クリプトン、新素材を使った電源BOX「PB-HR1000」

-ステルス戦闘機と同素材。絹採用電源ケーブルも


電源ボックス「PB-HR1000」

 クリプトンは、ハイビット・ハイサンプリングデータを再生するオーディオ環境での利用を想定した新しいアクセサリ「クリプトンHR(High Resolution)」シリーズの製品として、電源ボックス「PB-HR1000」と、電源ケーブル「PC-HR1000」、「PC-HR500」を発表した。

 電源ボックスは11月上旬発売で、価格は157,500円。電源ケーブルは、「PC-HR1000」が5.0sqのハイグレードタイプで、価格は2mで59,850円。切り売りも用意しており、9,765円/mとなる。「PC-HR500」は3.5sqのスタンダードモデルで、2mで39,900円。切り売りは6,510円/m。

 電源ボックスと電源ケーブルは、組み合わせての使用も想定されている。




■電源ボックス「PB-HR1000」

 ハイレゾ・オーディオの繊細なサウンドに対応するため、ノイズの除去を徹底。そのために、「バスタレイド」と「ネオフェード」という新い素材を活用している。

 「バスタレイド」は、電磁干渉抑制体と呼ばれるもので、電波を吸い取るようなノイズ抑制効果を持っており、レーダーに映らないステルス戦闘機などにも使われている。微細な金属片の方向を揃え、密に折り重なった構造で、フェライトを超えるノイズ抑制効果を持つという。

 「PB-HR1000」では、これをシート状にした素材を、内部のジャンパー線(PCOCC-A)にスパイラル状に巻きつけることで、高周波ノイズを抑制。従来の電源ボックスは筐体にステンレスなどを使う事で内部のノイズを外に出さない工夫がされているが、「PB-HR1000」では内部でアンテナ効果により発生する高周波ノイズそのものを抑制。高域のSN比が改善されるという。

バスタレイドを短冊状に切ったものバスタレイドの概要「PB-HR1000」の内部。ジャンパー線(PCOCC-A)にスパイラル状に巻きつけられているのがバスタレイド

 さらに、電源フィルタを2回路備え、PCやパワーアンプなどを接続するための「大電流機器・高ノイズ機器」用コンセントと、「小電流機器」用コンセントの回路を分離。これにより、相互の電流やノイズが影響を及ぼしあうのを防いでいる。コンセントは全部で6個、右の2つがパワーアンプやPC用のコネクタとなる。

 さらに、三菱ガス化学の「ネオフェード」という素材をベースに、クリプトンと三菱ガス化学がオーディオ用素材として「ネオフェード カーボンマトリックス3層材」を共同開発。

「大電流機器・高ノイズ機器」用コンセントと、「小電流機器」用コンセントを別に用意ネオフェード カーボンマトリックス3層材を短冊状に切ったものネオフェードを、2枚のCFRP(カーボン繊維強化プラスチック)の板で上下から挟んで3層構造としている

 ネオフェードは構造体の共振を抑え、振動エネルギーを効率良く吸収して熱エネルギーに変える効果がある。これを、2枚のCFRP(カーボン繊維強化プラスチック)の板で上下から挟んで3層構造としている。この3層材を、表面パネルと底面のインシュレータフットに使用。微細な振動を吸収させ、クリアさを高めている。また、表面のカーボンクロス・マトリックス材には、電磁シールドの効果もあり、PCなど、ノイズの大きい機器に使用しても、電磁アース効果により、ノイズが低減できるという。

インシュレータにもネオフェード カーボンマトリックス3層材を使用している
 筐体は電磁遮断に強いステンレスを採用。ACインレットはPSEを取得しており、ロジウムメッキ仕上げを施した。コネクタはレビトン製ホスピタルグレード。

 

 単品販売されるものと同じインシュレータを搭載。「ネオフェード カーボンマトリックス3層材」とステンレスをハイブリッドで使っているもので、外部振動を大幅に吸収するという。

 外形寸法は300×127×85mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約3kg。


ネオフェードの概要電源ボックス「PB-HR1000」のブロック図ノイズ測定データ。上が従来モデル、下が「PB-HR1000」


■電源ケーブル「PC-HR1000/PC-HR500」

 同社は普及タイプの「PC-5」(7,350円)を発売しているが、新開発の「PC-HR1000/PC-HR500」をもって、電源ケーブル市場に本格参入するという。5.0sqのPC-HR1000と、3.5sqのPC-HR500という2種類を用意する。

 最大の特徴は、介在に絹(シルク)を使っている事。絹の静電気に強く(帯電しにくい)、柔軟性と弾性を併せ持った特性に注目。電源ケーブルに電流が流れると発生する、超微小振動を吸収し、絶縁体やシースに採用した制振剤入りポリオレフィンなどと合わせて、振動減衰効果を高めたという。

 また、絹を使う事で、同形状のケーブルと比較すると柔らかく、配線などの使い勝手も向上するという。

介在に絹を使っているのが特徴電源プラグ部分絹を使うことで、曲げやすく、使い勝手が良い

 なお、メーカーでは通常、ケーブルを作る場合、1,200mを1つのロールとして作成するという。しかし、普通のカイコの繭からは900mの絹しかとれず、1,200mとするにはどこかで繋ぎあわせなければならない。そこで、特別に1,200mの絹がとれるカイコを用意。つなぎ目のないケーブルを生み出し、そこから2mの製品や、切り売りの製品を作っているという。

 導体には、PCOCC-Aを採用。単結晶銅素材のPCOCC-Hをアニール(焼き純し)処理したもので、導体として仕上がった段階では6Nを上回る純度があるという。これは、結晶粒界のない単結晶素材からアニール処理することで、不純物が入り込む余地が無いためだという。アニール処理されたPCOCC-Aは、導線結晶境界面のバラつきがほとんど無く、音の濁りなどが改善されるという。

切り売りも用意PCOCC-Aの概要。左がタフピッチ銅の断面。結晶の境界面で様々な悪影響が発生しやすい。右がPCOCCの脱面。結晶の境界面が無い

 導線絶縁体には制振剤入り耐燃性ポリオレフィンを、シースにも同じものを採用。絹糸も耐燃性が高く、安全性にも考慮したという。撚り合わせは3芯撚り合わせ。電源プラグは、肉厚シルバーとリジウムメッキ、高比重エンプラ素材などを使っている。


(2011年 9月 27日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]