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日立マクセル、実売2万円のBA+ダイナミック型カナル

配置の工夫で音を融合。筐体もハイブリッド構造

MXH-DBA900

 日立マクセルは、ダイナミック型ユニットとバランスド・アーマチュア(BA)ユニットを両方搭載した、ハイブリッドタイプのカナル型(耳栓型)イヤフォン「MXH-DBA900」を10月25日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は2万円前後。カラーはブラックのみ。

 8mm径のダイナミック型ユニットと、BAドライバを組み合わせており、BAユニットは音が出るノズルの近くに配置。出力音圧をアップさせると共に、再生帯域の伸びや、解像度の高い高音をダイレクトに耳へ伝えられるという。

 ダイナミック型は、BAユニットの後方に、耳孔に対して斜め横向きに配置。この配置により、直進性の高い高音を抑えて、中低音を耳に届ける。BAとダイナミックで帯域分割するネットワークは入っておらず、アコースティックな構造によって2基の音をマッチングさせている。全体の再生周波数帯域は10Hz~25kHz。インピーダンスは16Ω。音圧感度は100dB/mW。最大入力は200mW。

ユニットの配置。BAはノズル付近、ダイナミックはその背後に斜めに配置されている
カラーはブラックのみ
上から見たところ。独特の形状になっている

 筐体には高剛性アルミニウム合金と樹脂を組み合わせたハイブリッド・ボディハウジングを採用。不要共振を抑えている。

 ケーブルは3mm幅のフラットタイプ。長さは1.2mのY型、巻きつけて長さを調節するキーパーも同梱する。ケーブルは着脱できない。イヤーピースには抗菌作用のある銀イオンを配合。サイズは4種類付属する。ケーブルを含めた重量は約14g。

高剛性アルミニウム合金と樹脂を組み合わせたハイブリッド・ボディハウジング

BAとダイナミックの繋がりの良さに注力

発売記念のプロモーションとして、台数限定でmのロゴが刻印された携帯ケースも限定で用意する予定

 パッケージには「m」のシンボルマークが入っている。これは、低価格なイヤフォンを主に手掛けてきたマクセルが、ハイエンドオーディオカテゴリの創造に向けて作ったもので、マクセルのmであると同時に、ミュージックのm、人=manのmなどの意味を内包。縦の三本線は過去、現在、未来の“人”を表し、左右に突き抜けるラインが“音”をイメージ。「過去から新時代に、“音”でつながるコミュニケーション」を表現している

 昨年11月の、バランスド・アーマチュア+ダイナミックのハイブリッド型「DBA700」(実売1万円前後)、ダイナミックのデュアルドライバ型「DD600」(実売8,000円前後)、そして今年2月に発売された、2層空間(デュアルチャンバー)設計の「MXH-RF500」(実売6,000円前後)に続くモデルと位置付けられている。

「m」ブランドの代表モデル
同じハイブリッドモデルであるDBA700(左)と、DBA900(右)
コンシューマ事業部 商品企画部の小林是人担当部長

 コンシューマ事業部 商品企画部の小林是人担当部長は、DBA900について「高級ヘッドフォンに参入してから約1年が経ち、マクセルとしての回答と言うべきモデル」と表現。開発にあたっては、「BAドライバの持つキレの良い音と、ダイナミック型のパワフル感、そしてそれらの繋がりの良さを重視した」という。

音を聴いてみる

 ハイレゾプレーヤーのAK120と組み合わせて音質をチェックした。

 同社のハイブリッドイヤフォンと言えば、昨年発売された「MXH-DBA700」(実売1万円前後)が存在するが、どちらかと言うとドンシャリ系で、元気の良いサウンドだった。そのDBA700と比べると、DBA900は上位モデルらしいモニターライクな、極めてバランスの良い再生音になっている。

 ノズルのそばに配置されたBAユニットから、高解像度な中高域がダイレクトに届く。そこに、ダイナミック型の厚みのある、ゆったりとした低域が組み合わさり、ワイドレンジなサウンドを構成する。

 ハイブリッド型では、音色的に硬い音を出すBAユニットと、ウォームなダイナミックのマッチングが重要になるが、音の繋がりは自然で、両者が分離したようには聴こえない。「山下達郎/希望という名の光」も、押し出しの強い中低域と、シャープなヴォーカルが共存している。全体としてクリアで明瞭、色づけの少ないサウンドだ。一方、解像度の面ではBAのシャープな描写がダイレクトに耳へ届くため、背後のダイナミック・ユニットからのブワッと押し寄せる中低域との描写の違いも感じる。

 ハウジングは独特の形状だが、耳に装着すると耳穴手前の空間にスポッとはまり、装着感は良好。ホールド性も高い。落ち着いたデザインで、派手さや奇抜さは無いが、実力派のハイブリッドだ。

(山崎健太郎)