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アクトビラ、スマホ連携/4K取り組みなどの戦略を説明
'12年度は初の黒字化。HTML 5対応、BtoB強化も
(2013/5/22 18:38)
アクトビラは22日、'13年度の事業方針説明会を開催。この中で、ビデオオンデマンド(VOD)サービス「アクトビラ ビデオ」に、スマートフォン/タブレット連携の「リモコン再生機能」、「プレイリスト機能」、「連続再生機能」を追加することなどを発表した。
また、同社の香西卓社長は、'12年度の業績について、創業('06年)以来初の黒字化を達成したことを報告。さらに、今後の取り組みとして4K/8K配信やHTML 5への対応など、サービス展開拡大のロードマップについて説明を行なった。
スマホ連携強化。アニメ/ドラマの連続再生やプレイリスト化も
VODの新しいサービスとして、5月22日より、スマートフォン/タブレットを使った「リモコン再生機能」の提供を開始。また、ドラマ/アニメなどの「連続再生機能」と、カラオケなどを含めた「プレイリスト機能」の2つを追加することを発表した。
「リモコン再生機能」は、ダウンロードアプリではなく、iPhone/Android端末のWebアプリで動作。なお、Android向けにはダウンロード用アプリも提供している。対応端末は、iOS 4以降と、Android 2.3以降。対応するVOD作品は、アクトビラ ビデオ・フル(HD/SD)のストリーミング型一般作品(無料/有料)。ダウンロード作品や3D作品は対象外となる。
リモコン再生機能は、スマートフォンのアクトビラWebサイトから、マイページにログインして利用可能。これまでも、作品購入などの操作はスマートフォン/タブレットでも可能だったが、新たに、購入済み作品を、対応テレビで再生する指示がスマホ/タブレットからも可能になった。再生指示を受けるテレビを、テレビのリモコンなどで「スマホモード」にして待機する必要はあるが、アクトビラのサーバー経由で連携するため、スマホとテレビが同一LAN内に入る必要は無い。従来通り、スマートフォンで作品を視聴することも可能(許可された一部コンテンツに限る)。なお、一度テレビで再生が始まった後の操作はテレビ側のリモコンを使用。スマートフォンでトリックプレイ(早送りや停止など)は行なえない。
「連続再生機能」は、連続ドラマや複数話のアニメなどの作品を、1回の操作だけで続けて視聴できるというもの。これまでは、1話分が終わると、次の視聴作品の再生指示を出す必要があったが、連続再生対応により、都度リモコンを操作することなく、シリーズを続けて視聴できるようになった。カラオケで、間を置かずに次の曲を再生したい場合にも利用できる。1つのプレイリストあたり、最大100作品の登録が可能。
「プレイリスト機能」は、お気に入りの作品を1つのフォルダにまとめられるもの。観たい作品を集めたリストや、ドラマ/アニメの作品ごとのリスト、カラオケでジャンルごとにまとめたリストなどを作成できる。プレイリストには任意の名前を付けることができ、最大350フォルダまで作成できる。後から編集/削除も可能。
創業以来初の黒字化。4K/8K配信や法人向け強化などで事業拡大へ
同社の香西卓社長が、'12年度の事業報告と、'13年度の事業方針について説明した。
同社の事業は、家庭のテレビ/BDレコーダなどで利用できるアクトビラ・ビデオのVODサービスだけでなく、この配信プラットフォーム(PF)を活かしてホテルのVODサービスや法人向けに提供したり、CATVなど他の事業者や地方自治体といった新たな市場開発も行なっている。
'12年度は、従来サービスのVODなどに加え、法人向けなど新規事業も好調で、昨年度に引き続き増収増益。売上高/利益ともに過去最高を記録した。売上高は前年比約1.9倍、'10年比では約3.7倍の成長となり、'06年の創業以来初の営業/最終黒字を達成している。
売上のうち、VODなどの既存サービスも前年度比10%以上の伸びを示したが、新規事業やプラットフォーム提供といった新しい分野は前年度比約7倍と大きく成長し、売上全体の半分を占めるまでになった。香西社長が「アクトビラ全体としても、まだまだ伸びしろがある」と自信を表した。
'13年5月時点の、アクトビラの累計接続台数(VOD以外も含む)は500万台、会員登録数は72万、VODコンテンツ数は65,000本以上(うちカラオケは21,000曲)、VOD提供のコンテンツプロバイダ(CP)は69社(前年度比9社増加)、月額見放題商品数は33商品(同15商品増加)。アクトビラ ビデオ・フル対応機種は11社200機種以上で、台数では約4,500万台(アクトビラ全体では約4,900万台)が対応しているという。
'13年度の主な強化ポイントについては、VODなど「サービスの高度化・多様化」と、前述の4,500万台を活用する「新ビジネスモデル提案」を掲げている。
サービスの高度化・多様化の一つとして、4K/8Kといった高画質配信への検討も開始。'13年度内に4K配信の仕様化を進め、'14年以降には実用化や、8K仕様化などにも取り組む。詳細は検討中だが、H.265(HEVC)の採用が見込まれている。そのほか、VODサービスのコンテンツ/ジャンル拡大についても引き続き行なう。
また、“スマートテレビ”への対応に向け、'12年度より、パナソニックのVIERA向けに「アクトビラ オンデマンド for Panasonic」を展開している。これに続き、'13年度はHTML 5への対応を推進。IP側の仕様をテレビメーカーと共にまとめていくほか、VODを含めたアクトビラそのものもHTML 5対応に向けて取り組むという。
放送通信連携については、「放送連携タイプ1」対応プラットフォームの提供により、NHK視聴中にリモコンの黄色ボタンで直接NHKオンデマンドへ移動できるサービスを5月10日より開始。これに加え、「放送連携タイプ2」対応プラットフォームを'12年度に整備し、放送局に採用された。今後は、「Hybridcast」(ハイブリッドキャスト)対応プラットフォームの整備を進めていくという。
香西社長は、「VODだけをスタンドアロンで提供するのではなく、放送とIP VOD、マルチデバイスの連携でより楽しい世界が構築されていく。しかも、それをオープンインターネットで実現していくことが、難しさでもあり、やりがいのあること」と、サービスの高度化に意欲を示した。
マルチデバイス連携については、VOD全体の65,000本のうち、4月より本格的にサービスを開始したスマートフォン/タブレット視聴対応の作品は300本程度で少ないという課題もある。これに関しては、既にNHKとの間で番組利用の話し合いは済ませており、現在は5,000本近いコンテンツを視聴できるようにするための準備に取り掛かっているという。
そのほか、BtoB向けの取り組みとしては、CATV事業者向けの「ケーブルアクトビラ」を強化。現在はVODサービスに加え、オプションのコミュニティチャンネルVODや、ライブ配信といったソリューションを用意しているが、これに加え、課金の連携(毎月のCATV料金支払いにアクトビラVODの利用料金を含める)や、スマートフォン/タブレットのマルチデバイス対応についても実施予定としている。なお、現在ケーブルアクトビラの採用を決定したCATV事業者の数は2桁に達したという。
他の配信事業者らと連携し、アクトビラ対応テレビで各社サービスの動画視聴を可能にする「マイチャンネル」は、現在バンダイチャンネルやDMM.comなどと連携している。今後は、PC/スマートフォンでスムーズに視聴するためのマルチトランスコードソリューションの提供などで、提携サービスの増加を図っていく。
アクトビラのプラットフォームを活用して、地方自治体の情報サービスと連携することについても検討。これは、各市町村などのホームページによる情報提供は、高齢者にとってハードルが高いという問題を考慮したもので、専用機器を追加することなく、家庭のテレビで簡単な操作による情報取得などを目的としている。
まだ運用実績はないが、具体的なイメージとしては、アクトビラのホームに「地域」ボタンを設け、イベントや災害など行政からの情報にアクセスできるようにしたり、民生委員らとのコミュニケーションへの活用、カレンダー型回覧板の共有といった機能を想定している。
香西社長は、'13年度の事業戦略を表すスローガンとして、「S.M.A.R.T. acTVila」という言葉を紹介。SMARTは、Solution(法人向けソリューション)、Multiple business model(多様な新ビジネスモデル)、Advanced technology(技術開発の進化)、Relationship(パートナー/顧客との強固な関係)、Transform(環境変化に適応し続ける)の頭文字をとったもので、これらに基盤となるアクトビラサービスを加えた取り組みの強化により、'13年度は「3年連続増収増益、2年連続黒字化」を目標として掲げた。