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2025年は「お手頃ミニLED」&「当たりの有機EL」に注目!最新テレビのトレンドまとめた

シャープの4KミニLED液晶テレビ「HP1」

テレビメーカー各社から、2025年モデルの「4Kテレビ」が出揃った。後半に“RGBミニLEDテレビ”を残しているメーカーもあるが、8月現在までに、国内外の7ブランドから、全35シリーズ・106機種(店舗・販路限定モデル除く)もの4Kテレビが発表され、家電量販店やECサイトなどで順次販売が始まっている。

2025年のテレビは、どこがどう変わったのか? 昨年のレポートに続き、テレビの最新トレンドと各社の違いをまとめてみた。

1.ついに液晶の7割がミニLEDに。デカくても手頃な価格が魅力

ソニーの4KミニLED液晶テレビ「XR50(BRAVIA 5)」

近年の液晶テレビのトレンドになっているのが“ミニLEDテレビ”だ。ミニLEDテレビとは、ゴマ粒並みに小さい発光体・ミニLEDチップをバックライトに使った液晶テレビのこと。

1台につき数千~数万個のLEDチップを並べ、それらをエリア毎に、そして光の強さを細かくコントロールすることで、液晶テレビのコントラスト改善と高輝度化を実現。主に高級モデルを中心にミニLEDの採用が進み、今日では液晶テレビの画質を支える重要な技術になっている。

従来LED(写真左、拡散レンズの中央にあるのがLED)チップと、ミニLEDチップのサイズ比較
背面に敷き詰められた青色ミニLED
ローカルディミングの動作デモ

そんなミニLED技術が、2025年は“下”に急拡大した。

まずTVS REGZAがミドル「Z770R」に、続いてソニーもミドル「XR50(BRAVIA 5)」に広色域白色ミニLEDを搭載。そしてTCLはエントリー「C6K」に、ハイセンスもエントリー「U7R」に青色ミニLED+量子ドットを搭載した。結果、液晶テレビの2025年モデル・全72機種のうち、7割超の51機種がミニLED化した('24年の比率は4割超)。

レグザの4KミニLED液晶テレビ「Z770R」
TCLの4KミニLED液晶テレビ「C6K」
ハイセンスの4KミニLED液晶テレビ「U7R」

サイズに関しては、やはり55型以上の大型がメインではあるものの、昨年のシャープに続き、今年はハイセンスがブランド初の50型ミニLED(U8R)、レグザが初の50型・43型ミニLED(Z870R、全録機能付き)を投入。徐々に中型にもミニLEDが広がり始めている。

パナソニックの4KミニLED液晶テレビ「W95B」
レグザの4KミニLED液晶テレビ「Z870R」

価格も大幅にお手頃化。国内メーカーがミニLEDを投入し始めた3年前は、65型で定価50万円オーバーだったものが、今年は65型で定価20万円を切る低価格モデルも登場。フラッグシップやハイグレードモデルについても、'24年モデルより値下がりしているブランドも出てきている(パナソニックやシャープ、TVS REGZAなど)。

モデル数の大幅な増加と低価格化により、一段とミニLEDテレビの人気が高まりそうだ。

2025年発表・発売の4KミニLED液晶テレビ

ブランドシリーズ名価格備考
レグザZ970R65型
49.5万円~
量子ドット
レグザZ875R55型
30.5万円~
量子ドット
レグザZ870R43型
23.1万円~
広色域白色ミニLED
レグザZ770R55型
25.3万円~
広色域白色ミニLED
TCLX11K98型
200万円
量子ドット
TCLC8K65型
36万円~
量子ドット
TCLC7K55型
20万円~
量子ドット
TCLC6K55型
14万円~
量子ドット
ハイセンスU9R65型
33.8万円
量子ドット
ハイセンスU8R50型
16.8万円
量子ドット
ハイセンスU7R55型
15.8万円
量子ドット
ソニーXR50
(BRAVIA 5)
55型
25.3万円
広色域白色ミニLED
パナソニックW95B55型
24万円
広色域白色ミニLED
シャープHP155型
35.2万円
量子ドット
シャープHP243型
24.2万円
量子ドット

2.もう「安いだけ」じゃない。中国メーカーが市場席巻

ハイセンスの4KミニLEDテレビ「U8R」

ミニLEDテレビの市場拡大に拍車をかけているのが、中国の家電大手「ハイセンス」と「TCL」の存在だ。ハイセンスは2010年、TCLは2019年に国内のテレビ市場に参入した“後発組”だが、近年急速にシェアを伸ばしている。

調査会社BCNが今年1月にまとめた2024年の国内テレビシェアランキングによれば、1位のTVS REGZA(25.4%)、2位のシャープに次いで、3位に入ったのはハイセンス(15.7%)。そして4位にランクインしたのはTCL(9.7%)だった。この結果を受け、日経が「中国系テレビ、初の日本国内シェア5割超」と報道するなどして話題になった。

海外では、すでにハイセンスとTCLがトップ3の常連で、19年間連続で世界シェア1位の座を保持しているサムスンを脅かすほどの存在になっている。

シェア拡大の、最大の要因は何といっても価格だろう。両社ともに“年間およそ3,000万台製造・出荷”という圧倒的なスケールメリットを活かし、中型から大型まで、他社のテレビよりも数万~数十万円も低い売価を実現。シリーズによっては、チューナーレステレビよりも安く、大画面が購入できる“価格破壊”をもたらしている。

このように書くと「中国メーカーのテレビは安さだけでしょ?」と思われる方もいるかもしれない。

ココだけの話、ブランドが上陸した初期の製品は、決して褒められる画質ではなかった。画に精細感・立体感はなく、派手な色でベタ塗り。メニューを開けば奇怪な日本語が表示されるなど、個人的には「あちゃー!」と言わざるを得ないかなり厳しい仕上がりだった。

しかし、最近は状況が大きく変わってきている。ハイセンスは、東芝レグザを傘下に収めて後、画作りやローカライズ化が急速に進歩。すでに最上位モデルは国内ブランドに肉薄する画質になっている。

ハイセンスの4KミニLED液晶テレビ「U9R」

TCLも世界2位の液晶パネルメーカーTCL CSOTから最先端のパネルをいち早く調達・採用することで性能の底上げを実現。そもそも、2019年に量子ドット搭載ミニLEDテレビを日本で初めて展開したのはTCLだ。テスト信号比較において、国内ブランドのテレビよりも勝る例も出てきている。

ローカライズ化は道半ばではあるものの、技術者らの“追いつけ追い越せ”というマインドはひと際高く、他社の売れ筋モデルを比較・研究に余念がない印象だ。

TCLの4KミニLED液晶テレビ「X11K」

国内ブランドのテレビには、高画質化や録画機能など、日本品質を支えてきたテレビ職人の技が勝る部分も残っている。ただ油断していると、シェアだけでなく、技術力、そして画作りといった最後の砦まで奪われてしまうかもしれない。

TCLがC8Kシリーズで初めて採用した「Virtually ZeroBorderパネル」。パネルの隅の、非表示部分がないことが分かる
一般的な液晶テレビのベゼル部分がこちら。外枠のフレームに加え、パネルの隅にも黒枠(映像が表示されていない部分)が数ミリある

3.ミニLEDの次は「RGBミニLED」。スゴイが富豪以外待つ必要なし

来年……いや、早ければ今年後半には、ミニLEDテレビの次の「RGBミニLEDテレビ」が登場することになりそうだ。

RGBミニLEDテレビとは、従来の白色ミニLEDや青色ミニLEDチップではなく、「光の三原色」である赤・緑・青の3色のミニLEDチップを並べて、それぞれ個別にコントロールさせて映像を表示する液晶テレビを指す。

RGBミニLEDは、赤・緑・青の3色のミニLEDチップを使用する

赤色、緑色、青色のミニLEDチップを使うことで、白色ミニLEDに比べて濁りがなく、純度の高いカラーを再現。しかも各色個別制御で濃淡の組み合わせが格段に増え、より繊細な色の違いが可能になる。フィルターなどの光・変換ロスも減り、発光効率にも寄与。つまり従来よりも、色鮮やかで色とりどり、そして明るいという“新世代の液晶テレビ”が可能になると期待されている。

このRGBミニLEDテレビをいち早くカタチにしたのが、前述の中国大手ハイセンスだ。

今年1月に米国で開催された展示会「CES2025」でRGBミニLEDテレビを初披露し、春には中国エリアで“Devialet”とコラボしたフラッグシップ「UX」シリーズ(116型、100型、85型)を投入。北米でも、中国仕様とは異なるRGBミニLEDテレビ(116型)の販売を開始した。

世界初のRGBミニLEDテレビ「116UX」(中国モデル)

同グループのTVS REGZAは今年6月、116型RGBミニLEDレグザを'25年度中に発売すると発表。“国内一番乗り”を目指し、急ピッチで開発を続けていると聞いている。

116型RGBミニLEDレグザ

TVS REGZAを焚き付けた(?)のが、今年3月にソニーがアナウンスした「次世代ディスプレイシステム」の開発発表。この次世代ディスプレイシステムにもRGBミニLED技術が使われており、'25年中の量産、そして家庭用テレビおよびコンテンツ制作用ディスプレイへの搭載を目指している(海外メディアは、ソニーのRGBミニLEDテレビは26年発売と報道している)。

実は先日、ソニーのプロトタイプを視聴する機会を得た(記事は後日掲載)。定評あるソニーのLEDバックライト制御技術と、業務用モニター等で培われた忠実な画作りが融合した圧巻の描写性能には目を見張った。同社が液晶メインに舵を切ったワケは、RGBミニLEDに将来性を見いだしたからなのだろう。

ミニLED
RGBミニLEDを搭載した次世代ディスプレイシステム

とはいえ、各社のRGBミニLED技術が“下”に降りてくるまでには数年はかかるはず。またサイズについても、当初は80型を超える超大型での採用がメインになる見込みだ。

つまり、設置スペースも予算も潤沢な方以外は、ミニLEDの次があるからといって買い控えをする必要はない。待つくらいなら、今のミニLEDテレビ、そして次に紹介する“当たり”の有機ELテレビを導入して、綺麗な画面で動画やゲームを楽しんだ方がいい。

先日、韓国Samsungが韓国・米国での発売を発表したRGB LEDバックライト搭載の115型液晶ディスプレイ「Micro RGB TV」(約480万円)。3色のミニLEDではなく、100マイクロメートル未満の、ミニLEDよりもっと小さい3色のマイクロLEDを使用しているという
RGBミニLEDテレビの開発状況
  • レグザ:2025年度中の商品化をめざし開発中
  • TCL:グループ傘下のパネルメーカー「TCL CSOT」がDisplay Week 2025(5月開催)で98型を展示
  • ハイセンス:中国や北米でRGBミニLEDテレビを販売中
  • ソニー:2025年中に量産を開始し、家庭用テレビやコンテンツ制作用ディスプレイへの搭載拡大をめざす
  • サムスン:マイクロメートルサイズのRGB LEDチップを搭載した115型「Micro RGB TV」を商品化。韓国、米国で発売へ

4.今年は有機EL「当たり年」。パネル構造大進化でメチャ明るい!

パナソニックの4K有機ELテレビ「Z95B」

液晶テレビのミニLED技術拡大と価格攻勢もあって、やや押され気味の有機ELテレビ。しかし今年は、有機ELテレビの当たり年だと筆者は思っている。その理由は、パネルの大進化だ。

特に注目なのが、TVS REGZA「X9900R」シリーズ、パナソニック「Z95B」シリーズ、そしてLG「G5」シリーズに搭載されているLGディスプレイ製の2025年パネル「プライマリーRGBタンデム」である。

少し細かい話になるが、LGディスプレイの有機ELパネル(WOLED)は長い間、青色と黄色の発光層を重ねることで“白色”を作り出してきた。もちろん、発光材料やコーティングの改良、多層化など毎年様々な技術を導入してきたが、青色と黄色から白色を作る、という根本的な構造は第一世代から変わってこなかった。

従来(第3世代)の有機ELパネル

新しいプライマリーRGBタンデムは、この構造を刷新。黄色という混色の発光層を廃し、光の三原色である赤・緑・青色から白を作る構造に大改造した。さらに、従来は青色層にしか使っていなかった希少な重水素化合物を、4層(赤、緑、青×2)すべてに投入。

結果、大幅な高輝度化と長寿命化を実現。赤・緑・青の3色が分離したことで、色域も大幅に改善。WOLEDの色域はライバルであるサムスンディスプレイ製OLEDパネル(QD-OLED)に比べて狭いと言われ続けてきたが、新パネルでは彩度の高い色もハッキリ描写できるようになった。

4層構造になった最新の有機ELパネル

特筆すべきは、ごく一部の光の強さを表す“ピーク輝度”ではなく、画面全体の光の強さを表す“全画面輝度”が倍近く出せるようになったこと。全画面輝度が1年で倍近くまで伸びたのは、有機ELパネルのこれまでの進化で初の出来事だ。

TVS REGZAやパナソニック、そしてLGは、この新パネルの性能を引き出すための制御・放熱技術を磨き、歴代最高性能の有機ELテレビを完成させた。

パナソニックの4K有機ELテレビ「Z95B」(写真右)では、パネルを効率的に冷却して高輝度化するサーマルフロー機構を搭載した
レグザの4K有機ELテレビ「X9900R」

ちなみに、シャープ「HS1」シリーズには、国内の有機ELテレビで唯一、サムスンディスプレイ製の最新QD-OLEDパネルが使われている。

最新のQD-OLEDパネルも発光層が増え(4層から5層になったと言われる)、全画面輝度がアップ。実際、シャープの発表会ではHS1と旧モデルの比較展示があり、輝度がさらに向上したことをアピールしていた。

テレビの毎年の進化(とくに輝度)を見ていると、買い替えのタイミングが非常に悩ましいところだが、今年の有機ELモデルは個人的にかなり推しだ。

シャープのQD-OLED搭載「HS1」
発表会で展示されていた旧モデル(写真左)とHS1の映像比較

現在発売中の4K有機ELテレビ

ブランドシリーズ名価格備考
レグザX9900R55型
48.4万円~
RGBタンデム
レグザX8900R48型
28.6万円~
WOLED
ソニーA95L55型
60.5万円~
QD-OLED、24年モデル
ソニーXR8055型
41.8万円~
WOLED、24年モデル
パナソニックLW255型
32万円~
WOLED、壁掛け、無線
パナソニックZ95B55型
38万円~
RGBタンデム
パナソニックZ90B42型
26万円~
WOLED
シャープHS155型
44万円~
QD-OLED
シャープHQ155型
35.2万円~
WOLED
シャープHQ242型
24.2万円~
WOLED
LGT477型
1,100万円
透過型
LGM597型
451万円
WOLED、壁掛け、無線
LGG555型
45.1万円~
RGBタンデム、77型と83型有
LGC542型
29.7万円~
WOLED

5.透明、壁掛け、移動ラクラク……QOLアゲるシン・テレビ

テレビ購入検討者に重視ポイントを尋ねると、「価格」「サイズ」「画質」が上位に入ってくるが、中には「使い勝手」や「デザイン」、「設置性」を重視する方もいるだろう。今年はLGとパナソニックから、デカい・キレイだけではないテレビが登場した。

まずLGが今年7月に発表したのが、世界初の“透過型”4K有機ELテレビ「LG SIGNATURE OLED T」だ。

LG SIGNATURE OLED T

通常のテレビは電源オフ時“黒い板”になってしまうため「部屋のインテリアを邪魔する」「圧迫感がある」と、存在を好ましく思わない方も多い。そこで、新しいOLED Tは、透明度の高い透けるパネルを採用。電源オフ時もインテリアに溶け込み、自然光や景色も遮らないテレビにデザインした。

透過を活かしたオリジナルコンテンツも用意。魚たちが泳ぐ姿が楽しめるアクアリウムを表示させれば、まるで魚が宙を浮いているような幻想的な空間が楽しめる。

同じくLGが展開するOLED Mシリーズは“壁掛け”が標準仕様のテレビ。壁への取り付けは専用工事が必要だが、アンテナ線やHDMIケーブルなどの接続は別体ボックスに集約して、画面へ無線伝送するため見た目をスッキリにできる。

OLED Mシリーズ

大がかりな壁工事をすることなく、一般的な石膏ボードにピンで壁掛けできるのが、パナソニックのウォールフィットテレビ「LW2」シリーズ。

壁から画面までの飛び出しがわずか3.5cmで、取り付ける専門業者や別売の金具を購入することなく、自分で壁に取り付けできるのが特徴。新しいLW2では、65型を初めて投入。無線で信号を送る別体ボックスには、HDMI入力端子が搭載されて、ゲームやBD/DVD映像も楽しめるようになった。

パナソニックのウォールフィットテレビ「LW2」シリーズ

パナソニックからは、好きな場所に置ける・動かせるレイアウトフリーテレビ「LF2」シリーズも発売された。テレビの置き場所を“固定させない”ため、家具のレイアウトの自由度が広がる、掃除がしやすい、テレビ台を置く必要がない、好きな場所に移動させて楽しめる、などのメリットがある。

レイアウトフリーテレビ「LF2」シリーズ(ホワイト)
マットダークグレー

サイズは43型。ホワイトと、グレー系インテリアに合わせやすいマットダークグレーも用意する。前述のLW2同様に、別体ボックスから信号を無線で飛ばすため、テレビ側は電源ケーブルだけでいい。パナソニックによれば、30~40代の若い世代を中心に人気を集めているという。

デカい・キレイだけではなく、今後は「どのようにQOLをあげるか?」もテレビの差別化ポイントになるかもしれない。

6.生成AIがテレビにも。自然な対話でコンテンツ選びが楽に

テレビ製品に“AI”という言葉が使われ始めたのは、LGが「ThinQ」を発表した2018年頃だと記憶している。テレビにおけるAI技術は当初、コンテンツに応じてモードを切り替えたり、色やコントラストを個別にコントロールするなどの簡易的な使われ方だった。

最近は、数万~数百万ものシーンをAI学習させることで、超解像やノイズリダクションなどの複雑な処理を横断的に行なってシーンや視聴環境に応じて最適な映像に変えたり、ユーザー好みの画・音に変えたり、迫力ある音声やセリフが聞き取りやすい音声に変えたりと、より進化した使われ方になっている。

そんな中、映像や音声を自動調整する以外のAIの使われ方が出始めた。

代表的なものが、TVS REGZAが2025年レグザ全機種に搭載した「レグザAIボイスナビゲーター」(今夏のアップデートで実装予定)。これは、レグザとユーザーがコミュニケーションしながら、レグザがユーザーの嗜好に合わせたコンテンツを提案するという、生成AI技術を活用した機能だ。

番組のタイトルや推しのタレントの名前をリモコンに話しかけるだけでもよいのだが、レグザのこの機能は「30分くらいで楽しめるものない?」「話題のやつお願い」「それ」など、自然な対話で、しかも非常にあいまいなリクエストに対しても反応できるところがポイント。また放送中の番組だけでなく、タイムシフトマシンで録画した番組や今後放送予定の番組、番組の中の1シーン、YouTubeなど、コンテンツを横断的に提案してくれる点も魅力だ。

レグザAIボイスナビゲーターは、レグザインテリジェンスを代表する機能
レグザAIボイスナビゲーターでの対話イメージ

LGの2025年モデルは、生成AIとの連携機能が搭載された。リモコンのAIボタン(旧マイクボタン)を押して、少し複雑な質問、例えば「3泊4日の京都旅行に行きたい」と話しかけると、マイクロソフトの生成AI・Copilotの画面に遷移し、3泊4日の旅行プランがテレビ画面に表示されるようになっている。

また、ユーザーの音で個人を識別する「音声ID」機能を新搭載。リモコンに「なにかおもしろいもの見せて」と話しかけると、テレビが“声の主”を識別して、パーソナライズ化されたメニュー画面(嗜好に基づいたおすすめコンテンツの表示など)、画質・音質に切り替えてくれる。音声登録は10人まで可能で、登録済みの音声IDは別の部屋のLGテレビに適用することも可能だ。

LGテレビにおけるCopilot連携。「3泊4日の京都旅行に行きたい」と話しかけると……
……3泊4日の旅行プランがテレビ画面に表示された

なお、生成AI「Gemini」を提供するGoogleは、2025年後半にもGoogle TVにGeminiを統合すると発表している。近い将来、Google TVを採用するソニーやシャープ、TCLのテレビにも生成AI技術を活用した新機能が搭載されることになるだろう。

7.10年前のTVにあって、最近のTVになかった「2画面」復活

テレビ画面に2つの映像を表示できる「2画面」機能。テレビの基本ソフトが変わったことで一時無くなっていたが、近年各社で復活が相次いでいる。

今年、2画面機能を復活させたのがハイセンスとレグザ。ハイセンスは「放送×放送」「放送×AirPlay(Appleデバイスのミラーリング)」を実現。レグザはさらに出来ることが多く、放送とAirPlayのほか、HDMI入力やYouTube、スクリーンミラーリング(Androidデバイスのミラーリング)と組み合わせることが可能だ。

レグザの2画面表示機能。4年ぶりに復活した

昨年、2画面と画面サイズ切り替え機能を組み合わせた「ズーム2画面」を搭載したシャープは、2025年モデルで機能を強化。「放送×放送」「放送×HDMI」に加え、新たに「録画番組」とサブ画面側(音が出ていない画面)の字幕表示に対応した。

シャープは'25年モデルから、録画番組(左)と放送の2画面に対応。サブ画面に字幕も表示できるようになった

2画面で最も多くの組み合わせに対応しているのが、LGのテレビ。放送、HDMI入力、YouTube、AirPlay、スクリーンミラーリングのほか、Webブラウザ、USBカメラ、Spotifyをサポートしており、これらをサイドバイサイド、ピクチャーインピクチャーで表示できる。デュアルPCモニター機能を使えば、「HDMI(PC)+HDMI(PC)」も可能だ。

これまで2画面は“放送”がメインだったが、今後の2画面は“放送以外”のコンテンツも表示するのが当たり前になりそうだ。

2画面に対応したブランドと主な組み合わせ例※2025年モデルの場合
  • レグザ:放送/HDMI×放送、放送/HDMI×YouTube、放送/HDMI×ミラーリング
  • ハイセンス:放送×放送/AirPlay
  • パナソニック:放送×放送/HDMI
  • シャープ:放送×放送/HDMI、録画番組×放送/HDMI
  • LG:放送/HDMI×YouTube/Webブラウザ/USBカメラ/ミラーリング
      放送/HDMI×Spotify
      YouTube×Webブラウザ/USBカメラ/ミラーリング
      HDMI(PC)×HDMI(PC)

8.動画配信サービスダイレクトボタン事情2025

NetflixやPrime Videoなどの動画配信サービスを、テレビリモコンに設置された専用ボタン1つで起ち上げることができるダイレクトボタン。

業界最多のダイレクトボタン数を持つ、ハイセンステレビのリモコン

昨年レグザとハイセンスのテレビリモコンが、放送チャンネルのボタンと同じ“12個”になったが、2025年はどうなったのか? AV Watch恒例の(?)、各社2025年モデルのテレビリモコンに搭載されているダイレクトボタンを調べてみた。

結果を先に言うと、全7ブランドで変化は見られず、ダイレクトボタンは2024年ままだった。

シェアを伸ばすU-NEXTなどの一部サービスを除き、定額制動画配信サービスの市場は成長がやや鈍化気味とも言われる。料金改定を行なうサービスも多く、出費を抑えて利用頻度の高いサービスのみに絞って契約する人がほとんどだろう。

今後は新しい定額制動画配信サービスのボタンが増えるというよりも、FASTなどのような無料のライブ配信サービスのダイレクトボタンが徐々に増えてくるのかもしれない。

直近2年間に料金改定を行なった動画配信サービス ※記載は月額払いの料金

サービス改定時期旧価格新価格
ABEMAプレミアム2024年11月26日960円1,080円
DAZN2023年2月14日3,000円3,700円
2024年2月14日3,700円4,200円
Disney+2023年11月1日990円990円(HD)
1,320円(4K)
2025年4月1日990円(HD)
1,320円(4K)
1,140円(HD)
1,520円(4K)
dアニメストア2023年3月440円550円
FOD2025年10月1日976円(広告無)976円(広告有)
1,320円(広告無)
Prime Video2023年8月24日500円600円
2025年4月8日600円(広告無)600円(広告有)
990円(広告無
/DolbyVision/Atmos)
Netflix2024年10月10日790円(広告有)
1,490円(HD)
1,980円(4K)
890円(広告有)
1,590円(HD)
2,290円(4K)
TELASA2025年3月1日618円990円
YouTubeプレミアム2023年8月7日1,180円1,280円

9.帰ってきたグリーンマーク。今年の「省エネで賞」はレグザとシャープ!?

シャープの4KミニLED液晶「HP1」

“目標基準を達成すべき年”と省エネ法で定められている2026年度が近づき、以前よりも厳しい基準をクリアした“シン・省エネテレビ”が徐々に増え始めた。

「一体何のこっちゃ?」という方に説明すると、経済産業省 資源エネルギー庁では、生産量等が一定以上ある製造事業者に対して「この家電製品は、これくらいの消費効率にしなさい」といった目標を設定していて、さらにある期間までに目標を達成するよう省エネ法で定めている。

テレビの省エネ目標値はブラウン管時代から設定されていて、これまでも不定期で見直しが行なわれてきたのだが、いまから4年前の2021年5月、テレビの基準(トップランナー基準:設定時点において最も省エネ性能に優れる製品をさらに上回るように決められた基準)が久しぶりに変更された。

これまで2009年のNo.1省エネテレビをベースに作った基準値だったものが、2021年のNo.1省エネテレビをベースにした基準値へと改定。さらに年間消費電力量の測定条件や算出方法が厳格化。その結果、ほとんどのテレビが達成率100%を下回り、しかも2026年度までに目標値を達成しなければならなくなった(出荷製品のエネルギー消費効率の“加重平均”が目標基準値をクリアすればOK。全製品がクリアしなければいけないわけではない)。

2025年の4Kテレビで“グリーンマーク”(達成率100%以上)を獲得したのは、26シリーズ・53機種。新製品のちょうど半分が“省エネ”認定された。

省エネモデルの数が最も多ったのが、TVS REGZA。液晶のZ970R(85型)、Z875R(85型、75型)、有機ELのX9900R(65型)、X8900R(77型)など、13機種で達成率100%以上をクリアする。

実はレグザ、昨年12月にZ870Nシリーズで「省エネ大賞」を獲得するなど、早くから省エネ性能の向上に取り組んでいるブランド(テレビが省エネ大賞を受賞するのは2015年度以来、8年ぶりの快挙)。今年のフラッグシップ液晶の85型「85Z970R」でも年間目安の電気代は5,370円、1日15円にも満たない低消費電力を実現した。

レグザ「85Z970R」の統一省エネラベル

省エネ性能で今年レグザと善戦したのがシャープだ。42型有機ELを除く12機種で達成率100%以上をクリア。中でも65型有機EL「4T-C65HQ2」は、2025年テレビの中で省エネ基準達成率最高値の156%をマークしている。

シャープ「4T-C65HQ2」の統一省エネラベル

なお、テレビや白物家電(エアコンや冷蔵庫など)の省エネ性能情報を得るには、資源エネルギー庁が公開している「省エネ型製品情報サイト」がおすすめ。省エネ基準達成率や年間の消費電力量、年間の目安電気代などを知ることができる。

資源エネルギー庁が公開している「省エネ型製品情報サイト」
URL:https://seihinjyoho.go.jp/index.html

10.'25年のミニLEDテレビ、有機ELテレビ価格動向

最後に、2025年発表・発売の4Kテレビの中から、4KミニLED液晶テレビ(51機種)と、4K有機ELテレビ(34機種)の価格を調べてみた。

4KミニLED液晶テレビ
最上段の数字は「インチサイズ」、マス目の中の数字は市場想定価格(万円)

ブランド名称10098857565555043
レグザZ970R886649.5
レグザZ875R6650.638.530.8
レグザZ870R24.223.1
レグザZ770R39.630.825.3
TCLX11K200
TCLC8K120604436
TCLC7K8044342720
TCLC6K6035221814
ハイセンスU9R64.844.833.8
ハイセンスU8R89.844.829.823.819.816.8
ハイセンスU7R25.818.815.8
ソニーXR5011042.93325.3
パナW95B383024
シャープHP157.24435.2
シャープHP225.324.2

4K有機ELテレビ
最上段の数字は「インチサイズ」、マス目の中の数字は市場想定価格(万円)

ブランド名称97837765554842
レグザX9900R63.848.4
レグザX8900R80.346.235.228.6
パナLW24832
パナZ95B5338
パナZ90B41292726
シャープHS160.544
シャープHQ14435.2
シャープHQ238.528.625.324.2
LGT41,100
LGM5451
LGG51218861.645.1
LGC59974.849.536.330.829.7

昨年の繰り返しにはなってしまうが……

・国内ブランドは割高、海外ブランドは割安
・(生産枚数の多い)55型、65型がコストパフォーマンスがよい
・(生産枚数の少ない)有機ELの42型、48型はあまり価格が変わらない
・同じ金額を払うなら、有機ELよりも液晶を選んだ方がより大きなサイズが買える

……という、例年の傾向に大きな変化はない。

ただ、海外ブランドの液晶テレビ価格が年々下がっており、売れ筋サイズの55型・65型を有機ELテレビと比較すると、既に倍近い価格差に拡がりつつある。

次に、最上位クラスの65型に絞って、液晶テレビと有機ELテレビの価格推移(市場予想価格)を調べてみた。

4K液晶テレビの価格推移
※対象としたのは以下の65型
ソニー:X9500E、Z9F、X9500G、X9500H、X95J、X95K、X95L、XR90
パナソニック:EX850、FX800、GX850、HX900、JX950、LX950、MX950、W95A、W95B
レグザ:Z810、Z720、Z730X、Z740X、Z740XS、Z875L、Z970M、Z970N、Z970R
シャープ:DN1、DP1、EP1、GP1、HP1
ハイセンス:U9H、UX、U9N、U9R
TCL:C835、C845、C855、C8K
4K有機ELテレビの価格推移
※対象としたのは以下の65型
ソニー:A1、A9F、A9G、A90J、A95K、A95L
パナソニック:EZ1000、FZ1000、GZ2000、HZ2000、JZ2000、LZ2000、MZ2500、Z95A、Z95B
レグザ:X910、X920、X930、X9400、X9400S、X9900L、X9900M、X9900N、X9900R
シャープ:CQ1、DS1、ES1、FS1、GS1、HS1
LG:EP7、G8P、E9P、GX、G1、G2、G3、G4、G5

液晶テレビはシャープとパナソニックが価格を下げた一方、ハイセンスとTCLのモデルは値上げ。有機ELテレビは全社ともほぼ価格は横ばいだった。

以上、各社の4Kテレビを中心に、最新のトレンドと違いをまとめてみた。購入時の参考になれば幸いだ。

阿部邦弘