使った電源で、スタジオでは、ヴォーカルや楽器の音をとらえるマイクのプリアンプに、この電源ボックス+ケーブルを使用。確認に使うモニタースピーカーのインシュレータにもクリプトンのものを使うなど、「考えうるベストな施策をした」という。

 こうして生まれた24bit/96kHzのマスターを、ハイレゾ配信ではそのままの情報量で楽しむ事ができるという。


クリプトン「HR」シリーズの電源ボックスやケーブルが録音に使われたアルバム「BLUESY MAYA in Hi-Fi」。写真はMAYAさんのサイン入りのもの


■実際に聴き比べてみる

試聴の様子

 クリプトンの試聴室で、実際にCDアルバムと、24bit/96kHzのWAVファイルを比較試聴してみた。スピーカーは「KS-1HQM(M)」。再生機は米OPPOのBDプレーヤーを使い、WAVファイルはDVD-Rにライティングしたものを同じプレーヤーで再生している。

 以前レビューしたように、「KS-1HQM」は振動対策が徹底されたスピーカーであるため、余分な付帯音が少なく、微細な表現が可能。そのため、小型スピーカーではあるが、CDとハイレゾ音源の違いも、意外なほどよくわかる。

 特に中高域で違いが顕著。ハイレゾに切り替えると、音場の背後方向に広がる空間が拡大。音像のコントラストもアップし、立体的な音場に、ヴォーカルや楽器の音像がハッキリと分離して定位する。かといってエッジを強調したキツイ音にはならず、高域は自然でなめらか。普段耳にしている人間の声に近い、生々しさ、MAYAさんの言葉を借りるならば「ささやくようなぬくもり」が出てくるのが実感できた。



(2012年 5月 17日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]