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パイオニア、クラブ向け最上位ヘッドフォン「Superior Club Sound」。振動素子+BA他

シリーズは4製品で構成される

 パイオニアは、ヘッドフォンの最上位シリーズ「Superior Club Sound」(スーペリア クラブ サウンド)として、ヘッドフォン「SE-MX9/MX7」2機種、イヤフォン「SE-CX9/CX8」2機種の合計4機種を4月下旬に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格はヘッドフォン「SE-MX9」が33,000円前後、「SE-MX7」が19,000円前後、イヤフォン「SE-CX9」が29,000円前後、「SE-CX8」が19,000円前後。

「Superior Club Sound」のロゴマーク

 ビートや低音の効いたクラブミュージックが人気を集めている事を受け、パイオニアがDJ用ヘッドフォンフォンで培ってきた技術・ノウハウを活かし、ビートや低音の効いたクラブミュージックを聴く喜びを追求したという新シリーズ。素材や細部のデザインにまでこだわり、「高品位で先進的な外観と心地よい装着感を実現した」という。

 シリーズのロゴも用意。途切れることなく繰り返される(ループ)クラブミュージックと、それを通じて繋がる人の輪、クラブミュージック・クラブカルチャーと繋がったアクティブなライフスタイルを提供するヘッドフォンというメッセージが込められている。

SE-MX9-S
SE-MX7-W
SE-CX9-S

50mm径ユニットのハイエンドヘッドフォン「SE-MX9」

大口径50mmユニットを採用したヘッドフォン「SE-MX9」。装着しているのは発表会に登壇した、フェンシング銀メダリスト・太田雄貴氏

 DJ用ヘッドフォン「HDJ-2000」をベースに、クラブミュージックの再生に最適という新開発の50m径ユニットを搭載している。振動板はコンピューター解析、シミュレーションを繰り返して振幅対称性を向上。低歪化、低域感度の向上、広帯域再生を実現したという。

 磁気回路は磁束密度を高めて感度と音質を向上させている。さらに、ハウジング部に小容積のチャンバー(空気室)を設け、外部の騒音に対する遮音性能を高めている。

「SE-MX9」
ハウジングを平らにする事もできる
ケーブルは着脱式で、左右どちらのハウジングにも取り付けられる
カラーバリエーション

 ハンガーとハウジング部にはアルミ合金を使。ヘッドバンド部には、屈曲や復元力に優れ、スポーツ用メガネフレームなどにも採用されている高耐久性素材のポリアミド樹脂を採用。ヘッドクッションはシリコン。イヤーパッドには、レザータイプ素材と耳形状にフィットする低反発ウレタンを採用している。

 ケーブルは片出しで着脱可能。端子は左右はジングどちらにも搭載されており、任意の側のハウジングに取り付け可能。音質とデザイン性を高めたというケーブル「D-shapeコード」を採用しており、エラストマー素材とD-shape形状で、よじれにくく、からみにくいという。また、電線の導体断面積を増やすことで音声信号の伝達における抵抗を小さくしている。iPhoneなどに対応するマイク付きのリモコンも備え、再生/一時停止、通話・終話などの操作が可能。長さは1.2m。2mのカールケーブルも付属する。

 カラーはBright Silver、Indigo Black、Bright Copper。再生周波数帯域は6Hz~40kHz。インピーダンスは32Ω。出力音圧レベルは106dB。重量はケーブルを除いて305g。

低音が調節できるヘッドフォン「SE-MX7」

 40mm径のダイナミック型ユニットを2個内蔵した2ウェイ2スピーカーのヘッドフォン。ローパスフィルターも搭載し、耳に近い側に中高域用、その背後に低域用のユニットを搭載している。

 また、左側のハウジング全体がジョグダイヤルになっており、回転させる事で低域のレベルを無段階調節できる。「ADVANCED BASS LEVEL CONTROL」と名付けられた機能で、曲のジャンルや気分に合わせ、気軽に調整できるのが特徴。

「SE-MX7」
ハウジングを回すと低音が調整できる
ケーブル着脱が可能
カラーバリエーション

 カラーはMatte White、Matte Black、Matte Blue、Matte Orangeを用意。再生周波数帯域は6Hz~37kHz。インピーダンスは16Ω。出力音圧レベルは102dB。重量はケーブルを除いて227gg。

 ヘッドバンド部からハンガー部にかけては、ラバー風マット仕上げを採用。ヘッドバンド部とスライダー部には、屈曲や復元力に優れたポリアミド樹脂を使っている。イヤーパッドはレザータイプ。

 ケーブルは「D-shapeコード」で、着脱可能。左右のハウジングにケーブルを付け替える事はできない。長さは1.2m。

振動素子を採用したハイブリッドイヤフォン2機種

 SE-CX9とSE-CX8はどちらもカナル型イヤフォン。2機種とも、入力信号に合わせて振動する振動素子「BASS EXCITER」(ベースエキサイター)をハウジング内に搭載。その振動が低周波数振動として耳などに伝わり、低音域をより強く体感できる事が特徴となっている。

 また、振動素子だけでは音がでないため、素子の前にCX9はフルレンジのバランスド・アーマチュアユニットを、CX8は9.4mm径のダイナミック型ユニットをそれぞれ搭載している。

BAを搭載したSE-CX9
SE-CX8
SE-CX8のカラーバリエーション

 CX8のダイナミック型ユニットには、強磁力希土類マグネットを使用。不要な内部振動を低減する独自開発のセラミックパウダーコーティング振動板と、軽量のCCAWボイスコイルも採用している。

 どちらのモデルもイヤーピースの根元付近にラバークッション付きのセルフフィットホルダーを搭載。この部分が耳のくぼみにフィットし、快適で安定した装着ができるという。

 ケーブルは「D-shapeコード」で着脱可能。iPod/iPhone/iPad対応のマイク付きリモコンも備えている。再生周波数帯域とインピーダンス、ケーブルを除いた重量は、CX9が6Hz~25kHz、20Ω、13g。CX8が4Hz~30kHz、16Ω、12.3g。イヤーピースはS/M/Lの3サイズを用意する。

 カラーはCX9がDeep Silverのみ。CX8はBright Silver、Indigo Black、Bright Copperを用意する。

音を聴いてみる

 発表会場でハイレゾプレーヤー「AK240」を使い、試聴してみた。

 ヘッドフォンの最上位「SE-MX9」は、大口径ユニットを採用しただけあり、ワイドレンジな再生ができている。低域は態度でハイスピード、打ち込み系楽曲をハキハキと描写し、聴いていて心地が良い。クラブ向けとのことだが、高域の抜けも良好。オールラウンドに聴けるヘッドフォンでありながら、低域にキレとパワフルさが欲しいという人にマッチするだろう。

 外観は大きめだが、軽量であり、音もトランジェントが良いため、装着していて爽やかさを感じる。

 「SE-MX7」は、MX9と比べると若干こもりを感じ、低域のパワフルさが目立つ、まさにクラブミュージック向けというバランスだ。ユニークなのは、左ハウジングをジョグダイヤルのように回すと低域の迫力が調整できる点。一番弱くした状態では、軽やかなサウンドだが、最も強くすると、低域のパワフルさが増して若干こもりも強くなる。クラブミュージックにも、それ以外の音楽にも、ダイヤル調整で対応できるユニークなモデルだ。

 イヤフォンの「SE-CX9」、「SE-CX8」を聴いてみると、どちらも振動素子による“揺れ”が楽しい。耳や側頭部をゆすられるような感覚で、音を振動として体感できるため、イヤフォンでは実際に出す事が難しい地鳴りのような低音の振動としての凄みが、演出として表現されている。

 2機種の音を比べると、振動素子+BAのCX9は、振動する低音と、ソリッドでシャープなBAのサウンドが組み合わさり、強烈なサウンドに仕上がっている。振動する低音に負けじと、BAが突き抜けるようなバトルが展開しているが、そのせめぎ合いの末に、両者が不思議なバランスを保っており、音楽がバランスよく楽しめる一面も持っている。

 CX9と比べると、振動素子+ダイナミック型のCX8は、より低域の振動や音圧にシフトしたモデルと感じる。高域もCX9よりこもりがちだが、「クラブミュージックっぽさ」を一番強く感じさせる音作りでもある。面白いのはCX9とCX8を聴き比べると、振動素子は同じにも関わらず、CX9の方が“より強く揺れている”気がする事。おそらくBAユニット単体ではダイナミック型よりも中低域が出すのが難しいため、CX9では振動素子の揺れがそのままダイレクトに伝わってくるためだと思われる。逆にCX8はダイナミック型ユニットも中低域をパワフルに再生できるため、振動素子のパワーを覆って目立たなくする側面があるのかもしれない。

「ヘッドフォン事業で売上100億円を目指す」

プロSV事業部 CSV部長の百足敏治氏

 プロSV事業部 CSV部長の百足敏治氏は、日本のヘッドフォン市場において、1万円以上の高価格帯の構成比が2012年度の20%から、2013年度は24.5%になるなど、伸長しているデータを紹介。さらに、音楽シーンではクラブミュージックが流行となり、全世界でクラブに行く人は1億5,000万人(ヨーロッパ7,000万人/北米3,000万人/その他エリア5,000万人)というデータも示しながら、クラブミュージックに最適化しつつ、ヘッドフォンとしての質感やデザイン性にこだわった高級モデルを投入する背景を説明した。

 さらに、同社が手掛けるDJ関連機器で培った技術なども投入するほか、クラブミュージックフェスティバルのULTRA JAPANのオフィシャルヘッドフォンとして訴求するといった展開も発表。中長期的にヘッドフォン事業で売上100億円を目指すと、目標を掲げた。

日本のヘッドフォン市場
世界でクラブに行く人の人数分布
ターゲットユーザー層

 発表会には、2020年東京オリンピック招致でも活躍した、フェンシングの銀メダリスト・太田雄貴選手もゲストとして登場。試合前や、招致のスピーチ前といった緊張する場面でリラックスするために、選手たちがヘッドフォンやイヤフォンでの音楽リスニングを積極的に活用している事例を紹介。

 また、フェンシングの能力が上がっていくと、剣が相手の選手に当たる音で、どのくらいのポイントが入るのか判断できるようになるなど、スポーツ選手にとって“音を聴く能力”の重要性も説明。音楽好きでもある太田選手は、そうした様々な観点から、音質や付け心地、デザインについてもこだわりが強いが、「Superior Club Sound」シリーズについては、その要求に応えるクオリティがあるとし、非常に気に入った様子だった。

フェンシングの銀メダリスト・太田雄貴選手
司会はラジオDJなどで活躍する傍ら、トライアスロンなどもこなす山田玲奈さんが担当

(山崎健太郎)