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Life space UX、core、4K。平井CEOがCESで見せた「ソニーの今」

ソニーの平井一夫社長兼CEO

 米国ラスベガスで開幕したコンシューマエレクトロニクス展示会「2014 International CES」において、ソニーの平井一夫社長兼CEOを囲んでの記者向けラウンドテーブルが1月7日(現地時間)に行なわれた。

“ローボードプロジェクタ”は平井氏直下の事業部で誕生

基調講演で明らかにした短焦点プロジェクタの「Life space UX」

 平井氏は同日の朝に行なった基調講演を振り返り「“ソニーは何をする会社なのか”を考えた時、いつも“皆さんの好奇心を刺激する会社なんだ”と答えているが、それについて自分の思う所をみなさんとシェアできた」と述べた。

 基調講演の最後を締めくくり、話題となった147型/4K投写の“ローボードプロジェクタ”「Life space UX」が生まれた経緯も説明。「社内の技術交換会にいつも行って、いろんなものを見ているが、以前は“技術展示だけ”に陥って、商品につなげていく議論があまり無いという傾向が強かった。そういったオープンエンドのR&Dも大事だが、やはりソニーとして“商品としてどのように出ていくか”ということが大事だと思っている。短焦点の4Kプロジェクタも、技術展示を見て『これはおもしろい。いつ商品化するのか?、商品化するのに何が問題なのか?』の2つを聞いて、課題もあったが、「単純に大きいスクリーンで映画を観たり、コンテンツを観るという以上に、もっと面白い展開があると感じた。そこで、私の直下で新しい事業部を作って商品化を進めた」という。

 講演のなかで、過去に消えていった「Rolly」や「mylo」といったソニーの数々の商品を紹介したシーンでは会場から笑いが起こったが「今日、いろんな過去の商品を敢えて出したのは、裏を返せば、それがあってからこそ成功する商品があったということ。何でも安全な商品を出していればいい、というのはソニーじゃない。失敗もあるけど、その中で成功を生み出していく“リスクをとる文化”を、もう一回、ソニーの中に根付かせないと、安全な商品だけで、イノベーティブなものは出てこない。その一番大きな例が、今回の短焦点プロジェクタ。もう少し前では、RX1(DSC-RX1)。RX1が成功したからEマウントでα7/α7Rも展開した。リスクを取ることが評価されるという文化を作り始めたことで、レンズスタイルカメラのような製品も作り出すことができた。まだ道半ばだが、それが良しとされる文化をこれからも作っていかないと、安全な商品では、私自身が面白くない」と笑顔を見せた。

 また、その基調講演でソニー・コンピュータエンタテインメント 社長兼グループCEOのアンドリュー・ハウス氏が説明した新サービス「PlayStation Now」については、「アンディ・ハウスは、SCEの社長をやっているが、SEN(Sony Entertainment Network)の担当役員でもある。基調講演でのテレビでの話(PS4でプレイしているゲームの続きを、別室のBRAVIAから楽しめること)は、SCEではなく、SENの立場でお答えさせていただいた。今のMusic Unlimited、Video Unlimitedの“次のステップ”」と説明した。

 「今までは、PlayStationといえば、専用のコンソールで楽しんでいただくものがメインだったが、それをクラウドに持っていくことで、BRAVIAだとかスマホ、iPadなど、OSに限られることなく、PlayStationの世界をもっとオープンに楽しんでいただくという意味では、もっとインボルブ(他を巻き込んで連携)していく」と述べた。

これまでのソニー製品の数々。長くは続かなかったものの、印象に残った製品も多い
アンドリュー・ハウス氏が「PlayStation Now」を発表

ウェアラブル端末「core」の可能性

coreを持つ平井氏

 前々日の会見で大きなトピックの一つとして紹介した“ウェアラブル”については、IFA 2013のラウンドテーブル時に、平井氏は大きな可能性を評価しつつも、慎重な姿勢を見せていた。それは、腕時計やメガネを一人がいくつも着けることはほとんど無く、もし気に入った時計があれば、それを外してまでスマートウォッチを着けるようにならないのでは? という疑問からくるもの。「人間の体という“不動産”はとてもバリューが高いので、そこにブレスレットを一つしていただくのはハードルが高い」としていた。

 こうした中で、今回のCESでソニーは「core」というライフログツールを発表。リストバンド型で身に着けるというスタイルの前例は多いが、coreそのものは小さな端末のため、装着方法は今後いろいろ考えられることが大きな特徴だ。

 「まずはアプリが楽しくなければいけない。もう一つは、どうやってこれを身に着けてもらうか。着けているのを見せたい人にはカラーバリエーションを多く作る。人に見せたくないならハンドバッグに入れて持ち歩いたり、アンクル(足首)バンドを作るなど、いろんなことができる」と述べ、今後の可能性に大きな期待を示した。

手首に巻くのは、あくまで装着方法の一つ(写真はソニーモバイルコミュニケーションズの鈴木国正社長)
アプリで、睡眠、運動時間などを測れるほか、音楽再生などエンタメ関連のログもとれる

有機EL、Crystal LEDの現在。4Kのこれから

 '13年末から一部で報道された、ソニーイーエムシーエスの人員削減に関しては、「製造事業所については、どこかの製造事業所をクローズすることではない。デバイスや半導体はビジネスとして伸びているので、そこは増強していく。逆に、セットのところは必要に応じて縮小せざるを得ないところはしていく“リバランス”。これはある程度構造改革費用として見込んでいた」という。また、各事業の現在については「デジタルイメージングや、プレイステーションは好調。10月の見通しより若干下回っているが、SOMC(ソニーモバイルコミュニケーションズ)のビジネスは堅調。アップアンドダウン、両方あるという認識」とした。

 また、ソニーとパナソニックのテレビ/大型ディスプレイ向け次世代有機ELパネルなどの共同開発契約が2013年末で終了した点については、「想定通り。契約期間が切れ、お互いに成果があったので契約は終了した」と説明した。

Crystal LED Display('12年のCESでの写真)

 加えて、2年前のCESで技術展示した「Crystal LED Display」(CLED)にも言及。「まだまだいろんな応用があると信じている。ちょくちょく厚木(テクノロジーセンター)の方に遊びに行って、Crystal LEDの進捗状況を見せてもらっている。有機ELについても、メディカルや放送分野に出しているので、これをコンシューマへ応用するかは議論しており、R&Dを続けている」と述べた。

 一方で、「昨今の液晶の画質向上はかなり進化している。お客様が、どこまで価格と価値のバランスを見るのかはも考えながら商品化をしなければならない。CLEDも有機も、引き続き厚木の方で進めている。なぜ知っているかというと、私がいつも行って確認しているから」。

4K対応BRAVIA新モデルの「XBR-85X950B」

 4Kについては、今回のCES会見では4Kハンディカムや配信サービスなど“コンテンツ”の充実に注力していく方針を見せたソニー。4Kテレビの現状について「台数ベースでは数%だが、売上ベースでは2ケタになり、ビジネスへの貢献は既にある」とした一方で、「まだ4Kは導入フェーズ。テレビに評価はいただいているが、どうしても『コンテンツはどうなるのか』という話になる。今後、いろいろ地域展開を考えなければならないが、アメリカでの試みとして、昨年から4K対応のメディアプレーヤーで、4Kネイティブコンテンツを、SPE作品が中心だが利用できるのはソニーならでは」。

 「昨日はNetflixさんから、4Kのストリーミングに参加するという話もあった。日本で言えば、次世代放送通信フォーラム(NexTV-F)もある。弊社も関係しているところでは、FIFAワールドカップの決勝戦は4Kで収録することが決まった。そういった意味で、“コンテンツでも引っ張っていく”という兆しも出ている。ただ『来年になったら全部4Kか?』といった話ではなく、時間もそれなりにかかるもの。エレキ業界も、ソフト業界も、放送業界も、それを大事に育てて行かなくてはならない」と述べた。

ソニーブースに展示された、4K配信対応メディアプレーヤーのHEVC対応次世代機のプロトタイプ
米国で4K配信を開始するNetflixのReed Hastings CEO(左)もソニーの会見に登場した

(中林暁)