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京セラ、厚さ1mmピエゾフィルムスピーカー。LG有機ELで採用
薄型+広指向性を実現。LG OLEDの日本展開は来年?
(2013/8/29 14:18)
京セラとLG Electronics Japanは29日、薄型テレビ用の超薄型ピエゾフィルムスピーカーについての説明会を開催した。京セラが開発したピエゾフィルムスピーカーは、LGが5月から韓国などで発売開始している55型曲面有機ELテレビで、テレビ向けとして初採用されている。今回その概要について説明した。
京セラは、ファインセラミックス技術を駆使して開発したピエゾ素子と、樹脂フィルムを組み合わせた軽量/薄型の音響デバイスとして「ピエゾフィルムスピーカー」を開発。「スマートソニックサウンド」という製品名称で展開する。京セラでは「現在主流の電磁式スピーカーは構造上薄型化に限界があり、機器設計やデザイン上の制約となる。また、有機ELや4K液晶などの高画質化にともない、内蔵スピーカーの高品質化が求められている」と開発背景を説明している。
薄型化と広指向性が特徴のピエゾフィルムスピーカー
ピエゾフィルムスピーカーは、テレビ向けを想定した中型サイズで厚さ1mm、重さ7gという薄型/軽量の音響デバイス。薄型テレビやパソコン、タブレットなどの機器の薄型化や軽量化に貢献するとともに、広い指向性による高音域の広がりが特徴で、臨場感の向上を実現できるという。
京セラ独自のファインセラミックスの材料技術と積層技術を使ったピエゾ素子を新開発。同素子と樹脂フィルムの組み合わせにより、音を出力する。ピエゾ素子は、電気を流すとたわみや振動を発生するというファインセラミックスの特徴を応用したデバイス。自動車部品向けに燃料噴射量の調整などを行なう燃料噴射インジェクタや、インクジェットプリンタのインク吐出駆動デバイス、スマートフォンのスピーカーなどの採用事例があるが、薄型テレビへの導入は世界初という。
今回、スピーカーの実現に向け、ピエゾ素子の材料や形状の設計に工夫を施すことで、たわみや振動を精密にコントロールできるようにしたという。
ピエゾフィルムスピーカーは、中央にピエゾ素子、両面にフィルム、それを支えるフレームというシンプルな構成。ピエゾ素子の振動をフィルム全体が細かく振動することで、音を増幅してスピーカーとして機能する。
面全体が振動するという特性から、従来の電磁式スピーカーと比べて音の指向性が広く、前方180度にほぼ均一に音を届けられる。また、応答速度が早いため、雨音や拍手など細かい音の再生能力に優れ、臨場感あふれる音をだすことが可能で、特に中高域の広がりが音質面での特徴といえる。新開発の積層技術により、従来のピエゾ素子採用スピーカーの課題であった音圧も向上した。
機構はシンプルながら、従来の電磁式スピーカーと同等レベルの音量を出力が可能としながら、大幅な軽量化と薄型化を実現。スピーカーの機器前面への配置を容易にし、機器設計の自由度を高めた。マグネットやコイルなどが不要なため、レアアース材料を使っていないことも特徴。
コスト面では、「テレビ向けでもハイエンドのものと比べれば十分な価格競争力がある」としており、課題としては、「従来の電磁式スピーカーの音の作り方は長い年月をかけて熟成してきたもの。ピエゾフィルムスピーカーはまだ始まったばかりで、その熟成の度合は違う。特に低音域の強化が課題(京セラ 自動車部品事業本部長 触浩氏)」とした。
京セラのピエゾフィルムスピーカーは、大/中/小の3サイズを用意。LGの有機ELテレビに採用しているものは大幅にカスタマイズしたものとなる。
大型 | 中型 | 小型 | |
---|---|---|---|
サイズ | 70×110× 1.5mm | 35×65× 1mm | 19.6×27.5× 0.7mm |
重さ | 23g | 7g | 1g |
再生周波数 帯域 | 200Hz~20kHz | 500Hz~20kHz | 800Hz~20kHz |
用途 | 車載 | テレビ | タブレットなど |
京セラ 取締役常務 自動車部品事業本部長 触浩氏は、テレビ向けだけでなく、タブレットやスマートフォン向けの展開や、車載搭載により、天井をスピーカー化するなどの用途を紹介。指向性の広さがタブレットや車内で生かせるだけでなく、脱レアアースという自動車業界のニーズに応えることができる点も訴求している。
京セラの今後の事業展開については、「来季に100万個の量産を想定しており、5年後の100億円規模の事業にすることを目指している」とした。製造は鹿児島の国分工場。
有機EL TVに“音”で新たな体験を。日本発売は来年?
LG Electronics TV研究所 TV AV研究室長のパク・サンヒ常務は、有機EL(OLED)という薄型化可能な新デバイスとともに新しい映像体験を届けるべく、湾曲したスクリーンの採用を決定。自然な視覚のための画面までの距離差を最小化するほか、臨場感の向上という湾曲画面の特徴を紹介した。
同社では、有機ELテレビを次世代テレビとして訴求するために、湾曲スクリーンという映像面だけでなく、音についても新しい提案を盛り込みたいと考えていたという。その際に、京セラからピエゾフィルムスピーカーの提案を受け、2012年から約1年間の技術検討などを行なった後、2013年1月に採用を決定。LGではこのスピーカーを「Clear Speaker」と命名している。
これにより、テレビの薄型化とともに、指向性が無く、画面全体から音が聞こえるような音響体験が実現できたと紹介。特に、中音域、高音域のクリアで明瞭なサウンドが特徴としている。なお、55型有機ELテレビのスピーカー構成は2.1ch。ピエゾフィルムスピーカーはLGが独自にカスタマイズしたもので、低域は1kHz程度で切っており、主に中高域用のスピーカーとして利用している。中低域については、画面下に設けたウーファから出力している。
今後のLGテレビでの採用については、「プレミアムモデルや薄型を強調するテレビには使いたい。ただし、全てが置き換わるわけでなく、ボリュームゾーンは通常のスピーカーを使うといったように、共存していくと考えている」(LG Electronics Japan Lab 尾上善憲代表取締役)とした。
なお、有機ELテレビの日本での発売については、「いまの製品はフルHD。市場は4Kにシフトしている。はっきりは言えないが、来年満を満たして出した方がいいと思っている」(LG Electronics Japan 尾上代表取締役)と説明。年内の有機ELテレビ発売は無さそうだ。