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4K壁投写&天井プロジェクタで、部屋から海岸に瞬間移動? ソニーLife Space UX日本初公開
(2014/3/18 17:17)
ソニーは18日、壁に最大147型の4K映像(4,096×2,160ドット)を投写できる4K超短焦点プロジェクタなどを用い、「空間を活用して新たな映像体験を提供する」製品群「Life Space UX」を銀座のソニービルで日本初公開。居住空間が“別の空間”に変化する魅力を体験した。なお、19日からは一般来場者も体験可能となる。
Life Space UXとは?
Life Space UXは、1月に米ラスベガスで開催された「2014 International CES」にてソニーが発表したコンセプト。
壁に大画面の4K映像を表示するローボードタイプの「4K超短焦点プロジェクタ」、食卓のテーブルに高品位な映像を映し出して大きなタッチスクリーンとして使用する「テーブルトップスクリーン」、「天井プロジェクタ」、「ミラーディスプレイ」などの商品群を用いて、「空間を活用して新たな映像体験を提供する」コンセプトを「Life Space UX」と名付けたもので、1つの製品を指す言葉ではない。
その中核となる4K超短焦点プロジェクタは、今夏までの商品化と、米国で約3万~4万ドル程度での販売が予告されている。気になる日本での発売や価格は現時点でまだ未定だが、19日からスタートする一般公開の反響なども踏まえて検討していくという。
一般公開は既報の通り、3月19日~4月13日まで、東京・銀座ソニービル8Fのオーパスにて行なわれる。入場は無料。約15分のツアー形式で各商品が紹介される。
18日には展示の模様が報道陣に公開された。「Life Space UX」で居住空間がどのように変化するのか、体感した。
部屋の中が、夕暮れの屋外に早変わり
ソニービル8Fのオーパスに、Life Space UXを導入したデモルームが構築されている。中に入ると、食事などに使われるダイニングテーブルが設置されており、天井からは照明器具が吊るされている。この照明にはライトだけでなく、スピーカーやプロジェクタ、カメラを内蔵。テーブルの上に静止画や動画を投写できる。
例えば、時計やカレンダーを投写。そこにメモを書き込んだ付箋を貼って、家族同士で予定を共有したり、旅行で撮影した写真をテーブルの上に投写して、家族で楽しむといった使い方ができる。カメラで手の動きを認識する事で、テーブルの上に置いたメモや写真を指先で移動させる事も可能だ。
リビングに移動すると、白い大きな壁とソファが設置されており、壁の前に4K超短焦点プロジェクタが設置されている。一見すると横長のローボードテレビラックのように見えるが、左右にAV機器を収納できるラック×2個、その内側にスピーカーを搭載したラック×2個、中央にあるのが4K超短焦点プロジェクタ×1個という、合計5個のコンポで構成されており、それぞれは離して設置する事もできる。
4K超短焦点プロジェクタの投写レンズは天面に設置。表示素子は0.74型SXRDで、解像度は4,096×2,160ドット。光源はレーザーダイオードを使い、明るさは2,000ルーメン。ミラーの反射を用いて、壁のすぐそばに設置した状態でも、66型~147型の大画面を歪みなく投写できる。レンズは約1.6倍の電動ズームで、フォーカスも電動だ。
入力端子はHDMI×4、スピーカー端子×1、リモート端子のRS-232C×1、D-Sub 9ピン×1、Ethernet端子、IR端子、USB端子などを搭載。映像は最高で4,096×2,160/60pを表示できる。PCからの信号入力時は最高1,920×1,200ドット。
画質を高めるために、映像をリアルタイムに解析し、独自のデータベース型超解像技術も用いて、映像のディテール復元や、圧縮・伝送で失われた情報の復元を行なう4K対応の超解像エンジン「4K X-Reality PRO」も搭載。トリルミナスディスプレイにも対応。フルHD入力時のみとなるが、3D表示にも対応し、無線3Dトランスミッタにも対応する。
デモではまず、ホームシアターのように部屋の電気を暗くして、映画のトレーラーを投写。スクリーンは使わず、壁への直接投写だが、2,000ルーメンの輝度を活かし、白い壁に明るい映像が映しだされた。超短焦点プロジェクタだが、四隅のフォーカスもしっかりしており、歪みや画質の甘さは感じられない。「1月のCESでデモ展示した時より、画質はさらに向上している」という。
部屋の照明が少し戻り、間接照明を使ったような薄明るさの中で、今度は奥へと続く四角いトンネルのような映像が表示される。トンネルの壁の色が、デモルームの壁と同じ白だったため、見上げていると、壁の向こうに本当に空間が続いているように錯覚する。飲食店の壁に鏡を配置し、狭い店内を広く見せるテクニックがあるが、あれに似た感じだ。
次に、カラフルな液体の模様が流動するアートを投写。プロジェクタをアート鑑賞に使う提案だが、サイズが147型と、一般的に部屋に飾るポスターや絵画のサイズを遥かに超えているため、作品にガッチリ意識を掴まれるような支配力を感じるのが興味深い。
海の中や夕暮れの海岸、パリの街頭の映像なども投写。映像がテレビのように黒いフレームで区切られていないため、コンテンツと現実の境目が明瞭ではなく、じっと眺めていると確かに窓の向こうの夕焼けを見ているような気分になってくる。
上を見上げると、天井にも夕焼け雲の映像が投写されている。この投写をしているのも「Life Space UX」製品群の1つ「天井プロジェクタ」だ。天井から伸びている突起のようなものがプロジェクタ本体で、超短焦点プロジェクタの技術を用いて天井に映像を投写。デモのリビングルームでは4つの天井プロジェクタから投写した映像を組み合わせて1つの映像を構成していた。解像度は「4Kではない」という。プロジェクタにはスピーカーも内蔵している。
面白いのは、前方の壁に投写されている夕暮れ映像とまったく同じものを天井に投写するのではなく、天井には“夕焼けの空の映像”を投写している事。つまり、夕暮れの海岸で実際に空を見上げたら見える風景が天井に映しだされている。これにより、映像を実際の風景のように感じる没入感が高まるほか、頭の上にもさらに空高く空間が広がっているという感覚が得られるため、ガラスのルーフを備えたワンボックスカーに乗った時のような開放感を室内にいながら感じられる。
また、部屋に反射する光を邪魔に感じないのも興味深いポイントだ。ホームシアタールームではスクリーンの周りを黒くしたり、黒いカーテンを導入するなど、スクリーンからの光が反射して、映像への没入感が削がれないように工夫するのが一般的だ。一方、「Life Space UX」のデモルームでは壁や天井、さらに言えばローボード型プロジェクタの天面も白を基調としており、壁からの光を反射。これにより、部屋全体が夕焼けの赤い色に染まってしまう。
だが、映画のように目まぐるしくシーンが切り替わるわけではないので、反射光がチラついたりせず、わずらわしく感じない。むしろ窓(実際は壁)から見える夕焼けの光が、室内全体を照らしているような自然さを感じ、映像が投写されていない部分も“夕暮れの屋外”のように感じはじめる。これは、海の中の映像を投写し、部屋全体が青に染まった時も同じだ。ホームシアターとの楽しみ方の違いを大きく感じるポイントだ。
気になるのは白以外の壁紙や天井の部屋で使えるのかという点だが、プロジェクタにカラー調整機能を用いて、ある程度色がついた壁紙であっても、違和感を押さえて投写はできるという。オートカラーキャリブレーション機能も備えている。
Life Space UX機器が連携
映像が連動するのはローボード型プロジェクタと天井プロジェクタだけではない。前述の「テーブルトップスクリーン」に移動すると、海の中の映像を投写している時は、テーブルにもサンゴ礁で泳ぐ魚達が映しだされている。パリの街頭では、店先のワインの映像が投写されていた。
このように、異なる場所や部屋のLife Space UX機器と連携できるのも特徴だという。
デモルームではさらに、寝室の天井にも天井プロジェクタを設置。ベッドに寝ながら映像が楽しめるほか、壁には液晶ディスプレイの表面にミラー処理を施した「ミラーディスプレイ」を用意。
このミラーディスプレイには電子書籍などのデータが表示されており、タッチパネルにも対応。指先で情報を選択・閲覧できる。鏡としても使えるため、出かける前に身だしなみを整えながら、気になる情報をチェックできる。
寝室プロジェクタやミラーディスプレイも、ローボードプロジェクタの投写コンテンツと連動して、夕焼けや街頭映像を表示する事もできる。
なお、こうした機器の連携が具体的にどのように行なわれるかはアナウンスされていない。第1弾製品はローボード型プロジェクタになる予定だが、その他の製品の発売時期は未定だ。Life Space UX対応製品が一気に複数登場するのではなく、順次発売された製品を後から連携させる事もできるという展開になるようだ。
“理想的な佇まい”を実現するために
デモルームに入る前には、平井一夫社長兼CEOからのビデオメッセージも上映される。平井社長は機能的な価値だけでなく、“感性に響く価値”が重要とし、「驚くほど美しい映像、心地良い音楽、完璧なバランスの製品を手にした時など、感動が生まれるのは人々の五感が魅了された時。それこそが私達ソニーがお届けしたい商品の価値」と説明。
一方で、それを生み出す道程は平坦ではなく、「試行錯誤の末、革新的な製品が生まれる事もあれば、失敗する時もある。けれど、失敗は“終わり”ではない。従来の概念から解き放たれた感動体験、ソニーらしい商品を生み出し続けていく」と語り、Life Space UXが失敗を恐れない新たな挑戦の製品である事をアピールした。
TS事業準備室チーフコンスーマーエクスペリエンスの斉藤博プロデューサーは、Life Space UXの根幹を、「空間そのもののあり方に目を向けた事」と説明。「空間の中に今まで認識していなかった様々なものが目に飛び込んで来た。単なる壁でも、壁全体を使って浜辺のような別世界を生み出せる。テレビのように枠の中にコンテンツがあり、コンテンツを見るという感覚とはまったく別の体験ができる。新たなコミュニケーションも生まれる」と説明。
斉藤プロデューサーはさらに、「(今までのように)作られた商品を空間に入れ込むのではなく、空間そのものを使うという発想。例えば、デザイン的な主張を持った製品を空間に入れると、そのデザインの主張と空間がかち合ってしまう可能性もある。空間そのものを使えば、“理想的な佇まい”が初めて手に入る可能性もある」と指摘。
また、モニターやスクリーンなどの表示デバイスの設置、サイズ、その前に移動しなければならないなどの“機器の制約からの開放”。ダイニングテーブルを家族で囲み、投写されたコンテンツを軸にコミュニケーションをとるなどの“場の特性を活かした体験の創出”も、Life Space UXの特徴として紹介。「様々なポテンシャルを持っているのではないか、ワクワクしながら検討している。色々なイマジネーションを掛け合わせることで、居住空間の価値が無限に広がっていく。この考えをご体験いただきたい」と締めくくった。