アクトビラ、スマホ再生などVODを強化。上期売上は2.3倍

パススルー/STB両対応の「ケーブルアクトビラ」も開始


アクトビラの香西卓社長

 アクトビラは2日、新サービス発表会を開催。11月より開始したスマートフォン/タブレット向けサービスの機能強化や、CATV局向け「ケーブルアクトビラ」、有料の「プレミアムサービス」などについて説明した。

 ブロードバンド対応のデジタルテレビ向けポータルとして'07年にスタートしたアクトビラは、10月末時点の累計接続台数が450万台、会員登録数は60万。コンテンツ数は6万本以上(うちカラオケが2万曲)で、VOD作品の提供事業者数は64社。VOD作品を独自編成するNHKやスカパーなどの「パートナーストア」は5社。月額見放題パックを提供しているのは、NHKやワーナーなどの24商品となっている。

 アクトビラの香西卓社長は、決算発表を前に、好調な2012年度上期の業績を報告。売上は前年同期比233%、利益率7.3%で、「当初の計画予測よりプラスで推移している」とした。一方で、「アクトビラビデオ・フル」対応のテレビなどは約4,200万台となっており、前述した接続台数は約1割という現状について「接続率をいかに上げるかが、我々にとっても、関連事業者にとっても重要なキーファクター」とし、新サービスの開始で接続率の向上を図る方針を説明した。

アクトビラ会員数などの最新データ発表された新サービスや現状の取り組み


■ スマホ/タブレット向けサービス強化

スマホ/タブレット向け無料配信のサービス内容

 5月の事業説明会でも予告していた、スマートフォン/タブレットでの動画視聴サービスとして、11月1日より一部無料コンテンツで対応を開始。

 以前から、スマートフォン/タブレットのアプリを使って動画コンテンツを検索/購入後、テレビでそのコンテンツをスムーズに視聴するというサービスを会員向けに提供しているが、11月からはスマートフォン/タブレット端末上で視聴まで可能なサービスをスタート。

 アクトビラの公式サイトまたは既存のiOS/Androidアプリを使って、3Gまたは無線LAN経由で視聴でき、通信回線の速度に応じた画質で表示される。配信対象となるコンテンツはドラマの1話などの無料作品や、プロモーション動画(予告編など)を含む約24本(11月時点)。このうち、本編が視聴できるのは15本ほど。視聴にログインは不要なため、会員以外でも利用可能。アプリの「無料視聴」検索コーナーから、視聴できる作品を探すことができる。

 今後、2013年春に向けてスマートフォン/タブレット向けにも有料作品の配信も開始するなどサービスを強化。これに伴い、家のテレビで観ていた続きを外出先でスマートフォンを使って観るといった連携サービスも実現していくという。また、2013年2月には、スマートフォンをテレビのアクトビラのリモコンとして使える機能を提供予定。動画再生や、指定作品の連続再生(カラオケなど)に対応する。

タブレット画面。左上に「無料視聴」のコーナーが設けられた作品を選んで予告編などが視聴できる2013年春には、有料動画の配信も予定


■ CATV向けサービス

ケーブルアクトビラの概要

 CATV事業者向けに、テレビ向けのIP-VODサービス「ケーブルアクトビラ」を11月1日から提供開始。対象となるCATVサービスの加入者は、CATVのSTB、またはCATVパススルー機器からアクトビラビデオの動画を視聴できる。対応となるCATVサービスは明かしていないが、現在2社が12月1日からのサービスを開始。そのほかにも約15社と導入に向けて商談中だという。

 アクトビラは、CATV事業者に対し、IP-VODプラットフォームとVODコンテンツを提供。一部コンテンツはCATV事業者ごとの専用編成とすることができる。また、プラットフォームとVODコンテンツの運用も請け負う。

 さらに、オプションとしてCATVコミュニティチャンネル用のVOD配信用サーバー(Marlin DRM対応可能)を提供可能なほか、「コミュニティチャンネル画面からdボタンを押すとVODが観られる」といった放送通信連携サービスのプラットフォームや、情報サービス(天気、ゲーム、占いなど)の提供もできるという。

 対応端末は、アクトビラ ビデオ・フル対応のSTBのほか、パススルーで視聴している場合はアクトビラ ビデオ・フル対応テレビ/レコーダ。STBの場合はリモコンのブラウザボタンを押して各CATV局のVODトップページからアクセスできるほか、パナソニックが提供している「CUP(ユニバーサルポータル)」上のメニューからも遷移できる。パススルー視聴の場合は、テレビ/レコーダのアクトビラボタンなどで利用できる。

 CATV局のメリットとしては、アクトビラのプラットフォームをそのまま利用するため、最小限の運用体制で導入できる点や、アクトビラ動画配信には下り8Mbpsが必要なため、これに合わせたネット接続プランの提供による売上増、会員によるVOD視聴でアクトビラからのキックバックが受けられる点などがあるという。

アクトビラがCATV事業者に対して提供するサービスの内容対応端末と利用方法CATV局側のメリット


■ 有料サービスも正式スタート。トップページリニューアルで表示高速化

アクトビラ有料プレミアムサービスの内容

 10月15日に発表した「アクトビラ有料プレミアムサービス」を、11月から正式サービスとして運用開始。

 有料サービスの内容は既報の通りで、家庭内のもう一台のアクトビラ対応機器で、購入済み商品が視聴可能とする「テレビリンク」機能や、プレミアム映画作品を半額で利用できる特典を用意する点など。特に「テレビリンク」は、以前から要望が多かったサービスだという。

 その他にも、トップページのレイアウトをリニューアルしたことで表示速度を向上。同社の実測では、トップページ表示までの時間が、これまでの2.5秒から、2秒まで高速化したという。具体的な改善点は、画面に表示するボタンを、従来の画像からテキストに変更したことなど。これにより、文字の解像度も上がり、より見やすくなったという。また、VOD作品の人気ジャンルを追加表示したことで、使いやすくなったとしている。

 さらに、今後の予定として、12月1日にはビデオメニューをリニューアルすることも予告した。

「テレビリンク」機能により、リビングのテレビで視聴していた番組(左)を、引き続き寝室のテレビ(右)で観るというデモリニューアル後のトップページデザイン


■ CATV連携などで、3~5年内に1,000万台接続へ

現在の事業方針

 同社は、VODや広告など「既存アクトビラサービス」のほか、マルチスクリーン対応や放送通信連携などの「新アクトビラサービス」、ホテル向けVOD、法人向けライブ配信、プラットフォームのオペレーションといった「システムオペレーション」、CATVや家電量販店、放送事業者連携、プレミアム会員制といった「アクトビラPF」を合わせた4つの分野で事業拡大を図っている。

 前述のように売上は前年同期比233%としているが、既存アクトビラサービスも120%以上の伸びとなっており、新規事業との売上構成比は五分五分だという。

 今後の事業展開として香西社長は、「既存サービスを伸ばしつつ、新規事業を大きく成長させたい」としており、放送/通信連携については、2013年までにHTML 5へ対応することや、2020年以降に次世代超高画質のIPTV仕様に対応していく方針を示した。

 アクトビラ ビデオ・フル対応端末の普及は前述の通り4,200万台で、放送受信世帯の1世帯につき1台とすれば約78%となる。しかし、接続台数は累計450万台で、放送受信世帯に占める割合は約8%に留まっている。

 従来のCATVサービスでは、パススルー視聴の世帯に対してVODを提供できないという問題があったが、ケーブルアクトビラの対応により、パススルー視聴世帯(CATV全体のうち約72%)に対してVODを提供可能。こうした新サービスの導入によりアクトビラへの接続率向上を図り、「現在の450万台から、3~5年以内に1,000万台を目指す」とした。

今後の事業展開。HTML 5対応や次世代の超高画質映像への対応などCATVサービス開始などで、接続率向上を図る4つの事業分野それぞれに、今回発表された新サービスや取り組みを行なう


(2012年 11月 2日)

[AV Watch編集部 中林暁]