マランツ、USB DAC機能付きSACD「SA-11S3」

-SA Driver搭載プリメイン「PM-11S3」も


右がSACDプレーヤー「SA-11S3」、左がプリメインアンプ「PM-11S3」

 ディーアンドエムホールディングスは、マランツのUSB DAC機能搭載SACDプレーヤー「SA-11S3」と、プリメインアンプ「PM-11S3」を発売する。発売日と価格は、「SA-11S3」が7月下旬で504,000円、「PM-11S3」が7月上旬で451,500円。




■SA-11S3

SA-11S3

 従来モデル「SA-11S2」と比べ、ドライブ部の改善や、USB DAC機能の追加など、大幅な機能強化を行なったSACDプレーヤー。

 DACには、DSDのダイレクトD/A変換と、24bit/192kHzまでのPCM信号処理が可能なバーブラウン「DSD1792A」を採用。「新しいデバイスというわけではないが、リスニングテストした結果、音の力や勢いが、電流出力型のDSD1792Aの方が、電圧出力型よりも優れていると判断した」(マランツブランドの音質担当マネージャー 澤田龍一氏)という。

 DAC用のクロックには、新たに開発された超低ジッタクリスタルを採用。SA11S2などのCDに使われているものと比べ、10分の1程度ジッタのレベルが少なくなっており、霧が晴れるように解像度が向上した」(澤田氏)という。


一番上がDACの「DSD1792A」マランツブランドの音質担当マネージャー 澤田龍一氏

 DSPは、SA-7S1に採用されたものを進化させた「PEC777f3」を搭載。オリジナルアルゴリズムによるオーバーサンプリング、デジタルフィルタ、DCフィルタ、ノイズシェーパー機能を実装。従来は44.1kHzのみの対応だったが、最大192kHzまでの様々な外部入力信号に対応した。デジタルフィルタは2種類。シンプルなインパルス応答で、プリエコー/アフターエコーがほとんどないものと、プリエコーはないが、アフターエコーはある「アナログっぽい音」(澤田氏)が選択できる。

 USB DAC機能も搭載。24bit/192kHzまで対応でき、アシンクロナス伝送をサポート。PC側のクロックの揺らぎ(ジッタ)に左右されないジッタフリー伝送を可能にしている。利用するためにはマランツのWebサイトから専用ドライバをダウンロードする必要がある。対応OSはWindows XP/Vista/7。Mac OS X 10.6.3以降。同軸デジタル、光デジタル入力も24bit/192kHzまで対応する。


USB DACモードで対応するフォーマットと周波数フロントのUSB端子

 なお、PCなどの接続機器からのノイズ流入を排除するため、高速フォトカプラーを使ったオプティカル・アイソレーターも搭載。デジタル入力回路とDAC回路を電気的に絶縁。デジタル入力基板と、DAC基板のグラウンドも分離している。

 ドライブ部には、オリジナルメカエンジン「SACDM-2」を採用。高剛性なスチールシャーシとアルミダイキャストトレイを使い、ディスクの振動を抑制。メカエンジンはセンターに配置し、最大10mm厚のアルミ押し出し材を使ったベースブロックで2重構造のボトムシャーシに固定している。

 DAC以降のアナログステージは、フルバランス・ディファレンシャル構成の回路を採用。独自の高速アンプモジュールHDAMや、HDAM-2SA2を使い、全てをディスクリート回路で構成している。バランス出力のHOT/COLDを反転させるデジタル位相反転機能も備え、デジタル信号の段階で処理をする事で、音質劣化が無いという。

 ヘッドフォンアンプも搭載。メインの回路に影響を与えないようにするため、バッファアンプを設けているほか、ヘッドフォンを使わない時にはリレーでメイン回路から完全に切り離す事も可能。DACからの出力を最短距離でヘッドフォンアンプに導くことで、鮮度の高さを実現したという。

 電源トランスには、銅メッキケースに封入したトロイダルトランスを使用。容量を従来の30VAから50VAにアップしている。巻線はOFC。アナログ回路用電源とDAC電源用のブロックケミコンには、新開発のカスタムパーツ(ニチコン製)を採用している。


オーディオ回路はHDAMをメインに構成されているアナログ回路用電源とDAC電源用のブロックケミコンには、新開発のカスタムパーツ(ニチコン製)を採用

 出力はバランス(XLR)、アンバランス(RCA)、光デジタル、同軸デジタル、ヘッドフォン出力を各1系統用意。SACDのマルチチャンネルディスクは、2chにダウンミックスして出力できる。RCA出力端子は銅ブロックからの削り出し。入力は同軸デジタル、光デジタルを各1系統。USBはフロントとリアに各1系統備え、連携用のマランツリモートバス(RC-5)も1系統用意する。

 消費電力は45W。待機時消費電力は0.3W以下。最大外形寸法は440×417×127mm(幅×奥行き×高さ)、重量は16.5kg。リモコンを同梱する。



■PM-11S3

 従来モデルから、独自のハイスピード・ディスクリート・アンプモジュール「HDAM」を使った電流帰還型回路により、増幅回路の高速化を進めてきたが、PM-11シリーズの第3世代モデルとなる「PM-11S3」では、残っていたパワーアンプの電流増幅部を高速化。

 高い安定度を持つV/Iサーボ方式の電流帰還型パワーアンプのプリドライバステージにHDAM-SA3を応用した、新回路「SA Driver」を使っている。これにより、入力からスピーカー出力までの全てがハイスピード化。「SC-7S2やMA-9S2に匹敵する空間表現力とディテールの再現性を獲得した」という。パワートランジスタ保護用に設けていたリミッタも外され、立ち上がりも高速化している。

PM-11S3背面

 定格出力は100W×2ch(8Ω)、200W×2ch(4Ω)。電源回路には、大容量フィルタコンデンサと、リスニングテストで吟味したというブリーダー抵抗を投入。高調波ノイズを抑え、クリーンな電源供給を実現したという。この結果、従来はトランスのコアの中に収めていた、プリアンプ電源用のチョークコイルを取り去ることができ、トランスコアの内径を小さくする事が可能になった。容量に余裕が生まれ、トランス巻線にOFCも使う事で、エネルギー感の向上を測ったという。

 電流帰還型プリアンプ部では、全ての入力端子にHDAM-SA3で構成された入力バッファアンプを搭載。入力信号を低インピーダンス化する事で、各入力ソース間の相互干渉を防いでいる。また、バランス入力には、HDAM-SA3を使った、専用の電流帰還型バランスバッファアンプを搭載している。さらに、サプライヤーと音質検討を重ねて開発したという、純銅箔フィルムコンデンサ「ブルースターキャップ」を、プリアンプ・パワーアンプの要所に使用。音質をチューニングしている。

 リニアコントロール・ボリュームのICには、MAS6116を採用。パラレルで使っており、SN比に優れた可変ゲインアンプを構成。連動誤差も極めて小さく、ゼロクロス検出によるゲイン切り替えにより、ボリューム操作時のクリックノイズも発生しないという。加速度検出システムも備え、ゆっくり回すと0.5dBステップ、早く回すと俊敏に音量調節が可能。なお、F.C.B.S.(Floating Control Bus System)により、最大4台までのPM-11S3のボリュームを連動制御できる。

 コンスタント・カレントフィードバック・フォノイコライザも搭載。スピーカーターミナルは銅削り出しの「SPKT-100」を採用。2系統出力があり、バイワイヤリングやスピーカー切り替えが可能。前面に備えた液晶ディスプレイは、ノイズを抑えたタイプで、ポートホール内部のカラーリングをブラックに変更している。

 入力端子は、アンバランス×5、バランス(XLR)×1、Phono×1、パワーアンプダイレクト×1。出力はRECアウト×2、プリアウト×1、ヘッドフォン×1を用意。マランツリモートバス入出力、F.C.B.S.入出力も各1系統備えている。

 外形寸法は440×453×168mm(幅×奥行き×高さ)、重量は26.6kg。消費電力は300W、待機時消費電力は0.2W。リモコンが付属する。

構成パーツポートホール内部のカラーリングをブラックに変更している

(2012年 6月 28日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]