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KDDI研、ユーザー情報を埋め込んだ動画コンテンツの高速生成技術を開発

 KDDI研究所と三菱電機インフォメーションシステムズ(MDIS)は、コンテンツ購入者ごとに異なる電子透かしを埋め込んだ動画コンテンツを高速に生成する技術を共同で開発した。動画配信サービスで利用することで、配信された動画が違法アップロードされた際に電子透かしによって行為者を容易に特定できるという。

 電子透かし技術は従来より存在していたが、電子透かしとユーザーごとに異なる情報をコンテンツに埋め込むための、エンコード処理に時間がかかっていた(動画コンテンツの実時間程度)。今回の技術は1つのコンテンツに対し、異なる電子透かしを埋め込みながら、高速化を図ったもの。同技術を利用すると、10分の電子透かし入り動画コンテンツをおよそ2秒(ビットレート7Mbps、サイズ約500MB)で生成でき、実用レベルの高速化が達成されているという。

 今回の技術では、1つのコンテンツに対し異なる電子透かしを埋め込み、エンコード処理した動画コンテンツをあらかじめ数種類用意。配信時にユーザ情報に基づいてコンテンツファイルを抽出、再結合し配信する。動画のエンコード処理では前後フレームとの差分を利用するため、単純に任意のフレームで抽出/結合をすると画質劣化を伴うが、新技術ではエンコード処理や抽出/結合を適切に行うことで、この問題を解決したという。

 また、動画全体がなくても一部の動画データからユーザ情報を取り出せるようにするため、フレームに埋め込む情報量や再結合前に抽出する動画データ量などをチューニング。結果として数十秒から数分程度の動画があればユーザ特定できるという。

 映像用電子透かしはMDISで製品化したもので、電子透かし埋め込みによる画素の変化は、人間が通常認識できないほど軽微としている。KDDI研究所では今後、動画コンテンツ配信事業者向けのサービスとして早期商用化を目指すとともに、さらなる高速生成化の実現を目指す。

(臼田勤哉)