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すべてが超リアルな傑作映画『F1/エフワン』。ソニー&アップル開発のカメラも凄い!

『F1(R)/エフワン』
(C)2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

“61”。

この数は背番号ではない。今日(27日)公開の映画『F1(R)/エフワン』で、伝説のF1レーサー“ソニー・ヘイズ”を演じた俳優ブラッド・ピット(ブラピ)の年齢である。

実は筆者、高校時代にレンタルで観た映画『セブン』の“ミルズ刑事”にトキメいて以降(当時ミルズの髪型を床屋に真似させたが、出来損ないのスネ夫みたいになった)、出演作は欠かさずチェックしてきた自称・ブラピ好きなのだが、いままで年齢はまったく気にしていなかった。

というか『F1/エフワン』では劇中、ブラピが若手レーサーから“年寄り”とか“チャック・ノリス”呼ばわりされていて、「なぜオレの憧れのブラピがジジイなのか!まだアラフィフくらいだろ!!」と怒り心頭で鑑賞後にググってみたら、さっきの数字が出てきてひっくり返ったわけだ。

先日日本にも来てくれたブラピ。最高にイケてる61歳である
(C)2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

しかし御安心いただきたい。例えチャック・ノリスだろうが何だろうが、映画『F1/エフワン』は、これまでにない撮影アプローチで最高峰のモータースポーツの世界を活写した傑作エンタメに仕上がっている。

F1に興味のなかった方も(もちろんF1のファンの方も)、リアリティ溢れる超ド迫力のレースシーンに息をのみ、命を懸けたレーサー達の姿に魅了され、最弱チームが一丸となってワールドチャンピオンを狙う大逆転劇に胸熱&激萌えすることは必至だ。

そしてとにかく、ブラピが最高にカッコイイ。観終わった後は筆者同様、ブラピが“抱かれたい男ナンバーワン”になっているに違いない。

なお、ストーリーはネタバレしていないが、映像面の感想などを書いているので「何の情報も入れずに楽しみたい!」という方は注意して欲しい。

『F1(R)/エフワン』
(C)2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

『トップガン マーヴェリック』の制作陣が集結!

映画『F1/エフワン』は、世界一のドライバーが世界一速いレーシングカーを用いて頂点を競うモータースポーツ“F1”を題材とした作品だ。

ブラピ演じる物語の主人公ソニー・ヘイズは、かつて世界を震わせた伝説的カリスマF1レーサー。現在はF1から距離をおき、世界の様々なレースに出場しながら放浪生活を送っていた。そんなある日、最下位に沈むF1チームの代表を務める、かつてのチームメイト“ルーベン”(ハビエル・バルデム)から誘いを受け、現役復帰を果たすことに。

『F1(R)/エフワン』
(C)2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

参加することになったチームは「エイペックスGP」(作品に登場する架空のチーム)。2年半もの間、1ポイントも取れておらず、残り9レースで結果を残さなければ“チーム売却”という絶体絶命の状況だった。

そんな危機を脱するべく、ソニーはレースで奇策に打って出るが、同じチームメイトである若きルーキーのジョシュア(ダムソン・イドリス)やチームメンバーは困惑。度々衝突を繰り返すも、次第に圧倒的なソニーの才能と実力に導かれていく。果たして、ソニーは、バラバラのチームと共に過酷な試練を乗り越え、並み居る強敵たちを相手に逆転できるのか――。

『F1(R)/エフワン』
(C)2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.
『F1(R)/エフワン』
(C)2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

監督を務めるのは、ジョセフ・コシンスキー(『トロン:レガシー』『オブリビオン』)。プロデューサーは、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズを手掛けたジェリー・ブラッカイマー。そのほか、脚本にアーレン・クルーガー(『トランスフォーマー』シリーズ)、撮影監督にクラウディオ・ミランダ(『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』)、そして音楽にハンス・ジマー(『ダークナイト』シリーズ)など、2022年の大ヒット映画『トップガン マーヴェリック』の制作チームが集結した。

ジョセフ・コシンスキー
(C)2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

さらに、7度のワールドチャンピオン記録を持つ現役レーサーのルイス・ハミルトン(フェラーリ)が、プロデューサーとして参加。脚本執筆プロセスに参加するだけでなく、コーナーにおけるギアの選択であったり、ブレーキのタイミング、そしてシフトチェンジや装着するタイヤまで、劇中のレースシーンにおける細かな描写も助言している、という。

徹底的にリアル追求。レースシーンはド迫力ショットの連続!

映画『F1®/エフワン』舞台裏シリーズ(F1全面サポート編)|2025年6月27日(金)公開!

本作の見どころの1つが、何といっても、徹底的な“リアリティ”にこだわって制作されているところだろう。

制作にはF1が全面的にバックアップ。本編に使われている映像は、世界各国のサーキットコースでレースウィークエンドに撮影したものを使用。劇中に登場するイギリス、ハンガリー、イタリア、オランダ、日本、メキシコ、ベルギー、ラスベガス、アブダビのレースシーンは本物のコースで撮影されている。

レース最初のイギリスGP(シルバーストン)のシーンでは、フェラーリとメルセデスの間にエイペックスGPの専用ガレージが設置されただけでなく、モーターホームも他チーム同様パドックに配置。さらにエイペックスGPの2台のマシンも、レースに出場する20台のマシンの最後列からフォーメーションラップに参加している(観客は映画のための演出とは気が付かなかったとか…)。

ドライバー役の出演者ら(ブラピやイドリス)も、プロ仕様のレーシングカーに実際に乗り込み、コースを運転しながら台詞を喋り、表情や感情の演技を行なっている。

映画『F1®/エフワン』舞台裏シリーズ1 |2025年6月27日(金)公開

ブラピらが実際に操縦したのは、最高時速320キロに達し、F1とほぼ遜色ないパフォーマンスを誇るF2マシン。撮影用には12台のマシンが用意され(うち6台はクラッシュ用)、ブラピらはシミュレーターで練習した後、6週間に渡ってF3を操縦し、その後F2へと段階的にステップアップした。

さらに、コーナリング時などにかかるGを受け止めるため、体幹、背中、首、ふくらはぎ、アキレス腱までを鍛える必要があり、VO2 max(最大酸素摂取量)測定で心肺能力をチェックし、BATAC(反応速度トレーニング機器)で神経反応を鍛えたそうだ。

映画『F1®/エフワン』舞台裏シリーズ2(スピード体感編)|2025年6月27日(金)公開!

グリッド上のほぼすべてのドライバーも、現役のトップ選手が参加。

プロデューサーのルイス・ハミルトンほか、シャルル・ルクレール(フェラーリ)、マックス・フェルスタッペン、角田裕毅(レッドブル)、カルロス・サインツJr.(ウィリアムズ)、ランド・ノリス、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)、ピエール・ガスリー(アルピーヌ)、フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)らがカメオ出演。

チームのガレージから車体カラー、衣装も、本物のF1チームを徹底的にリサーチし、現実世界にシームレスな一体感を作ることができるよう綿密にデザインされた。

映画『F1®/エフワン』舞台裏シリーズ8(圧倒的映像体験IMAX®編) | 6月27日(金)公開!

レースシーンを捉えた映像も凄まじい。『トップガン マーヴェリック』ではまるでトム・クルーズの戦闘機に同乗しているかのような臨場感が味わえたが、本作『F1/エフワン』でも、この撮影手法は健在。

ロールフープ上からの広角ショットに加え、ドライバー目線のショット、地面スレスレの前方・後方ショット、走行中のブラピを捉えた超近接ショット、オーバーテイクからの横パン!など、まるでマシンのシャシーにしがみついてレースを観戦しているかのようなド迫力のショットに終始圧倒された。

(C)2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.
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そして、レース映画には欠かせないエンジン音もリアル。地響きのような重低音と、耳を突き刺す金属的な高い音が響き渡り、レースが始まるや劇場はサーキットへ変貌する。特に、フォーメーションラップをすませ、レッドシグナルによるカウントダウンが始まる“あおり”のパートは、エンジンの唸る音とジマーの脈打つようなビートが融合し、気分を最高にぶちアゲてくれる。

レース撮影用にソニーとアップルが専用カメラを開発

本作のプロダクションノートによれば、迫力あるレースシーンを撮影することができたのは、ソニー製のカメラと、アップル「iPhone」のカメラシステムがあったおかげだという。

『F1/エフワン』を撮影するにあたり、コシンスキー監督と撮影監督のミランダが掲げたのが……

  • カメラは極限まで小型・軽量化されていながら、IMAXの大画面に耐えうる画質とダイナミックレンジを備えていること
  • カメラが自由に動かせること
  • サーキット全体で、無線による複数台のカメラの同時操作が可能であること

……という3つの技術的目標。

そこでソニーとミランダは、通称“Carmen(カルメン)”と名付けた新しい小型のカメラシステムを開発し、1台のマシンにつき最大15カ所を設置。さらに複数のマシンが走行する各撮影セッションでは、最大12方向のアングルで同時撮影できる環境を揃えた。F1中継の固定視点だけでなく、パンやチルトにも対応させた。

これにより、F1中継でお馴染みのアングルから、映画的に全く新しい視点まで、コシンスキー監督が求めるあらゆる構図が可能になった(中には、将来的にF1の公式中継映像にも導入される可能性のあるアングルもあるとか)。

映画『F1®/エフワン』舞台裏シリーズ(リアルアクション編)|2025年6月27日(金)公開!

さらに、コシンスキー監督らはアップルとも協力し、iPhoneのカメラシステム(ハード、ソフト、Appleシリコン)を活用した、新開発のオンボードカメラシステムを開発。既存のF1のオンボードカメラと見分けがつかない外見でありながら、これまでにない高解像度と記録性能を実現し、F1レースのスリリングな臨場感を捉えられるようにした。

レースウイークエンドの撮影では、本物のF1マシン2台、時には3台にアップルのオンボードカメラが搭載され、実際のレース中に撮影を行なったという。

鑑賞後にカメラの情報を知ったのだが、お恥ずかしいことに、上映中ソニー製のカメラとiPhoneベースのオンボードカメラの品質の差には全く気付かなかった。

“地上版『トップガン』”に偽りなし。私はブラピになりたい

(C)2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

冒頭でも書いたが、『F1/エフワン』は誰もが愉しめる娯楽映画だ。ストーリーはハッキリ言って、なんのひねりもないド直球(笑)。一度夢を諦めた漢の逆転の物語。でもそれでいいじゃないか。王道こそ至高。

興奮、情熱、友情、ロマンス、、、胸を熱くするすべての要素が詰まった映画になっている。まさに宣伝のフレーズ“地上版『トップガン』”に偽りなし。映画館ならではの大スクリーンと大音響で絶対に楽しむべき作品だ(Apple Original Films作品だから、UHD BD/BDにならないかもしれないヨ!)。

もちろん、もし近くにラージフォーマット対応劇場があれば、そちらで鑑賞するのもオススメ。IMAX劇場で大画面&専用アスペクト映像(1.90:1)を楽しむのもアリだし、アトモス劇場でエンジン音を頭から浴びるのもアリ。個人的には、4DX/MX4D劇場でブラピのF1ドライビングを全身で体感してみようと思っている。

映画『F1®/エフワン』US版予告 |2025年6月27日(金)公開
阿部邦弘